侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

11.永遠を誓う口づけ。それぞれの望みに向かって【完結】(脚本)

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〇空
  ミカエル殿下のそばにいる。
  何があっても、もう離れたくない。
  温かい想いでいっぱいなのに、同時に
  胸を締めつけるような痛みも伴った、夜──

〇貴族の応接間
ミカエル「髪も頬も、すっかり冷えてしまったな。 さあ、飲むがいい」
アガット「ミカエル殿下がご自分で、入れて下さったんですか?」
ミカエル「ああ。立派な夫になれそうであろう?」
アガット「・・・」
アガット「はい。とても」
ミカエル「・・・」
ミカエル「・・・まずいな、顔がにやける」
アガット「え?」
ミカエル「君が何を見ても、何を言っても。 愛おしくて仕方がない」
アガット「ミカエル殿下・・・」
ミカエル「夢かもしれない。 そう思うと、まだ君を帰せない」
ミカエル「もう1杯だけ、付き合ってくれないか?」
アガット「ええ、喜んで」
  私が頷くと、彼は嬉しそうに再びティーポットを傾ける。
  そして向かい側ではなく、私と同じソファーに腰を下ろした。
「・・・           ・・・」
  心地の良い沈黙が私たちを包みこむ。
  腕が触れるか触れないかの距離──
  もどかしくて仕方のない私は、そっと彼の肩に頭をもたれかけた。
ミカエル「アガット・・・」
アガット「ねえ、ミカエル殿下。教えて下さい」
アガット「あの時・・・初めて会った時、 なぜ『ラフ』と名乗ったんですか?」
アガット「だからてっきり、私は・・・」
ミカエル「子供・・・だったんだ、私も」
ミカエル「身体が弱く、アレルギーのある私は、 皇宮内でさえ自由に出歩くことを禁止されていた」
ミカエル「それなのに初めて厨房に忍びこんで、 食べもしないドーナツを盗んだりして」
ミカエル「怒られるのが怖かったんだ。 それで咄嗟に、弟の愛称を──」
アガット「ミカエル殿下・・・」
ミカエル「後悔している。 その後10年も会えなくなるとは思わなかったし、」
ミカエル「会えばすぐ、分かってもらえると思っていた」
ミカエル「まさか髪の色で勘違いされたまま、 ラファエルとの婚約話が進んでしまうとは・・・」
アガット「ミカエル殿下にも、そんな臆病な1面があったんですね」
ミカエル「私が不甲斐ないせいで、君にこんなにも遠回りさせてしまった」
ミカエル「そしてラファエルにも・・・」
アガット「ミカエル殿下、違うんです。 あの・・・きっと・・・」
アガット「ラフの1番の望みは、私なんかではなく・・・」
ミカエル「ああ、分かっている。 『皇太子の座』であろう?」
ミカエル「安心しろ。 私はハナから、皇帝になどなる気はない」
アガット「え!?」
ミカエル「帝都を長く空けてきた、体の弱い私より、」
ミカエル「人脈もあり、腕っぷしの強いラファエルの方が、陛下の継ぎ手として相応しいだろう」
アガット「で、でも。 それじゃあ、ミカエル殿下の望みは・・・」
ミカエル「私が欲しいのは、最初から君だけだ」
ミカエル「君がずっとそばにいてくれるなら── その望みさえ叶うのであれば、」
ミカエル「『帝国の第一皇子』の地位でさえ、喜んで捨てよう」
アガット「ミカエル殿下・・・」
ミカエル「だから君を『皇后』にはしてやれない」
ミカエル「どんなに『帝国の母』に相応しくても、 『輝く月』であっても、 ラファエルには渡せない」
アガット(あっ。だからあの時・・・)
ミカエル「だが、必ず幸せにする」
ミカエル「アガット、愛している。心から」
  そう、少しかすれた声で囁くと
  ミカエル殿下は私の髪に右手を伸ばし、
  ひとふさすくい上げてキスを落とした。
  そしてそのままゆっくりと頬を撫で、
  人差し指で私の下唇を優しくなぞる。
  熱をおびた瞳。
  私の許可を、待っているみたい。
アガット「愛しています、私も。 あなたにどこまでも付いていきます」
  私は静かに目を閉じた。
  吐息が漏れるような音がして、
  彼の唇がゆっくりと押し当てられる。
  柔らかく湿った感触と、
  泣きたくなるほど切ない温もり────

〇空
  あの頃とは違う大人のキスに、私たちは改めて誓った。
  アガット、私の妃になってくれ。
  
  うんざりするほどの愛を、君に捧げよう
  ええ、私も。
  
  すべての愛を捧げます。永遠に──

〇教会
  それから3ヶ月──

〇ウェディングドレスショップ
マリー「お嬢様! 探しましたよ! そんな格好のままでどちらに行かれてたんですか!?」
アガット「ええっと、ゴメンナサイ。 ちょっとだけ仮眠を・・・」
マリー「こんな大切な日にですか!?」
アガット「だって緊張して、眠れなかったんですもの」
アガット「それをミカエル殿下にお伝えしたら、 「ここで少し休め」って 膝枕して下さって・・・」
マリー「何てことでしょう。 嫁入り前の、侯爵家ご令嬢アガット様が」
マリー「婚約者とはいえ、こんな下着同然のお姿を見せるとは・・・」
マリー「メラメラを通り越して、ムラムラです」
アガット「え? 何?」
マリー「さあ、ドレスと髪! 急ぎますよ、お嬢様!!」
アガット「ええ、よろしくね。マリー」
マリー「はい!」

〇白

〇大聖堂
  今日2人は、すべての国民に祝福されて、
  婚姻の儀を結ぶ。
  帝国の第2皇子、ラファエル殿下。
  名門ホワイト公爵家の令嬢、ルビー公女。
アガット(素敵~♥️ お幸せに!)
アガット(そしてラフ・・・)
アガット(本当におめでとう)
  同時に、ジェムズ帝国の皇太子が決定した
  歴史的瞬間でもあった。
ミカエル「アガット、次は私たちの番だな」
ミカエル「多少の不便はかけるかもしれないが・・・」
アガット「何を仰るの? 帝国を出る準備はもうできているわ」
アガット「ミカエル殿下と新たに始まる生活、 楽しみでしかたありません」
ミカエル「・・・ああ。私もだ」
  表向き、
  『皇太子争い』に破れたミカエル殿下は──
  皇室を出て、『大公』の爵位を受け、
  彼が幼少のころに暮らしていた、南の公国を納めることになった。
アガット(遠く離れた場所で『大公妃』になる未来なんて、想像もしなかったわ)
アガット(でも、ミカエル殿下となら・・・♥️)

〇華やかな広場
ミカエル「ところでアガット・・・」
ミカエル「夫婦になるのに、そろそろ『殿下』は 肩苦しすぎないか?」
アガット「え? うーん ・・・では・・・・・・」
ミカエル「ミカ・・・さま♥️ とか?」
ミカエル「・・・・・・」
アガット「きゃぁ~、ミカエル殿下!? バナナもないのに~💦💦」
  またいつか大公国で、お会いしましょう♥️

コメント

  • 全ての登場人物がハッピーエンド!
    令嬢モノでは、できそうでなかなか出来ない大円団ですね。
    ミカエルの意味深な台詞の回収が全て出来ている上に、バナナ🍌も盛り込んで笑いも有り、本当に素敵なお話しでした~🥰
    番外編も、ぜひ書いて下さいね!
    侍女の目から見たミカエルとアガットとかも面白そう🎶

  • 長編完結お疲れさまでした!😆
    いいエンディングでした✨
    ミカエルがアガットにデレデレで💕
    外伝、読みたいです!楽しみにしてます😊
    素敵な物語をありがとうございました🍀

  • めちゃくちゃいいエンディングでした🥳✊✊
    何か幸せな気持ちになれました🤗それから、制作の意図とは関係ないかもしれませんが、女性がどんな風にしてもらえたら嬉しいのかっていうのが勉強になりました🤣www

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