玩具の子供

鍵谷端哉

エピソード5 犯人の思惑(脚本)

玩具の子供

鍵谷端哉

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〇綺麗なリビング
  数人の警察官が沙都希の家の中で待機している。
安曇 巌「では、犯人は何も要求してこなかったというわけですね」
桐ケ谷 沙都希「・・・はい」
安曇 巌「娘さんの声も聞けなかったんですよね?」
桐ケ谷 沙都希「・・・・・・」
安曇 巌「誰かの恨みを買うような心当たりはありませんか?」
桐ケ谷 沙都希「・・・・・・」
  沙都希が大きく首を横に振る。
安曇 巌「なるほど・・・」
八神 暁「まさか、いわさん、疑ってるんすか? 悪戯じゃないかって」
安曇 巌「いや。相手は、娘の携帯から掛けてきている。十中八九、犯人からで間違いないだろうな」
八神 暁「っすよね」
安曇 巌「となると、なんで、このタイミングなのかが問題だな」
八神 暁「どういうことっすか?」
安曇 巌「娘を浚った犯人像は、おそらく2パターン考えられる」
安曇 巌「1つは・・・」
八神 暁「桐ケ谷さんを恨んでいる人物」
安曇 巌「そうだ。が、その場合、誘拐してすぐ連絡してくるはずだ」
八神 暁「・・・あえて、心配させるために時間を置いた・・・とかっすかね?」
安曇 巌「失踪より、誘拐の方が精神的ダメージはデカいだろ」
八神 暁「あっ・・・」
安曇 巌「あとは、誘拐することに手間取って、この時間になった・・・か」
八神 暁「そうなると、今度は、それまでの時間、由衣香さんがどこにいたのかが謎っすよね」
八神 暁「例えば、ずっと犯人から逃げてた、とか」
安曇 巌「それなら、助けを呼ぶはずだ。携帯を持ってるんだし、どっかの家に駆けこめばいい」
八神 暁「犯人から連絡が来たってことは、携帯が壊れてたとかいう線もないっすからね」
安曇 巌「ああ。後は、何も要求して来ないのもおかしい」
安曇 巌「苦しめたいなら、何かしら無茶な要求をしてくるはずだ」
八神 暁「確かに・・・」
安曇 巌「要求がないって時点で、金銭目的での誘拐の線も消えた」
安曇 巌「まあ、そもそも、最初から狙われるほど金持ちってわけじゃなさそうだがな」
八神 暁「・・・パートを増やすくらい、生活がキツイ感じっすからね」
安曇 巌「あと、もう1つのパターンは、わかるか?」
八神 暁「えーっと・・・」
八神 暁「あっ! パパ活の相手!」
安曇 巌「そうだ。あえて、母親に恨みを持っていると装って、自分を疑いの目から逸らそうって考えているパターンだ」
八神 暁「なるほどっす」
安曇 巌「ただ、このパターンの場合も、やはり、連絡してきたのが、このタイミングってのが引っかかる」
八神 暁「へ? どこがっすか?」
安曇 巌「電話が来るまでは、娘はあくまで失踪だ」
安曇 巌「年齢が年齢だから、警察だって、まだそこまで本格的な捜査はしない」
八神 暁「・・・けど、電話をすることで、誘拐になったから、警察が動き出す・・・」
安曇 巌「犯人からすれば、少しでも時間を稼ぎたいはずだ」
安曇 巌「わざわざ、連絡して事件にする意味がわからん」
八神 暁「・・・犯人は、何がしたかったんすかね?」
安曇 巌「恐らく、このタイミングになったのは、犯人にとって予想外のことが起きたんだ」
八神 暁「・・・予想外のこと。なんっすかね?」
安曇 巌「さあな。だが、ここに犯人の手掛かりがあるはずだ」
八神 暁「・・・いわさん。俺、ここで待ってても仕方ないんで、ちょっと聞き込みに行ってくるっす」
安曇 巌「聞き込み?」
八神 暁「俺、やっぱ、パパ活の方が、何か気になってるんすよね」
安曇 巌「わかった。なにかあったら、すぐに連絡してやる」
八神 暁「うっす」
  そのとき、一人の刑事がやってくる。
刑事「桐ケ谷由衣香さんの携帯の電源が入って、GPSで場所の特定ができました」
桐ケ谷 沙都希「本当ですか!?」
安曇 巌「場所は?」
刑事「ここから10キロ先の山奥です」
安曇 巌「八神、行くぞ!」
八神 暁「はいっす!」
安曇 巌「・・・あなたはどうされますか?」
桐ケ谷 沙都希「行きます! 行かせてください!」

〇車内
  車の中、祈るようにして、沙都希がつぶやいている。
桐ケ谷 沙都希「・・・由衣香」

〇綺麗なリビング
桐ケ谷 由衣香「・・・お母さん! これ、お母さんの絵!」
桐ケ谷 沙都希「あら、ありがとう、由衣香。とっても上手いわ」
桐ケ谷 由衣香「えへへ。お母さん、大好き!」

〇学校の校舎
桐ケ谷 沙都希「由衣香。小学校、入学おめでとう」
桐ケ谷 由衣香「友達100人できるかな?」
桐ケ谷 沙都希「ふふ。きっとできるわよ。友達がたくさんできたら、寂しくなくなるわね」
桐ケ谷 由衣香「・・・私、やっぱり、友達いらない」
桐ケ谷 沙都希「どうして?」
桐ケ谷 由衣香「だって、私、寂しくないから!」
桐ケ谷 沙都希「・・・え?」
桐ケ谷 由衣香「お母さんがいるから! だから、私、寂しくないよ!」
桐ケ谷 沙都希「・・・由衣香」

〇綺麗なリビング
桐ケ谷 沙都希「由衣香も、もう中学生か。早いわね」
桐ケ谷 由衣香「んー。私はもっと早く成長したいな」
桐ケ谷 沙都希「ふふ。大人に憧れるのはわかるけど、そこまでいいものじゃないわよ、大人って」
桐ケ谷 由衣香「それでも早く大人になりたいな。・・・それで、お母さんのこと助けたい」
桐ケ谷 沙都希「・・・由衣香」

〇名門の学校
桐ケ谷 沙都希「由衣香。高校合格、おめでとう!」
桐ケ谷 由衣香「お母さんが協力してくれたおかげだよ」
桐ケ谷 沙都希「ううん。由衣香が頑張ったからよ」
桐ケ谷 由衣香「・・・あのね、お母さん」
桐ケ谷 沙都希「ん? どうしたの?」
桐ケ谷 由衣香「私、お母さんのこと、大好きだからね」
桐ケ谷 沙都希「・・・由衣香。お母さんも、由衣香のこと愛してるからね」

〇車内
桐ケ谷 沙都希「由衣香。お願い。無事でいて」

〇けもの道
安曇 巌「八神は、俺と来い」
八神 暁「うっす」
安曇 巌「他は、周りに人がいないか探してくれ。見つけたらとにかく、引っ張っとけ」
八神 暁「じゃあ、桐ケ谷さん、行きましょう」
桐ケ谷 沙都希「は、はい・・・」

〇けもの道
  山道を進む3人。
八神 暁「・・・まさか、犯人がいるってことはないっすよね?」
安曇 巌「十中八九ねーな」
八神 暁「何が目的なんすかね?」
安曇 巌「さあな」
八神 暁「・・・行った先に何か指示がある、とかっすかね?」
安曇 巌「ドラマの見過ぎだ。それなら、電話で言えばいいだろ」
八神 暁「電話で話せないとか・・・もしくは、現場に来させることが目的とかっすかね」
安曇 巌「それも、電話で言えばいいだろ。どこどこに来いってな」
八神 暁「・・・いわさんも、考えてくださいっす」
安曇 巌「意味ねーだろ。行きゃわかるんだから」
八神 暁「・・・相変わらずっすね」
安曇 巌「合理的って言え」
安曇 巌「っていうより、少しはしゃぎ過ぎだ。気を引き締めろ」
八神 暁「・・・すいませんっす」
安曇 巌「・・・っと、そろそろだ。警戒しておけ」
八神 暁「うっす」
桐ケ谷 沙都希「・・・」
  3人がゆっくりと茂みに入って行く。
安曇 巌「・・・この辺のはずなんだがな」
八神 暁「桐ケ谷さん。携帯、かけてみて貰えませんか?」
桐ケ谷 沙都希「は、はい」
  沙都希が由衣香の携帯にかける。
  すると、近くで、着信音が聞こえてくる。
八神 暁「あっちっす!」
  3人が音のする方へと、草を搔き分けて歩いて行く。
  すると――。
安曇 巌「っ!?」
八神 暁「なっ!」
  そこには顔を潰され、焼死体となった女の子が、首をくくられた状態で吊るされていた。
桐ケ谷 沙都希「いやあああああああああ!」
  第5話終わり。

次のエピソード:エピソード6 死体の謎

コメント

  • 由衣香さんの過去の微笑ましいエピソードが示されるたびに、パパ活とのミスマッチ感を強く抱いてしまいますね。そして衝撃的なヒキで、次話が楽しみになります。

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