エピソード2 始まりを予見する着信(脚本)
〇漫画家の仕事部屋
警察署・刑事課・資料室
テレビにはアニメが映し出されている。
「真実は爺さんの名に懸けて、俺が解く! 犯人は、お前だ!」
八神 暁「おおー。格好いい」
安曇 巌「八神、なにやってんだ?」
八神 暁「うわ、いわさん!」
八神 暁「・・・お疲れっす」
安曇 巌「アニメなんか見て、暇なのか?」
安曇 巌「他の奴らは必死に仕事してるみたいだが?」
八神 暁「いや、だから、仕事してるんっすよ。俺も」
安曇 巌「ほう・・・」
八神 暁「あ、疑ってるんすか? これ、上代が持ってたやつっす」
安曇 巌「上代って・・・上代雄也か?」
八神 暁「はい。あの母親殺しの上代っす」
安曇 巌「あいつは隣の県の管轄じゃねーか」
八神 暁「いわさん、聞いてないんすか? 合同捜査っすよ」
安曇 巌「・・・で、検証作業を押し付けられた、と」
八神 暁「そうっす。アニメの中に犯行の動機になりそうなものがないか、全部見ろって」
安曇 巌「くだらねえ」
八神 暁「ですよねー」
八神 暁「大体、アニメを見て、犯罪する奴は、アニメを見なくても犯罪をする奴っす」
安曇 巌「・・・で、上代は自白してねーのか?」
八神 暁「アニメを見ているときに邪魔されたから、つい、カッとなって、らしいっす」
安曇 巌「世も末だな・・・」
八神 暁「・・・中学からずっと引きこもりしてたみたいっすね」
八神 暁「結構、精神的に負担がかかってたんじゃないかって話もあるみたいっすよ」
安曇 巌「引きこもりか・・・。顔の火傷の痕が原因か?」
八神 暁「大分、イジメられたみたいっすね。まあ、その点は同情の余地はあるっすけど」
安曇 巌「・・・ショッピングモールの火災でだろ、あの火傷」
八神 暁「はい。17年前のオージーモールのっすね」
安曇 巌「・・・あの大災害から、もう17年か」
八神 暁「当時、上代は3歳で、母親とオージーモールに行ってたみたいっすね」
八神 暁「だから、母親の方も責任を感じて、上代のことはやりたいようにやらせてたみたいっす」
安曇 巌「そんなのは責任を取ってるんじゃなくて、単なる逃げだろ」
八神 暁「考え方は人それぞれっすよ」
安曇 巌「・・・ふん。ま、俺には関係ね―ことだな」
安曇 巌「じゃあ、頑張れよ」
八神 暁「そう言えば、いわさんの方のあの件はどうなったんっすか?」
安曇 巌「ああ、子供の取り違えの件か」
安曇 巌「山城病院でって話だから、隣の県の管轄だって言ってやったよ」
八神 暁「この時代で、子供の取り違えなんて、起こるもんすかね?」
八神 暁「しっかり管理してそうっすけどね。他の赤ちゃんと間違えるなんて大問題っすよ?」
安曇 巌「俺に言われても知らねーよ」
八神 暁「その人はなんて言ってたんっすか?」
安曇 巌「さあな」
八神 暁「さあなって・・・話聞かなかったんっすか?」
安曇 巌「管轄が違うからな」
八神 暁「いわさん、相変わらずっすね」
八神 暁「管轄外だと途端にやる気失くすの」
安曇 巌「合理的って言え」
安曇 巌「・・・じゃ、俺は帰るわ。頑張れよ」
八神 暁「いわさん、今、受け持ってる事件ないってことっすよね?」
安曇 巌「・・・」
八神 暁「手伝ってくれません?」
安曇 巌「アニメなんて、わからん」
八神 暁「別にわからなくたっていいんっすよ。見たって事実さえあれば」
八神 暁「はあ・・・。どれから見りゃいいんだ?」
八神 暁「あざっす。ここからっす!」
〇漫画家の仕事部屋
暁と巌がそれぞれ、テレビでアニメを流し見している。
八神 暁「ねえ、いわさん・・・」
安曇 巌「あん?」
八神 暁「・・・これって、刑事の仕事っすかね?」
安曇 巌「命令されたなら、そうなるだろ」
八神 暁「ドライっすね・・・」
安曇 巌「合理的って言え」
八神 暁「俺・・・デカい事件やりたいっす」
安曇 巌「所轄にいる間は無理だな」
八神 暁「本庁に行く方法ってないっすかね?」
安曇 巌「あるぞ」
八神 暁「マジっすか!? どんな方法っすか?」
安曇 巌「大学を入り直せ」
八神 暁「・・・」
そのとき、アニメの台詞が流れて来る。
「真実は爺さんの名に懸けて、俺が解く! 犯人は、お前だ!」
八神 暁「・・・俺も、こんな台詞、言ってみたいっす」
安曇 巌「今、言えばいいじゃねーか。他の奴らには黙っておいてやるぞ」
八神 暁「・・・そういう意味じゃないっす」
〇新橋駅前
女性がぺこぺこと頭を下げている。
母親「本当に申し訳ありませんでした。ほら、あんたも謝りなさい」
男の子「・・・・・・すみませんでした」
安曇 巌「家で、十分、叱ってあげてください。それと、普段から少しでも話をするように」
母親「わ、わかりました」
安曇 巌「それじゃ、帰っていいですよ」
母親「失礼します」
女性に連れられて男の子が去って行く。
八神 暁「・・・万引きっていっても、犯罪っすよ。いいんっすか? 取り調べしなくて」
安曇 巌「いいんだよ。初犯みたいだし、親に構ってほしくてやったみたいだからな」
安曇 巌「親がしっかり叱ってやれば、もうやらないだろ」
八神 暁「・・・とか言って、単に取り調べが面倒くさいだけじゃないんっすか?」
安曇 巌「・・・」
八神 暁「・・・相変わらずっすね」
安曇 巌「合理的って言え」
「亜里沙」
後ろから声がして振り返る暁。
桐ケ谷 由衣香「あれ? どうしたの? こんなところで」
桐ケ谷 由衣香「今日、会う予定じゃなかったよね?」
八神 暁「・・・」
安曇 巌「おい、何してんだ。行くぞ」
八神 暁「はいっす」
〇漫画家の仕事部屋
八神 暁「あー、やっと、報告書、書き終わったー」
八神 暁「じゃあ、俺、帰るっす」
安曇 巌「おう、お疲れさん」
そのとき、電話が鳴る。
安曇 巌「・・・・・・」
八神 暁「・・・俺、もう帰るっす」
安曇 巌「・・・はいはい」
電話を取る巌。
安曇 巌「おう、刑事課」
八神 暁「・・・」
安曇 巌「おう、おう・・・・・・おう。わかった、すぐ向かう」
八神 暁「じゃあ、お疲れっすー」
受話器を置く巌。
安曇 巌「おい、八神。行くぞ、事件だ」
八神 暁「・・・酔っ払いが暴れてるとかだと嫌っすよ」
安曇 巌「・・・誘拐だ」
八神 暁「っ!?」
八神 暁「行く! 行くっす! うおー! 誘拐事件だー!」
安曇 巌「おい、八神」
八神 暁「はい?」
安曇 巌「・・・通報者の前で、そんな顔したら、顎割るからな」
八神 暁「・・・わ、わかってるっす」
安曇 巌「よし、行くぞ」
八神 暁「はいっす」
第二話 終わり。



17年前に起こった事件が会話に出てきてドキリとしました。由衣香さんは一瞬の登場ですが、彼女を軸としたストーリー展開だと感じさせられますね。