人生交換アプリ 

火神ツバメ

お嬢様女子高生 三千院こはるの場合(脚本)

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〇綺麗な部屋
  三千院家は都内でも有名なお金持ちな家であり、その家の一人娘である三千院こはるが今回の主役である
  三千院こはるの母はこはるが幼い頃に他界してしまった。
  
  それ以来、こはるの父は今までよりも仕事に打ち込むようになった。
  こはるの父親も人の子である以上最愛の妻を失った悲しみは大きかったに違いない。
  しかし、こはるの父には悲しんでいる暇はなかった。
  それが、三千院家の当主としての責務とまだ幼いこはるを一人で育てていかなくてはならないからである。
  そのおかげで、こはるは今日まで苦労することなく生活してきた。
  朝昼夜のご飯は用意され、着る服や通う学校まで自分で選ばずに生きてきた。
  周りもお金持ちだったので、それが当たり前なんだと思っていた。
  
  しかし、高校生になった時にスマホを購入してもらった
  規制はあるものの少しずつ世間のことを知り、自分がいかに狭い世界で生きていたのかを自覚することとなる。
アヤ「こはるお嬢様。朝ですよ、起きて下さい」
三千院こはる「うーん」
  こはるは朝が苦手だが、メイドのあやには逆らえないので、しぶしぶ目を覚ました。
アヤ「おはようございます。こはるお嬢様」
三千院こはる「おはよう、あや」
  こはるはいつものように洗面所へ行き、顔を洗い、メイドに顔を拭いてもらい、朝食をとる。
  メイドのあやは朝食を食べているこはるに今日1日の予定を話していた。
  朝食を食べ終えると自室で制服に着替えさせられ車に乗って学園に向かった。

〇ファンタジーの学園
アヤ「こはるお嬢様、学園につきました」
三千院こはる「はい。ありがとう。それではいってきますわ」
アヤ「行ってらっしゃいませ」

〇おしゃれな教室
  教室に入りクラスメイトに挨拶をして自分の席に座った。
高ノ宮ぼたん「ご機嫌よう。こはるさん」
三千院こはる「ご機嫌よう。ぼたんさん」
  高ノ宮ぼたんは幼い頃からの友人であり、こはるが心を開いている数少ない存在である。
高ノ宮ぼたん「最近あまり元気がありませんわね?何かありましたの?」
三千院こはる「普通に振る舞っているつもりでしたが、ぼたんにはわかってしまうのですわね」
高ノ宮ぼたん「もちろんですわ。こはるはすぐに顔に出ますからね。将来のことで悩んでらっしゃるの?」
三千院こはる「それもありますが、今はまた別のことですわ。お昼に話ますわ。相談にのって頂けますか?」
高ノ宮ぼたん「もちろんですわ」
  その後、いつも通り授業を受けてお昼になった。

〇華やかな裏庭
アヤ「こはるお嬢様、お弁当をお持ちいたしました」
三千院こはる「ありがとう」
  弁当を受け取るとぼたんと二人で中庭でお昼を食べることに。
高ノ宮ぼたん「それでは、話を聞かせてくださる?」
三千院こはる「わたくし達は世間からするとお金持ちになるのですわよね?」
高ノ宮ぼたん「そうですわね」
三千院こはる「わたくし達と同じ年の子達は自分達で学校を選んで将来なりたい職業を決めたり」
三千院こはる「好きな殿方とお付き合いして結婚なさると知りました」
高ノ宮ぼたん「そのようですね」
三千院こはる「それを知った時にわたくしはなんて狭い世界で生きてきたのかと思いました」
三千院こはる「そして、今まで以上に将来について考えるようになりましたわ」
高ノ宮ぼたん「わたくし達は確かに一般の方々に比べて不憫な面もあると思いますわ」
高ノ宮ぼたん「でも、わたくし達は一般の方々よりも贅沢な生活をおくらせて頂いています」
高ノ宮ぼたん「それは、自分達が世の中で上の立場の人間になり、他の方々を導かなければならない宿命にあります」
高ノ宮ぼたん「わたくし達はたくさんの方々の期待を背負ってますので多少は仕方ないと思いますわ」
三千院こはる「そうですわよね」
三千院こはる(やっぱり、ぼたんもそのように考えいるのですわよね)
三千院こはる(三千院家に産まれた時からわたくしの人生は決まっていて、それは仕方がないことなんですわよね)
三千院こはる「相談にのってくれて感謝しますわ、ぼたん」
高ノ宮ぼたん「わたくしはこはるがやりたいようにやるのが1番だと思いますわ。わたくしが出来ることがあれば何でも仰って下さいね」
三千院こはる「うん。ありがとう」

〇おしゃれな教室
  帰りのホームルーム
先生「前から話してましたが、今週末に三者面談をしますから、親子さんにお伝えくださいね」
三千院こはる(三者面談。お父様はお忙しいからいらしてはくれないでしょうね)
三千院こはる(それに、おそらくこのまま付属の大学に進学することになると思いますし)
  こはるは父親に三者面談のことを話さないでおくことに決めた。
アヤ「お疲れ様です。こはるお嬢様。お迎えにあがりました」
三千院こはる「わかりました。それでは、また明日ですわ」
高ノ宮ぼたん「また明日」

〇綺麗な部屋
  こはるは屋敷に戻ると少し休憩してから、習い事等をこなして夕飯を食べ終えてお風呂に入り、自室に戻った。
三千院こはる「今日も疲れましたわ〜」
  部屋に戻りスマホを確認すると一件のメールが届いていました。
三千院こはる「どなたからでしょう?」
  はじめまして!
  
  このメールが届いたということは、あなたは自分の人生に不満をお持ちではありませんか?
  この世は生まれながらにして裕福な家庭に育った方もいれば貧しい家庭に生まれた方もいる。
  このままの人生でいいんだろうか。
  
  今の人生に不満をお持ちなら他の人と人生を交換してみませんか?
  今よりもいい人生が待っているかも
  
  詳しくはこちらのURLからアプリをダウンロードしてみて下さい。
  このメールは2日後に自動的に消えます。
三千院こはる「人生交換アプリ・・・人生を交換するなんてことが本当に可能なのでしょうか?」
  こはるは今ちょうど自分の人生を諦めようとしていたところにこのメールが届いたので、まさに運命のように感じていた。
三千院こはる「試しにダウンロードしてみようかしら」
  こはるは好奇心からアプリをダウンロードした。
  アプリを開くと会員登録画面が表示された。
  名前、都道府県、年齢等の個人情報を入力し画面がホーム画面に切り替わり人生交換アプリの使用方法のガイダンスが始まった。
  人生交換アプリをご利用ありがとうございます。
  
  人生交換アプリの使用方法をご説明させてもらいます。
  こちらのアプリを使用されているお客様の中からあなたが人生を交換してみたい人をこちらで厳選して表示させてもらいます。
  その中から選んで申請を出して承諾してもらうか、逆に申請が来たものに承諾するかで第一ステップが完了になります。
  人生を交換できる条件は基本的には同じ年齢であることだけです。
  性別が違っていても可能ですし、外国の方とでも可能です。
  第一ステップが完了後に仮契約を交わす手続きを行います。
  
  詳細は仮契約を交わす時にご説明させてもらいます。
  最後にこのアプリのことは他言無用でお願いします。
  
  それでは良い出合いがありますように。
  マイページの検索ボタンを押すと同じ年齢の女の子が表示された。
  
  あなたが望む普通の同じ年齢の女の子一覧です。
三千院こはる「あら、わたくし普通の女の子と交換したいなんて記入してないはずですけど」
  こはるは怖くなってアプリを閉じた。
三千院こはる「あら、もうこんな時間。今日はもう寝ないと」
  次の日
  朝起きていつものように支度をしていると通知が届いていることに気づいた。
  この度は人生交換アプリをご利用頂き、ありがとうございます。
  こはる様宛にさやぽん様から人生交換の申請が届いております。
  
  申請を承認される場合は下記より承認ボタンを押して下さい。
  承認されない場合は拒否を押して下さい。
  
  承認された場合は相手にお知らせして改めて連絡させて頂きます。
三千院こはる「さやぽんさんがわたくしと人生交換をされたいということでよろしいのかしら?」
三千院こはる「でも、わたくしさやぽんさんのことよくご存知じゃありませんし、どうしましょう」
アヤ「こはるお嬢様。車の準備ができました」
三千院こはる「あっはい。今行きますわ」
  こはるは悩みながらも人生交換アプリのことは誰にも話さずに過ごした。
  
  学校から屋敷に戻りこはるは決意した。
三千院こはる「承認しましょう。せっかくさやぽんさんがわたくしを選んでくれたのですし」
三千院こはる「こんなチャンスもうないかもしれませんしね。しょーにん!」
  こはるは勇気を出して承認ボタンを押した。
三千院こはる「押してしまいましたわ」
  それからしばらくすると通知が届いた。
  
  人生交換アプリをご利用頂き、ありがとうございます。
  さやぽんさんも了承されたので、これより仮契約の手続きに移らせて頂きたいと思います。
  仮契約についての詳細は仮契約時にご説明させて頂きます。
  
  仮契約を行う場合は下記のURLを押して下さい。
  こはるは緊張しながらボタンを押した。すると、目の前が真っ暗になったと思った次の瞬間明かりがついた。

〇近未来の会議室
  こはるはの前には白いテーブルがあり、椅子に座らされていた。
  
  向かいには同じぐらいの年齢の女の子が座っていた。
カイ「はじめまして!この度は人生交換アプリをご利用頂きありがとうございます!」
マイ「ありがとうございます」
メイ「ます!」
  横を向くとそこには長身の男性と両脇に双子?の女の子が立っていた。
カイ「わたくしの名前はカイと申します。人生交換アプリの管理者といったところですかね」
カイ「こちらの二人は私の助手のマイとメイです。マイ、メイご挨拶を」
マイ「マイです」
メイ「メイです」
「よろしくお願いいたします」
カイ「マイ、メイお客様方に飲み物とお菓子を用意して差し上げて」
「はい、マスター」
  返事をするとマイ、メイの姿は消えた。
藤井さや「あっとゆうか、ここはどこで、あなた達は何者でもう何が何やら」
三千院こはる「まぁまぁどうしましょう」
「飲み物とお菓子をどうぞ」
  また目の前に突然現れて二人は飲み物とお菓子をさやとこはるの前に置いた。
藤井さや「あっありがとう」
三千院こはる「ありがとうございます」
三千院こはる「まぁわたくしの大好きなロイヤルミルクティとお菓子ですわ。どうして、おわかりになったのですか?」
カイ「それでは、改めてひとつずつ質問にお答えしましょう」
カイ「まず、ここはわたくしが造った異空間であり、お二人がいる世界とは違う場所になります」
藤井さや「えっじゃあ、私達は移動させられたの?」
カイ「いえ、身体は現実世界にあります。意識だけをこちらに転移させて頂きました。ですので現実世界のお二人は現在眠っている状態です」
カイ「もっともこの空間は時の干渉も切断しているので、現実世界では一切時間は経っていないので、ご心配なく」
カイ「そして、何故お二人が好きな物を聞いてもいないのにお出しできたかですが、これに関しても知っているからとしかお答えできません」
カイ「強いて言えば、わたくし達はあなた方人間と人生のやり取りをするわけですから」
カイ「あなた方の考えを理解している必要があるからってところですかね」
カイ「それでは、他に質問がなければ本題に入る前にお二人に簡単に自己紹介して頂いてもよろしいですか?」
藤井さや「えっ私達のことは知ってるんじゃないの?」
カイ「えぇ、わたくし達は。ですがあなたはこちらの方の本名をご存知ですか?確かお二人ともニックネームでご登録だったと思われますが」
藤井さや「あっそっか」
カイ「ちなみにですが、この場では嘘をつくことはできませんので、ご了承下さい」
藤井さや「じゃあ、私から名前は藤井さやです。年齢は17歳、住んでいる場所は埼玉県です」
藤井さや「人生を交換したいと思った理由は私、何もかもが普通でこのまま普通に人生が過ぎていくのが嫌でこのアプリに登録しました」
三千院こはる「それでは、わたくしも。名前は三千院こはるです。年齢は17歳。住所は東京都に住んでいます」
三千院こはる「こちらのアプリを使おうと思ったのは、生まれてからずっとわたくしは自分の意思で決めたことがなくて」
三千院こはる「どこの学校に通うのか全て決められたレールの上を進むだけ。そんな人生が嫌でこちらのアプリをダウンロードしました」
三千院こはる(わたくし、どうしてこんなに話してしまったのかしら?)
カイ「はい、ありがとうございました。お二人のことがわかったところで人生交換の仮契約に移りたいと思います」
カイ「お二人が望む人生、さやさんはお嬢様の女子高生、こはるさんは普通の女子高生の人生でお間違いありませんね」
「はい」
藤井さや「でも、これもどうしてわかったんですが?記入してないのに」
三千院こはる「確かに不思議ですわね」
カイ「こちらも知っているからとしかお答えできません」
カイ「わたくし達は人生に飽きてしまった方々に人生交換アプリのメールを送信しています」
カイ「そして、登録なさった時にお客様がお望みの人生を過ごしている他のお客様を検索一覧に表示させて頂きました」
カイ「その中で互いに利害が一致されている方のみが表示されるのです」
カイ「最終的に選ぶのはご自身と相手の方が合意する必要はありますけどね」
三千院こはる「そうだったのですね」
カイ「それではもう少し具体的な話をしましょう。人生を交換するとはどういうことなのか」
カイ「その言葉通りさやさんの今後の人生をこはるさんがこはるさんの人生をさやさんが過ごすのです」
カイ「身体ごと交換するのではなく、身体はそのままで心だけを入れ替えます」
「さや「心を?」 こはる「まぁ」」
カイ「さやさんの心をこはるさんに入れ替えこはるさんが今までに見てきたものをさやさんの中に入れます」
カイ「それによってさやさんはこはるさんと記憶の共有はできますが、経験はしていないので、知識があるだけの状態になります」
「?」
メイ「?」
マイ「あなたはいい加減理解しなさい」
カイ「例えば、テレビの旅行番組で旅先の景色等は共有できますが実際に行ったわけではないので、その場の雰囲気まではわかりませんよね」
藤井さや「なるほど、なんとなくわかりました」
カイ「今回の仮契約は1日だけお二人の心を入れ替えさせてもらいます」
カイ「つまり、1日だけさやさんはこはるさんにこはるさんはさやさんになってもらいます」
カイ「その上でもう一度考えてもらい本契約に移りたいと思います。仮契約時には記憶の共有はでません」
カイ「代わりにマイとメイをお側に遣わせます。マイとメイが記憶の役割になるので、それ以外にも困ったことがあればなんなく命令下さい」
マイ「お客様を全力でサポートいたします」
メイ「任せて下さい!メイは優秀ですよ!お姉ちゃんには負けません!」
マイ「はぁ、全くなんでも勝負事にしないの」
メイ「白黒はっきりしたほうが何事も楽しいです!それともお姉ちゃんは負けるのが怖いんですか?」
マイ「はぁ、好きに言ってなさい。・・・お姉ちゃんに勝つなんてプリンが空から降ってこない限り無理ですけどね」
メイ「プリン!どこですか!お姉ちゃんだけずるいですよ~」
カイ「コホン。それでは、仮契約に移りたいと思いますが、他に質問はありますか?」
藤井さや「いや、私は特にないかな~実際交換するかはその後に考えればいいし」
三千院こはる「わたくしもありません」
カイ「わかりました。それでは、これより心を入れ替えさせてもらいます。お二人は目が覚めた時点で入れ替わってますので」
カイ「お二人に伝えたいことがある場合はマイ、メイにお伝え頂ければ連絡をすることができます」
カイ「それでは、良い一日を」
  その言葉を聞いた途端また目の前が真っ暗になった。

〇女の子の一人部屋
さやママ「さや!早く起きないと遅刻するわよ」
藤井さや「こはる「さや?」」
  こはるは目を覚ますと知らない部屋にいた。
藤井さや「こはる「あらっここはどこでしょう?まだ寝てるのかしら。」」
メイ(ここは夢じゃないよ。藤井さやちゃんの部屋だよ)
藤井さや「こはる「えっ。あっごきげんよう。」」
メイ(ごきげんよう!)
藤井さや「えっと。確かメイさんでよろしかったかしら?」
メイ(そうだよ。メイでいいよ)
藤井さや「こはる「それでは、メイちゃんでよろしいでしょうか?」」
メイ(うん。あと、メイに話しかける時は声に出さなくても大丈夫だよ。頭のなかで考えるだけで会話できるから)
藤井さや(まぁ。すごいですわ)
メイ(でしょ~えへへ。あとメイの姿はこはるちゃん以外には見えてないからそこも気をつけてね)
藤井さや(分かりましたわ。それで、わたくしわこれからどうすれば、よいのでしょうか?)
メイ(さやちゃんはいつも顔洗ってご飯を食べて着替え学校に行くみたいだよ)
藤井さや「わかりましたわ」
メイ(頑張ってね~。何かわからないことがあったら何でも聞いてね)
藤井さや(ありがとうございます)
さやママ「さや~早くしないと遅刻するわよ~」
藤井さや「はっはーい。今行きますわ」
  メイに先導され洗面所へ行き顔を洗う。
藤井さや「タオルは用意されてないのでしょうか?」
メイ(その掛かってるやつを使うみたいだよ)
藤井さや「えっ。洗顔用のタオルはないのでしょうか?」
メイ(普通の家庭ではあまりないんじゃないかな?)
藤井さや「そうですのね」

〇綺麗なダイニング
  リビングに行き椅子に座ると朝食が用意されていた。
  ご飯、味噌汁、目玉焼き、漬物。
藤井さや「まぁ美味しそう。いただきます!」
藤井さや「あっ。これはまさかふりかけではありません?」
さやママ「はっ?あんたまだ寝ぼけてるの?口調もさっきから変だし。ふざけてないでさっさと食べて支度しなさい」
藤井さや「はっはい!」
藤井さや(わたくしの話し方変かしら?)
メイ(そうだね。普通の女の子の話し方じゃないね。もっと気楽にすればいいと思うよ)
藤井さや(わかりましたわ、じゃなくてわかりました)
藤井さや(それとこのふりかけはご飯にかければいいのよね?)
メイ(そうだよ〜)
藤井さや(どれにしましょう。悩みますわ)
  そんなこんなで朝食を食べ終えた。
藤井さや「ごちそうさまでした」
さやママ「はい。お粗末様」
藤井さや「・・・」
さやママ「何をゆっくりしてるの?」
藤井さや「食後のアールグレイはでませんの?」
さやママ「そんなもんあるわけないでしょ。ふざけてないで早く支度しなさい」
藤井さや「はっはい!」
  その後部屋に戻り制服に着替えていざ学校へ。
藤井さや「支度出来ました!」
さやママ「それじゃあ、行ってらっしゃい。気をつけるのよ!」
藤井さや「はい。行ってきます。えっと。お車は誰が出してくれますの?」
さやママ「車なんてだすわけないでしょ。あんた今日は変よ。熱でもあるんじゃない?」
藤井さや「わっわ。ごめんなさい。大丈夫です。行ってきます」
  メイに先導されながら歩いて学校に向かった

〇住宅街の道
藤井さや(こんなに歩くのは初めてかもしれません)
メイ(さやちゃんは毎日歩いて行ってるみたいだね)
藤井さや(はぁ~。すみません。少し休ませて下さい)
メイ(え~まだ少ししか歩いてないよ。早くしないと遅刻しちゃうよ?)
斉藤「あれ?藤井さん?どうしたの?大丈夫?」
藤井さや「はい。大丈夫です。えっと」
メイ(同じクラスの斉藤さん)
藤井さや「大丈夫ですよ。ありがとうございます。斉藤さん。少し疲れてしまっただけで、ご心配をおかけしてすみません」
斉藤「いや、それなら良かった。実は藤井さんとは一度話してみたかったんだ」
斉藤「でも、いつも一人で行動してたから一人が好きなのかな~って思って」
藤井さや(さやさんはいつも一人だったのでしょうか?)
メイ(そうみたいだね。必要最低限の会話しかしてないみたいだね)
藤井さや(そうですのね)
藤井さや「話しかけてくれて、ありがとうございます。良かったら一緒に学校に行きませんか?」
斉藤「うん。もちろん。それじゃ行こっか」
  こはるは斉藤さんと一緒に話しながら学校に向かった

〇教室
  学校に付き授業が始まった
先生「それでは、この問題解ける人?」
  シーン
先生「誰も解らないのか?」
藤井さや「はい!」
先生「おっ。藤井。それじゃあ、やってみてくれ」
藤井さや「出来ました」
先生「宜しい。席に戻っていいぞ」
藤井さや「ありがとうございます」
  休み時間
斉藤「藤井さん。さっきの問題よく出来たね」
藤井さや「たまたまですよ」
斉藤「この問題がちょっとわかんないんだけど、藤井さんわかる?」
藤井さや「これは、ここをこうするといいですよ」
斉藤「なるほど!ありがとう。藤井さん」
藤井さや「いえいえ、どういたしまして」
  昼休み
斉藤「藤井さん。一緒にお弁当食べない?」
藤井さや「もちろん。喜んで」
  机をくっつけて弁当箱を開いた
  
  弁当箱の中身はいろいろなおかずがはいっていて、こはるはとても新鮮に感じた
藤井さや(どれも美味しそうですわね。さやさんのお母様に感謝しなくては)
斉藤「さやさんのお弁当美味しそうだね」
藤井さや「そうですね」
藤井さや(わたくしのお弁当も確かにコックが、手間暇かけてつくってくれてるのはわかるのですが、さやさんのお弁当には敵いませんね)
斉藤「藤井さん、良かったら、帰りに学校の近くにできたクレープの屋台に行かない?」
藤井さや「クレープですか。私食べたことないんです」
斉藤「へ~。珍しいね。じゃあ一緒に行こうよ」
藤井さや「はい。わかりました」

〇公園のベンチ
  放課後、こはるは斉藤さんとクレープの屋台に来ていた。
藤井さや「まぁ、いろいろ種類があるんですね」
斉藤「どれにするか迷うよね」
メイ(美味しそう、じゅるり)
藤井さや(ふふっ。メイちゃんの分も買いますわ)
メイ(本当!じゃあね、じゃあね~。メイはプリンのやつがいい)
藤井さや(わかりましたわ)
藤井さや「えっと。プリンのやつとチョコバナナのやつをお願いします」
斉藤「えっ。2つも食べるの?」
藤井さや「いえ。えっと。お母さんにあげようと思って」
斉藤「あっそうなんだ。優しいんだね」
藤井さや「そんなことないですよ」
  クレープを食べ終えて別れ道に差し掛かった。
藤井さや「今日は誘ってくれてありがとうございました」
斉藤「こちらこそ、楽しかったよ。また明日ね」
藤井さや「はい。また明日」

〇綺麗なダイニング
藤井さや「ただいま帰りました」
さやママ「あら、お帰り」
藤井さや「お弁当ありがとうございました。とても美味しかったです」
さやママ「急にどうしたの?今日は朝から少し変よ?」
藤井さや「いえ、たまにはちゃんとお礼を言わないと駄目だなと思いまして。それより、今から台所使ってもいいですか?」
さやママ「いいけど。珍しいわね。さやが料理なんて。手伝おうか?」
藤井さや「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
  こはるはそう言うと台所に向かった。
メイ(何つくるの?)
藤井さや(はい。さやさんのお母様にアップルパイをつくろうと思いますわ)
メイ(アップルパイ!すごーい!)
藤井さや(わたくしが唯一つくれるお菓子ですわ)
メイ(どうして、アップルパイなの?)
藤井さや(わたくしの母がわたくしによく作ってくれたのがアップルパイだったんですの)
藤井さや(母はわたくしが小さい頃に亡くなってしまいましたけど、おかげでわたくしはお菓子が大好きになりましたの)
藤井さや(だから、将来はパティシエになれたらな~と夢みた時もありましたわね)
メイ(そっか〜)
藤井さや「出来ました」
さやママ「あら、アップルパイじゃない。あんたアップルパイなんていつの間に作れるようになったの?」
藤井さや「まぁまぁ、とにかく食べてみて下さい」
さやママ「うん。美味しい。上手にできてるよ。ありがとう、さや」

〇女の子の一人部屋
  その日の夜
メイ(人生交換の体験期間はそろそろ終わりだけど、大丈夫?もうやり残したことはない?)
藤井さや(うん。大丈夫。今日1日ありがとう)
メイ(それじゃあ、カイ様の元に移動するね)
  こはるはまた目の前が真っ暗になった。

〇近未来の会議室
カイ「お帰りなさい。お待ちしておりました」
カイ「お二人共お疲れ様でした。人生を交換するということがどういうことなのか、少しはご理解いただけたのではないでしょうか?」
カイ「マイとメイもご苦労だったね」
  マイとメイは静かにお辞儀をした。
カイ「お疲れのところ申し訳ありませんが、早速本題に移りたいと思います」
カイ「1日だけですが、人生交換を体験していただいて、改めて良く考えてもらい、人生交換をするのかどうかを決めて頂きます」
カイ「人生交換について改めてご説明させて頂きます。人生交換した場合二度と元の身体に戻ることはできません」
カイ「体験の時と違い記憶も交換するので、以前の記憶は一切なくなります」
カイ「そして、人生交換アプリに関する記憶も全て消させて頂きます。これに関しては人生を交換しようがしまいが同じですけどね」
藤井さや「なんとなくはそうかな~とは思った」
カイ「それでは、質問がなければ最後の手続きに移らせて頂きますが、よろしいですか?」
「さや「うん。」 こはる「はい。」」
カイ「それでは、最後の手続きに移りたいと思います」
  カイがそういうと目の前に黒と白のボタンが現れた。
カイ「人生交換をしたい場合は白のボタンをしたくない場合は黒のボタンを押して下さい」
カイ「二人共に白いボタンを押した場合は人生交換に同意したとみなし、人生交換を行います」
カイ「どちらか一人でも黒のボタンを押せば不成立となります」
カイ「それでは、ボタンを押して下さい」
  さやとこはるはほぼ同時にボタンを押した。
カイ「ふむ。なるほど、それでは、結果を発表させて頂きます」
「マイ「藤井さや様、黒。」 メイ「三千院こはる様、黒。」」
カイ「これにより今回の人生交換は不成立とさせて頂きます」
「さや「ふぅ。」 こはる「ドキドキしましたわ。」」
カイ「それでは、不成立となりましたので、お二人には明日からも今まで通りの生活に戻ります」
カイ「そして、先ほど言ったとおり人生交換アプリに関する記憶は消させて頂きます」
「さや「うん。わかりました。」 こはる「承知いたしましたわ。」」
カイ「最後にわたくしからひとつ質問してもよろしいですか?」
「さや「何?」 こはる「何でしょう?」」
カイ「人生交換をやめた理由をお聞かせください」
三千院こはる「今回、さやさんと入れ替わることができて改めてわたくしはなんて狭い世界で生きてきたのかと思いました」
三千院こはる「それと同時に改めてわたくは甘やかされて生きてきたんだなと思いました」
三千院こはる「何かをする前から諦めてしまっていましたが、これからは自分で選んで悔いなく行動していきたいと思います」
三千院こはる「そうでもしないと、恥ずかしくて生きて行けませんわ」
カイ「なるほど、わかりました」
カイ「貴重な意見を聞かせて頂きありがとうございました。それでは、そろそろ我々はおいとまさせて頂きます」
カイ「お二人の今後の人生に幸多からんことをお祈りしています。では」
「マイ「さようならです。」 メイ「うわぁぁぁん。バァイバァイです。」」
「さや「さようなら、ありがとう。」 こはる「さようならですわ。」」

〇綺麗な部屋
  目の前が真っ暗になり私は目が覚めた時にはいつもの自分の部屋にいた。
  
  昨日丸1日の記憶がさっぱりない。
三千院こはる「わたくしは昨日何をしていたのかしら?」
アヤ「こはるお嬢様。学園に行く準備が整いました」
三千院こはる「はい。わかりました」
  こはるは学園に向かいいつものように授業に取り組み1日が終わろうとしていた。

〇おしゃれな教室
先生「それでは三者面談を行いますので、順番に入ってきて下さい」
三千院こはる「失礼します」
先生「こはるさん。お父様は?」
三千院こはる「すみません、父は忙しくて来れないと」
こはるの父「すみません。遅くなりました」
三千院こはる「えっ。お父様?!どうして?」
こはるの父「何を驚いているんだ?こはるが留守電を残したんだろ?」
三千院こはる「えっ」
三千院こはる(全く覚えてませんわ)
先生「え~それでは、三者面談を始めさせて頂きます。よろしくお願いします」
先生「それでは、早速、進路についてですが、こはるさんはこのまま付属の大学に進学でよろしかったのですよね?」
こはるの父「えぇ。そうです」
三千院こはる「あっえっと」
  こはるはその時、会ったこともない筈の女の人の笑顔を思い出していた。
  
  アップルパイを食べて喜んでいる笑顔を。
三千院こはる「私やりたいことがあるんです!」
こはるの父「やりたいこと?」
三千院こはる「私、パティシエになりたいの!お母様が作ってくれたアップルパイがわたくしは大好き」
三千院こはる「お菓子には人を笑顔にする魔法がかけられていて、だから、わたくしも沢山の方々を笑顔にしたいとそう思ったの」
こはるの父「それが、こはるのやりたいことなんだな?」
三千院こはる「はい!」
こはるの父「わかった。こはるの好きなようにやってみなさい」
三千院こはる「よろしいのですか?」
こはるの父「私は今までろくに父親らしいことをしてやることができなかったからな。天国にいるあいつにも怒られてしまう」
こはるの父「こはるの好きなようにやってみなさい。但し、やるからには1番をとらなければならないよ?三千院家の名に恥じぬように」
三千院こはる「はい!わかりました」
こはるの父「それと、こはるが作ったアップルパイを私にも食べさせてくれないか?」
三千院こはる「えぇ。もちろんですわ」
  こうして、わたくしは夢への一歩を歩き始めました。

〇公園のベンチ
  それから1ヶ月後
  
  SNSで知り合った友達と遊ぶことになりました。
  名前は藤井さやさん。
  
  知り合って間もないのですが、すっかり意気投合しましたわ。
三千院こはる「さやさん。わたくし、アップルパイを作ってきたんですけど、一緒に食べません?」
藤井さや「こはるん、アップルパイなんてつくれるの!流石お嬢様!」
三千院こはる「もう、そんなこと言う人にはあげません!」
藤井さや「あ~ごめんごめん。こはる様お許しを~」
三千院こはる「ふふっ。よろしい!それじゃあ頂きましょうか」
藤井さや「もぐもぐ。うん。美味しい!」
三千院こはる「本当?ありがとう」
藤井さや「こはるんのお店ができたら絶対行くからね」
三千院こはる「約束ですわ」
  天国のお母様。わたくしは元気でやっております。
  お母様から頂いた人を笑顔にする魔法で皆さんを笑顔にしてみせますわ。
  だから、どうかわたくしの人生を見ていて下さい。
  お嬢様女子高生三千院こはるの場合end

次のエピソード:男の子になりたい女の子西野薫の場合

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