虹色の(脚本)
〇古風な和室(小物無し)
いやマジでウケるんですけど。
マリエ「こんな事が出来るなら もっと早く死んでおけば良かった!」
ホントですよー。
マリエ「『ホントですよ』は失礼じゃない?」
あ、ごめんなさい。
マリエ「すみません、でしょ? もう・・・ウフフ」
・・・うふふ。
冴島「・・・あの」
マリエ「なあに?」
冴島「・・・あ、あの」
マリエ「あ、そうそう、冴島には言っておかなきゃ いけない事があったわ」
冴島「は、はい・・・」
マリエ「私が死んだのは冴島のせいじゃない」
冴島「あ・・・!」
マリエ「たまたまあの時間、あの場所に たまたま通りがかった飲酒運転の車が たまたまそこに居た私に突っ込んだだけよ」
冴島「たっ、たま・・・」
マリエ「私があのお店に連れて行ってと頼んだのよ 冴島は送ってくれただけ」
マリエ「だから冴島のせいじゃないでしょ? もう何も言わせないわ」
マリエ「ね?」
冴島「・・・はい・・・ありがとう・・・ ございます・・・!」
マリエ「ウフフ、もう冴島ったら」
マリエ「あ、それまだパジャマにしてくれてたのね 似合うわ、ウフフ」
その浴衣、お義母さんからの
プレゼントか何かだったんですか?
冴島「はい、五十の誕生日に頂きま・・・」
マリエ「大切に着てくれてありがとう 選ぶのに一週間もかかったのよ、嬉しいわ」
マリエ「ウフフ」
うふふ。いいですね、なんかすっごく。
マリエ「さて、ウケるのも泣くのも終わりです!」
マリエ「本題に入るわ! わざわざ私が化けて出たからには、ね?」
冴島「・・・はい・・・!」
はーい!
マリエ「あら良いお返事だわ! じゃ、まず私の出来る事を伝えておくから 質問は後でまとめて答えます」
冴島「はい」
はーい!
マリエ「まず、私は物を触ったり出来ません 浮かせたり音を立てたり等も出来ません」
マリエ「なので書類やパソコンのチェックは アナタ達に頼みます」
マリエ「次に、私はアナタ達にしか見えません これは担当の方に聞いて来ましたし、 確認してきました」
マリエ「次に、こういう事は出来るので 使いたい時は呼びなさい」
マリエ「ウフフ」
ヤバ?! 楽しいかも!
それお祖父様のお誕生日会に使えません?
マリエ「あら! いいじゃないそれ!」
あ、採用ですか? やった!
マリエ「ユキノは行動も考え方も柔軟で助かるわ」
ホントそういうの生きてるうちに
言って欲しかったなー。
マリエ「やだー、初めての嫁イビリだったんだから 大目にみなさいよー」
性格わるっ、ウケる。
マリエ「本当よね、性格ワルッ でも楽しくって」
マリエ「ああ、こんな事してる場所じゃないわ」
マリエ「化けて出てきた理由よ」
冴島「はい」
はい?
マリエ「まず会社を『綺麗に』するわ」
はい?
マリエ「ユキノ、冴島を自分の秘書にすると辞令を 出しなさい」
マリエ「冴島、集めていた資料や諸々をユキノに 引き継がせなさい」
冴島「了解しました」
はい?
マリエ「概要は明日中に掴むこと 私の社葬は二週間後にセッティングして」
マリエ「ユキノと冴島はその準備にかかりっきりの フリをしなさい」
マリエ「そして今夜はもう寝なさい 明日から忙しくしてもらうわ」
マリエ「以上、解散!」
いやあ?! お義母さん?!
「マリエとお呼び!」
マリエ?! ウケるマリエ!
・・・あれ? 熱いとかじゃ無いんだね。
なんなのマジで。
なんなの? どこ行ったの?
あ、質問答えるとか言ってたくせに
消えちゃってるし!
冴島「とにかく指示通りにしましょう」
そうですかね、いや夢ですか?
え、サラッと信じるタイプですか?
冴島「まあ、信じるというか、 こうあって欲しかったというか、 何とも言えませんが・・・」
冴島「とにかく休みましょう、明日からは 本当に忙しく使われると思いますので」
・・・はい。
それは、なんとなく、はい。
冴島「ハア・・・失礼します」
はい、ありがとうございました、
おやすみなさーい。
・・・?
・・・いやいやいやいやいや、待って。
これ寝れるか?
化けで出てもなお嫁姑の刺々しい言葉の応酬、、、この2人にとっての”お約束”のコミュニケーション手段だったのでしょうね。微笑ましく見てしまいます。