ネクタイリング

サトJun(サトウ純子)

真と偽(脚本)

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〇モヤモヤ
  今でも、ネクタイリングをしている理由
  ”俺、今でも玲菜が一番好きだから”
  確かにあの時、涼太はそう言った。
  それなのに
  私が結婚することは
  なんとも思っていないのだろうか・・・

〇テラス席
岩本玲菜「今日は夜出かけて大丈夫なの?」
足立涼太「ああ。 美桜は娘を連れて実家に行っているから」
岩本玲菜「ふぅ〜ん」
足立涼太「なんだよ。いきなり愛想悪いなぁ」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「今日もネクタイリングしていないじゃない」
足立涼太「ネクタイしない日に、ネクタイリングするわけないだろー?」
足立涼太「仕事の時はしてるよ!今も」
足立涼太「ほら。今も持ってるし」
岩本玲菜「ど、ど、ど、どういうつもりよ!」
足立涼太「言ったじゃん。 今も玲菜が一番好きだって」
岩本玲菜「な、なによ。大好きな奥さまと娘さんに失礼でしょ!」
足立涼太「なんで? あいつらは家族じゃん」
岩本玲菜「はぁ?どういう意味?」
足立涼太「・・・」
足立涼太「美桜は、俺がいなくちゃダメなんだよ。 ずっと俺しか見ていなかったから」
足立涼太「あいつさぁ。親に勘当される事を覚悟で、俺のところに来たんだよ」
足立涼太「学生の頃から、ずっと親の顔色伺ってて。 なんでも言いなりでさ」
足立涼太「典型的な良い子ちゃん」
足立涼太「悪ガキの俺と付き合うのが、唯一の親への反抗だったみたいで」
足立涼太「まぁ、実際は勘当は免れたんだけどね」
足立涼太「未だに親御さんの言いなりだよ。 まぁ、一緒に住んでいないだけマシになったけどな」
足立涼太「俺に対してもそう。 従順すぎるくらい、なんでもやる」
足立涼太「代わりに、他人には厳しいけどな」
岩本玲菜「そ・・・そうなんだ」
足立涼太「それに、あいつ、癲癇持ちでさ。 いきなり倒れるところがあって」
足立涼太「なんか放っておけなくて」
岩本玲菜「・・・え?だから、頻繁に連絡をしている?」
岩本玲菜「『監視してる』は、私の勘違い?」
岩本玲菜「・・・いやいや、まだ、そうとは限らない」
足立涼太「面倒を見てあげる『家族』って言葉がしっくりくるかな」
足立涼太「こんな俺でも、一緒にいたいって言ってくれるし・・・」
足立涼太「ほら、俺、キレると態度悪くなるじゃん」
岩本玲菜「・・・確かに。あれは酷い」
足立涼太「えー、やっぱそう思うの? 後で謝っているじゃん!」
岩本玲菜「謝ればいいってもんじゃないのよ!」
岩本玲菜「でも・・・」
岩本玲菜「それをわかっていて、私も一緒にいたのよ。 美桜さんと一緒でしょ?」
岩本玲菜「なのに・・・ いきなり涼太が逃げ出したじゃない」
足立涼太「一緒じゃないよ。 玲菜は一人でも大丈夫じゃん! 強いし」
岩本玲菜「酷ーい!」
岩本玲菜「やっぱり、私がネクタイリングで首を絞めるのが怖かったんでしょ」
足立涼太「ああ、あれね? あれは想定内だよ」
岩本玲菜「・・・想定内?」
足立涼太「なんなら、付き合う前からヒールで踏まれてたからな」
岩本玲菜「え・・・そうだった?」
足立涼太「わかってて付き合ったんだから それこそ『逃げる』はないだろー」
岩本玲菜「じゃあ、どうしてあの時、 ”お前と付き合うのは無理だ”って・・・」
岩本玲菜「私の前から消えたの?」
足立涼太「・・・」
足立涼太「・・・あの時、俺は」
  ・・・え?
  どういうこと?

〇テーブル席
倉島昇「退院、おめでとうございまーす!」
河村杏奈「ありがとー! お腹すいたー!」
河村杏奈「今ならなんでも食べれそう!」
岩本玲菜「こらこら、食べ過ぎはダメよ!」
倉島昇「そおっすよ! お腹の赤ちゃんもビックリしちゃいますから」
河村杏奈「昇くん。 たまにはまともな事言うのねー」
岩本玲菜「ほんと、ほんとー」
倉島昇「なんすか。その感情が無い棒読みー」
河村杏奈「それよか玲菜、この間、足立さんの奥さんと会ったんでしょ?どうだったの?」
倉島昇「えええーっ!奥さんと!? 大丈夫でした?ヤバい人だったでしょ」
岩本玲菜「わりと普通の人っぽかったけど・・・?」
倉島昇「部長の事、大好き過ぎるから、元カノの存在なんか知ったら逆上するかと・・・」
岩本玲菜「結婚を祝ってくれたわよ? 『どうぞ末長くお幸せに』って」
岩本玲菜「今回、声掛けてくれたのも、結婚することの確認みたいな感じだったし」
岩本玲菜「むしろ、気遣ってくれていたような気がした。なんでだろう・・・」
倉島昇「なら良かった」
岩本玲菜「なに。大げさねー」
倉島昇「いやいや、部長の残業が続いた時に、いきなり会社に乗り込んできた事があったんですよ」
倉島昇「「親が本気出せば、こんなちっぽけな会社なんて一捻りですよ』って。薄笑いしながら」
倉島昇「あれはマジでヤバかった」
河村杏奈「・・・」
河村杏奈「私の勘なんだけど、それは「大好き過ぎるから」ではないわね」
河村杏奈「復讐よ」
「復讐!?」
河村杏奈「奥さんは、足立さんを憎んでいる気がする」
河村杏奈「相手の事が大好きだったら、大概、矛先は相手の女の方にも向くのよ!」
河村杏奈「なのに、奥さんは、玲菜には仕掛けて来なかった」
河村杏奈「なにか、裏があるような気がする」
河村杏奈「奥さんの目。あれは、壮大な仕返しを目論んでいる目だったわ」
河村杏奈「いつか、いつかきっと、絶対に 痛い目に合わせてやる・・・って目だった」
河村杏奈「・・・」
河村杏奈「なーんてね!」
河村杏奈「昼ドラだったら、そんな流れ?」
「テレビの見過ぎー」
  いや、案外。
  そうかもしれない。
河村杏奈「あ、ちょっとごめん!家からだ」
倉島昇「いやぁ、杏奈ちゃんが言うと冗談に聞こえないのはなんですかね?」
岩本玲菜「昼ドラの女王だからね!」
河村杏奈「旦那さんの居場所がわかったって。 私、今から行くわ」
倉島昇「杏奈ちゃん!なんか落ちたよ・・・え?」
河村杏奈「あ、ありがと」
岩本玲菜「ちょっ!走っちゃダメ!」
倉島昇「れ、玲菜さん! ちょっとヤバいっすよ!」
岩本玲菜「え?なにが?」
倉島昇「今、杏奈ちゃんが落としたの・・・」
倉島昇「バ、バタフライナイフ!でしたっ!」
岩本玲菜「え!? ええええっ!?」
岩本玲菜「昇くん!追いかけるわよ!」
倉島昇「はい!」

次のエピソード:ネクタイリング再び

コメント

  • 確かに嘘をつくつもりがなくても、真実じゃないこと、ありますね。それにしても、みんなハートが強いなー。

  • どのキャラクターのセリフも、真実かどうか疑いたくなったり、裏があると思ったりで、素直に読むことができないです、、、昇くん以外は。まさか彼が唯一のオアシスになろうとは。。。

  • 妊婦がバタフライナイフ…いやな絵です。
    リアルな修羅場ってそんなもんなのかもしれませんね。しかし胎教に悪い。

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