第1話 Restart(脚本)
〇一人部屋
夫「ま、まってくれ楓っ! 違うんだこれは!!」
佐藤楓(さとう かえで)「貴方がいけないのよ?」
佐藤楓(さとう かえで)「浮気なんてするから」
夫「――へっ?」
不倫相手「い、いや――っ!!」
佐藤楓(さとう かえで)「あんたもこうなりたくなかったら、 全裸で出て行きなさい」
佐藤楓(さとう かえで)「いいわね?」
不倫相手「は、はいっ!」
佐藤楓(さとう かえで)「もしもし、警察ですか?」
佐藤楓(さとう かえで)「夫を――殺しました」
〇黒背景
〇女の子の一人部屋
佐藤桜(さとう さくら)「んっ・・・・・・」
佐藤桜(さとう さくら)(あれ、なんかいつもの胸の圧迫感がない)
佐藤桜(さとう さくら)「すっごい軽い気分・・・・・・ てか、ここどこ?」
佐藤桜(さとう さくら)(え、桜の部屋? 何で私こんなところに──)
「おーい、桜~いつまで寝てるんだ? 早く起きないと遅刻するぞ~!」
佐藤桜(さとう さくら)(あの人の声・・・・・・なんでっ!?)
佐藤桜(さとう さくら)「確かにこの手で殺した・・・・・・おえっ」
佐藤桜(さとう さくら)「はあ、はあっ・・・・・・ それにあの後自首したハズじゃ?」
佐藤桜(さとう さくら)(夢? でも感触まで残ってるし)
佐藤桜(さとう さくら)(そもそも娘の部屋にいること自体おかしい)
佐藤桜(さとう さくら)「うそ、何これ!?」
「桜、聞いてるのか?」
「ドア開けるぞ?」
佐藤桜(さとう さくら)「あ、お父さんおはよ」
夫「なんだ起きてたのか」
佐藤桜(さとう さくら)「ん、今起きたとこ 昨日夜更かししちゃって・・・・・・」
夫「俺はもう会社に行くからな?」
佐藤桜(さとう さくら)「まって そういえばお母さんってどこ行ったの?」
夫「何を言ってるんだ?」
夫「楓――お前のお母さんは 5年前に病気で亡くなっただろ?」
佐藤桜(さとう さくら)「・・・・・・そうだったね まだちょっと寝ぼけてるみたい!」
佐藤桜(さとう さくら)「いってらっしゃい」
〇学校の廊下
佐藤桜(in 楓)(少し冷静になって考えてみると ここは私が元いた世界じゃなさそう?)
佐藤桜(in 楓)(自分でも変だと思うけど でも、そう考えないと何もかもがおかしい)
佐藤桜(in 楓)(殺したはずの夫が生きていて 私自身は5年前に病死?)
佐藤桜(in 楓)(でも私は娘の身体の中で生きている 桜の記憶? みたいなのがあって 考えて動いているのは私自身)
佐藤桜(in 楓)「じゃあ、本当の桜はどこにいったんだろう」
佐藤桜(in 楓)(少なくとも昨日までは桜がいた それはこの肉体自身が証明してるし、 LIMEのメッセージ履歴でも分かる)
佐藤桜(in 楓)(私が桜の中にいるなら 桜もきっと誰かの中にいる)
佐藤桜(in 楓)「まずはその子――”存在X”を探さなきゃ」
佐藤桜(in 楓)(大丈夫 桜の記憶があれば、上手く立ち回れるはず)
佐藤桜(in 楓)「私、じゃなくて・・・・・・ 桜がとくに仲の良い子はA子とB美か」
佐藤桜(in 楓)「先手打って今日の私は頭がおかしいことを公言しておこう」
佐藤桜(in 楓)「大丈夫、私ならできる!!」
〇教室
佐藤桜(in 楓)「おはよ! A子、B美~!」
佐藤桜(in 楓)「私今朝ベッドから落ちちゃってさ、それで頭打ったみたいだからちょっとおかしいかも!」
A子「あんたがおかしいのはいつもの事じゃん?」
B美「てか、普段自分の事ウチって言ってね?」
B美「ホントにおかしくなった? 大丈夫そ?」
佐藤桜(in 楓)「え~ひどっ!」
佐藤桜(in 楓)(しまった・・・・・・ 一人称まで意識してなかった ていうか桜、家では私って言ってるのに)
佐藤桜(in 楓)「あはは~そだね! 確かにウチって言ってた気がするっ!」
佐藤桜(in 楓)「あと、いつもよりちょっと頭が良くなってるかもしれないから、そこんとこもヨロシク!」
A子「大丈夫、その発言がすでに頭悪いから」
B美「うん、いつもの桜ってカンジ?」
佐藤桜(in 楓)「だよね~!」
佐藤桜(in 楓)(ん~少し不本意な気もするけど 結果的に信用されたしOKっぽい?)
佐藤桜(in 楓)(とりあえず第一関門突破!)
A子「そだ桜、物理のノート見せてくんない? 課題やってなくてさ~」
佐藤桜(in 楓)「え~A子いっつもそれじゃ~ん! 真面目にやんないと損するよ?」
B美「そう言って貸してくれるんでしょ? 神様、仏様、桜様~!」
佐藤桜(in 楓)「ほんと都合良いんだから・・・・・・」
田中先生「おーい、お前ら席に着けー?」
A子「げっ、なんで田中っちが!? 1限は国語のハズじゃ・・・・・・」
田中先生「堀北先生が体調不良でお休みになってな」
田中先生「急遽1限は物理になった 悪いが二限分付き合ってもらうぞ?」
B美「え、課題は・・・・・・?」
田中先生「当然提出してもらう 元々2限目に提出予定だったんだ 1限提出になったところで問題ないだろ?」
佐藤桜(in 楓)「だってさ、二人ともドンマイ!」
「そんな~!!」
〇学校の屋上
A子「田中っちてほんと堅物だよね~! 顔は良いのに超真面目ちゃんだから 彼女とかいなそう~」
B美「わかるっ~!」
B美「ちょっとくらい融通利かせてくれてもいいのに!」
佐藤桜(in 楓)「ふふっ、まだ根にもってるの?」
A子「桜はさあ、ぶっちゃけどう思ってるわけ?」
佐藤桜(in 楓)「どうって?」
A子「とぼけなくていいってば、田中先生のことぶっちゃけ狙ってるでしょ?」
佐藤桜(in 楓)「ええ~全然狙ってないよ!」
佐藤桜(in 楓)「いい先生だとは思うけど、私の好みとは全然違うし」
佐藤桜(in 楓)「それに・・・・・・」
B美「それに?」
佐藤桜(in 楓)「ウチには洋介君がいるからっ!」
B美「か~っ、これだからリア充は!!」
A子「あ~、あーしも彼氏ほしい~っ!」
佐藤桜(in 楓)「ふたりとも可愛いしすぐにできるよっ!」
B美「これが正妻の余裕ってやつですか~?」
佐藤桜(in 楓)「も~ちがうってば~」
佐藤桜(in 楓)(まあ、人生歴40年の私からしたら先生も桜の彼氏も子供にしか見えないけど)
佐藤桜(in 楓)「ごめん、洋介君から電話だ 二人で食べてて~!」
〇屋上の入口
佐藤桜(in 楓)「さて、この子が桜の彼氏君ね まったく、あの子も隅に置けないわ」
佐藤桜(in 楓)(娘の状況を一番知ってるのは恐らくこの子 なら、早めにコンタクトを取っておく必要がありそうね)
佐藤桜(in 楓)(放課後ならウチも空いてるよっと・・・・・・)
佐藤桜(in 楓)「うん、こんな感じで大丈夫かな?」
〇学園内のベンチ
佐藤桜(in 楓)「おまたせ、洋介君!」
佐藤桜(in 楓)「遅れてごめんね?」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「う、ううん! 僕も今来たところだからっ!」
佐藤桜(in 楓)(あれ、桜の記憶にあった印象と違うような・・・・・・)
佐藤桜(in 楓)(でも今時の子は草食系って聞くし、 こんなものなのかな?)
佐藤桜(in 楓)「それで、話ってなあに?」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「う、うん ちょっとまって心を落ち着かせるから」
佐藤桜(in 楓)(やっぱり、桜の記憶とかけ離れてる? 何かに怯えてる――いや戸惑ってるって感じかな?)
高橋洋介(たかはし ようすけ)「さ、桜ちゃんはさ、自分の大切な人を失ったことってある?」
佐藤桜(in 楓)「大切なひと?」
佐藤桜(in 楓)(桜にとっては洋介君だろうし、洋介君にとっては桜じゃないの?)
佐藤桜(in 楓)(でも、この問いかけからして別の人がいそうな感じだし・・・・・・)
佐藤桜(in 楓)「ないかな、だって目の前にいるもん! ウチにとっては洋介君が一番だよっ!」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「そそそうだよね!? あはは、何聞いてるんだろ僕・・・・・・」
佐藤桜(in 楓)「洋介君は違うの?」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「ち、違わないよ! でもなんか、僕おかしいんだ」
佐藤桜(in 楓)(もしかしてこの子の中に桜が入ってたり?)
佐藤桜(in 楓)(まさか、ね そんな簡単に存在Xが見つかるはずなんてないし・・・・・・)
高橋洋介(たかはし ようすけ)「変な夢を見たっていうか、上手く説明できないんだけど・・・・・・」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「今から言うことは二人だけの秘密にしてほしいんだ」
佐藤桜(in 楓)「う、うん」
佐藤桜(in 楓)(もしかして、本当に彼が存在Xなの? でもその場合、洋介君の中に桜がいて、本当の洋介君がいないことになる)
佐藤桜(in 楓)(つまり、洋介君が別の誰かに乗り移っている、あるいは死んだはずの私の肉体に・・・・・・?)
佐藤桜(in 楓)(――ダメだ、頭がこんがらがってきた)
佐藤桜(in 楓)「大丈夫だよ、ゆっくり話してみて 怖い夢でもみたの?」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「ごめんね、試すようなことして」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「単刀直入に聞くね?」
高橋洋介(たかはし ようすけ)「桜ちゃんは人を殺したこと、ある?」
不倫していた夫をいきなり殺してしまうというのも斬新でしたが、主人公自体がその魂を別人の中に見出したところもとても興味深かったです。果たして、存在X含め全解明できるのでしょうか、楽しみです。
おおお? この彼氏、ナニモノ?