第三話 初めての仲間(後編)(脚本)
〇森の中
ヴィンチ「わっ!?」
チャゲ「こいつは・・・!!」
クマ「グガァーーッ!!!」
シロ「ケッ、ざまあねえ。てめえらが、クマの糞になりかけてやがる」
ヴィンチ「どうして逃げないの?」
チャゲ「よく見てみろ」
クマの足元に、もう一匹が意識を失って倒れている。
チャゲ「あいつらも、仲間を見捨てるわけにはいかないんだろう」
チワ「どのみち、俺たちにゃあ関係ねぇ」
シロ「まったくだ。やっかいな連中がいなくなってせいせいするぜ」
ヴィンチ(そんな・・・同じ犬同士なのに)
二世「ウグッ・・・!!」
ヴィンチ「タイヘンだ!! 助けなきゃ!!」
チャゲ「バカ言うな。みすみす死にに行くようなもんだ」
チャゲ「あのバカ!!」
ヴィンチ(これでも、屋敷のアスレチックルームでたまに鍛えてたんだ・・・!!)
ヴィンチ(ここは、木の幹を利用した三角飛びだ!!)
〇木の上
斜め前方に跳躍したヴィンチは、木の幹を蹴り──
クマの顔面めがけて突っこむ。
〇森の中
そして、その辺にポテッと落ちる。
チャゲ「坊主、無茶しやがって!!」
チャゲ「しかたねえ、俺たちも行くぞ!!」
「おうっ!!」
二世「おまえら・・・!!」
シロ「いっせいにかかれ!!」
クマは恐れをなし、ついに逃げてしまう。
シロ「やったぜ!!」
チャゲ「そっちの二匹はどうだ?」
二世「ああ、なんとか大丈夫そうだ」
二世「すまねえ、恩に着るぜ」
チワ「礼なら、あのチビに言いな」
ヴィンチ「ウ~~ン・・・どうなったの?」
〇山並み
〇山の中
チャゲ「それで、これからどうするんだ?」
チワ「俺たちと一緒にここで暮らすか? だったら歓迎するぜ」
チワ「二世の連中とも和解したしな」
ヴィンチ(どうしよう? ヘビとか食べるの嫌だし)
チャゲ「そうか・・・やっぱり行きたいところがあるんだな」
チャゲ「初めから、なんとなくわかってたぜ」
ヴィンチ(え? 逃げて来ただけだし、そんなの別に・・・)
ヴィンチ「あ!!」
ヴィンチ(そうだ! サクラちゃんに会おう!)
ヴィンチ「そうだ! 僕にはやるべきことがあったんだ!!」
チャゲ「そうか。なら、自分の道を進めばいい」
シロ「だが街中で、人間にだけは捕まるんじゃねえぞ」
ヴィンチ「え?」
シロ「野良犬は捕まったら最後、〝ほけんじょ〟って所に連れていかれて始末されちまうんだ」
チャゲ「俺たちが山で暮らしてるのも、人間に捕まらないためなんだ」
ヴィンチ「うん、わかった。気をつけるよ」
ヴィンチ(人間が、そんな酷いことするかな?)
〇黒
ヴィンチは山のみんなと別れを告げ、再び旅立つのだった。
〇山道
ヴィンチ「あ、街が見えてきた」
〇土手
ヴィンチ「でも、どうやってサクラちゃんを捜したらいいんだろ?」
〇ゆるやかな坂道
ヴィンチ「おや? 箱の中に食べ物が落ちてる」
ヴィンチ「落ちてるもの食べて大丈夫かな? 腐ってはないみたいだけど・・・」
ヴィンチ「グゥ~~ッ!」
ヴィンチ「そうだ、僕はクマとも戦ったんだ。拾い食いくらい恐れないぞ!」
ヴィンチ「モグモグ・・・美味しい!」
〇ゆるやかな坂道
ヴィンチ「え!?」
ヴィンチ「なにこれ!? 檻!?」
〇ゆるやかな坂道
保健所員「おお、掛かっとる。掛かっとる」
保健所員「首輪なしか。野良ですねぇ」
保健所員「こいつも、可哀そうに」
〇ゆるやかな坂道
ヴィンチ「この人たちが、〝ほけんじょ〟って所の人たちなの?」
ヴィンチ「もしかして僕、殺されちゃう?」
〇黒
つづく!
一難去ってまた一難!
ヴィンチ大活躍でしたね!普段は何も思わないけど人間の目線から犬の目線に変わるだけで人間が敵や恐怖の対象に思えてきます