マリア参上!!!(脚本)
〇校長室
校長「君には今日まで臨時の担任を受け持って頂きましたが、今日からこの方が5年C組の担任をしてくれます・・・」
校長「美濃又先生はこれから副担任としてクラスのサポートをお願いします・・・」
美濃又オサム「こ・・・この方が担任をなさるのですか? 随分、変わった格好をしておられるのですね・・・」
校長「格好なんかに騙されちゃいけませんよ・・・先生は輝かしい経歴の持ち主だ・・・」
美濃又オサム「はぁ・・・」
校長「では、美濃又君・・・クラスに案内してあげて下さい・・・」
美濃又オサム(大丈夫かなぁ~)
〇教室の教壇
美濃又オサム「はい、静かに・・・今日からこのクラスの担任になる新しい先生を紹介します・・・猿蜂猪先生です!!」
「下々の皆さ~ん・・・ごきげんよう~」
猿蜂猪マリア「あなた方は私と違って只の庶民です・・・」
猿蜂猪マリア「高貴な私とは全く真逆の虫けらです・・・」
猿蜂猪マリア「ですから・・・・・・・・・・・わかりますよね・・・」
猿蜂猪マリア「まずは私に敬意を表し平伏しなさい!!」
美濃又オサム(この人・・・何言っちゃってんの?)
山下太郎(うわぁ~パワハラだぁ~)
麻美順子(こ、怖いよぉ・・・)
伊藤晴文「先生の癖に何言っちゃってんの? 誰もそんな事する訳無いじゃん!!」
猿蜂猪マリア「それ・・・本気で言ってますの?」
猿蜂猪マリア「他の皆さんも同じ考えという事で宜しいかしら?」
猿蜂猪マリア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
猿蜂猪マリア「なんと嘆かわしい事でしょう・・・私、まともな教育すらも受けてこなかった貴方達が不憫でなりませんわ・・・」
猿蜂猪マリア「きっと貴方達は世の中の仕組みなど全く知らずに、これまで生きてきたのでしょうね・・・」
猿蜂猪マリア「いい歳をして・・・」
猿蜂猪マリア「恥を知りなさい!!」
(このままにしたら僕まで巻き込まれてしまう・・・)
美濃又オサム「ち、ちょっと先生・・・いったい何を仰られているのですか・・・?」
猿蜂猪マリア「美濃又・・・下賤な者の分際で私に意見を述べようというの!?」
美濃又オサム(えぇーーーーーーっ!? 僕の方が年上なのに、いきなり呼び捨てぇ ~!?)
美濃又オサム「せ、先生・・・教師がそんな発言をしたら色々と問題になりますよ・・・」
伊藤晴文「そうだぞ~明らかなパワーハラスメントじゃん!」
猿蜂猪マリア「まったく・・・あなた方ときたら・・・揃いも揃って・・・」
猿蜂猪マリア「貴族の私をどこまで失望させるのです!!」
美濃又オサム「き、貴族・・・!?」
伊藤晴文「貴族って・・・!?」
麻美順子(その格好って貴族のつもりだったの?)
山下太郎「あはははははは・・・先生、貴族って・・・ウケるぅ~はははははは」
猿蜂猪マリア「あなた方は私が誰だか全くわかって無いようね・・・」
猿蜂猪マリア「下々の皆さん宜しいですか~」
猿蜂猪マリア「私はサルバチーノ公爵家の皇女・・・」
猿蜂猪マリア「マリア・サルバチーノですわ!!」
美濃又オサム(ダ、ダメだこの人・・・完全にイカれてる・・・)
美濃又オサム「先生・・・ちょっと宜しいですか・・・」
猿蜂猪マリア「何なの?・・・美濃又・・・私の名を聴いてもまだ意見するつもり!?」
美濃又オサム「す、すみません・・・ちょっとだけ御足労願います・・・」
猿蜂猪マリア「仕方がないわね・・・宜しいですわ・・・」
美濃又オサム「皆は少し自習してて下さい・・・」
伊藤晴文「何か頭の可笑しい先生が来たなぁ~」
麻美順子「貴族ってラノベによくある転生者のつもりかしら?」
山下太郎「それならチートスキルで世界最強じゃね?」
〇学校の廊下
美濃又オサム「先生・・・マズいですよ・・・あんな発言をしたら直ぐに保護者達から苦情が来てしまいます」
猿蜂猪マリア「何を恐れているのですか・・・」
猿蜂猪マリア「私は下々の上に立つ貴族ですのよ・・・」
美濃又オサム(また、貴族って・・・そう言う役作りでもしてるのか?)
美濃又オサム(しかし・・・何だ・・・さっきまでと違った落ち着き払った、この立ち振る舞いは・・・)
美濃又オサム(貴族と言われても違和感ない程に優雅で気品に満ち溢れている・・・)
猿蜂猪マリア「美濃又・・・良くお聴きなさい・・・」
猿蜂猪マリア「権力に胡坐を掻いた他の貴族たちと違ってサルバチーノ公爵家は民の事を大切に考えています・・・」
猿蜂猪マリア「下々の者たちが安心して幸せに暮らしていけるのが貴族の務め・・・」
猿蜂猪マリア「私は生徒たちを権力を使ってねじ伏せようなどとは全く思っていませんのよ・・・」
美濃又オサム(ま、眩しい・・・)
美濃又オサム(だ、駄目だ・・・溢れる気品と気高い志に心が引き込まれてしまう・・・)
美濃又オサム「はっ!?・・・し・・・しかし先生・・・」
猿蜂猪マリア「ところで美濃又・・・」
猿蜂猪マリア「あれはいったい何かしら!?」
美濃又オサム「えっ?・・・何だあいつら?」
山下太郎「アイツら・・・学校まで押しかけてきやがった・・・」
猿蜂猪マリア「行くわよ・・・美濃又・・・」
〇大きな木のある校舎
山下太郎「おまえら・・・学校まで押しかけてきやがって・・・どういうつもりだよ!?」
借金取り康「何だ・・・その言いぐさは?」
借金取り康「君のお母さんがお金を返さないから、オジサン達がわざわざ君の学校まで来たんじゃないか?」
チンピラ竜二「小僧・・・兄貴に向かって生意気な口きいてると叩き潰すぞ?」
山下太郎「僕の所に来たって、お金なんか返せるわけ無いだろ!?」
借金取り康「別にオジサン達だって君からお金を取ろうなんて思っちゃいないさ・・・」
借金取り康「こんな所にまで取り立てが来たなんて話が伝われば、お母さんが困るだろうと思ってね・・・」
山下太郎「嫌がらせか?」
借金取り康「君からもお母さんを説得してくれよ・・・」
借金取り康「オジサン達が紹介したお店で働いたら、借りたお金なんてスグに返せるんだから・・・」
チンピラ竜二「ひっひぃひぃひぃ・・・」
山下太郎「あんな如何わしい店で母さんを働かせる訳いかないよ!!」
借金取り康「それじゃあ、お前の肝臓でも売るか!? おいこら~!!」
「随分、物騒な話をしていらっしゃるのね?」
借金取り康「だ、誰だ・・・?」
猿蜂猪マリア「聞き捨てなりませんわ・・・」
借金取り康「はぁ~何だぁ~お前は?」
借金取り康「そんな派手なドレスを着た素っ頓狂な格好しやがって・・・」
借金取り康「何処かのお姫様にでもなったつもりか~?」
猿蜂猪マリア「お姫様・・・確かにそうね・・・」
猿蜂猪マリア「でも、今はこの学校の先生で、この子の担任でしてよ・・・」
借金取り康「あんた先生かい?」
借金取り康「だったらこのガキに、人様に借りたお金は返さなきゃいけないって事をちゃんと教えなきゃ・・・」
借金取り康「こいつの母親に用立ててやった金がいつまで経っても返して貰えないんだ・・・」
借金取り康「それとも・・・あんたが代わりに返してくれるのかい?だったら良い店紹介するよ・・・」
借金取り康「結構、良い身体してるし・・・あんただったら直ぐに返せるよ・・・」
猿蜂猪マリア「はぁ~・・・まったく・・・」
猿蜂猪マリア「呆れてものも言えませんわね・・・」
猿蜂猪マリア「いい歳をした大の大人が・・・こんな子供に嫌がらせする為に学校まで来るだなんて・・・」
猿蜂猪マリア「貴方達は何を学んできたのでしょうか・・・?私だったら恥ずかしくて人前に出られませんわ・・・」
猿蜂猪マリア「恥を知りなさい!!」
チンピラ竜二「貴様・・・兄貴に向かって何て口の聴き方を・・・」
チンピラ竜二「このアマ~只じゃおかねぇぞ!!」
猿蜂猪マリア「只じゃおかないってどうするつもりかしら?」
チンピラ竜二(何だ・・・こいつの・・・堂々とした気品漂う風格は・・・?)
チンピラ竜二(何故だか恐れ多くて歯向かう事なんて出来やしねぇ・・・)
チンピラ竜二(だ・・・駄目だ・・・眩しすぎて引き込まれそうだ・・・)
借金取り康「おい!!姉ちゃん!!」
借金取り康「こっちだって慈善事業で金貸しやってる訳じゃないんだ!!」
借金取り康「貸した金、返せと言って何が悪いんだよ!?おいこら~!!」
美濃又オサム(何か・・・凄い事になってる・・・相手ヤクザでしょ・・・どうすんのこれ?)
猿蜂猪マリア「それ・・・本気で言ってますの?」
猿蜂猪マリア「あなた方も、それで稼いでいるなら商売人ですよね・・・?」
猿蜂猪マリア「商売人なら、お金を稼ぐことは前提だとしても・・・世の中に貢献しなくてはいけません・・・」
猿蜂猪マリア「学校まで来て駄々をこねる子供の様に言いがかりをつける貴方達は・・・果たして商売人と呼べるのでしょうか?」
借金取り康「黙って聴いてりゃ・・・何だとぉー!!」
借金取り康(こんな時に組長から?)
借金取り康「は、はい・・・康です・・・」
組長「お・・・お前・・・今、何をしてるんだ?」
借金取り康「何って・・・取り立てに来て追い込みかけてるだけですが・・・」
組長「いったい・・・誰を相手にしてるんだと聞いている・・・」
借金取り康「変なドレスを着た教師です・・・」
組長「お前・・・とんでもねぇモノを相手にしてくれたなぁ・・・」
借金取り康「いったい、どういう事ですか!?」
組長「うちの組はもう終わった・・・」
組長「お前は決して手を出してはならないモノに手を出してしまったんだよ・・・」
借金取り康「く、組長・・・何を言ってるのか良くわかりません?」
組長「とにかく・・・うちの組はある組織に丸ごと吸収された・・・」
借金取り康「組織に吸収?」
借金取り康(うちの組を吸収するなんてどんな組織だ?)
借金取り康「ど、どこに吸収されたんです?陣龍組ですか?」
組長「や、辞めろ・・・そんなの口にしたら俺が消されてしまう・・・」
借金取り康(組長をここまでビビらせるなんて・・・いったい何があったんだ?)
組長「直ぐに撤収するんだ・・・良いな?」
借金取り康「は、はい・・・クソっ!!」
借金取り康「おい、竜二!!帰るぞ・・・」
チンピラ竜二「えっ!?このままで良いんですか?」
借金取り康「良いから行くぞ!!」
猿蜂猪マリア「お待ちなさい・・・」
借金取り康(何だ・・・?)
猿蜂猪マリア「あなた方に少し良い話を聞かせましょう・・・」
猿蜂猪マリア「人の道を外れた者もこの世に生を受けた以上、社会の住民です・・・」
猿蜂猪マリア「やり直す気持ちがあるのであれば、私は何時でも手を差し伸べる事でしょう・・・」
猿蜂猪マリア「ですが己の過ちすら認めず、反省すらしない者には容赦はしません!!」
猿蜂猪マリア「あなた方のこれからの行いに期待してますよ・・・」
借金取り康(何を言ってるんだ?こいつ・・・)
借金取り康(し、しかし・・・何故こんなに心が揺れるんだ・・・)
借金取り康「自分の今までの行いが恥ずかしくって堪らねぇ~」
借金取り康「い、行くぞ・・・」
チンピラ竜二「へ、へい・・・」
山下太郎(何か・・・帰っちゃった・・・もしかして、これがチート?)
美濃又オサム(何なんだ・・・この人・・・?)
猿蜂猪マリア「雅・・・そこに居るのでしょう?出てきなさい・・・」
雅「お呼びでしょうか?お嬢様・・・」
美濃又オサム(いきなり誰?この人・・・どっから出てきたの?)
猿蜂猪マリア「相変わらず行動が早いのね・・・手を打ってくれたのでしょう?」
雅「滅相もございません・・・お役に立てて光栄にございます・・・」
猿蜂猪マリア「いつも陰から支えてくれる其方を誇りに思いますわ・・・」
雅「お嬢様を陰で支えるのが私の務め・・・私はこれにて・・・」
猿蜂猪マリア「さあ、教室に戻りますわよ・・・」
美濃又オサム「ま、眩しい・・・」
山下太郎「眩しい・・・」
〇教室の教壇
猿蜂猪マリア「皆さ~ん・・・改めましてごきげんよう・・・」
猿蜂猪マリア「私はサルバチーノ公爵家の皇女・・・」
猿蜂猪マリア「マリア・サルバチーノです!!」
貴族教師マリア・・・
その実態が何者なのか知る者はまだ誰もいない・・・
END
貴族×教師って斬新でいいですね。
子供達の容赦ないツッコミにも動揺しない、さらにヤクザにも堂々と振る舞うマリアは魅力的で中々想像力を掻き立てられます。とても面白かったです👍