離色の(脚本)
〇ホール
司会「・・・ここで、頂きました弔電の一部を 奉読させていただきます」
(・・・こういう司会の仕事も良いよね。
ああでもなー、もう表に立つようなのは
止めとこうかな・・・)
(あ、ヤバ、私無職じゃん。
慰謝料でしばらく遊んで、それから)
(・・・釣り船屋さんでもやろっかな?)
(おっと、焼香だっけ。行かなきゃ)
(・・・マリエ、なに遊んでんの?)
(いや何がレベルアップ? 私が?)
(何色で何になるの? 何か貰えんの?
ちょっともう笑わせないでよ?
ここで笑ったら私ガチでヤバい嫁だよ)
(ホント不謹慎、自分のお葬式だからって
・・・うふふ)
司会「ただいまより葬儀委員長のご挨拶が ございます」
司会「葬儀委員長、九条ダイゴロウ様 よろしくお願いいたします」
(・・・お祖父ちゃん、痩せたかも)
(我が子が自分より先に死んじゃうなんて
思いもしてなかったんだよね)
(まだ私に子供はいないけど・・・
マリエは私なんかよりお祖父ちゃんの所に
行ってあげてよって感じ)
(遊んでる場合じゃ)
お祖父ちゃん「・・・今後の我が社の方針としましては、 志し半ばで旅立ったマリエの」
(無いでしょうよ、ホントもう)
九条ダイゴロウ「長男タクミの妻、九条ユキノを社長として 弊社を更に・・・」
(何してん・・・)
・・・?
今なんて言った?
〇教会の控室
ちょっとマリエ?! いるんでしょ?!
出て来て?!
マリエ「本当に騒々しい子だわ? 他人に聞かれたらただの変人よ?」
だって、あれ、今の、なにあれ?!
聞いてないよ?!
私が社長って何?!
マリエ「そうよ、社長になって? もう決定事項だから」
『なって』って?! 軽く言うね?!
マリエ「だって遺言書いちゃったんだもん ユキノに継がせるって」
マリエ「あのバカ息子の浮気が分かった時点で 腹が立って仕方なくて」
マリエ「遺言書、書き直しちゃってたの!」
マリエ「清書する前に死んじゃったから 手続きに時間かかってゴメンナサイね」
いえいえ、そんな謝らなくても・・・ん?
いやいや違う、謝られても困るんだって!
こんな、私なんかが、私なんかにさ、
ついて来てくれる社員なんていると思う?!
もう決めてたんだから!
しばらく休む、ゆっくり暮らすって!
社長とかあり得ないんだけど?!
マリエ「・・・」
・・・な、なに?
マリエ「・・・だめ?」
ダメ! 無理! イヤ!
マリエ「・・・どうしても?」
う、うん! どうしても!
マリエ「・・・ユキノ・・・」
マリエ「私、このままじゃ成仏できない・・・」
・・・う。
・・・。
マリエ「・・・よよよ」
泣かないでよ・・・もう・・・。
ああもう!
分かった、やるから泣かないでってば!
マリエ「やったー!」
タクミ「ちょっとー! どういうコト?! ユキノが社長なの?!」
・・・あ、忘れてた。
タクミ「まあそれでも良いんだけどさ、 俺どうするの? 俺が副社長?」
・・・えっとね・・・ん?
マリエ「ユキノの采配に任せるわ!」
マリエ「こんなバカ息子、放り出しちゃいなさい!」
・・・うん。
タクミ「え?」
離婚して。
これは浮気の証拠。
写真、音声データ、カードの明細ね。
これは離婚届。
これは慰謝料についての書類。
これは弁護士の連絡先。
全部まとめておいたから、はいどうぞ。
タクミ「えっ?!」
タクミ「ち、違うよ、違うっていうか・・・」
以上、言い訳は聞かない。
後は弁護士を通して。
タクミ「待って、ちょっと待って!」
マリエ「本当にユキノは気持ちいい子だわー!」
タクミ「ねえってば!」
マリエ「それに比べて・・・このバカ息子!」
タクミ「いやっ?! なにっ?! こわいっ!」
マリエ「ふん!」
このままじゃ成仏できない、、強烈な文句ですね!こんなのを言われたら従わざるを得ないですよね!
そしてユキノさん、この痛快なキャラクターには惚れてしまいますw