エピソード1 第一王子、詰問される(脚本)
〇豪華な王宮
バリオス「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
吐き捨てるようにそう言ったのは、俺の父であるバリオス・ブリケード陛下だ。
ここは謁見の間。
周囲には、宰相や大臣など、国の重鎮たちが集まっている。
俺はライル・ブリケード。
ブリケード国の第一王子であり、ブリケード国王の座を継ぐ者だ。
・・・・・・いや、正確に言えば継ぐはずだった者か。
ライル「ち、父上。なぜそのようなことを・・・・・・」
バリオス「知れたこと。3年前、14歳で迎えた成人の儀式・・・・・・。そこでお前が得たスキルは何だった?」
ライル「神のお告げでは、【竜化】というスキルを得たようです」
バリオス「ふん・・・・・・! 竜化だと!? そのようなスキルは聞いたことがない!」
バリオス「そもそも、人知を超えた存在である竜に、人が化けられるものか」
ライル「しかし、神のお告げに間違いはないと司祭も言っておりましたがーー」
バリオス「神は確かに間違えない。だが、お前が嘘をついている可能性はあるだろう。現に、お前は竜に変化できないではないか!」
確かに、俺は竜に変化できない。
スキル自体が不発になるわけではない。
変化した後の姿が、決して竜には見えないのだ。
ライル「スキル自体は発動するのです。もうしばらくお待ちいただきたく思います」
バリオス「3年は待った。これ以上は待てぬ。王位継承権の第一位であるお前が不良品では、この国の将来が危ぶまれるのだ」
ライル「そ、そこを何とかーー」
ガルド「みっともねえぜ! 兄貴・・・・・・いや、ライル!」
ライル「ガルド・・・・・・」
ガルド・ブリケード。
この国の第二王子だ。
王位継承権は第二位である。
彼は、俺の3つ下。
ちょうど1か月ほど前に、成人の儀式を終わらせたところだ。
彼が授かったスキルはーー。
ガルド「ライルも、俺みたいにA級スキルだったらよかったのにな」
ガルド「俺の【剣聖】スキルなら、そこらの騎士が束になってかかってきても返り討ちだぜ?」
祝福の儀式で授かるスキルには、ランクがある。
一般市民によく出るのは、D級とE級の2種類だ。
一般市民でC級スキルを発現できれば、かなり恵まれていると言っていい。
そして、A級になると、俺たち王家ぐらいにしか発現しない。
ガルドは、スキルに恵まれたと言えるだろう。
だが、俺の【竜化】スキルは、神の言葉によればそれを上回るS級なのだがーー。
ライル「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ガルド「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ?」
ガルド「いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
バリオス「その通り。正直に話してくれたいれば、次期国王の座からは廃したとしても、ガルドの側近としての道もあったのだがな」
バリオス「国王であり父である余に嘘をつく無能な不届き者は、この国には要らん」
俺が授かったのは本当にS級の【竜化】スキルなのだが、信じてもらえていないようだ。
ライル「な、なにとぞしばしの猶予をーー」
俺は必死に懇願する。
単純に、王族という身分から追放されたくないという気持ちもある。
しかし何より、俺はこの国を守っていきたいのだ。
ここ数年、近隣諸国が力を付けてきている。
また、魔境における魔物や亜人たちの勢力も増している。
内輪もめしている場合ではない。
確かに、俺の竜化スキルはまだ開花していない。
しかし、俺はそれ以外にも、勉学や戦闘訓練に励んできた。
この国のために働いていく覚悟はある。
そして、ゆくゆくはS級の竜化スキルを駆使してこの国に安寧を。
そう思っていた。
バリオス「くどいぞ。これ以上余を失望させるな。ライルよ」
ガルド「はっ! いいことを思いつきました、父上。ライルに、最後のチャンスを与えてあげましょう」」
バリオス「チャンスだと?」
ガルド「ええ。・・・・・・おい、ライル! そこまで言うなら、今ここで竜化してみろよ」
ガルド「お前が立派な竜に変化したなら、父上も考えを改められるかもしれんぞ」
バリオス「ふむ・・・・・・。そういうことか。確かに、それぐらいであればいいだろう」
バリオス「文字通り、最後のチャンスというわけだ。ライルよ。この最後の機会に、余の期待に応えてくれ」
ここまで来れば、一か八か竜化するしかない。
だが、まだ俺はこのスキルを使いこなせていない。
この窮地にこそ、ちゃんとした竜に変化できることを祈るしかない。
俺は覚悟を決める。
ライル「・・・・・・わかりました。はああ・・・・・・!」
俺は竜化スキルを使用するために、力を開放する。
ゴゴゴゴゴ!
俺からあふれる闘気と魔力を受けて、周囲が揺れ始めた。