幸せの在り処(ありか)

朝永ゆうり

1 婚姻という呪縛(脚本)

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〇車内
玲未(ったく、おせーな)
玲未(早く来いよ・・・)

〇住宅街
  畜生、笑ってやがる・・・
  何でお前らは──
  ──笑ってんだよ!

〇黒
  私だって──
  ──笑いたかったよ。

〇一戸建て
  幸せだった。
芽依「わぁ・・・」
芽依「あたらしい、おうち!」
克彦「芽依の憧れ、2階もあるぞ!」
克彦「ママの憧れ、広いシステムキッチンも!」
玲未「お料理、もっと頑張らなきゃね!」
克彦「パパも仕事頑張らなきゃなぁ」
芽依「めいも、がんばる!」
  だから、
  こんな毎日が、
  永遠に続くんだって、思ってた。

〇住宅街
  ──思ってたのに。
「パパ!」
玲未「パパ!?」
玲未「パパ!」

〇手術室

〇病院の診察室
医者「一命は取り留めました」
玲未(ほっ・・・)
医者「まだ様態は不安定ですので、予断を許しません」
医者「また、頭部を強打していたため、 生命を維持できても、後遺症が残る可能性が──」

〇一戸建て
  死んでもおかしくなかった。

〇綺麗な病室
芽依「パパ〜!」
  でも、生きてた。

〇病院の入口
看護師「お大事にしてくださいね」
玲未「お世話になりました!」
  だから──

〇一戸建て
  何の変哲もない日常が、

〇飾りの多い玄関
  戻ってきたんだって、
芽依「パパ〜!」
  そう思ってた。

〇豪華なリビングダイニング
  何の変哲もない、
玲未「ご飯できたよ〜」
  日常が──
芽依「わーい!」
芽依「イテッ」
芽依「ふ、うえーん」
克彦「うるさいな!」
克彦「お前、さっさと泣き止ませろ!」
玲未「え・・・パパ?」
芽依「ぐすん」
克彦「もう知らん!」
芽依「パパ・・・」

〇豪華なベッドルーム
玲未「ねぇ、昼間のあんな言い方は・・・」
克彦「お前がちゃんと躾けないからそういうことになるんだ!」
克彦「主婦なんだろ? 子供の面倒ちゃんと見てるのか?」
玲未「パパが入院中だって、私が・・・」
克彦「出来てないからそういうことになるんだ!」
克彦「俺はもう寝る!」
玲未(これってもしかして、・・・後遺症?)

〇飾りの多い玄関
芽依「あ、パパおかえり!」
玲未「あれ、仕事は?」
克彦「仕事なんか辞めてきてやったさ!」
克彦「あんな仕事、こっちから願い下げだ!」
克彦「誰も彼も、俺のこと能無し呼ばわりしやがって!」
玲未「そんな勝手に・・・どうするの?」
玲未「毎日の生活費に住宅ローン、芽依の将来だって・・・」
克彦「新しい仕事なんてすぐ見つかんだろ!」

〇飾りの多い玄関
  けれど──
克彦「今日もダメだった・・・」
克彦「だめだだめだ! どいつもこいつも俺の良さを分かってない!」
玲未「本当にどうするの!? 仕事が見つからなかったら、私達の未来は──」
克彦「家にいるだけだろ? お前が働けよ!」
玲未「私は育休中で・・・」
克彦「言い訳無用」
克彦「今すぐ預けられるとこだって探せばあるだろ! なぜしないんだ!」
玲未「保活だって大変なの! 何も知らないくせに言わないでよ!」
克彦「大変だぁ? 子供いりゃぁ偉いのかよ! お前そうやって仕事サボってるだけじゃねーのかよ!」
玲未「なっ・・・!」
玲未「毎日子供の相手しながら家事して夜泣きにも起きてるのに、これが怠惰だっていうの!?」
玲未「毎日仕事探してるだけで見つからない あなたの方が怠惰なんじゃないの!?」
克彦「ふっざけんな!」
克彦「私が、私がって 大変アピールだけのめでたいやつだな!!」
克彦「そもそもちゃんとやってりゃこんなことにならねーだろ!」
  散らかったおもちゃ。畳まれない洗濯物。
  流し台には、洗われていない食器の山。
玲未「仕方ないでしょ! 昼間は子供が──」
克彦「あーでた、子供のせいにして。子供はお荷物ってことか? 産まれなきゃ良かったのにな」
玲未「そんなこと・・・」
克彦「そういうことだろっ!」

〇豪華なベッドルーム
玲未「さっきは言いすぎちゃった。ごめん」
克彦「そうか? 俺はお前の気持ち知れて良かったよ」
玲未「え・・・?」
克彦「大変なんだろ? 自分のことで精一杯で、辛くて」
玲未(パパ・・・)
克彦「仕事見つからない俺のこと責めて、自分の方が上だってせいせいしてるんだ」
玲未(なっ・・・!)
克彦「一生懸命アピールだけは得意だもんな」
玲未「違う、そういうこと言おうとしてたんじゃ・・・」
玲未(これも、後遺症のせい?)
玲未(なら・・・)
玲未「パパも辛いんでしょ? 私は事故で変わっちゃったあなたを支えたくて──」
克彦「んだよ、障害者扱いかよ」
玲未「だって、昔はこんなこと──」
克彦「だとしたら、それは俺の性格だよ」
克彦「もう隠して取り繕うの面倒だし、いいだろ?」
克彦「俺は元からこういう性格だった」
克彦「お前が嫌なら──結婚したのが、間違いだったんだな」
克彦「もう寝るよ、おやすみ」
玲未(そんな・・・)
玲未(歩み寄りたいだけだったのに──)
玲未(この先も、ずっとこのまま・・・?)

〇豪華なリビングダイニング
玲未(ねぇ、助けてよ・・・)
母「向こうの籍に入ったんだから、ねぇ」
父「そうだ、頑張るんだ」
玲未(そんなこと、言われたって・・・)
義父「玲未さんが家族でいてくれて良かったよ」
義母「入院中も献身的でいてくれて。とても嬉しいわ」
玲未(他人事のように、みんな・・・)
玲未(結局、独りぼっちで・・・)
芽依「ママー!」
玲未(お荷物だなんて思ってないよ?)
玲未(でもね──)
克彦「お前が出来てないからだ!」
克彦「お前がちゃんとしないからこういうことになる!」
玲未「私は・・・私は・・・」
  愛があれば、どんなことも──
  乗り越えられるって思ってた。
  ──ここに、愛はあるの?

〇裏通りの階段
  宛もなく街をさまよう。
玲未(何で生きてたの?)
  どうせ、私は──
玲未(あの時、死んじゃえば良かったのに)
  ──この日常から、逃れられない。
玲未(なんて、何サイテーなこと・・・)
  だから、今だけでも──
???「ちょっと、そこのお姉さん?」
???「お姉さんだよ、お姉さん」
謎の男「人生上手くいかなくなったとき、」
謎の男「──こんなものは如何かな?」

〇ガラス調
謎の男「知っているかい?」
謎の男「この世界には、現実世界の他に”偽(い)世界”が存在するんだよ」
謎の男「”偽世界”というのは、”反実仮想”の世界」
謎の男「簡単に言うと『ああしていれば』が作り出す世界なんだ」
謎の男「例えば、お姉さんが「今、外を歩いていなかったら」」
謎の男「”偽世界”のお姉さんは、家の中で寝ているだろうねぇ」
謎の男「現実と酷似した偽世界はいくつもあって──」
謎の男「それぞれの世界で、その世界のお姉さんがその世界の生活をしている」
謎の男「もし、人生で後悔している事があるのならのなら──」
謎の男「入れ替わってみたいでしょう?」
謎の男「今と違う人生を歩んでいる、別の世界の自分と」
謎の男「寝る前に行ってみたい世界を念じて、この中身を飲むだけ」

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コメント

  • 夫婦の会話にリアリティがあって凄いです!
    よく子供がいると家事が終わらなくて、一日中家にいるくせにサボってるって夫が怒る、夫は何もわかってないみたいな四コマ漫画を見ますが…夫側もアピールばっかしやがってって妻に言うのが、すごいリアルですね!!
    夫婦の会話が芯食ってて震えますね💦

  • ひー!これはタグに違わぬしんどい展開ですね……!😱
    誰しも考えそうな、「あの日こうしていたら」の世界。自分が娘に会えなかったらと思うとぞっとしますが、娘と自分が他人になっているのを見なければならないなんて。
    衝撃の冒頭シーンに繋がるのも納得してしまうような積み重ねが丁寧で引き込まれました。仮面の男の目的が気になります。

  • 何か事件が起こりそうな展開にドキドキしながら読み進めました。挿入されているスチルも素敵です。
    最も特筆すべきは非常にリアリティを感じさせられたということ。
    1人だと買い物が楽だというセリフは、細かい部分ですが、私ではとても思いつかないところです。

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