エピソード2(脚本)
〇女の子の一人部屋
「薫に復讐してやる!!!!!」
そう決めたら行動は早かった。
まずは机に向かってノートを広げ、復讐のためにどうすればいいかを考える。
葉山優希「・・・・・・・・・・・・ぶっ殺すのは、無理だよね。現実では」
私もクルイ様のように、相手をぶっ殺せたらスカっとするだろうけど
それだとお母さんお父さんに迷惑がかかるし、私も終わりだ。
なんか、テレビで見た気がする。あとで調べてみよう。
だが、それはあくまで最終手段だ。
葉山優希「もっと、安全であいつだけが地獄を見る方法ってないのかな・・・・・・」
しばらくうんうん唸っていたが、ちょっと思いつかない。
葉山優希「こういう時こそ、アニメだよね!」
アニメはなんでも教えてくれるのである。
とりあえず『復讐もの』で検索して片っ端から見ていく。
その結果・・・・・・
葉山優希「なるほど・・・・・・! 現実で実際にできる復讐はこれね!」
ホントに見つけることができた。
アニメってすごい!
それは、私と同じように振られた女の子が
身体を引き締め、時には整形までして超美少女となり・・・・・・
昔振った相手を恋人にして、幸せの絶頂で振るという最高の復讐だった。
これでやり方も決まった。
葉山優希「私も超絶美少女になって、あの五十嵐薫をベタ惚れさせて、彼氏にしてから盛大に振ってやる!」
そのためには、まず引きこもりをやめてダイエットだ。
葉山優希「おかあさ~~~ん!!」
〇一階の廊下
〇L字キッチン
葉山優希「お母さんっ!!」
葉山恵美「え・・・・・・!? な、何? どうしたの!? 何かあったの!?」
葉山優希「お母さん! 私ダイエットしたい! どうすればいいの!? 教えて!」
葉山恵美「え!? あ、あなた、それ以上痩せる気なの!?」
葉山優希「え?」
親特有の甘い評価? それとも馬鹿にされてる・・・・・・?
葉山優希「いやいや・・・・・・お母さんはそんなこと言わないよね・・・・・・」
フラれたショックのせいで、悪い方に考える癖がついているようだ。
暗い女は嫌われるらしいので、改めないと・・・・・・。
しかし、お母さんの言葉が本音だとすると
もしかして私は今、痩せてるのか?
これは確かめる必要がある・・・・・・。
葉山恵美「あ! ちょっと、優希ちゃん!? ど、どこ行くの!?」
〇白いバスルーム
葉山優希「・・・・・・ふう~」
私は目を閉じて大きく深呼吸する。
〇黒
私は、ブタと罵られた日から怖くて見れなかった自分の顔を見てみることにしたのだ。
葉山優希「ふ~・・・・・・はぁ~・・・・・・」
緊張で心臓が痛くなってきたが、
ヤツへの復讐を果たすためには、自分の現在の立ち位置を確認するのは必須だ。
葉山優希「・・・・・・よし!」
私は意を決して洗面所にある鏡を見る。
〇白いバスルーム
葉山優希「・・・・・・・・・・・・」
葉山優希「・・・・・・・・・・・・」
葉山優希「・・・・・・・・・・・・」
そこには、白い髪のスッとした少女が映っていた。
葉山優希「誰!? これ!?」
鏡の中の少女は私と寸分たがわず、驚きの表情と「誰!? これ!?」の口パクを披露した。
まったく同じ反応・・・・・・。
私は確か、お菓子大好きなぽっちゃり系黒髪女子だったはず・・・・・・どうなってるのこれ!?!?
葉山優希「お、お母さん!! 髪の毛が! なんか変な色になってる!!」
葉山優希「あとすごい痩せてる!!」
葉山恵美「ゆ、優希ちゃん・・・・・・」
私のあとを追いかけてくれていたお母さんは、悲しげな表情になる。
葉山恵美「たぶん・・・・・・ショックでそうなったんだと思うわ・・・・・・」
葉山恵美「マリーアントワネットっていう女王様もショックで白い髪になっちゃったことがあるんだって・・・・・・」
葉山優希「そう・・・・・・なんだ・・・・・・」
葉山恵美「だ、大丈夫よ! 嫌なら染めちゃえばいいし・・・・・・!」
葉山優希「大丈夫、このままでいい!」
葉山恵美「え・・・・・・? そ、そうなの・・・・・・?」
そう、このままでいい。
これは大きなアドバンテージだ。この姿・・・・・・まるでアニメのキャラである。
黒髪の美少女というのも男子は好きだろうが、アニメに出てくるような、白髪の美少女もきっと好きなはずだ!
むしろ他の女の子と違う特徴は、きっと私を目立たせ、ヤツの興味を引くに違いない!
葉山優希「ふふふっ・・・・・・! いいぞいいぞ・・・・・・!」
葉山恵美「え・・・・・・優希ちゃん? だ、大丈夫? 急に笑い出して・・・・・・」
葉山優希「あ! うん、なんでもないから!」
それに、何の苦労もなく身体に纏わりついていたお肉たち消失していた。
厳しいダイエットが待ち構えていると思っていたが、これはラッキーだ。
このまま体型を維持していれば、メイクや男子の喜ぶ受け答えの特訓に集中できる。
これだけは、あの薫に感謝してもいいかもしれない。
葉山優希「いやいや! 感謝なんかしちゃダメ!」
薫のせいで、ご飯食べれなかっただけじゃん!
憎しみの火を絶やすなって、クルイ様も他の復讐系女子も言ってたじゃん!
葉山恵美「優希ちゃん・・・・・・」
お母さんが悲しみの表情を浮かべていた。
あ・・・・・・マズイ。これは勘違いされる。
葉山恵美「そうよね・・・・・・お母さん、優希ちゃんが悲しくなっちゃった理由とか、お悩み相談に全然答えられなかったもんね・・・・・・」
葉山優希「あ、あのね。お母さん、さっきのは・・・・・・」
葉山恵美「買って来たスポーツドリンクも、アク●リじゃなくて、ポ●リの方がよかったのよね・・・・・・!」
葉山優希「・・・・・・ん?」
葉山恵美「確かにお母さんもポカ●の方が味は好きなんだけど、ア●エリが特売だったの・・・・・・! だからついたくさん・・・・・・」
葉山恵美「ごめんね、優希ちゃん!! こんなお母さん、感謝されなくて当然だわ!!!」
葉山優希「ええ!? ちょ、ちょっと待って!」
葉山優希「ち、違う違う! お母さんのことじゃない! お母さんのことは大好き! ありがとうってすごい思ってるから!」
葉山恵美「・・・・・・ホント?」
葉山優希「う、うん! あとスポドリはポ●リでも、アク●リも、どっちも好きだよ! いつもありがとう、お母さん!」
葉山恵美「ホント? ホント?」
葉山優希「ホントホント! 大好き~!」
葉山恵美「う、うおおおおおおん! よかったよぉ! 優希ちゃん~!」
葉山優希「お、お母さん! もう泣かないでってば~!」
こうして、私の復讐計画は、とんとん拍子に進んでいった。
かに思われたのだが。
〇女の子の一人部屋
葉山優希「ぎゃあああああああああああああ!?!?」
中学生となった私の顔にはニキビが鬼のように出来てしまったのだ。
葉山優希「う・・・・・・うう・・・・・・ぐすん・・・・・・」
こんなニキビ顔では、男を虜にする美人とはとても言えない。
アニメでは、みんなツルツッルの卵肌である。
葉山優希「でも、これはきっと・・・・・・もっと女に磨きをかけろってことね!」
毎日の適度な運動と、アニメの視聴によってポジティブになっていた私は、すぐに頭を切り替えた。
中学での復讐を諦め、高校に焦点を絞ったのだ。
高校という青春の絶頂で薫を地獄に堕としてやる!
葉山優希「ふ・・・・・・ふふふ・・・・・・!」
〇黒
そして3年後。
〇女の子の一人部屋
私は肉体改造、女子力アップ、男受けのメイクに全力を投じた。
そして、ついに16歳になった頃、私は薫と同じ高校に入学のため、
こっそりと興信所に頼み、彼の進学先を調べた。
その結果、無事に進学先が判明する。
葉山優希「ふっふっふ・・・・・・ついにこの時が来たわね・・・・・・!」
封書を開けてヤツの進学先の高校名を見る。
薫の進学する高校は『蒼春高等学校』。
地域に根差して半世紀。伝統と文武両道を掲げる全寮制の男子校である。
葉山優希「ん?」
私はもう一度、資料を確認する。
地域に根差して半世紀。伝統と文武両道を掲げる全寮制の男子校である。
全寮制の男子校である。
男子校である。
葉山優希「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?????!!????」