10.私は『赤髪皇子』の妃になりたい(脚本)
〇華やかな広場
アガット「ミカエル殿下、どうしてここへ・・・」
ミカエル「君とラファエルの姿を見かけ、 嫌な予感がして追いかけて来てしまった」
ミカエル「相変わらず君は・・・ ここでの秘め事が、気に入ってるのだな」
アガット(ヤダ! ラフにキスされたところを、 見られてしまったのね)
アガット(どうしよう・・・誤解されたら)
アガット「・・・」
彼の声が微かに震えている気がした。
ラファエルへの怒りか、私への落胆か、
それは分からないけれど──。
苦しそうな表情で伸ばされた手が、
私に触れる直前で空を切る。
ミカエル「・・・」
ミカエル「ラファエル、剣を持て!」
ラファエル「なっ!?」
ミカエル「私の婚約者に手を出したからには、 それなりの覚悟があるのだろう」
ミカエル「このまま、見逃すことはできない!」
ラファエル「・・・・・・ オレに勝てるとお思いですか、兄上」
ミカエル「負けるつもりはない」
アガット「待って下さい、ミカエル殿下!! 違うんです、私、あのっ──」
ミカエル「アガット、後ろで見ていろ」
ミカエル「必ず君を取り戻してみせる」
アガット「殿下・・・?」
ミカエル「さあ来い!! ラファエル!」
ラファエル「後悔しないで下さいね」
アガット(ミカエル殿下、ムリよ。勝てっこない。 ラフは騎士団長なのよ)
アガット(何でこんな無謀な勝負を・・・)
ミカエル「クッ!」
ミカエル殿下の体が左右に揺れ、大きく後ずさる。
ラファエル「・・・」
それでも涼しい顔で攻め続けるラファエル。
圧倒的な力の差。
程なくして、ミカエル殿下の剣が転がる。
アガット(あ・・・っ!)
ラファエル「・・・口ほどにもない」
ラファエル「いい加減、アガットを返して下さい」
ミカエル「お前こそ・・・」
ミカエル「私から彼女を奪っていったくせに!」
アガット(奪う? どうしてそんな・・・?)
ラファエル「チッ。 何をワケの分からないことを──」
ラファエルはますます殺気だち、剣を持った右手を大きく振り上げた。
アガット「ラフ! ダメ!!」
体の弱い実兄相手に、本気で振り下ろすわけがない。
そう信じていても、ジッとしてはいられなくて──
気づくと私はミカエル殿下を庇うように、
2人の間に飛び出していた。
「アガット!?」
足元に転がっていたミカエル殿下の剣を拾い、咄嗟にラファエルの剣を正面から受け止める。
きっとこれが彼と交わす、最後の剣──。
アガット(痛ッ・・・)
ラファエル「クッ!!」
ラファエル「バカ!!️ 急に前に出てくるなんて、何やってんだよ!」
ミカエル「アガット、怪我は!? 体は無事か!?」
アガット「・・・大丈夫。かすり傷です。 でも2人とも、無意味な争いはもう止めて下さい」
「・・・・・・」
アガット「私の気持ちは? そこに私の望みは、入れてもらえないんですか?」
「・・・アガット ・・・」
アガット「そしてラファエル殿下、 もう1度はっきり申し上げます」
アガット「どんなに立派な皇帝になったとしても、 もう私があなたの元に戻ることはない」
アガット「これからはミカエル殿下を支える。 彼のそばにいます」
ラファエル「待ってくれ。 オレは本当にお前のことを・・・」
アガット「ありがとう。 でももう、あなたの隣は歩けない」
ラファエル「そこまで兄上を・・・」
ラファエル「後悔するなよ!」
ラファエル「・・・いや。 しないでくれ」
〇華やかな広場
アガット「・・・」
ミカエル「・・・」
アガット「どうして・・・ こんなムチャをするんですか?」
アガット「剣ではラファエルに勝てない。 殿下だって、それは分かって──」
ミカエル「約束をしたからな、君と」
アガット「え?」
ミカエル「あの日の誓いだけが、遠く離れた君を 唯一つなぐものだったから・・・」
そう切なげに呟くと、ミカエル殿下は
ゆっくりとこちらに歩み寄る。
辺りを真っ赤に染めていた夕日が、
強い光で、彼をキラキラと照らして────
アガット(キレイな赤・・・)
ミカエル「・・・」
ミカエル「『アガット 大きくなったら、僕の妃になれ』」
アガット「・・・」
アガット「『いいわよ。浮気しないならね』」
ミカエル「ああ。 あの日から1度だって、私は」
ミカエル「君以外を想ったことなどない」
アガット「ミカエル殿下・・・」
幼いころ、将来を誓った相手。
心の支えだった、約束の相手・・・
アガット(私の記憶にある『赤髪皇子』は ミカエル殿下だったのね・・・)
〇華やかな裏庭
アガット(幼少期)(ふぅ、宮殿もあんがい退屈ね。 パパたちのお話って長すぎるのよ)
アガット(幼少期)(でも、もらって来ちゃったものね~)
アガット(幼少期)(あっちのベンチでゆっくりと頂いて・・・)
ミカエル(幼少期)「うわっ!!」
「イタタたた・・・・・・」
アガット(幼少期)「ちょっと、危ないじゃない! 危うく宝を踏みつぶすとこ・・・」
アガット(幼少期)「あーー、うそ!? バナナ・・・ 私のバナナがかわいそうなお姿に~」
ミカエル(幼少期)「あ・・・えっと その・・・・・・だな・・・」
アガット(幼少期)「・・・ごめんなさい、は?」
ミカエル(幼少期)「え?」
アガット(幼少期)「悪いことをしたら、まずゴメンナサイよね?」
ミカエル(幼少期)「は!? 僕を誰だと思って──」
アガット(幼少期)「身分、関係あるかしら?」
ミカエル(幼少期)「悪かった・・・その コレで許してくれないか?」
アガット(幼少期)「うわ~、ドーナツ♥️」
ミカエル(幼少期)「では、僕はこれで──」
アガット(幼少期)「あなたもこっそり持ち出したのね!」
ミカエル(幼少期)「いや、えっと、僕は・・・」
アガット(幼少期)「半分こしましょう。 私が共犯になってあげるから」
ミカエル(幼少期)「え!?」
〇華やかな広場
アガット(幼少期)「うわ~! 素敵なローズガーデン」
ミカエル(幼少期)「僕は運動ができないから。 ここで本を読むのが日課なんだ」
アガット(幼少期)(・・・ってことは、もしかしなくても やっぱり・・・皇子さま、よね?)
アガット(幼少期)(さっきの、『不敬』だったかしら)
アガット(幼少期)「・・・」
アガット(幼少期)「とりあえず、戦利品を半分こしましょう!」
ミカエル(幼少期)「あ、僕はいいよ。食べられないんだ」
アガット(幼少期)「え!? じゃあ何で?」
ミカエル(幼少期)「ちょっと悪いことをしてみたくて」
アガット(幼少期)「ふ~ん?」
アガット(幼少期)「あなた、お名前は?」
ミカエル(幼少期)「ミカ・・・えぇッとぉ・・・ラフ ラフだ!」
アガット(幼少期)「じゃあラフ、その本を読んで聞かせてよ」
ミカエル(幼少期)「え!? 君は字が読めないのかい?」
アガット(幼少期)「もぉ、バカにしないで。 ベリー侯爵家のアガットよ、私」
アガット(幼少期)「いつかは皇室に嫁ぐかもしれないって、 皇子妃教育は完ぺきよ」
ミカエル(幼少期)「じゃあ、なぜ。 良かったら貸し出すこともできるが・・・」
アガット(幼少期)「うーん。だって、 あなたと一緒の方が楽しいじゃない?」
ミカエル(幼少期)「そ、そうか・・・ 僕と一緒の方が・・・か」
ミカエル(幼少期)「・・・」
〇華やかな広場
アガット(幼少期)「わっ! いつの間にかこんな時間!! パパが心配するわ、戻らなきゃ」
ミカエル(幼少期)「こんな時間まで外にいたのは初めてだ・・・」
ミカエル(幼少期)「アガット・・・今日は楽しかった」
アガット(幼少期)「ええ、私も♥️」
ミカエル(幼少期)「えっと・・・その・・・ 君はいつか皇子妃になるのかい?」
アガット(幼少期)「たぶん、そうなるんじゃないかしら」
ミカエル(幼少期)「じゃあ、アガット。 大きくなったら、僕の妃になれ」
アガット(幼少期)(やっぱり、皇子さま!?)
アガット(幼少期)(でも、彼となら・・・)
アガット(幼少期)「うん、いいわよ。 ラフが浮気しないならね!」
ミカエル(幼少期)「約束だ。 君が成人するまでに迎えにいく」
「ここに誓おう。待っていてくれ」
チュッ
感動!感動デス!!
ミカエル推しで良かった…🤣🤣🤣
アガットも良かったね🎶
最後にはラフに行くと思っていただけに、すごく嬉しい〜!!
まさかミカエルがあの時のラフだったとは🤭
この展開はキュンキュンしました😆www
『赤髪皇子』そういうことだったのですね!見事なタイトル回収に、度肝を抜かれました。すごい!
全然気づかなかった〜!!
とっさに自身をラフだと名乗ってしまう幼きミカエルが可愛かったです♥そして親近感(うちのカレンもとっさにハンナの話だとか言ってました笑)
でも、二人目になれはキツいなぁ、ラフ。ここまで来ましたが推し変しても良いですか?(ミカエルに完全に持ってかれました!)