OVA プロダクトXマシロ ~ス魔ホを創った男~(脚本)
〇巨大な城門
〇上官の部屋
クマシロ博士「シン様、お呼びでしょうか」
魔王シン「うむ」
魔王シン「博士の研究について話があるのだ」
クマシロ博士「はあ」
魔王シン「これまで──」
魔王シン「カレー(飲み物)」
魔王シン「抗転移魔法など──」
魔王シン「たくさんの発明品を作ってくれたな」
クマシロ博士「シン様の力添えがあってこそです」
魔王シン「謙遜する必要はない」
魔王シン「博士の頭脳があってこそだ」
クマシロ博士(この話の流れ・・・)
クマシロ博士(研究予算アップの話かも!)
魔王シン「その結果──」
魔王シン「国の財政が傾いておるのだ」
クマシロ博士「・・・」
クマシロ博士「へ」
魔王シン「だから、国の財政が傾いておるのだ」
魔王シン「研究をストップするしか──」
クマシロ博士「ダメダメダメダメダメ!」
魔王シン「急に大きな声を出すな!」
クマシロ博士「失敬」
クマシロ博士「シン様があまりに早とちりでしたので」
魔王シン「何がなのだ?」
クマシロ博士「実は──」
クマシロ博士「すごーい新製品を開発中でして」
魔王シン「新製品・・・?」
クマシロ博士「ええ」
クマシロ博士「国中に普及すれば、財政も一気に改善します」
魔王シン「それはすごい!」
クマシロ博士(とりあえずこの場をしのげば・・・)
魔王シン「そんな良いものがあるなら、早く見せるのだ」
クマシロ博士「え」
クマシロ博士「まだお見せできるほどでは・・・モゴモゴ」
魔王シン「──1週間待ってやる」
魔王シン「我を納得させるものを持ってくるのだ!」
〇要塞の廊下
クマシロ博士「一体どうすれば──」
???「博士~」
魔剣士マナ「この服のモコモコ感がなくなってきてな」
魔剣士マナ「新しいヤツを──」
クマシロ博士「きょ」
魔剣士マナ「きょ?」
クマシロ博士「協力者確保ー!!」
〇魔法陣のある研究室
魔剣士マナ「──なるほど」
魔剣士マナ「博士には日頃お世話になってるからな」
魔剣士マナ「協力するぞ」
魔剣士マナ(もっとカワイイ服ほしいし)
クマシロ博士「感謝します」
魔剣士マナ「何か当てはあるのか?」
クマシロ博士「はい」
クマシロ博士「新製品を開発中なのは、本当なんです」
魔剣士マナ「どんな製品なんだ?」
クマシロ博士「これです──」
魔剣士マナ「スマホか」
クマシロ博士「さすがマナ殿」
クマシロ博士「よくご存知で」
魔剣士マナ「聖典によく出てくるからな」
魔剣士マナ「たしか・・・」
魔剣士マナ「離れた相手と会話できる機械だったか」
クマシロ博士「はい」
クマシロ博士「詳しい仕組みが分からないので、魔法で再現しています」
クマシロ博士「そのため──」
クマシロ博士「『ス魔ホ』と名付けました!」
魔剣士マナ(ただのダジャレ・・・)
魔剣士マナ「でも、遠くの人と会話できる魔法なんて聞いたことがないな」
クマシロ博士「転移魔法を使ったのです」
〇秘密基地のモニタールーム
転移魔法とは、レミ殿がよく使う──
〇ヨーロッパの街並み
──遠くの場所へ瞬時に移動できるもの
〇魔法陣のある研究室
クマシロ博士「それを応用し──」
クマシロ博士「声だけを転移させたのです」
魔剣士マナ「なるほど!」
魔剣士マナ「だが・・・」
魔剣士マナ「転移魔法は習得が難しいと聞くが?」
クマシロ博士「ご安心を」
クマシロ博士「ス魔ホに魔力を流せば、誰でも転移魔法が使えるようになります」
魔剣士マナ「すごい発明じゃないか!」
クマシロ博士「それほどでも」
魔剣士マナ「そこまで完成してるなら、発売したらよくないか?」
クマシロ博士「それがですね・・・」
クマシロ博士「遠くの相手と話す場合、大きな魔力が必要なのです」
魔剣士マナ「なるほど・・・」
魔剣士マナ「魔力の低い民には使えないわけか」
クマシロ博士「その通りです」
魔剣士マナ「・・・」
魔剣士マナ「狼煙みたいにできればいいのにな」
クマシロ博士「狼煙・・・?」
魔剣士マナ「ああ」
魔剣士マナ「狼煙は中継することで、長い距離でも情報を伝達できるだろ?」
クマシロ博士「それだ!」
〇ヨーロッパの街並み
数日後
魔剣士マナ「──もしもし」
クマシロ博士「マナ殿、聞こえますか?」
魔剣士マナ「ちゃんと聞こえてるぞ!」
クマシロ博士(ふふ、計算通り)
〇魔法陣のある研究室
魔剣士マナ「一体どうやったんだ?」
クマシロ博士「この装置のおかげです」
魔剣士マナ「何だコレは?」
クマシロ博士「これは、『Wi-Fi(Wireless Fidelity)』ならぬ──」
クマシロ博士「『Mi-Fi(Magic Fidelity)』です!」
魔剣士マナ「マイファイ・・・?」
クマシロ博士「ええ」
クマシロ博士「これに魔力を蓄えておくと──」
クマシロ博士「狼煙のように魔法を中継し、遠くへ飛ばせるのです」
クマシロ博士「よって、非常に少ない魔力で通話可能!」
魔剣士マナ「またすごい発明を・・・!」
魔剣士マナ「さすが魔国最高の頭脳!」
クマシロ博士「えへ」
???「博士~」
兵士ペイ「シン様が例のモノを見せてほしいとのことですが・・・」
クマシロ博士「・・・承知」
クマシロ博士(ふっ)
クマシロ博士(目にもの見せてくれるわ!!)
〇上官の部屋
〇魔法陣のある研究室
クマシロ博士「シン様からもお墨付きを頂きました」
魔剣士マナ「それじゃあ──」
魔剣士マナ「いよいよ、ス魔ホを国中に広めるわけだな」
クマシロ博士「・・・」
クマシロ博士「実はまだ問題があります」
魔剣士マナ「え?」
クマシロ博士「お金です」
魔剣士マナ「お金・・・?」
クマシロ博士「まず、国中にMi-Fiを設置するのに莫大な費用がかかります」
魔剣士マナ「たしかに・・・」
クマシロ博士「さらに、Mi-Fiを動かす魔力を日々供給しないといけません」
クマシロ博士「魔力発電所を建築しないと」
魔剣士マナ「発電所とは何だ?」
〇謎の施設の中枢
魔法使いを雇い──
国中に魔力を供給する施設のことです
〇魔法陣のある研究室
魔剣士マナ「とんでもない費用がかかりそうだな・・・」
クマシロ博士「はい」
クマシロ博士「うまくスマホの利用者から徴収できればいいのですが・・・」
魔剣士マナ「異世界ではどうやってるのだろうな」
クマシロ博士「聖典を調べてみましょうか」
魔剣士マナ「ああ」
「・・・」
「こ、これは!?」
〇デパートのサービスカウンター
数か月後
「クマシロフォンへようこそ~」
カレー屋(飲み物)店主「遠くの人と会話できる機械があると聞いたんだけど」
魔剣士マナ「はい」
魔剣士マナ「こちらになります」
カレー屋(飲み物)店主「へえ〜思ったより小さいのね」
クマシロ博士「研究に研究を重ね、小型化に成功しました」
クマシロ博士「使い方もとても簡単!」
クマシロ博士「こうやって相手の名前をタッチするだけでいいんですよ」
クマシロ博士「もしもし~」
クマシロ博士「オレだよ、オレ!」
???「博士、一体何用──」
〇上官の部屋
魔王シン「いきなり切れたぞ」
魔王シン「一体、何の用だったのだ・・・」
〇デパートのサービスカウンター
カレー屋(飲み物)店主「わあ、すごい!」
カレー屋(飲み物)店主「・・・」
カレー屋(飲み物)店主「でも、お高いんでしょ?」
魔剣士マナ「いいえ」
魔剣士マナ「そんなことはございません」
クマシロ博士「(スッ──)」
カレー屋(飲み物)店主「え!」
カレー屋(飲み物)店主「0円で買えるの!?」
魔剣士マナ「はい」
クマシロ博士「さ・ら・に」
クマシロ博士「今なら月額利用料も0円です!」
カレー屋(飲み物)店主「か、」
カレー屋(飲み物)店主「買うわ!」
「こちらの奥様、1台お買い上げ~」
クマシロ博士(聖典で学んだこと)
クマシロ博士(それは──)
ただし、2か月目からは所定の利用料金がかかります。
クマシロ博士(大事なことは小さく書くっ!!)
〇魔法陣のある研究室
その後、ス魔ホの契約者は増えていき──
博士の懐はどんどん温かくなった。
しかし──
〇謎の施設の中枢
魔力発電所
クマシロ博士「諸君、おはよう!」
クマシロ博士「今日も魔力をガンガン供給してくれたまえ」
雇われタコ「博士」
雇われタコ「契約者が増えてきたせいか、人手不足です」
クマシロ博士「そうか・・・」
クマシロ博士「よし、増員を考えておこう!」
雇われタコ「ありがとうございます!」
クマシロ博士(安易に従業員増やすと利益が減る──)
クマシロ博士(経営者として、ギリギリを見極めなければっ!)
〇ヨーロッパの街並み
〇ホストクラブ
女の子「博士〜」
女の子「私、ス魔ホがほしいの~」
女の子「ずる〜い」
女の子「私も〜」
クマシロ博士「よし、分かった!」
クマシロ博士「君たちは永久無料で使わせてあげよう!」
「わ~い!」
「あははは」
〇ヨーロッパの街並み
クマシロ博士「ウイ〜」
クマシロ博士「今日も飲んだ」
クマシロ博士「誰だ、こんな時間に」
雇われタコ「は、博士!」
雇われタコ「魔力の供給が追いつきません!」
雇われタコ「早急に増員を!!」
クマシロ博士「え~」
クマシロ博士「もうちょっと頑張れないの〜?」
雇われタコ「何言ってるんですか!」
雇われタコ「もし我々が倒れたら、サービス自体が止まるんですよ!」
クマシロ博士「君たちならダイジョーブ」
クマシロ博士「まだまだいけるさ!」
クマシロ博士「あははは」
クマシロ博士「あれ、切れたぞ?」
クマシロ博士「ま、いっか」
クマシロ博士「もう一軒行くぞ~」
〇謎の施設の中枢
雇われタコ「くそ!」
雇われタコ「見た目が白いだけで、とんだブラック経営者だ!」
雇われタコ「おい、みんな!」
雇われタコ「こうなりゃ、ボイコットだ!」
雇われタコ「賛成!」
雇われタコ「賛成!」
〇空
〇謎の施設の中枢
クマシロ博士「諸君、おはよう!」
クマシロ博士「今日も魔力をガンガン供給して──」
クマシロ博士「──って、誰もいない!」
クマシロ博士「ん、これは・・・」
しばらく休ませてもらいます。
従業員一同
クマシロ博士「・・・」
クマシロ博士「へ」
〇市場
カレー屋(飲み物)店主「あれ?」
カレー屋(飲み物)店主「なんか繋がりづらいわね」
〇謎の施設の中枢
クマシロ博士「いかん!」
クマシロ博士「発電所の魔力が残り少ない!」
クマシロ博士「このままでは、ス魔ホが使えなくなってしまうぞ」
クマシロ博士「そうなったら──」
クマシロ博士「とんでもない補償問題になりかねん!」
クマシロ博士「かくなる上は、私の超魔力で──!」
〇市場
カレー屋(飲み物)店主「おや?」
カレー屋(飲み物)店主「復活したわね」
〇空
〇市場
カレー屋(飲み物)店主「あ、また繋がりづらくなった」
カレー屋(飲み物)店主「何度やっても駄目じゃない!」
カレー屋(飲み物)店主「どうなってるのよ!」
〇謎の施設の中枢
魔王シン「博士!」
魔王シン「ス魔ホが使えないと、民か騒ぎ出しているのだ!」
魔王シン「一体どうなってる──」
魔王シン「な・・・!?」
そこにいたのは──
魔力を供給し続け、真っ黒に燃え尽きた男の姿。
魔王シン「は、」
魔王シン「博士ー!!」
〇謎の施設の中枢
その後
博士は従業員と和解。
人員も大幅に増員し、魔力の安定供給が可能となった。
〇ヨーロッパの街並み
ス魔ホは国中に広まり──
〇魔法陣のある研究室
博士の研究継続が決定したのであった!
クマシロ博士「さあ、次の研究テーマはと・・・」
クマシロ博士「こ、これは!」
しかし──
クマシロ博士の研究、もとい国の財政圧迫は──
今日も続く!
〇学校の屋上
佐藤「くそ!」
佐藤「どうして誰も俺を認めてくれない!」
〇ヨーロッパの街並み
佐藤「ここは・・・」
佐藤「まさか──異世界転移!?」
〇謁見の間
佐藤「ちょい」
魔王シン「なんだ、この弱々しい魔法は──」
魔王シン「な・・・!?」
佐藤「あれれ〜?」
佐藤「ちょっと力を入れただけなのに」
魔王シン「次回より──」
魔王シン「最終章『無自覚装い王子佐藤編』に突入なのだ!」
魔王シン「次も絶対タップしてくれよな!」
ちょいちょい現実のいやらしい社会感じる事が出来て笑いますわこんなの!🤣
次回から力押しタイプチート勇者……自分が異世界転生モノ読むうえで1番癪に障るタイプの敵です😇
友情・努力・勝利!!それを全部すっ飛ばしていきそうなヘラヘラ勇者に相対するのを楽しみにしてます😂
ス魔ホの仕組みがこんな風だったとは……!試行錯誤があっての実現だったのですね!裏舞台がすごい!そして聖典がすごい活躍している!笑
クマシロ博士は天才だ……天才なのに……。最後はやっぱり焦げるんですね(笑)
次話からの最終章も楽しみです😆
ス魔ホの裏側に、こんな事情があったのですね……!
聖典を頼りにゼロからあの仕組みを生み出せる博士すごいです! だんだん調子に乗っていくのには笑いましたが(笑)
勇者ってことごとく敵に回したくない相手ですね! 楽しみにしています!