エピソード4 忍び寄る追跡者の影(脚本)
〇CDの散乱した部屋
安曇 巌「死んでいたのは、阿比留 邦広(あびる くにひろ)。38歳だ」
八神 暁「・・・ガイシャは男っすよね?」
安曇 巌「女で、この名前はなかなか見ないな」
八神 暁「・・・・・・」
安曇 巌「どうした?」
八神 暁「驚かせないでほしいっす!」
安曇 巌「あん? なんの話だ?」
八神 暁「・・・あ、いえ、なんでもないっす」
安曇 巌「阿比留の死因はおそらく絞殺で、死亡推定時刻は、大体、3、4ヶ月前ってところだな」
八神 暁「随分、曖昧っすね」
安曇 巌「かなり腐乱が進んでたからな。詳しいことは鑑識から来ないことにはわからん」
八神 暁「現場は、ここっすか?」
安曇 巌「恐らくな。争った形跡もあるし。ただ、凶器は見つかってない」
八神 暁「・・・怨恨すかね?」
安曇 巌「恐らくな」
安曇 巌「聞き込みしてみないことには、ハッキリしないが、大分恨みを買ってたらしい」
安曇 巌「何でも屋と名乗って、色々やってたようだしな」
八神 暁「何でも屋・・・っすか」
安曇 巌「もちろん、裏のな。金さえ貰えれば、非合法なことでも何でもやってたらしい」
安曇 巌「盗み、脅し、盗撮、傷害・・・まさに、犯罪のオンパレードだ」
安曇 巌「パッと、部屋の中を見ただけで、証拠がバンバン出てくる」
安曇 巌「さらには、依頼人にさえ、脅迫する始末だ」
八神 暁「つまり、死んで当然って奴だったんすね」
安曇 巌「八神。刑事なら、思ってても口に出すんじゃねえ」
八神 暁「・・・すんませんっす」
安曇 巌「どうする? 本庁の奴らが来るまで、まだ時間はある。現場、調べるか?」
八神 暁「いわさんは、調べたんすか?」
安曇 巌「やるわけねーだろ。どうせ、本庁の奴らもやるんだから」
八神 暁「・・・相変わらずっすね」
安曇 巌「合理的って言え」
八神 暁「・・・すんません、いわさん。俺、あっちに戻っても大丈夫っすか?」
安曇 巌「・・・なんだ? 随分と執着してるな。本当に誘拐の可能性が高いのか?」
八神 暁「・・・実は」
〇CDの散乱した部屋
安曇 巌「・・・なるほど。確かに、誘拐ってよりも監禁の可能性の方が高いな」
安曇 巌「最悪・・・も、あり得るな」
八神 暁「っすよね・・・」
安曇 巌「人手がいりそうだな。・・・捜索願はもう出させたのか?」
八神 暁「あっ!」
安曇 巌「すぐに出すように言え」
八神 暁「了解っす」
安曇 巌「にしても、パパ活ねぇ。今どきって感じだな」
八神 暁「・・・そうっすね。ただ、桐ケ谷さんの話だと、そんなことはしなさそうな子なんすけどね」
安曇 巌「親なんてそんなもんだ」
安曇 巌「子供の闇の部分なんて見えないし、見ようとしないさ」
八神 暁「そうっすよね・・・」
安曇 巌「こっちの人手が足りなくなったら、呼び出すから、それまではあっちに集中しとけ」
八神 暁「あざっす」
〇古いアパート
携帯を取り出し、電話をかける暁。
八神 暁「あ、桐ケ谷さんっすか? 今、どこにいます? 一度、合流したいんすけど・・・」
〇スーパーの店内
八神 暁「えーっと、桐ケ谷さんは・・・あ、いた」
桐ケ谷 沙都希「店長、なんでもいいんです! 由衣香から何か聞いてませんか?」
千田 和夫「桐ケ谷さん、落ち着いて。まずは警察に連絡を・・・」
八神 暁「あ、それは大丈夫っす」
桐ケ谷 沙都希「八神さん」
千田 和夫「・・・警察の方、ですか?」
八神 暁「ええ。・・・で、千田さん、っすよね? 桐ケ谷さん達とは長い付き合いって聞いてるっすけど?」
千田 和夫「はい。もう、17年になりますかね」
千田 和夫「あの・・・由衣香ちゃんが、行方不明って本当ですか?」
八神 暁「ええ・・・」
八神 暁「念のため、聞いておきたいんすけど、由衣香さんから連絡があった、ということはないっすよね?」
千田 和夫「はい。今、桐ケ谷さんにも聞かれましたが・・・」
八神 暁「何か、最近のことで気付いたことってないっすか? どんな小さいことでもいいんすけど・・・」
千田 和夫「あー・・・いや、特には・・・」
桐ケ谷 沙都希「店長、何か隠してますね?」
千田 和夫「うっ! そ、そんなことは・・・」
桐ケ谷 沙都希「うそ! 店長、目を逸らすときは何か隠してる証拠です!」
千田 和夫「いや、し、しかし・・・」
八神 暁「なにか、言い辛いことなんすね。例えば、異性関係・・・」
千田 和夫「なっ!」
桐ケ谷 沙都希「え? それは、どういう・・・?」
八神 暁「由衣香さんの命にかかわるかもしれないんっす。・・・話してくれないっすか?」
千田 和夫「・・・わかりました」
千田 和夫「実は・・・その・・・由衣香ちゃんが援助交際をしてたかもしれないんです・・・」
八神 暁(・・・やっぱり)
桐ケ谷 沙都希「何言ってるんですか、店長! 由衣香がそんなこと、するわけありません!」
千田 和夫「わ、わかってる! 私だって、由衣香ちゃんを信じてるんだ!」
八神 暁「・・・では、援助交際をしてるという疑惑はどこから出て来たんっすか?」
千田 和夫「・・・見たんです。街中で。由衣香ちゃんが男と腕を組んで歩いているところを」
桐ケ谷 沙都希「そんなの、見間違いに決まってます」
千田 和夫「最初は私もそう思ったんだ。だが、見たのは一度や二度じゃない・・・」
八神 暁「ちなみに、どんな男だったんすか?」
千田 和夫「恐らく、40前後だと思います。中肉中背で・・・」
千田 和夫「割と渋い感じで、スーツを着ていたのもありますが、金持ちでそれなりに地位がありそうな雰囲気でした」
桐ケ谷 沙都希「・・・・・・」
八神 暁「そうっすか・・・」
八神 暁「腕を組んでいるという時点で、担任や部活の顧問などの公な関係ではないってことっすよね?」
千田 和夫「はい・・・」
桐ケ谷 沙都希「ど、どうして、教えてくれなかったんですか!?」
千田 和夫「い、言えるわけないだろう」
桐ケ谷 沙都希「もう! 余計なことはすぐ話す癖に、どうして重要なことは隠すんですか!」
千田 和夫「余計な事って、もしかして、桐ケ谷さんがパートを増やしたことを言ってるのか? それは、誤解だよ」
桐ケ谷 沙都希「なにが誤解なんですか!? 店長が由衣香に話したんですよね!?」
千田 和夫「待ってくれ。話したといっても・・・」
〇スーパーの店内
千田 和夫「由衣香ちゃん、買い物かい?」
桐ケ谷 由衣香「はい。晩御飯を作ろうと思って」
千田 和夫「ほー。それは偉いな」
桐ケ谷 由衣香「お母さん、清掃会社のパート増やして、大変そうだから」
千田 和夫「なんだ、由衣香ちゃん、知ってたのか。桐ケ谷さんがパート増やしたこと」
桐ケ谷 由衣香「やっぱり!」
千田 和夫「へ?」
桐ケ谷 由衣香「お母さん、私に隠して、パート増やしたんだ・・・」
千田 和夫「あ、いや、その・・・」
〇スーパーの店内
千田 和夫「私が話したというより、元々知ってたという感じだったんだ」
桐ケ谷 沙都希「どこでそんなこと・・・。それに、どうして、パート先が清掃会社だって知ってのかしら?」
八神 暁「・・・桐ケ谷さんと店長さん以外で、そのことを知ってる人はいないんすか?」
桐ケ谷 沙都希「・・・いないはずです。清掃会社の人も、由衣香とは繋がりはないですし・・・」
八神 暁「そうっすか・・・」
八神 暁(とはいえ、今は、そこは重要じゃない。パパ活相手の、男の方を探さないと・・・)
八神 暁「あ、そうだ。桐ケ谷さん、捜索願を出しに、一旦、署に行きましょう」
桐ケ谷 沙都希「わ、わかりました」
八神 暁「千田さんにも・・・」
そのとき、沙都希の電話に着信がある。
桐ケ谷 沙都希「あっ! 由衣香からです!」
八神 暁「マジっすか。無事だったんすね!」
沙都希が通話ボタンを押す。
桐ケ谷 沙都希「由衣香! 今、どこにいるの!?」
???「娘は預かった」
桐ケ谷 沙都希「・・・え? だ、誰? 預かったって、どういうこと!?」
???「悔い改めろ」
桐ケ谷 沙都希「待って! 由衣香は無事なの!? 声を聞かせて!」
しかし、通話が切られてしまう。
桐ケ谷 沙都希「・・・そんな。由衣香・・・」



剣呑な空気感が漂う中、誘拐と思しき電話。物語がどんどん不穏な方面へ進んでいますね。リアルな由衣香さんな姿は如何なるものなのか、とても気になる展開ですね。