白い月の光

ましまる

四重奏~quartette~(脚本)

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〇テーブル席
美由紀「ところで、アンタって、 普段はどんな媒体で音楽を聴いてるの? CD?それとも動画サイト?」
わたし「昔に買い込んだCDがメインですが、 動画サイトも結構視聴しますよ」
美由紀「You▽ube とかだと、 素人の自己顕示丸出しの残念な演奏も 多かったりしないの?」
わたし「確かに、そういう動画も多いのですが、 もう慣れました」
わたし「すでに昔に、ニ□動で とんでもない演奏に巡り合ってますから」
わたし「10分程のBoléroの演奏だったのですが、 あまりの下手さにショック続きで、 挙句、ずっと笑い続ける羽目になりました」
わたし「それで免疫がついたので、 そこいらの下手くそ演奏もどんと来いです」
  ※注意
  
  「死ぬほどヘタクソなボレロ」
  
  での検索はオススメしません。
美由紀「何それ、すっごい気になるんだけど! 帰ったら聞いてみようかな!」
わたし「いや、本当にやめておいたほうが・・・ 色々とダメージを受けますから」
  ※再注意
  
  聴くだけでHPを消耗するので、
  本当にやめておきましょう!
美由紀「だったら、やっぱり、 ちゃんとした動画をチョイスするか、 CDを聴くかしたほうが良さそうだね!」
美由紀「それか、演奏会にちゃんと足を運ぶかね」
わたし「でも、アマチュアの演奏会だったら、 結構ヤバイのにも遭遇することありますよ」
美由紀「えっ、どんなの? ちょっと聞いてみたい!」
わたし「「こぶしのきいたハイドン」とか 「脱糞レスピーギ」とか、 いろいろありましたよ・・・」
美由紀「「脱糞レスピーギ」ってどんなの? 曲中ずっとブリブリって感じ?」
わたし「正解です! 細かいパッセージを雑に奏でたせいで、 ブリブリして聴こえてくるんです!」
美由紀「うわー、臭ってきそう・・・」
わたし「しかも、ところどころで外した音が ピュッっと水のように入ってきて・・・」
美由紀「水要素が加わったら、それ下痢便でしょ!?」
お店のスタッフさん「お客様、こちら飲食店ですので・・・」
「あっ、ごめんなさーい」

〇テーブル席
美由紀「そんな演奏会の有様を聞くと、 ネタを求めて聴きに行くのも 何だか有りのような気がしてきた」
わたし「そうですね、ネタっぽくなるのも 生の演奏ならではの魅力ですね」
美由紀「よし、だったら私も近隣の演奏会に 行きまくってみようかな!?」
美由紀「音楽関係の新しい友人も増えそうだし・・」
わたし「確かに、近場だと観客がカブることが 多いので、いろんな人と顔馴染に なることはありますね」
わたし「何だかんだ、狭いコミュニティですから」
美由紀「だよねー」
わたし「ただ、それって、 コミュニティ内の嫌な人との遭遇率も 上がるってことですからね・・・」
美由紀「その口ぶりでは、 過去に何かイヤなことがあったっぽいね!?」
わたし「はい・・・ 以前、女友達と演奏会に行ったとき・・・」
わたし「終わって会場から出ようとすると 顔見知りの男性2人から 声を掛けられたんですよ」
わたし「2人とも弦楽器の何かの奏者で、、、 まあ、それはいいとして、 私のかなり苦手なタイプの人達で・・・」

〇ホール
観客「あっ、久しぶり~ やっぱ来てたんだー!」
観客「ちょうどいいや、これから時間ある? よかったら一緒に行かない?」
観客「何するかも伝えずに誘うなよ!」
観客「んなモン決まってるだろ! 「夜のカルテット(四重奏)」だよ!」
観客「はあ? 素直にセクステットしたいって言えや! 2人足りないけどさ」
  ※Sextet(セクステット): 六重奏
観客「セクステットだったら、もはや乱交だろ!?」
観客「カルテットだって、十分乱交だぞ!」
観客「それなら最初は、 デュオ(二重奏)×2で開始ね!」
観客「途中で、女の子2人と トリオ(三重奏)してもいい?」
観客「なら、あぶれた俺は!?」
観客「決まってるだろ、ソロ演奏だよ!」
観客「ソロだと、俺の自慢の”ビブラート”の 見せ場が無いだろ!」
  【ビブラート】
  音高を揺らす演奏方法。
  弦楽器では、弦の上の左指をぐりんぐりんと揺らす。
観客「お前のビブラートよりも、 俺の”トリル”のほうが高度なテクだぞ!」
観客「この ”悪魔のトリル” は、 無数の女の子をトリコにしてきたからな!」
  【トリル】
  奏でる音の2度上の音を左指で細かく入れる奏法。仮に左人差指で弦を押さえているとすれば、中指が高速連打の状態。
  『悪魔のトリル』
  タルティーニ(G.Tartini)作曲のヴァイオリンと通奏低音のソナタ。第3楽章のトリルが大変そう
観客「うるせー、タクト(指揮棒)は俺のほうが 立派だからな!」
観客「じゃあ、どっちのタクトがいいか、 女の子に決めてもらおうか!?」

〇テーブル席
美由紀「何それ、最悪すぎて腹立つ!」
わたし「こんなのを人前で堂々と言うって、 ありえないですよね」
美由紀「うん、アタシでも無理だね、こんな奴ら!」
美由紀「でもさー、 アンタのことだから、どーせまた 言い返しちゃったんでしょ?」
わたし「はい、お察しのとおり・・・」

〇ホール
わたし「カルテットしたいっておっしゃいますが、 貴方達のお持ちの木管はいずれも ”ピッコロ” ですよね!?」
わたし「重奏の編成として ピッコロ2本はあり得ないので せめて貴方達の1人でも”ファゴット”まで サイズ増大してからですね!」
  【木管楽器】
  オケでは主に、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットを使用。フルートが最高音で最小、順に大きくなる
  【ピッコロ】
  フルートの派生楽器。フルートよりさらに高音が求められる場面で使用される。サイズは木管楽器で一番小さい。
観客「確かにさ、 俺のはピッコロよりも小さいけど・・・」
観客「お前、サイズを比べたことあんのかよ!?」
わたし「しかも、お二方のピッコロの演奏時間も、 2人合わせても、ジョン・ケージより 短そうですね!」

〇テーブル席
美由紀「うわー、容赦なしー!」
わたし「ただ、実際に見た訳でもないのに、 ピッコロサイズとか、 ジョン・ケージより早いとか、 決めつけたのは反省してます・・・」
美由紀「そんなモン、見たくないからいいわよ!」
わたし「まぁ、反論してこなかったので、 事実だったんだなーと勝手に思ってますが」
  ジョン・ケージ(John Milton Cage Jr.)
  
  20世紀のアメリカの実験音楽家。代表作は『4分33秒』
わたし「という話をしていたら、 また店員さんに怒られそうですね・・・」
わたし「ちょっと慎んだほうがいいですかね?」
美由紀「いやいや、 全部「音楽用語」で話しているから、 店員さんは絶対に理解できないわよ!」
美由紀「その会話内容を理解できるのは、 ド変態かつ音楽関係者という、 本当に限られた一部の人間だけだから!」
美由紀「ところでさー、 アンタも、そのピッコロ早漏バカ2人も、 何でそこまで巧みに音楽とエロを 結びつけられるのよ!?」
美由紀「アンタはもう少し、 心清らかに音楽と向き合わないと!」
わたし「でも、神童・モーツァルトだって、 曲も私生活も下ネタまみれだったのですよ」
美由紀「えっ、アレって本当の話なの? 尻を舐めろとかいう曲を作ったのは・・・」
わたし「本当の話ですよ! 『Leck mich im Arsch』 (俺の尻を舐めろ) という曲が残ってます」
わたし「6声のカノン様式になっていて、 6人の男性が次々に「俺の尻を舐めろ」と 歌い続けてますから」
美由紀「うわー、想像したくない・・・」
わたし「そんなスカト■ジーな曲も数曲ありますが プライベートはもっとヤバイですよ!」
美由紀「えっ、もっとヤバイの!?」
わたし「はい、 現存する彼のラブレターの内容が 「ウ▼コ」の言葉だらけみたいで・・・」
わたし「しかも、大人になってもそんな内容が 続いていたようで・・・」
わたし「ということで、モーツァルトの スカト■趣味は確定事項みたいですよ」
美由紀「えー、信じられない・・・」
美由紀「あんな素敵な曲を書く人のラブレターが ウ▼コまみれなんて・・・」
お店のスタッフさん「お客様、繰り返しになりますが、 こちら飲食店ですので・・・」
「ごめんなさーい!!」

次のエピソード:恋の遁走曲

コメント

  • クラシックの話でここまで広げられるのが凄い!

    思わず死ぬほどヘタクソなボレロを検索してしまいました😆予想以上のものを拝見できましたw
    こぶしのきいたハイドンとか演歌っぽくて聴いてみたいw
    セクステットとか、ドビュッシーが好きな思春期の子が聞いたら真っ先に反応しそうですね!
    でも、クラシックの世界って意外にも下ネタあるあるがあるんですねw

  • 俺のタクトとか、ピッコロサイズとか(笑)
    多少吹奏楽経験あるので、楽器のサイズは想像できます。作中の変態とは、私のことダッ!?
    伏せ字がパワーアップしていて、もはや芸術の域ですね。なのにちゃんと教養もあって、さすがです。
    あと、店員さんに睨まれたから、もうこの場所は出禁ですかね。それともまだ居座るのか…?
    次回の攻防戦も期待です。

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