悪役令嬢は平和に暮らしたいのに完璧執事が邪魔をする

イトウアユム

第五話「その女主人公、ゆるふわ肉食系女子」(脚本)

悪役令嬢は平和に暮らしたいのに完璧執事が邪魔をする

イトウアユム

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〇黒背景
  ローズさん達はいわゆる
  『ラビニアの取り巻き』だった。
  って言っても彼女たちは私を慕っている
  訳でも、私が作らせた訳でもない。

〇水玉
セバスチャン・ガーフィールド「こちらのブローチはラビニア様からの プレゼントです。友情の証として」
セクシーな令嬢「まあっ! なんて立派なアメジストの ブローチなんでしょうっ!」
セバスチャン・ガーフィールド「ラビニア様が是非こちらのパーティーに ご招待させて頂きたいと」
高貴な令嬢「ここって選ばれた貴族しか入れない 紹介制のティーサロンじゃないっ!? さすがはオータム家のご令嬢だわっ!」
セバスチャン・ガーフィールド「ラビニア様のお友達としてふさわしい 令嬢はあなたを置いて他にはおりません」
セバスチャン・ガーフィールド「それに・・・私はあなただからこそ、 お願いしたいのですよ、ローズ様」
ローズ・ルマンド「ああ・・・セバスチャン様。 お任せ下さいませっ!」
ローズ・ルマンド「そのお気持ちに是非とも 応えさせて頂きますわっ!」
  セバスはオータム家の権力と財力、
  己のイケメンっぷりをちらつかせ、
  ラビニアの取り巻きを作りあげていった。
セバスチャン・ガーフィールド「公爵令嬢たるもの、己を讃える取り巻きの 一つや二つ、持っていませんと箔が付きま せんからね」
セバスチャン・ガーフィールド「お嬢様に相応しいお友達は 私が厳選致しますので、ご心配なさらず」

〇豪華な部屋
ラビニア・オータム「あんたが厳選するから 心配なんだっつーのっ!」
ベッキー・セントジョン「――って直接言ってみたら? 執事さんに」
  放課後
  いつものように部室で腐っていた私に
  ベッキーは面白そうに問いかけた。
ラビニア・オータム「むりむりむりっ! そんなの自分から 虎のしっぽを踏みに行くようなものよ!」
ラビニア・オータム「前にも言ったでしょう? セバスはうちの家族の信頼がめちゃくちゃ 厚いって・・・まあ、それに」
ラビニア・オータム「ああ見えて良いところもあるのよね・・・ ちょっぴりだけど」
  私は昨夜の事を思い出していた。

〇城の客室
ラビニア・オータム(眠れない・・・)
  ベッドに横になってみたものの、
  眠気が全く襲ってこない。
  それどころか夜が更けるほどに目が冴え、
  胃がキリキリと痛んでくる。
ラビニア・オータム(気にしないようにはしてるんだけど・・・ 緊張してるのかな・・・ してるんだよね、やっぱ。だって・・・)
  明日はセーラ・スタンが
  学園に編入してくる。
  『ゲーム』ラブデイズの
  冒頭と同じように。
  ゲームの中の私は悪役令嬢だ。
  しかし今の私はその要因である
  【魔王因子】を発現させていない。
  容姿も頭脳も人並みで、
  『ラビニア・オータム』としての
  役割を放棄しているに等しい。
  しかし、何故か・・・
  私は周りからゲームのラビニアと同じく
  『悪役令嬢』として恐れられているのだ。
ラビニア・オータム(もしかしたら・・・シナリオ通りに物語を 進めようとしている『強制力』のような ものが発生しているのかも)
  この『強制力』がセーラが出現する
  事によって、どう変わるのか。
ラビニア・オータム(考え過ぎよ、ラビニア・・・でも)
  もしこの不安が的中したら、
  私は全てを失う事になる。
  家族も平和も・・・私自身の命も。
  それを想像するだけで・・・怖いのだ。
  コンコン
セバスチャン・ガーフィールド「・・・失礼します、ラビニア様。 まだ起きていらっしゃいますか?」
ラビニア・オータム「セバス? こんな深夜に部屋に来るなんて 珍しいわね、入ってらっしゃい」
セバスチャン・ガーフィールド「お嬢様こそ、このような時間まで 起きているのは珍しいですね」
ラビニア・オータム「ちょっと・・・眠れなくてね」
セバスチャン・ガーフィールド「やはり・・・日中、何やら思い悩んで いらっしゃったようでしたので」
ラビニア・オータム「えっ! 顔に出ちゃってた?」
セバスチャン・ガーフィールド「私はお嬢様専属の執事ですからね。 どんな隠し事も通用しませんよ」
  そう微笑むとセバスは私の前に
  銀のお盆を差し出した。
セバスチャン・ガーフィールド「よろしければ、どうぞ。 ホットミルクです。 気持ちが安らぎ、ぐっすり眠れますよ」
  セバスの用意してくれたホットミルクは
  温かくてほんのり甘くて・・・
  優しい味がした。

〇豪華な部屋
ベッキー・セントジョン「スパダリ執事さんは飴と鞭の使い方も 絶妙に上手いってコトか。 で、どうだった? 実物のセーラは?」
ラビニア・オータム「どうだったって言うか・・・」
  そう、セーラ・スタンは今朝、ゲーム通り無事にこの学園に編入してきたのだ。

〇ファンタジーの教室
セーラ・スタン「セーラ・スタンです。 どうぞよろしくお願いします」
  柔らかそうな藍色の髪に、
  優し気なエメラルドの瞳。
  ふわりと浮かべる、愛らしい微笑み。
  まるで綿菓子の様な美少女にクラス中の
  生徒達は一瞬でひきつけられ魅了された。
  ・・・もちろん、私も。
  しかし、すっかりセーラに
  見惚れていたのがいけなかった。
女子生徒「ねえ、ラビニア様ったら・・・ セーラさんの事を睨んでない?」
  は?
  見つめていただけで睨んでる事になるの?
男子生徒「セーラさんがあんまり可愛いから 虐めてやろうとか考えているんじゃない?」
女子生徒「元庶民と同じ空気を吸いたくないのかも。 ラビニア様プライド高いから」
  目付き悪いのは生まれつき!
  プライドが高いだなんて
  勝手に決めつけないでよねっ!
セーラ・スタン「ラビニアさん、とおっしゃるんですね。 よろしくお願いします」
ラビニア・オータム「あっ?! えっ! え、ええ・・・よ、よろしく・・・」
  引き攣った笑顔で差し出された手を
  取ろうとした時だ。
  プ~ン
ラビニア・オータム「セーラ、蚊がっ!」
  セーラの手に止まった蚊を
  一撃必殺で叩き落とす。
セーラ・スタン「ありがとうございます、ラビニア様」
ラビニア・オータム「あー、いっぱい血を吸っちゃってるわね ・・・はい、これでお拭きなさいな」
セーラ・スタン「えっ! 良いですよ、せっかくの綺麗な ハンカチが汚れちゃいます」
ラビニア・オータム「良いから気にしないで」
セーラ・スタン「・・・お優しいんですね、ラビニア様って」
ラビニア・オータム(あれ? 私、結構セーラに好感持ってもらってる?)
  セーラを蚊から守り、
  ハンカチを渡した良き令嬢。
  やっと風評被害から抜け出せるか?!
  なんて期待してたんだけど・・・
  世間はそう見てはくれなかった。
  何故か「握手する事を拒否し、セーラを
  血が出るまで叩いたラビニア様」という
  噂になってしまったのだから。

〇豪華な部屋
ラビニア・オータム「・・・風評被害って無くすべきよね」
ベッキー・セントジョン「は?」
ラビニア・オータム「なんでもない。セーラはゲームのまんまの 良い子そうな美少女だったよ」
ベッキー・セントジョン「ゲーム通りの良い子そうな美少女、ね。 だったら・・・ちょっと可哀そうかも」
  ベッキーは少し難しい表情を浮かべる。
ラビニア・オータム「へっ?」

〇ファンタジーの学園
  ベッキーに連れられて、
  学園の裏庭にやってきた。
ラビニア・オータム「どうしたのよ、 こんなところに連れて来て・・・」
ベッキー・セントジョン「しっ! ・・・きたっ! ラビニアも隠れて!」
  ベッキーは私の手を引っ張って
  草むらにしゃがみ込む。
セーラ・スタン「木々がたくさん生い茂って静かで・・・ 学園の中でもこんな場所があるんですね」
ジョシュ・ヘンリー・ウィザース「学園は騒がしいからね。 静かに過ごしたい時や考え事をしたい時に 僕は良くこの場所に来るんだ」
セーラ・スタン「きゃあっ、クモっ!」
  目の前の木にぶら下がるクモにセーラは
  悲鳴を上げジョシュ王子に抱き付く。
  しかし抱き着いた途端、
  顔を真っ赤にし慌てて飛びのくセーラ。
ラビニア・オータム「おお・・・これゲームで見たイベントだ」
セーラ・スタン「きゃっ、ご、ごめんなさいっ! 私、虫が苦手で・・・ 特にクモは見るのもダメなんですっ!」
ジョシュ・ヘンリー・ウィザース「ハハ、もう少し抱き付かれても 良かったんだけどな」
セーラ・スタン「か、からかわないでくださいっ! 失礼しますっ!」
ジョシュ・ヘンリー・ウィザース「あっ、セーラ待って・・・!」
  これセーラは怒ってるんじゃなくて、
  恥かしくて走り去っちゃうのよね。
  消えゆくセーラの背中を
  切なげに眺めるジョシュ王子。
  そうそう、でもジョシュ王子は怒らせて
  しまったと勘違いして落ち込んで・・・。
  その歯痒さにキュンとした話だ。
ラビニア・オータム「まさかリアルタイムで観れるなんて・・・ 眼福だわ」
ベッキー・セントジョン「じゃあ次行くよ」
ラビニア・オータム「次?」
ベッキー・セントジョン「こっちのイベントはメインシナリオの イベントでしょ」
ベッキー・セントジョン「・・・同じ時系列で、 有料ガチャのイベントもあったのよ」

〇華やかな広場
  セーラは生徒達の見守る中、
  中庭で1人の男子生徒と対峙していた。
  あの気だるそうな褐色の肌の男子生徒は
  確か・・・。
ラビニア・オータム「ロルフ先輩っ?!」
ベッキー・セントジョン「そう。攻略対象キャラの1人、 反抗期系不良キャラのロルフ・バリー」
ロルフ・バリー「へっ、女の分際で俺に楯突こうって 言うのかよ。面白え・・・」
  ロルフ先輩は魔法を発動させ、
  地中から何かを召喚させる。
  それはクモの大群だった。
  わらわらとセーラを襲うクモ。
ラビニア・オータム「セーラが危ないっ! 助けないと・・・っ!」
  大嫌いなクモに襲われるなんて、
  セーラ絶対絶命じゃないっ!
ベッキー・セントジョン「大丈夫、見てて」

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