悲色の(脚本)
〇豪華な部屋
だいたい分かりました。
遺言状の開封時に諸々まとめて
お祖父ちゃんに見届けてもらうんですね。
それには最低でも一ヶ月はかかると。
それじゃ一ヶ月はタクミを
殺しちゃいけないんですか、そうですか。
マリエ「あんなのでも一応跡取り息子だし・・・」
社員はさっさとシメるのに息子には
情けをかけるんですか、そうですか。
マリエ「だから、ちょっと違うのよ 事情が・・・」
冴島「ユキノさん、どうか一ヶ月をこらえて 貰えないかと・・・」
嫌です、無理です、今すぐ離婚です。
お世話になりました。さようなら。
マリエ「ちょっと待って!」
マリエ「ユキノの性格上、そう言うのは分かってた ・・・ごめんね」
マリエ「だけど一ヶ月ちょうだい? お祖父様のお誕生会も遺言の開封も 全て終わってから・・・」
大事な大事な跡取り息子ちゃんの
タクミさんに全部やって貰って下さい。
お元気で。
あ、元気も何もない、死んでるんだった。
さようなら。
マリエ「・・・もう」
マリエ「もう!」
マリエ「待ってと言ってるでしょ!」
は? 逆ギレですか?
はしたないんじゃないですか?
マリエ「私、死んでるのよ?! 少しだけ、一つだけお願いきいてよ!」
だから一ヶ月も無理です、なんなら
今日帰って来た顔を見たら殺しそうです。
マリエ「お出かけして! 私と一緒に!」
・・・はあ?
マリエ「思い出が欲しい! 生まれてからずっと社長令嬢だったの、 途中からはずっと社長だったの!」
マリエ「わたし・・・ 私だって普通に友達と思い出が欲しいの! 普通に遊んでみたかったの!」
マリエ「だからユキノ、付き合いなさい!」
・・・意味分かんない。
マリエ「・・・そうよね」
マリエ「・・・でも」
マリエ「でも! 何でもいいから付き合いなさい! 聞いてくれなきゃ呪っちゃうんだから!」
マリエ「い、一ヶ月、付き合いなさい!」
冴島「一ヶ月は厳しいですが数日でしたら、 社葬の打ち合わせは私でも何とかなります」
冴島「通常業務もオンラインで何とか・・・ なので、ユキノさん?」
・・・はい。
冴島「怒りは抑えなくても構いません マリエさんに全部ぶつけてしまいましょう」
冴島「大丈夫です、もう亡くなっています 殴っても透けているので大丈夫ですから」
冴島「収まらない時は塩でも投げながら、 どうせなら一泊や二泊してきて下さい」
マリエ「お塩は・・・困るかも知れない・・・」
冴島「いかがですか?」
・・・塩、困るんですか?
マリエ「うん、なんとなく本能がダメって・・・」
・・・ふふっ、うふははっ、はい。
はい、そうですね、分かりました。
お出かけ、しましょうか?
マリエ「・・・う、うん!」
で、どこに行きたいんですか?
マリエ「冴島、車にパンフレットとか色々あるの! 取ってきてくれる?」
冴島「お車に? どこですか? 毎日掃除もしていますが・・・?」
マリエ「シートの隙間とか下とかアチコチに、 ああもう私も行った方が早いわね!」
マリエ「ユキノ、ちょっと待っててよ?! どこにも行かないでよ?! ちゃんとここに居てね?!」
はいはい、大丈夫ですよ。
・・・なんだこれ?
ま、いいか・・・。
・・・うん、やっぱり何回見ても
タクミの名前はリストから消えない。
相手は『黒崎サナ』、私が結婚するまで
居た秘書課の後輩だ。
ミスも素直に謝るし、スケジュール管理を
担当した人からの評判も良かった。
・・・良い後輩だと思ってたのにな。
・・・はあ、あーあ・・・。
マリエさん、デレたー!!(笑)
そしてユキノさんの見事なまでのキレっぷりが!ビジュアルが無いのに表情が見えるようでした!