罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

エピソード1 出会い(脚本)

罪  恋―TSUMIKOI―

望月麻衣

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〇赤いバラ
  大きなベッド以外は、ほとんど何もない部屋に、ギシギシとマットが軋む音が響く。
  「あッ、駄目」
  
  
  汗ばむ肌が、触れ合っている。
  ギュッとシーツを握り、顔を背けていると
  
  
  「駄目なら、やめるけど?」
  
  
  彼は覆いかぶさった状態で、不敵に微笑んだ。

〇赤いバラ
  何も言えず、シーツに埋めるように顔を隠すと、
  
  
  彼は楽しげに笑って、ゆっくりと深く、中を突いた。
  「・・・・・・はッ!」
  
  
  やがて、激しくなる律動。
  「ああッ!」
  
  
  与えられる甘い刺激に、何もかもわからなくなる。

〇赤いバラ
  乱されながら、
  
  
  狂いながら、
  
  
  その刺激にただ流されていると、
  「ねぇ、梓。
  涼太とシても、そうやって乱れるんだ?」
  
  
  彼は意地悪く耳元で囁く。
  
  その言葉にズキン、と胸が痛くなる。
  そう、今私を激しく抱いている男・久弥は・・・・・・
  
  
  私のカレシの親友だった。

〇赤いバラ
  「そんなこと言わないで」
  
  
  私を一途に想ってくれて、優しくて温かい涼太の姿が脳裏を過り、罪悪感に胸が苦しくなる。
  「言われたくない風を装いながら、こう言った後は、すげー乱れるのな。
  めちゃめちゃ、濡れるし」
  あえて、水音を響かせるように動く。
  
  
  「ほら、やらしー、梓」
  
  
  「・・・・・・ッ!!」
  この男は最悪。
  
  
  最低の男だ。
  
  
  ちゃんと分かっているのに、また抱かれてしまうんだ。
  ううん、
  
  
  誰より最低なのは、彼氏の友達に抱かれ乱れる、この私。
  
  
  
  
  
  ――そんなことは、ちゃんと分かってた。

〇学校の廊下
  佐竹涼太は
  私の初めての彼氏だ。
  私が涼太と付き合うようになったのは、中学3年のこと。
涼太「あのさ、俺と付き合ってほしいんだけど」
  放課後、
  
  誰もいない学校の通路で突然、告白された。

〇学校の廊下
  涼太とは同じクラスにはなったことはなかったけれど、よく知っていた。
  少し可愛らしい顔立ちで、いつも明るい雰囲気。
  クラスのムードメーカー的存在で、サッカー部のキャプテン。
  そんな、爽やかを絵に描いたような男子だった。

〇学校の廊下
  そんな涼太に好印象は持っていても、
  
  
  特別な・・・・・・そう、恋愛感情は抱いていなかった。
  それでも、生まれて初めての男子からの告白に、ただドキドキして舞い上がっていた。
  LINEなんかじゃなく、直接言ってくれたことも嬉しかった。
  その時、私は、彼をよく知りたいと思った。
梓「えっと、まだよく分からないから、友達からなら・・・・・・」

〇空
  『友達から』なんて言っても、それはもう交際を承諾したようなもの。
  そのまま修学旅行に行って、私たちが付き合っていることが周囲に認知されて、公認の関係となった。
  デートをして、一緒に図書館で受験勉強をしてと楽しい毎日を送ることが出来た。
  いつも一緒だった私たち。
  
  
  だけど進路は別だった。
  学年でもトップクラスの成績を誇っていた涼太は、有名な私立の進学校に進学し、私はごく普通の公立高校に進んだ。

〇教室
  卒業式のあと、誰もいない教室で、
  初めてのキスをした。
  ずっと交際を続けながら、友達の延長でキスすらしてなかった私たち。
  もしかしたら、私がそんな隙を見せなかったのかもしれない。
  何より中学生だったし、涼太は無理に二人の関係を進めようとはしていなかった。
  だけど、これから離れ離れになってしまう不安からか、涼太とは思えない積極性で、
  初めて、幼い唇を重ね合わせた。

〇学生の一人部屋
  明るくて優しく大らかな涼太だけど、ひとたび焦りを感じると、今までとは違った顔を見せる。
  初めて結ばれた時もそうだった。
  
  
  別々の高校に進学したことで、少しずつすれ違っていった私たち。
  『もしかしたら、こうして自然消滅してしまうかもしれない』
  なんとなくそんなことを思い始めた頃、同じ学校の先輩に冗談めかしく『付き合わない?』と言われた。
  勿論、『彼氏がいますから~』と笑って流して、一応涼太にも報告した。
  
  
  それが涼太の心に火をつけたらしい。
涼太「梓ちゃんがこのまま離れて行きそうで不安なんだ」
  切ないような声でそう言って、強く私の体を抱き締めてきた。
  私はそんな彼の不安を汲み取り、胸の中でそっとうなずいた。
梓「・・・・・・うん、いいよ」

〇空
  一度肌を重ねてからは、それまで慎重に進めて来たことがまるで嘘だったかのように、私達は抱き合った。
  ダムの決壊のように、一度溢れ出してしまったものは止まらない。
  私は刺激と好奇心から、彼が求めるままに受け入れてきた。
  いつも側にいて、涼太の体温を感じている。
  
  
  安心するし、心地いい。
  
  
  だから『好き』だと思っている。
  けれど、今まで本当に涼太に『恋』をして来たか?
  
  
  そう問われると、
  
  
  正直分からなかった。

〇教室
  涼太のことをクラスメイトに話すと、大抵こう言われる。
「梓のカレシって、名門高校なんだ!!」
「結構、可愛い顔してたよね。別々の高校で不安じゃない?」
「私だったら絶対不安だなぁ」
  そんな言葉を友達から投げかけられるたびに、返答に困る。
梓「特に不安はないかなぁ・・・」
「なにそれ、カレシを信用してるんだね」
「ゴチソーサマ」
  なんて冷やかされたけど、信用しているとも少し違う気がした。
  もちろん、まっすぐな涼太のことを確かに信用はしている。
  だけど、恋をしていたら、例え信用できる彼だとしても、不安になるものなんじゃないだろうか?
  周囲の友達たちが真剣な恋をしている姿を眺めながら、自分の気持ちに疑問を持ち始めていた。

〇空
  そんな時だった。
  涼太の新しい友達、
  
  
  
  瀬尾久弥に会ったのは・・・・・・。

〇学生の一人部屋
  友達の多い涼太は、部屋に友達を連れてくることが多い。
  連れてくる友達は、皆涼太のように明るくて賑やかな、『まさに男の子』というタイプが多かった。
  そんな中、
  その男、瀬尾久弥はまるで別世界の人間のようだった。

〇空
  その日は借りていた参考書を返しに、学校帰り涼太の家に立ち寄ることになっていた。
  前日の夜、涼太から連絡が来ていたためだ。
涼太「友達が参考書貸して欲しいって言うから、良かったら帰り寄ってよ。無理だったら、夜にでも取りに行くけど」
  元々、同じ中学の私達。
  
  
  家はそう遠くない。
梓「いいよ、帰り持って行くよ」
  そんなわけで、私は参考書を届けに、涼太の家へ向かった。

〇高級一戸建て
  涼太の父親は事業を経営している。
  家は大きく、駐車場には常に車が複数台あった。
  それでも私にとっては、慣れた家だ。
  インターホンを押すと、彼の母親がドアを開けてくれた。
「いらっしゃい、梓ちゃん」
梓「涼太ママ、こんにちは、お邪魔します」
「今日もいっぱい友達来てるわよ」
  玄関を見ると、汚れたスニーカーがたくさん散乱している。
  そんな感じですね、と私は小さく笑いながら、涼太の部屋へ向かう。

〇学生の一人部屋
梓「涼太、持って来たよ」
涼太「わー、梓ちゃん。ありがとう」
  友達の前でも見るからにデレデレして言う涼太の姿に、私は苦笑した。
「おー、梓ちゃん、久しぶり」
「参考書届けに来てくれたんだよね。わざわざ、ありがとね」
  そう言う涼太の友人たちに、私は「いえいえ」と微笑む。
  ふと、少し甘い香りが漂っていることに戸惑って、私は部屋を見回した。
  香りの先には壁にもたれて座る、見たことがない男の子の姿があった。
  それが瀬尾久弥。
  はじめて見た時、ドキンと心臓が大きく音を立てた。

〇学生の一人部屋

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