罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード6 壊れたオモチャ(脚本)

罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

今すぐ読む

罪  恋―TSUMIKOI―
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇空
  自分のことを一言で表現するならば
  
  
  
  
  『壊れたオモチャ』だろう。
  いつからか自分はオモチャとなっていた。
  人を悦ばせるオモチャ。
  だけどどこか歪み、
  
  
  壊れたオモチャ。

〇高級マンションの一室
「久弥、仕事が入ったわ。 今夜は八時にいつものホテルですって。 あの奥様はすっかりあなたの虜ね」
  事務所に使っているマンションの一室で、
  
  マネージャーは血のように赤いワインを口に運びながら、愉しげにそう言った。
  何も答えずに窓の外を眺めていると、降り続く雨が窓を打ち付けていた。
「何を見てるの?」
久弥「んー、雨の数を数えてたんだ。 だけどすぐに分からなくなる」
  テキトーなことを言ってみせると、彼女はプッと噴き出す。
「馬鹿ね、当たり前じゃない」
  笑いながら、こちらの頬に手を伸ばし、唇を合わせてきた。
  そのまま胸元に伸ばしてきた彼女の細い手首をつかむ。
久弥「悪いけど、無料奉仕はしないよ?」
  彼女は、やれやれ、と肩をすくめて、財布から万札を三枚取り出して、こちらの胸ポケットに入れる。
久弥「3万? 今夜八時にホテルで待つ奥様は、この10倍は出してくれるのに?」
「いいじゃない、社員割引よ」
  そう言って、また唇を押し付けてくる。
  高級男娼。
  
  
  それが自分のウラの顔だった。

〇高級マンションの一室
久弥「たった3万なら上になって?」
  ソファーに横たわって、彼女を見上げた。
「えっ?」
久弥「カラダ、貸してやるから自分でしなよ」
  彼女は面白くなさそうにしつつも、
  
  
  すぐに俺の上に跨った。

〇赤いバラ
「もっと動けよ」
「・・・っ」
  獣のような喘ぎ声と水音が響く。
  男娼に向き不向きがあるとするならば、自分は間違いなく向いている方なのかもしれない。
  それとも幼い頃から身体を使っているせいなのか、自分には分からないが一種独特の雰囲気が、自分にはあるらしい。
  フェロモンが滲み出ている。
  
  
  存在そのものが媚薬のようだ。
  別に嬉しくもない美辞麗句を何度も受け取って来た。
  そんなのは自分にとって、どうでもいいから聞き流しているけれど。

〇空
  『向いている』と自覚するのは、客を前にした時。
  なんとなく、
  相手が心の奥底で求めていることを感じ取ることができる。

〇ダブルベッドの部屋
  シティホテルの一室に入ると、
  
  中年の女性が、おずおずとこちらを見ている。
  緊張をほぐすように人懐っこい笑顔で挨拶をして、他愛もない世間話をしてから、
  彼女の頬にそっと手を触れて、顔を覗き込む。
久弥「どうしてほしいか言って?」
  客は、お金持ちの奥様だ。
  上品そうな彼女は、
  
  なんでも旦那以外の男は知らなかったらしい。
  旦那の相次ぐ浮気にストレスを溜め、セレブ仲間から『高級コールボーイ』の話を聞き、思わず連絡したのが最初だった。
「ご、ごめんなさい、 どうしていいか分からなくて」
  真っ赤な顔で、俯きながら言う。
  
  
  まるで少女のように愛らしい。

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:エピソード7 壊れたオモチャⅡ

成分キーワード

ページTOPへ