〇豪華なベッドルーム
玲未（ここ・・・七海の家？）
玲未（どうしてここに・・・？）
玲未（待って、あれ・・・ どういうこと？）
玲未（え？　これは・・・）
「あのね、 ななみのおしごとのやつ・・・」
玲未（この声・・・芽依？）

〇部屋の前
玲未「そーーー」
「芽依ちゃん、落ち着いてお話してくれる？」
「ななみのおしごとの・・・ ママのびょうきをなおすやつ・・・」
玲未（『ななみ』？　『ママ』？）
「ころんで・・・ ブチンってなっちゃって・・・ ぐすん」
玲未（泣いてる・・・何で？ どうなって・・・）

〇豪華なリビングダイニング
芽依「ブチンってね こわれちゃった・・・」
七海「つまり・・・ ”ママ”を繋いでたあの機械を 壊しちゃったのね」
芽依「うん・・・」
芽依「めい、わるいこ？」
七海「まあ──」
七海「──大丈夫。 そろそろいい頃合いだもの」
七海「ね、克彦さん♡」
克彦「ああ、そうだな・・・」

〇部屋の前
玲未「え？」
玲未（私が・・・ママ？）
玲未（でも、七海とパパが親密そうで── この世界は、一体・・・？）
七海「あら、玲未──」
七海「もう夢から醒めちゃったのね？」

〇豪華なリビングダイニング
玲未「夢・・・だったの？」
七海「ええ、夢よ。 玲未は夢を見ていたの──」
玲未「じゃあ何で！ 何で七海がここに！」
玲未「七海！ これは一体どういうことなの!? どうしてパパが七海と──・・・!!」
七海「良かったー 思い出してくれたんだ、私のこと」
七海「せっかく旦那の救命までしてあげたのに 忘れてたもんね 私のことなんてすーっかり」
七海「そりゃそうよ、 あの日 事故で旦那が倒れたっていうのに──」
七海「現実から逃げるように 黙って見てただけだものね、玲未は」
玲未「え・・・？」
七海「素敵な夢だったでしょう？ 私の作った“偽世界”」
玲未「は・・・？」
七海「最初に説明したはずだよ “偽世界”に行ける薬を飲んで──」
七海「現実から逃げ出したのは あなたの方でしょ？」
玲未「ちょ、パパ──」
克彦「気付かなかったのか？ あの仮面の男が僕だってこと」
玲未「嘘、何で笑って──」
克彦「こんなに近くにいたのに 声すら聞き分けられないなんて 僕のこと愛していたのかな？」
玲未「嘘でしょ・・・」
玲未（私が今まで見ていたのは 七海の作った世界で 私は、今まで・・・──）
七海「追い詰められたら逃げる 玲未はいつもそうやって生きてたから──」
七海「あの世界にいざなうのは簡単だった いつも“いい子”の皮を被ってるもんね」
七海「中学の時からずっとそう いい子で優等生なアナタは誰にでも 良い顔して幸せアピールして──」
七海「現実と向き合わずに逃げてばかり」
七海「だから夢の中でも追い込むのは とーっても簡単だったの 楽しかった〜♡」
七海「芽依ちゃんに助けてもらえて よかったね、玲未」
七海「本当はもう少し 悪夢を見ていて欲しかったんだけど──」
七海「起きちゃったならしょうがない・・・ ね、克彦さん♡」
克彦「七海先生・・・」
玲未「待ってよパパ どうして？ どうして七海なんかと──」
玲未「え？　障害が残って 怒りっぽくなったんじゃなかったの？ 私にはそういうふうに──・・・!?」
克彦「そういうふうにしか見えてなかったんだろ 全部嘘だよ 俺の言葉鵜呑みにして本当バカなやつ」
克彦「それ以前に自分の振る舞い考えたことあるのか？ 思いやりとか言って急に寄り添ったフリして──」
克彦「それまでお前がいかに俺を振り回して 俺を全部狂わせてくれたのか・・・」
克彦「優しい言葉かけないと不機嫌で 少しできてなければ当たり散らして・・・ 自分勝手で傲慢なキングだな」
克彦「愛？　信頼？ 笑わせるなよバーカ そんなもん最初から無かっただろ」
七海「信じる・・・ そんな生ぬるいこと まだしてたんだ、玲未」
玲未「何で？ どうして？ 私は、ただ──・・・」
七海「いつも逃げてばかりで 楽なように生きて 周りの迷惑顧みないで」
克彦「家事育児で王様気分で 俺を下僕くらいにしか思ってないんだろ？ そんなやつ──」
「サイテーだから」
玲未「なっ・・・！ 私はただ──」
七海「思いやって生きてる？ 笑わせないでよね」
克彦「一人ぼっちで大変？ 笑わせるなよ」
「俺（私）たちは今まで お前に振り回されて生きてきたんだよ！」
七海「だから懲らしめてあげたの」
克彦「お前が逃げられないようにね だってお前は──」