ネクタイリング

サトJun(サトウ純子)

ある嵐の日(脚本)

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〇カラオケボックス(マイク等無し)
  とうとう
  とうとう、この日が
  やってきた
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「カラオケボックスだなんて、何年振りかしら・・・」
足立美桜「すみません。 こんなところにお呼び立てしまして」
  一昨日、玲菜のスマートフォンに、涼太の番号で電話がかかってきた。
  美桜からだった。
岩本玲菜「はじめまして。岩本と申します」
足立美桜「足立の妻です。 ・・・あ、すみません。少しお待ちいただけますか?」
「はい。私です。 はい、家にいます。工事も30分くらいで終わるそうです。 はい。わかりました」
足立美桜「失礼しました」
岩本玲菜「旦那さまからですか?」
足立美桜「はい」
足立美桜「す、すみません」
「はい。はい・・・大丈夫です。 ご心配でしたら、いつでも電話ください。 いつでも出れますから。 ご安心ください」
足立美桜「ふぅー」
岩本玲菜「家にいるか、の確認ですか?」
足立美桜「あ、いえ。 今、近所で配線関係の工事をしていて、家のネット環境に影響が出ていまして。 その確認です」
岩本玲菜「いや、間違いなく「家でじっとしているか」の確認でしょう」
岩本玲菜「私も付き合っている時は、よくそういうことやられたから、わかるわー」
足立美桜「・・・」
足立美桜「岩本・・・玲菜さん、ですよね。 前に、学校の前でもお会いしましたよね」
岩本玲菜「お気づきでしたか」
足立美桜「はい。昔、写真を見たことがありましたので」
岩本玲菜「では、わかっていてあの時、名乗られたのですね」
足立美桜「はい」
足立美桜「・・・」
足立美桜「ご結婚なさるそうで。 おめでとうございます」
岩本玲菜「ありがとうございます」
足立美桜「す、すみません」
「はい。え?位置情報が出ない? それは工事の影響もあるのではないかと。 すみません。機械に弱いので、私はわかりません」
岩本玲菜「あー、スマートフォンの位置情報見られてるのね。涼太ならやりかねない」
「はい。こうして電話にすぐに出れてますから、安心してください。 いつも通りです。 ・・・はい。そうです」
足立美桜「失礼しました」
足立美桜「・・・」
足立美桜「主人が時々話す「玲菜さん」がどんな方か、一度お会いしてみたくて・・・」
岩本玲菜「私のことを?」
足立美桜「あ・・・正確に言えば、いつも誰かと比べているような言い方をするので」
岩本玲菜「「おめー『は』そんなこともできねーのか」 ・・・とかです?」
足立美桜「しゅ、主人はそんな言い方はいたしません!」
岩本玲菜「図星じゃない」
足立美桜「あのネクタイリングも・・・」
岩本玲菜「ネクタイリング?」
足立美桜「あ・・・いえ」
足立美桜「失礼します」
「はい。 テレビの部屋にある書類ですか? はい。今、見ます」
足立美桜「すみません。 すぐ戻りますので!」
岩本玲菜「横のマンションに住んでいるのかしら。 こうなる事も想定内な動きね」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「涼太は本当に昔のままってことね」

〇テーブル席
  先日、涼太と偶然会った時──
岩本玲菜「奥さまに会ってみたいなー」
足立涼太「なんで?」
岩本玲菜「え、別に深い意味はないけど」
倉島昇「部長は結婚してからしばらくの間、海外に出向していたから。僕も奥さんを見たのは今年に入ってからなんすよー」
岩本玲菜「あー、だからしばらくの間、この辺で見かけなかったのかー」
倉島昇「いきなりの海外生活で友達も作れずに、引きこもってしまったんでしたよね?奥さん」
倉島昇「娘さんの小学校受験の時にこっちに来たから、ママ友とかともいないとか」
足立涼太「ま、まぁ、そのだな。 人のこと、あんまりペラペラしゃべるなよー」
倉島昇「あ、すんませーん!」
岩本玲菜「友達いないなら、なおさら! 私が友達になりましょうか?」
倉島昇「い、いや・・・それはやめたほうが・・・」
岩本玲菜「杏奈も一緒に友達になれば、ママネッワークにもすぐ入れるし」
倉島昇「あ、スルーされたー」
足立涼太「・・・あいつ、人見知りだからなぁ。 玲菜たちとは全くタイプが違うし。 一人が好きみたいだしなー」
岩本玲菜「ま、無理にとは言わないから、考えておいて!」
足立涼太「お、おう」
岩本玲菜「・・・」

〇シックなリビング
  そして、その夜
  わざと、涼太に電話をした。
「もしもし。玲菜? どうした?こんな時間に」
岩本玲菜「ああ、そうでしたね。 夜はご迷惑でしたね。すみません」
岩本玲菜「ちょっと思いついちゃって。 すぐお話ししたくなって」
「ん?なに?」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「文彦さんと私の結婚式、奥さまと二人で出席するっていうのはどうかと」
「えっ?二人で? 妻は二人とも知り合いではないし、いいよ」
岩本玲菜「文彦さんも賛成してくれているから、考えておいてね!」
  そして、この電話を切った後
  しばらくして
岩本玲菜「はい。もしもし」
「先ほど、20時48分に、この電話に1分58秒間、電話をかけてきた方でお間違いないですか?」
  やはり、かかってきた──
岩本玲菜「はい。私です。 遅くで失礼かと思いましたが、結婚式への招待のご連絡をなるべく早くしたかったので」
「ご結婚・・・ですか!?」
岩本玲菜「はい。来年6月に予定しています」
「・・・」
「・・・明後日、お時間空いてますか?」
  ──よし!捕まえた!

〇カラオケボックス(マイク等無し)
  私は美桜さんと会って
  何を確認したかったのだろう──
足立美桜「突然、失礼しました。 急用だったものですから」
岩本玲菜「・・・やっと信用してもらえました?」
足立美桜「な、何のことでしょう」
岩本玲菜「昔より、電話の頻度が酷くなっている気がする」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「6年前。彼はあなたを選んだ」
岩本玲菜「今更、どうして「私と比べる」 などと言うのです?」
足立美桜「それは・・・」
足立美桜「・・・」
足立美桜「6年前」
足立美桜「彼をそのように仕向けたのは」
足立美桜「私だからです」
  美桜さんが
  ──仕向けた?

次のエピソード:同士・同志

コメント

  • そうですね、6年前のことを確かめに次回見に行ってきます。ところで、時々ある録音の音のようなものは、何だろう?

  • 気になるところで終わってしまった! 複雑な感情が絡み合ってドロドロですね。さらに続きが気になります。

  • お、恐ろしい……。2人の歪んだ感情、歪な思惑が絡まり合っていて、真実が見えずにビクビクしながら読んでいました。誰が最もヤバイ存在なのか気になります!

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