夜色の(脚本)
〇古風な和室
冴島「お疲れ様でした、ユキノさん」
冴島「ご立派でした 布団もご用意してますから もう今夜はこちらで休まれて下さい」
冴島「タクミさんもまだ精進落としの席を 離れられそうにありません 今日はこちらに泊まって頂きます」
・・・はい、どうもです。
冴島「お義母様も誉めて下さっていると思います」
・・・あはは、それは無いですよ。
まだ社葬もあるし、タクミの社長就任も
ヒヤヒヤしてると思いますよ。
・・・あ、そうだ。
お義母さんは何の用事であんな所に
いたんですか?
仕事なら引き継ぎますし、
他の用事でも分かる事なら私がやります。
冴島「・・・万が一、お祖父様のお誕生日会の 準備が間に合わなかった時のために ケーキや花の当たりを付けておりました」
冴島「夜まで売れ残りがあるようなケーキ屋は 駄目だとか、花は、料理はと 実際に店舗を見て決める方でしたので」
全部任せるフリして私を最後まで
信用してなかった、って事ですか。
ウケますねー。
冴島「ユキノさんが困ったら 助け船を出せるようにですよ」
・・・はい?
冴島「『どうせあの嫁の事だからキチンと 用意してくるはず、これは味見ついでに 手土産にでもしてあげましょう』」
冴島「そうおっしゃって色々と買い込んで おりました」
冴島「全てユキノさんの家にお渡ししてあります 後でお召し上がりになって下さい」
冴島「・・・ユキノさん」
冴島「・・・ユキノさんの鞄はどちらですか? お風呂にしても何にしても必要でしょう 持って参ります」
・・・あ、いえ・・・そんなの自分で。
冴島「鏡や化粧落とし等が必要かと」
え、ああ、もう、はい、そうですね。
冴島さんってホント優秀な方で、
お気遣い紳士ですねー、あはは。
えっと、ここのお手伝いさんに、
なんか執事って感じの、イケメン君に、
はい、渡しましたね、荷物は。
冴島「ここでお待ち下さい」
あ、はい・・・。
・・・あ、はい・・・。
あ、顔ドロドロじゃん。
右ツケマどこよ、涙ぐらいで流れんなや。
冴島さんドン引きさせちゃったじゃん。
・・・。
・・・なにしてんの、お義母さん。
・・・なんなの、ホントに。
・・・黙って見てれば良かったじゃん。
私が失敗したらドヤ顔で文句でも何でも言えば良かったじゃん、なに無駄にウロウロしてんの、無駄な事すんなってお義母さんが
前に自分で言ってたよね、心配だったら素直に手伝ってよ、ツンデレ義母とかマジ無理、流行んないよ、ホント・・・ウケる・・・。
〇古風な和室
・・・寝れるワケ無いじゃん。
タクミはまだ宴会、いや多分もうずっと
会社の話になってるみたいだったし。
・・・気持ち悪かったな。
『次期社長』とか『次期社長夫人』とか。
挨拶ぐらいしかした事ない人達が
あんなに群がってくるとか・・・。
ああヤダヤダ。
なんか飲み物でも、トイレも行こっかな。
「早く寝なさい、お肌に悪いから」
・・・は?
「あら、間違えたわ」
は?!
「これも違う、結構難しいものね」
「ああこれよ、こういう風にしたかったの」
はあ?! こわっ?!
お義母さん「怖いとか言わないの、 ちゃんと死者を敬いなさい」
・・・?!
お義母さん「ウフフ、化けて出て来ちゃった」
・・・夢だ、疲れてるんだ、寝よう。
お義母さん「トイレはいいの? 漏らさないでよ? まあいいわ、おやすみなさい 冴島の所にでも行くわ」
待ってお義母さん?!
お義母さん「なにか用?」
用は無いけど、お義母さん?!
お義母さん「そうだけど、もうアナタの義母じゃないし 『マリエ』でいいわ」
ま、マリエ?!
マリエ「なあにユキノ?」
・・・うわ。
主人公とお義母さんの、刺々しい会話の応酬の中にある慈しみの情を感じられて感動です。ホロリときたところでのまさかの義母登場に衝撃です。。。。