〇オフィスの廊下
　　──あらすじ──
　　順調に陽花のポジションを
　　奪いつつあった信吾。
　　だが、その信吾を大和が襲撃した。
社員「びっくりしたよね、紅林さんのこと。 スマホもバキバキで」
社員「会社入口の防犯カメラに、 怪しい人物の出入りは 映ってなかったんだろ？」
社員「じゃあ、 この社内の人間がやったってこと？」
田所胡蝶（こちょう）「やだ、こわぁい・・・」
社員「一体、何があって あんなことになったんだよ・・・」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）（紅林君・・・）
桜川大和（やまと）「・・・・・・」

〇ビジネス街

〇休憩スペース
楠原陽花（はるか）（紅林君が何者かに襲われた・・・）
楠原陽花（はるか）（今は意識を取り戻してるけど、 精密検査のため少しの間入院するらしい）
楠原陽花（はるか）（スマホも破壊されたから、 今は連絡も取れない・・・）
社員「あれ？　残飯の奴、ここにもいねぇな。 どこ行ったんだよ、あいつ」
社員「なぁ、そのイジリ、 そろそろやめといたほうがいいぜ」
社員「それ？」
社員「残飯ってやつ。 俺見ちゃったんだよ」
社員「桜川が会社のパソコンで 『あだ名　パワハラ　訴訟』 って検索してたのを」
社員「マジか！　やべぇ、やめとこ」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
社員「それにしても桜川、 どこ行ったんだよ・・・」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）（嫌なあだ名は収まってくれそうね）
楠原陽花（はるか）（私が広めたわけじゃないけど、 責任感じてたからホッとした・・・）

〇オフィスのフロア
社員「楠原さぁん！」
社員「戻ってきてくれた！」
楠原陽花（はるか）「え？　何？」
社員「この表、打ち込んでいるうちに 列がずれておかしなことになっちゃって」
社員「直せます!?」
楠原陽花（はるか）「あぁ、これなら、」
楠原陽花（はるか）「こうすれば・・・」
社員「きゃあ、元に戻った！ ありがとうございます！」
田所胡蝶（こちょう）「楠原さぁん、 こっちも助けに来てくださぁい！」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）「これね。 ここを押して、」
楠原陽花（はるか）「ここにチェック入れて、こう」
楠原陽花（はるか）（これ教えるの、４回目なんだけどなぁ・・・）
田所胡蝶（こちょう）「わぁ、さすがぁ！ 年の功ですね!!」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）（殴りたい）

〇空

〇ビジネス街

〇オフィスのフロア
楠原陽花（はるか）（紅林君が入院して５日か。 そろそろ戻ってくる頃かな）
社員「楠原さぁん」
楠原陽花（はるか）「なに？　どこが分からないの？」
社員「あ、そうじゃなくて」
社員「部長が小会議室に来てくれって」
楠原陽花（はるか）「会議室？」
楠原陽花（はるか）（なんだろう・・・）

〇空

〇小さい会議室
木田部長「あぁ、楠原君。 急に呼び出して悪いね」
楠原陽花（はるか）「いえ。大丈夫です」
木田部長「まぁ、そこに座ってくれ」
楠原陽花（はるか）「はい」
楠原陽花（はるか）（なんだろう？）
楠原陽花（はるか）（紅林君にバトンタッチした 動画のことかな？）
楠原陽花（はるか）（・・・にしては、空気が重いな）
木田部長「実はね、桜川君から、 先輩である君からパワハラを受けている という訴えがあってね」
楠原陽花（はるか）（え!?）
木田部長「君は彼に『残飯』というあだ名をつけ、 職場に広め、 周囲の人間を扇動したそうじゃないか」
木田部長「精神的に追い詰められた彼は、 君だけでなく、 この会社も訴えると言っている」
楠原陽花（はるか）（そんな・・・！）
木田部長「楠原君、私は君を高く評価しているが、 正直に答えてほしい」
木田部長「桜川君に『残飯』と言ったのかね？」
楠原陽花（はるか）「それは・・・、言いました」
木田部長「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）「けれどあだ名にしたり、 会社の人間を扇動した覚えはありません！」
楠原陽花（はるか）「その言葉はごくプライベートな空間で 発したものです！」
木田部長「プライベート？」
楠原陽花（はるか）「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）「私と桜川君は、以前 恋人としてお付き合いをしていました」
楠原陽花（はるか）「けれどある日、彼が裏切ったのです」
楠原陽花（はるか）「私以外の女性と深い仲になっていました」
木田部長「・・・・・・」
楠原陽花（はるか）「それを見た私は彼を料理に例え」
楠原陽花（はるか）「『どれだけ高級でも 　雌犬が舐めた時点で残飯だ』」
楠原陽花（はるか）「そう、言いました」
木田部長「それはまた、辛らつだね」