タワーディフェンス・レーヴァテイン dominate_ep8

R・グループ

第2話 勇者の戦友(ブレイバリー・カムラッド)(脚本)

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〇大きな木のある校舎

〇校長室
  県立豊原高校の校長室で四人の男女が話し合っていた。
  筑波神楽耶(つくばかぐや)の身体の月島海斗(つきしまかいと)
  月島海斗の身体の筑波神楽耶、そして──
  世界連邦から派遣されたマキア・ローザリア
  豊原高校の校長である。
  もっとも、話し合いと言うより筑波神楽耶が強い剣幕で怒りをぶちまけているだけであるが。
筑波神楽耶「どうして私が身体を貸さないといけないんですか!」
筑波神楽耶「私の身体を男に勝手に使われるなんて絶対ありえないわ!!」
校長「まぁまぁ 筑波さん落ち着いて・・・」
筑波神楽耶「これが落ち着いていられますか! 私の身体が変態に使われるんですよ!!」
月島海斗「まぁまぁ、生徒会長 落ち着いて・・・」
筑波神楽耶「あなた私の脚を開いて座るなって何度言ったらわかるの!!」
筑波神楽耶「下着が見えちゃうじゃない!!」
月島海斗「あ、ああ・・・」
マキア・ローザリア「ところで筑波さんは社会貢献の臓器移植提供項目は"すべて"の欄に承諾をつけているよね?」
筑波神楽耶「つけてますけど・・・」
マキア・ローザリア「それなら全身の提供も法的には有りだよ。連邦法上も、日本国法政上も問題ない」
筑波神楽耶「移植に同意って、自分が生きている間に全身の提供なんてありえないわ!!」
マキア・ローザリア「生体移植、骨髄移植などの場合は存命中でもありうること」
マキア・ローザリア「それにさっき説明した通り、これは全人類が協力しなければならない事なんだ」
筑波神楽耶「"敵"なんて私は知らないわっ!! すぐに逃げるか降伏すればいいでしょう!! 命が一番大切なのよ!!」
マキア・ローザリア「グリーゼ710にいる"敵"は私たち人類をすべて滅ぼそうとしています。 逃げる、降伏するという選択肢はありません」
マキア・ローザリア「戦うのみです」
筑波神楽耶「元に戻れるんですか・・・」
マキア・ローザリア「戻りません。 一生そのままです」
筑波神楽耶「そ、そんな・・・ずっと月島くんの身体なんて・・・」
マキア・ローザリア「海斗くんは"敵"と戦うことを選んだ戦士、連邦政府はあらゆる援助を与えます」
マキア・ローザリア「筑波さんのご両親にも承諾を得ているよ」
筑波神楽耶「どうして月島くんが世界を救うなんてことに・・・」

〇まっすぐの廊下
筑波神楽耶「うぅ・・・」
月島海斗「俺の身体で泣くなよ・・・」
筑波神楽耶「五月蠅(うるさ)いわね!」
  これまでの経緯はこうだ。
  早朝、月島海斗の身体になった筑波神楽耶は、真っ先に自分の自宅の筑波家へ押し掛けた。
  そして、口論と格闘の末、筑波神楽耶の身体を目隠して手を縛り、制服に着替えさせる。
  そして監視しながら始業時間より1時間早く登校。
  すると学校に到着するなり、校長室に呼び出されたのである。
筑波神楽耶「ちょっと、イヤらしい視線で下半身を見ないでよ! 気持ち悪い!」
月島海斗「視線をどう直せば・・・」
筑波神楽耶「月島くん、とりあえず生徒会室に行ってきなさい!」
月島海斗「なんで俺が生徒会室に・・・」
筑波神楽耶「あなたが私なんだから当然でしょう! 私には生徒会長としての責任があるのよ!」
月島海斗「まるで俺には何の責任もないみたいな・・・」
筑波神楽耶「しっかりやってよね! 私のイメージを崩さないようにね!」
筑波神楽耶「スカートに触ったらダメだからね! 絶対に変なとこを触ったらダメだからね!」
筑波神楽耶「見るのもダメだからね! 見せるのもダメだからね!」
月島海斗「わかったって・・・」
筑波神楽耶「もぅ! ほんと! サイテー!!」
月島海斗「まったく・・・ 何なんだよ・・・」
  始業時間前の校舎内は人が少なかった。
  通常は生徒会か、朝練のある部活しか来ていない。
  夜更かしが日常の海斗は遅刻ギリギリで通学している。
  こんなに早く登校したことは一度もない。
月島海斗「でも・・・ 見るなと言われると見たくなるよね」
  海斗は下半身に視線を移す。
  そこには神楽耶の制服のスカートと艶やかな脚が見える。
  朝は途中で中断されたが女子の身体への興味が無くなるはずもない。
  神楽耶に止められようと男の好奇心はそれに勝る。
月島海斗「ま、俺の身体だし・・・」
  海斗は神楽耶のゆっくりとスカートを捲り上げてみる。
  神楽耶のパンツ自体は朝も見ていたがそれでも制服姿でスカートを捲ってみるパンツの煽情度は段違いだった。
月島海斗「うわっエロッ・・・」
  だが、確かに海斗は性的に強く興奮しているのに股間の外見に変化はない。
  海斗の性器は神楽耶の身体で股間の奥に小さく埋め込まれた状態で熱くなっているようだ。
  海斗は再度パンツの中に手を入れてみようとする。
  その時──
マキア・ローザリア「海斗くん」
月島海斗「うわっ!」
月島海斗「えっと・・・マキアさんでしたっけ?」
マキア・ローザリア「ああ、初めてあったわけじゃない。 シオンベースのメディカルスペースで会ったよ」
月島海斗「えっ!? シオンベースのヒーラーさん!?」
マキア・ローザリア「ああ、昨日もお楽しみだったね」
月島海斗「・・・」
マキア・ローザリア「私も精神は男だから気にすることはない。 女の子の身体になればみんなやるさ」
月島海斗「そ、そうですか・・・」
マキア・ローザリア「私は地球では連邦職員として働いている。 今日中に君の法的手続きの準備を済ませておくよ」
マキア・ローザリア「君の友人と共に『カレイジャス』で今日の戦闘に参加すれば正式なクルーさ」
マキア・ローザリア「海斗くんが地球に戻っている間の生活は連邦政府が公的バックアップを保証するよ」
  200年前、大きな戦争があった。
  激烈な総力戦の後、世界の七つの列強は互いに統一行政組織『地球連邦』を結成する。単に連邦(ユニオン)ともいう。
  これにより各国は個別の軍隊を持たなくなり、国家間の戦争はほぼ無くなった。
  世界は平和になったのだ。
  マキアはこの連邦政府の幹部である。権限的には日本共和国の首相より偉い。
マキア・ローザリア「ああ、君はまだ正式なクルーじゃないから、入れ替りのことはそれまでは秘密にね」
月島海斗「俺が生徒会長の身体で大丈夫かなぁ・・・」
マキア・ローザリア「その身体の友人と会話するとバレるだろうね」
マキア・ローザリア「心配なら授業にでなくていいさ。 担任には話をしておくから大丈夫だ」
マキア・ローザリア「友だちと話をつけるまで隠れていなよ。 そうすれば筑波さんの友達に会うこともないだろう」
月島海斗「生徒会長は嫌がっているみたいだけど・・・」
マキア・ローザリア「君は心に勇気の剣を持つ者として選ばれた。 人類の未来を守るために戦う戦士だ」
マキア・ローザリア「戦争は女の顔はしていない。 女の顔色で妨げられるものじゃないんだよ」
月島海斗「・・・」
マキア・ローザリア「それじゃあ、お友達の説得がんばってくれ。 君とまたシオンベースで会えるのを楽しみにしているよ」
月島海斗「説得っていっても この身体でどうすれば・・・」
月島海斗「まぁ・・・ とりあえず・・・」
  海斗は先ほどの続きを始め、再び神楽耶のスカートを捲り上げた。
月島海斗「うわっ・・・ 何度みてもエロ・・・」
月島海斗「・・・」
  海斗は今度こそ自分の状態を確認したくなり、パンツの中に手を入れようとする。
  その時──
浅利朱莉「会長 なにやってるんですか?」
月島海斗「うわっ!?」
岩城榛名「おはようございます。 会長」
月島海斗「あ、ああ・・・ 生徒会の・・・」
月島海斗「えっと、風紀委員長と会計兼書記だったような・・・」
浅利朱莉「どうしたんですか? 会長」
岩城榛名「朝会、もう始まります」
月島海斗「ああ・・・」
  海斗は促されると断れない。
  2人に促されるまま生徒会室に入っていった。

〇生徒会室
浅利朱莉「浅利朱莉(あさりあかり)、高校2年、風紀委員長」
浅利朱莉「生徒会長に輪をかけて風紀に厳しく、笑わないので生徒から『氷の女』とよばれていた」
岩城榛名「岩城榛名(いわきはるな)、高校2年、生徒会の会計兼書記」
岩城榛名「いつも優しく微笑んでいる大人しいタイプ。生徒から癒し系女子として人気があった。 学校一の巨乳との噂」
「ちなみに岩、鉄、氷で、CShの隕石の種類と同じなので、アサルトゲーム部では密かに隕石三姉妹と呼んでいた」
浅利朱莉「会長、今日はどうしたんですか? いつもはテキパキ仕切るのに・・・」
月島海斗「あ、ああ・・・ 何かもやもやとして・・・」
岩城榛名「今日はお天気もいいですし、気晴らしにゆっくりお散歩するといいですよ」
月島海斗「そ、そうだね・・・」
  海斗はなるべく会話をしないようはぐらかす。
浅利朱莉「そういえば会長、昨日の件ですけど。 処分しておきました」
月島海斗「えっ何を!?」
浅利朱莉「校内の風紀を乱す卑猥な掲示物の件です」
月島海斗「なにそれ・・・」
浅利朱莉「昨日会長が指示したじゃないですか」
浅利朱莉「部室棟に掲示されている公序良俗を乱すポスターを処分するようにって」
月島海斗「それ・・・どこの部活?」
浅利朱莉「アサルトゲーム部です」
月島海斗「!!」
  海斗は、あまりのショックに崩れ落ちた。
  まるで妻に大切な宝物を断捨離された夫のような姿である。
浅利朱莉「どうしました?」
  <キーンコーンカーンコーン>
  朝礼前の予鈴チャイムが鳴る。
浅利朱莉「それでは会長、授業にいきましょう」
岩城榛名「放課後またよろしくお願いいたしますね」
  朱莉と榛名はそれぞれのクラスへと向かっていった。
  海斗はショックで動けない。
月島海斗「お、俺の大切なポスターが・・・」
月島海斗「ちくしょうめ!」
  怒りのあまり、海斗は生徒会室のゴミ箱を蹴り飛ばした。
  CShは暴力的で性的描写が多いとゲーム倫理協会によってR15歳指定されているゲーム。
  アバターポスターは、女性が見ればただの射幸心を煽るポーズのCGかもしれない。
  しかし、プレイヤーにとっては世界に1つしかない大切な宝物だった。
月島海斗「ふざけんなよ!」
  怒りの収まらない海斗は、とりあえず水を飲んで落ち着こうとする。
  生徒会室の冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、一気に飲み干した。
月島海斗「ふーっ・・・」
月島海斗「なんで冷蔵庫にガラナがないんだよ!!」
  ガラナは校舎通路の自販機にしか置いていない。
  しかし怒っている海斗はただ八つ当たりしているだけのようだ。
月島海斗「あー、ムカツク・・・」
  水を飲んで落ち着こうとするが怒りは収まらない。
月島海斗「これは生徒会長に復讐しないとな!」
  海斗は生徒会室の椅子に大股を開いて腰かけると、神楽耶のスカートを再び捲りあげた。
月島海斗「見るなとか言われたけどそんなの知るか!!」
  海斗は神楽耶のパンツも捲りあげて神楽耶の下腹部を凝視する。
  そこは本来なら海斗の性器があるはずだがツルツルでどこにも何もない。
月島海斗「うーん・・・座っていると見えないのかな?」
  いくら腰を屈めてのぞき込んでも、その先を見る事は出来ない。
  海斗は立ち上げり、続きをやろうとした時、急に尿意を覚えてきた。
  急に水分も増えたし、用を足して興奮を覚まそう身体の生理的な反応だろう。
月島海斗「小便しに行くか・・・」
  海斗は何の疑問も持たないまま、普段の習慣通り生徒会室の近くにある"男子トイレ"に入った。

〇学校のトイレ
  海斗は男子用の小便器の前に立った。
  わざとではなく無意識のうちにである。
  もし人がいたら大騒ぎになる状況だが
  生徒会室近くにあるトイレを始業前に使用する人はほとんどいなく、幸いなのか誰もいない。
  海斗は用を足そうとスカートを捲(まく)って下腹部を探る。
  だが、ズボンのチャックはもちろん、17年間愛用してきた彼専用ホースも見つからない。
月島海斗「あ、あれっ!? 無いっ!!」
  海斗は驚いて下を見てやっと思い出す。
月島海斗「あ、俺 女の子だったっけ・・・」
  何度も同じことをやっているが、無意識の行動が急に修正できるわけがない。
  再び神楽耶のピンクのパンツを直視することになるが、今回はそれほど興奮しなかった。
  とりあえず尿意を処理しないと話にならない。
月島海斗「よし、パンツは脱いでしまおう」
  海斗は意を決し、神楽耶のパンツを完全に脱ぎ去った。
  そのままスカートを捲って下腹部をみるが立ってみてもやはり何も見えない。
  海斗のモノがあるはずの場所がツルツルである。
  当然、触って探しても彼の小便用ホースは見つからない。
月島海斗「しょうがないな・・・」
  この状態では尿意を解放しても身体のどこから出るのかわからない。
  これでは小の仕方を覚えていない赤ちゃんと同レベルだ。
  仕方がなく立ってするのは諦め、男子トイレの個室に入る。

〇個室のトイレ
月島海斗「うーん・・・」
  海斗はとりあえず洋式便座に腰を据えると、男の時にする時と同じように神楽耶の股を開いて腰かけた。
  そして、そのまま尿意を解放する。
  しかし、妙な感覚だった。
  男の身体にはない場所から小が出ているようだ。
月島海斗「・・・」
  初めての体験に、どうなっているか好奇心が湧く。
月島海斗「これ・・・生徒会長のパンツ・・・」
  さらに神楽耶のピンクのパンツを手に握っている。
  自分が穿いていたのに、朝からなかなか見る事が出来なかったものだ。
  出し終えた後
  海斗は再び男性的な興奮が沸き起こる。
  彼は強烈な男性的欲望と好奇心に支配されていた。
月島海斗「みたい・・・」
  初めて直(じか)に見る女性の下着と、個室という密室にいる環境によって、海斗の男性的欲情はさらに増幅される。
  だが、例によって下腹部は何も変化もない。
  海斗の男性器は小を出していた周辺に小さく折り畳まれ、そこでジワジワと滲(にじ)み出るように熱くなっているようだ。
月島海斗「俺の身体だし・・・」
月島海斗「自分の身体を知ることは必要なことだよね。うん」
  神楽耶の脚は海斗の命令で強制的にもっと広く開かされる。
  海斗は腰を曲げてのぞき込むが
  それでも股間の様子までは見えない。
月島海斗「自分では見えないのか・・・」
月島海斗「後で俺のスマホで映せばいいか・・・」
  すぐ見るのは諦め、海斗は股間のプライベートゾーンへと手指を推し進める。
  他人の手でやれば痴漢だが、海斗は自分の手でやっているので法的には問題は無い。
  神楽耶の身体は何も抵抗できず、海斗の精神にされるがまま。
  海斗は男性的欲望と好奇心を満たすため、さらに奥深くへと手指を侵入させるのだった。

〇まっすぐの廊下
  <キーンコーンカーンコーン>
  終業のチャイムが鳴った。
  放課後を告げる合図である。
月島海斗「ふぅ・・・」
月島海斗「あースッキリした後のガラナは最高だなっ!」
  恍惚とした表情の海斗が廊下を歩いている。
月島海斗「うふふふ・・・」
  海斗はあれからずっと男子トイレの個室にいた。
  神楽耶の身体のあらゆるところを探索し、思い付く限りのことを実行した。
  神楽耶の身体は何も抵抗せずに海斗の男性的興奮と好奇心をすべて受け入れた。
  神楽耶の身体のすべてのプライベートな部分は露見されてしまったし、生理的に得られる快楽もすべて試されてしまった。
  それは女性と手を繋いだ経験すらない、エロ本を買う勇気すら出ない童貞の海斗にはあまりにも刺激が強すぎた。
  男性よりも遥かに余韻が長い快感を思い出して反芻(はんすう)するだけでも顔がニヤけてくる。
月島海斗「やばい・・・ 女の身体、やばい・・・」
  もっともこの世界の処女の女性は"VAF"という特殊な力で守られているため、身体を支配していても最奥部分には手を出せない。
  シオンベースにいるαラグナ族は極めて強い"VAF"を持っているが、地球の女性も"VAF"は持っていた。
  惚気(のろけ)ながら廊下を歩いていると、向かいからアサルトゲーム部の友人がやってくる。
月島海斗「うわっ! あいつらだ!」
  海斗の任務は彼らにクルーになるよう話をつけなくてはならないはずである。
  しかし午前中ずっと女体を弄(もてあそ)んでいたためか、思わず身を隠してしまった。
善通寺正吾「海斗のヤツ、今日は様子がヘンだったなぁ。 声掛けても返事しねーし」
九鬼雄太「海斗くんはいつもあんな感じで無口じゃない?」
善通寺正吾「そうだっけか?」
善通寺正吾「善通寺正吾(ぜんつうじしょうご)は短気だった。中学では野球部の先輩にされた理不尽な体罰に反発してケンカになったらしい」
九鬼雄太「九鬼雄太(くきゆうた)は対照的にのんびりとした性格だ。大食漢で特に甘い物が好き、かなり太っている」
「海斗とは同じクラスで1年の時から部活動も含め、いつも一緒に遊んでいた」
九鬼雄太「とりあえず部室に行ってCShにログインして待ってようよ!」
善通寺正吾「だな!」
  2人は教室に身を潜める筑波神楽耶が月島海斗だとまったく気が付かないまま、アサルトゲーム部の部室に入っていった。
月島海斗「あいつらをシオンベースのクルーに誘わないといけないんだよなぁ・・・」
月島海斗「さて、どうやって切り出したものか・・・」
月島海斗「名乗ったところで信用されるとは思えないし・・・」
  敵衛星撃破作戦は間もなく開始される。
  もし疑われて参加を断られたら元の木阿弥(もくあみ)である。
月島海斗「そうだ! ゲーム内のアバターで話かければ・・・」
  CShにログインした状態ならアバターで会話するので元の身体は関係ない。
  その状態で2人と会話すれば疑われる事はないだろう。
月島海斗「けど、それにはVRゴーグルと3Dコントローラーが必要だな・・・」
月島海斗「そうだ! アイツらから借りよう」
  海斗は一計を閃き、アサルトゲーム部の隣にあるハスクラゲーム部の部室へと入っていった。

〇説明会場
月島海斗「と、いうわけで──」
月島海斗「ハスクラゲーム部は、部室でエロゲーをやっていたので機材は生徒会預かりとします!」
ハスクラゲーム部員「なぜ生徒会長が隠しフォルダの事を知っているんだ・・・」
月島海斗(そりゃ、以前借りてプレイしたからに決まってるだろ)
月島海斗「ゴホン! 女性がこんなふうに脱がされたり喘いだりするゲームをするなんて!!」
月島海斗「(俺は良くないとは思わないけど) たぶんきっと良くないわ!」
  女子にエロゲを見られて恥ずかしそうにするハスクラゲーム部員。
ハスクラゲーム部員「ううう・・・ エロゲには男の夢が詰まっているんだよぉ!!」
ハスクラゲーム部員「エロゲなしでなんて生きていけない!」
月島海斗(わかる、その気持ちはわかるが・・・ 今は世界を救うためにその機材を俺に貸してくれ!)
月島海斗「校則でR18のゲームは禁止のはずよ!」
月島海斗(まぁ俺たち高校生だから校則じゃなくても禁止だけどな・・・)
月島海斗(俺たちアサルトゲーム部も他所のこと言えないし・・・)
ハスクラゲーム部員「わ、わかった!! エロゲのデータは消すから備品は後で返してくれよぉ!!」
月島海斗「よしよし、じゃあVRゴーグルと3Dコントローラーは預かってくよー」
月島海斗「ゴホン! 確かに預かります!! 後でちゃんと返しますので」
「しくしく・・・」
月島海斗「あーえーっと、エロゲのデータは消す必要はありません」
ハスクラゲーム部員「えっ!?」
月島海斗「男は生理的に溜まるんで仕方がないです。 エロゲは楽しく使ってください」
ハスクラゲーム部員「はぁ!?」
月島海斗「じゃ!! 急いでるんで!!」
ハスクラゲーム部員「どういうことだ・・・」
ハスクラゲーム部員「あの『鉄の女』、生徒会長が エロゲに理解を!?」

〇生徒会室
月島海斗「なんとか手にはいったぞ」
  CSh(カレイジャス・ストロングホールド)はクラウドゲームであり、機材とアカウントがあればどこでも繋ぐことができた。
月島海斗「後は生徒会室のPCに繋いでと・・・」
月島海斗「よーし、行くぜー!!」

〇VR施設のロビー
クッキー「海斗くんなかなかこないねー」
セリカ「あいつはマイペースだからなー」
エリス「ちっす!」
クッキー「あっ、海斗くんだ! こんにちはー!」
セリカ「おっす! 遅いぞ!」
エリス「わりぃわりぃ ちょっと所用で他から繋いでるんだ」
セリカ「なんだよ、海斗 今日は話しかけても無視するしよぉ・・・」
クッキー「そうえいば海斗くん、お昼休みにトイレで絶叫してたよね? お腹でも痛かった?」
エリス「げっ・・・生徒会長もか・・・」
  神楽耶が海斗の身体で何を見たのか簡単に想像がつくが、お互い様なので気にしないことにした。
エリス「そ、そうなんだ。 今日は調子が悪くさぁ・・・」
クッキー「大丈夫?」
セリカ「おい無理すんなよ 来週は大会なんだぞ」
エリス「大丈夫大丈夫 トイレに行ったらスッキリさ!」
  確かにトイレでスッキリしたのは事実である。
  2人の問いの答えとは違うが。
  正吾は何げなくロビーの情報板を見て、昨晩の海斗が達成した成績を発見した。
セリカ「なんだよ、海斗 お前、昨日ランク1位だったのかよ! すげぇじゃん!」
クッキー「あっ、ほんとだ! すっごーい!」
セリカ「やっぱお前はたいした奴だよ!!」
クッキー「さすが海斗くん!」
エリス「あ、ああ・・・」
  友人に褒められるとなんだかくすぐったい。
セリカ「で、何でた? どうせまた服か?」
クッキー「赤のニーハイならボクに売ってよ~ アバターに合わせるんだ~」
エリス「そう、その件で2人に頼みがあるんだ」
セリカ「なんだよ、急に改まって・・・」
クッキー「海斗くんの頼み?」
エリス「実は昨日、俺の成績を運営から認められて・・・ シオンベースのクルーをすることになったんだ」
セリカ「マジか? プロかよ!」
クッキー「さすが海斗くん!」
  どうやら2人は誤解しているようだ。
  だが、プロといえばそうなので、嘘と言うわけでもない。
エリス「だけど俺 3人乗りの『カレイジャス』じゃないと力を出せないから2人にも一緒に参加して欲しいんだ」
セリカ「マジか!」
クッキー「ボクたちも一緒に!?」
エリス「頼むよ」
  やはり誤解があるようだが、内容的にはそれほど遠くない。
セリカ「で、プロになればなんか貰えるのか? 契約金とかあるんだろ?」
クッキー「スポンサーからグッズもたくさん貰えるらしいよね!」
エリス「もちろんだ!! シオンベースに行けば、このアバターが手に入るっていったらどうする?」
セリカ「そりゃ、セリカはオレがヤりたい女だし。 欲しいに決まってるだろ!」
クッキー「ボクもクッキーちゃんは大好きな理想の女の子だよ!」
  CShは自分の好みの女の子の容姿でプレイするゲームである。
  当然の反応であった。
エリス「大丈夫? プロは大変だぞ、危険もある」
セリカ「男の人生で苦労や大変から逃げた先に幸せはねーよ!」
クッキー「ボクは海斗くんや正吾くんと一緒なら どこでもいくよぉ!!」
エリス「そうか・・・」
エリス「それじゃあ新しいログイン画面を出すから、『参加する』を選んでくれ」
セリカ「わかったぜ」
クッキー「わかった!」
  海斗はシオンベースのアカウントに繋ぎ
  クルーになるための選択肢を出してもらう。
セリカ「おっ、画面に出てきたぜ」
クッキー「よーし、がんばるぞー!」
エリス「よし、じゃあいくぞ!」
ユニックス「リスミー 海斗くん達が到着したわ」
リスミー・マクマード「遅かったわね 海斗くん」
九鬼雄太「えっ!? なにがあったの!?」
善通寺正吾「ここはCShのロビー・・・だよな」
九鬼雄太「あれ!? ボク、いつのまにかバトルユニフォームを着てる?」
善通寺正吾「アバターの表示バグか!?」
月島海斗「2人ともすぐに説明するから・・・」
リスミー・マクマード「海斗くん もう敵衛星破壊作戦は開始しているわ」
リスミー・マクマード「現時点をもって月島海斗くんを少尉、善通寺正吾くんと九鬼雄太くんを曹長としてシオンベースのクルーに採用します」
リスミー・マクマード「他のクルーはすでに出撃しています、海斗くん達も『カレイジャス』で出撃して」
月島海斗「わかりました! 正吾、雄太いくぞ!」
善通寺正吾「えっ!? スクランブルの画面が出ないのに出撃するなんてありえるのか?」
九鬼雄太「クリア条件も出てないのに・・・」
月島海斗「俺たちは出遅れだ。 とりあえず出撃してから説明するよ! 急いで射出ポッドへ」
善通寺正吾「あ、ああ」
九鬼雄太「うん・・・」

〇宇宙戦艦の甲板
  射出ポッドに入ると慣れた手つきで初動操作を終える。
  正吾と雄太もゲームとまったく同じなので問題なく操作している。
善通寺正吾「オレ、コントローラー握って無くないか?」
九鬼雄太「ボクのお腹がひっこんでる・・・」
月島海斗「早くシートベルトしてくれー」
  様々な疑問を持ちつつも出撃準備を完了させる2人。
  ゲームの慣れというのはなかなか凄いと思う。
  射出ポッドの設定を終えるとドックの航宙艇『カレイジャス』と連結され、カタパルトに移動する。
善通寺正吾「なっ!? オレの胸に本物のおっぱいがついてる?」
九鬼雄太「ボクの胸 どうなってるのー!!」
  カタパルトに移動したため重力がほとんど無くなったせいか、乳房の弾力が相当気になるようだ。
  海斗は呆れているが、他人の事はいえない。
オペレーター「海斗機スタンバイOK カタパルトクリア 発進しますか?」
善通寺正吾「周囲がリアルすぎる・・・ どうなってんだ!?」
月島海斗「正吾、出撃サインでてるぞ」
善通寺正吾「お、おう・・・」
善通寺正吾「出撃準備よし!! カレイジャス発進します!!」
オペレーター「海斗機スタート!!」

〇宇宙空間
月島海斗「ふーっ、なんとか作戦に間に合った」
善通寺正吾「あ、あれ? 今、この機・・・海斗の本名で呼ばれなかったか?」
月島海斗「俺の機体だし・・・」
九鬼雄太「海斗くん、本名で登録しなおしたの!?」
月島海斗「本名というか・・・エリスが本体になったというか・・・」
  シオンベースのある準惑星と敵衛星は約100mAU(※約1500万キロメートル)離れている。
  だが『カレイジャス』の加速力なら時間内に戦闘宙域に到着するだろう。
善通寺正吾「お、おい!! オレのムスコがねぇぞ!!」
九鬼雄太「こ、このおっぱいって本物・・・」
善通寺正吾「くっそ! シートベルトが邪魔でパンツが見れねぇ!」
  戦闘服(バトルユニフォーム)の上から、自分の身体をあちこち触り続ける2人。
月島海斗「あー2人とも、戦闘宙域に到達するまでにちょっと聞いてくれー」
  海斗はこれまでの経緯(いきさつ)を簡単に説明した。
九鬼雄太「ゲーム世界が本当になったってこと?」
善通寺正吾「これ現実!? マ、マジか!? オレが読んだラノベみたいな事がマジであんのかよ!」
九鬼雄太「ボク、本当にクッキーちゃんになっちゃったってことなの!?」
月島海斗「ああ」
善通寺正吾「じゃあこのおっぱいも下のマ〇〇も本物かよ!?」
九鬼雄太「ラグナ族は太らないから いくら美味しいもの食べても大丈夫なの!?」
月島海斗「ああ 後でちゃんと地球にも戻れるよ」
善通寺正吾「それいいじゃん マジいいじゃん」
九鬼雄太「ヤッター!!」
  とりあえず2人は喜んでいる。
  海斗はほっと胸を撫でおろした。
  だが、2人は戦闘そっちのけで自分の身体を弄(いじ)り続けている。
  2人とも海斗と同じ、女性と手を繋いだこともないオタクである。
  そんな童貞男子がこんな身体を手に入れたら当然の反応だろう。
善通寺正吾「おっぱい柔らけー」
九鬼雄太「空気の足りないゴム毬みたーい」
月島海斗「・・・」
善通寺正吾「おお!? マジで肘と肘がくっつかない!! 俺巨乳じゃん!!」
九鬼雄太「ボクの方が大きいぞー」
月島海斗「いつまでおっぱい揉んでるんだよ・・・」
  とはいうものの、海斗も何度も同じことをしたので他人の事は言えない。
  そして、なぜ『男性の身体と女性の身体を往復してはいけない』というルールがあるのかわかった気がする。
月島海斗「楽しむのは後だ、とりあえず目の前の敵を倒すぞ!!」
善通寺正吾「お、そうだな」
九鬼雄太「うん、間もなく今回の戦闘宙域だよ!」
  海斗が促すと2人はとりあえず落ち着いた。
  一応、海斗のおかげでプロに加われたと思っているらしい。
九鬼雄太「フラグボス周辺に友軍機多数確認」
九鬼雄太「すでにL1、L2、L4の障害は排除。 残りも順調みたいだよ!!」
  Lとはラグランジュポイントのことである。
  L1~L5まであり重力的に安定している地点だ。
  敵衛星はその重力的安定点に迎撃用の隕石を引き連れている。
  衛星を破壊しようと近づくとラグランジュポイントに集積させている隕石の反撃を受ける。
  よって排除が必須なわけである。
九鬼雄太「あとはほとんど氷岩だけみたい」
善通寺正吾「なんだオレたちの出番は無かったな──」
月島海斗「このままフラグボスだけ倒すにはいかないか・・・」
善通寺正吾「そりゃ横殴りだな」
  イベントの後から来てボスだけ倒して権利を奪う。オンラインゲームではルーターと呼ばれるマナー違反行為だ。
  実戦であれば尚更(なおさら)重要で、歴史的には他者の戦果を奪ったことで戦争になったこともある。
月島海斗「とりあえず、後方で待機」
善通寺正吾「了解!」
  海斗のカレイジャスは離れた地点で戦場を俯瞰(ふかん)する事にした。
  だが──
シオンベースのクルー「うわっ!!」
李維新「な、なんだ!? ヴァルキリーがいきなり爆発したぞ!?」
アルベルト・カザン「量子レーダーには何も映っていないよ!」
シオンベースのクルー「うわあぁ!!」
  突然、攻撃中のヴァルキリー隊、カレイジャス隊に被害が出始めた。
  隕石が衝突した記録はない。
  なんらかのダメージを受け爆発している。
李維新「どうなってんだ!?」
ユニックス「攻撃隊全機に通達 敵がガンマ線レーザーを使用した反応有り」
ユニックス「戦闘宙域の付近に敵のレーザー砲台が潜んでいるはずです」
  シオンベースから通信が入る。
  "敵"は衛星や隕石の軌道を誘導する重力制御を得意としているらしい。
  だが電磁気学などの使用は確認されていない。
李維新「レーザー!? 光学兵器を使うなんて聞いたことないぞ!?」
シオンベースのクルー「うわぁぁぁっ!!」
李維新「クソッ!! またやられた!!」
李維新「どっから撃ってきやがる! これじゃあただの的だ!!」
アンセム・ヴォルチ「攻撃各隊に司令する 本作戦に撤退はない」
アンセム・ヴォルチ「損害に関わらず敵衛星撃破作戦を続行せよ」
李維新「チッ!! 撤退禁止かよ!!」
  攻撃隊は必死に敵衛星を撃破しようとするが、まだ多数の隕石がその周囲を守っている。
  このままでは味方に相当な損害がでることが予想された。
九鬼雄太「カレイジャス隊やヴァルキリー隊にけっこう被害が出ているみたいだよ」
善通寺正吾「どうするよ?」
月島海斗「速攻でフラグボスを倒す・・・」
月島海斗「いや・・・違う それは"敵"も考えているはず」
  海斗は戦闘時、”敵”を倒すことだけに思考を巡らせている。
  それは"敵"の行動を読むことでもある。
月島海斗「雄太、敵のレーザー砲台の位置に見当はつかないか?」
九鬼雄太「対砲迫レーダーに反応なし 一応、味方の被害状況からだいたいの場所はわかるけど・・・」
月島海斗「想定エリアはかなり広範囲だな・・・」
月島海斗「量子レーダーが届かない遠方から撃ってきているなら相当な大型砲台のはず・・・」
善通寺正吾「敵の砲台はステルスってやつか?」
月島海斗「量子レーダーにステルスは効果ないけど・・・」
月島海斗「いや、障害物か何かに隠れているのか?」
善通寺正吾「俺が昔やったステルスゲームだと ダンボール箱に隠れるのがあったなー」
月島海斗「偽装・・・」
月島海斗「直線に並び衛星や小惑星の影に隠れて量子レーダーを誤魔化すことはできる」

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