再編のおままごと

戸羽らい

#2 既成事実(脚本)

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戸羽らい

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〇屋上の隅
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「いた・・・」

〇商業ビル

〇カウンター席
加藤輝明「────」
山吹真美「────」
加藤輝明「────」

〇屋上の隅
加藤沙夜「・・・」

〇カウンター席
加藤輝明「全く・・・あいつの妄想には付き合ってられないよ」
山吹真美「でも、奥さんの気持ちも分かりますよ」
山吹真美「男女が連絡を取り合ってるだけで、何かあるんじゃないかと疑ってしまうものです」
加藤輝明「ただの仕事付き合いなのによ」
加藤輝明「浮気がどうのよりも、勝手にスマホをチェックしたり、人のプライベートに土足で踏み込んでくるのが許せないわ」
山吹真美「プライベートって・・・夫婦ですよね?」
加藤輝明「たとえ夫婦であっても最低限のプライベートは必要だろ」
山吹真美「まあ・・・そうかもしれませんね」
山吹真美「加藤さんは束縛されるのが嫌いなんですね」
加藤輝明「好きなやついるのかよ」
山吹真美「いるんじゃないですか? 探せば」
山吹真美「ところで、本当に離婚するんですか?」
加藤輝明「あいつ次第だな。態度を改めてくれるなら許してやらなくもない」
山吹真美「結婚生活には満足してるんですね」
加藤輝明「まあ、多少はな」
加藤輝明「それに、子供もいるし・・・」
山吹真美「そういえば、お子さんいくつになったんですか?」
加藤輝明「えーと・・・いくつだっけ」
山吹真美「えっ。お子さんの年齢覚えてないんですか?」
加藤輝明「いくつだったっけな。9歳か10歳だった気がするけど・・・」

〇屋上の隅
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「年齢なんて、どうでもいい」
加藤沙夜「そんな小さいことを気にするようなお父さんじゃないんだよ」

〇カウンター席
加藤輝明「まあ・・・」
加藤輝明「いくつか忘れたけど、可愛い娘だよ」
山吹真美「そうですか」
山吹真美「それにしても、私と加藤さんが不倫って、面白いこと言いますね、奥さん」
加藤輝明「何も面白くねー」
山吹真美「だって、半分当たってるじゃないですか」
加藤輝明「・・・?」
山吹真美「あの日の夜のこと、忘れたんですか?」
加藤輝明「・・・忘れた」
山吹真美「あはっ。忘れちゃいましたか」
山吹真美「いいですよ、忘れて」
山吹真美「私は奥さんと違って心が広いんです」
山吹真美「たかが一度寝たくらいで彼女ヅラはしませんよ」
加藤輝明「・・・」
山吹真美「たまたま、私と加藤さんの人生が交差する瞬間があった」
山吹真美「その瞬間以外は他人。いえ、単なる仕事仲間です」
加藤輝明「・・・」
加藤輝明「お前みたいな女と結婚したかったな」
山吹真美「ふふっ。私みたいに割り切れる女、早々いませんよ」

〇屋上の隅
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「そんな・・・」
ジェシカ「きゃははっ」
加藤沙夜「ジェシカ・・・またアンタ・・・」
ジェシカ「だってェ、こっちの方が面白いじゃん」
ジェシカ「不倫を不倫と思わない男、輝明! そして、そんな彼と同じ価値観を共有できる女、真美!」
ジェシカ「二人は良き理解者として、世間に理解されない行為──不貞を重ねるのであった!」
加藤沙夜「そんなことしたらお母さんが・・・」
ジェシカ「嫉妬の炎に包まれるねェ〜」
ジェシカ「捨てられたと思って、また刺し殺しちゃうかもねェ〜」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「・・・させない。なかったことにする」
ジェシカ「無理だよ〜ん。もう事実として確定しちゃってるもん」
加藤沙夜「・・・くっ・・・」
ジェシカ「きゃはは〜。あたしは昼ドラみたいなドロドロが見たいのだ〜」
加藤沙夜「余計なことを・・・」

〇カウンター席
山吹真美「加藤さん、今晩空いてますか?」
山吹真美「もっと加藤さんの話聞きたいです」
加藤輝明「おう。こんな話できるのお前くらいだもんな」
加藤輝明「あいつには残業だって伝えるよ」
山吹真美「今日は新しいお店開拓しましょうよ」
山吹真美「良さげなとこ、探して予約しておきますね」
加藤輝明「助かる」

〇屋上の隅

〇土手

〇住宅街の公園
加藤沙夜「・・・」
人形「キャハハ!」
人形「鬼が来たぞー! 隠れろー!」
加藤沙夜「その気色の悪い腹話術、やめてもらえる?」
人形「気色悪いだとー! 失礼な!」
人形「5年生にもなっておままごとしてるお前の方が気色悪いぜ!」
人形「あぶっ・・・」
加藤沙夜「アンタだってお人形さん遊びしてるでしょ」
ジェシカ「おままごとも、お人形さん遊びも、本質的には変わらないと思わない?」
ジェシカ「演じるか、操るかの違いでしかない」
加藤沙夜「私は・・・演じてない。家族として、自分の役割を果たしてるだけ」
ジェシカ「ごっこ遊びしてるだけ? きゃはは!」
加藤沙夜「ッ・・・」
ジェシカ「それってェ、意味あるぅ?」
加藤沙夜「あるに決まってる・・・」
加藤沙夜「私がいなかったら・・・家族は・・・」
ジェシカ「ばらばらになっちゃう?」
ジェシカ「きゃはは! ばらばらの方が幸せかもよ!」
加藤沙夜「そんなことない!」
ジェシカ「無理にくっつけるよりはさ、他のお人形さんたちと」
加藤沙夜「お父さんとお母さんは人形じゃない!」
ジェシカ「人形だよ」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「・・・孤独なアンタにはそう見えるのかもね」
加藤沙夜「ずっと一人遊びしてる、孤独なアンタには」
ジェシカ「・・・」
ジェシカ「きゃはは! だってェ、一人遊び楽しいんだもん!」
ジェシカ「沙夜ちゃんも一緒にやろーよー!」
加藤沙夜「・・・」
ジェシカ「あっ、それだと一人遊びじゃなくなっちゃう」
ジェシカ「ぎゃははっ!」
加藤沙夜「・・・これ以上、余計なことしないでよね」
ジェシカ「・・・」
ジェシカ「・・・ねぇ」
加藤沙夜「何?」
ジェシカ「あたしと沙夜ちゃんって、友達?」
加藤沙夜「なわけないでしょ」
加藤沙夜「アンタと友達になれるやつなんて、誰もいない」
ジェシカ「・・・」
ジェシカ「きゃはっ!」
ジェシカ「ぎゃはは・・・きゃはっ!」

〇二階建てアパート

〇アパートのダイニング
加藤沙夜「ただいま〜」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「・・・お母さん?」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「お母さ〜ん!」
加藤麻里奈「はっ・・・」
加藤麻里奈「ごめん沙夜、帰ったのね。お母さんちょっと考えごとしてて・・・」
加藤沙夜「ただいま」
加藤麻里奈「おかえりなさい」
加藤沙夜「ねぇねぇ、今日学校でね〜」
加藤麻里奈「あら」
加藤沙夜「────」
加藤麻里奈「────」
加藤沙夜「────」
加藤麻里奈「────」

〇アパートのダイニング
加藤沙夜「それでね、友香ちゃんったら「今の私ならベルリンの壁すら壊せる」って男子たちに話しかけてさ」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「でさ、今度女子と男子でお泊まり会することになったんだけど、可愛い部屋着が欲しいから」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「お母さんと一緒にデパート行きたいな。それでね、お母さんが前食べたいって言ってたクレープ屋さん」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「・・・お父さん、帰り遅いね」
加藤麻里奈「残業だって」
加藤沙夜「なら、仕方ないよ。お父さんお仕事頑張っ」
加藤麻里奈「会社に連絡したらもう退社されてますだって」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「でも・・・」
加藤麻里奈「あの人、もう私には興味ないのかな」
加藤麻里奈「今頃、若い女の子と遊んでるのかな」
加藤沙夜「そんなことないよ・・・お父さんは・・・」
加藤麻里奈「何も知らないくせに」
加藤沙夜「・・・」
加藤麻里奈「子供のくせに、輝明の何が分かるの?」
加藤沙夜「・・・お父さんは・・・優し」
加藤麻里奈「うるさい!」
加藤沙夜「ひっ・・・」
加藤麻里奈「良いわよね、沙夜は。お父さんに可愛がってもらえて!」
加藤麻里奈「私なんて・・・私なんて・・・!」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「部屋・・・戻るね・・・」
加藤麻里奈「子供のくせに・・・子供のくせに・・・」
加藤麻里奈「あの人を分かってあげられるのは・・・ 私だけなのに・・・」

〇女の子の一人部屋
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「そんなに愛されたいなら・・・」
加藤沙夜「まずは私を愛してよ・・・」

次のエピソード:#3 しつらくえん

コメント

  • だんだんと、ひたひたと、怖さが、更に壊れていく感じが、怖いです。人間はやっぱり、怖いですね。

  • ジェシカなる謎の少女は、紗夜ちゃん一家を狂わそうとする悪魔なんだろうか…
    再編し続けた結果、明るい未来へ辿り着けるのか、それとも乱暴に扱った人形のごとく一家は崩れてしまうのか、結末が楽しみです

  • よかった、娘さんがいい子で……って、ちっともよくな~い! お父さんは浮気性、お母さんはDVまっしぐら、謎のロリータ少女は残酷趣味。周囲が黒い! 黒々とした真っ黒な漆黒!
    ジェシカには辛い過去があって性格がひねくれ、境遇の似た主人公らを嬉々として傍観している節があります。案外心の片隅では、家族の再編に期待している面があるかもしれません。
    突破口は、娘が狂人に扮し、家族の注意を自分に向けることかしら?

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