トランクの人

銀次郎

たかみちくんの道(脚本)

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〇古いアパートの一室
  ピンポーン♪

〇アパートの玄関前
若宮はづき「はい、トランクですね」
配達員「ええ、いつも通りに」
若宮はづき「はい、確かに じゃあ、これも、昨日のトランクです」
配達員「はい、それでは」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「そう言えば、あの配達の人 これ専門なのかな‥?」
若宮はづき「まあ、いいか‥ それより今日のトランクの中は‥」
若宮はづき「また封筒‥ 何か、トランクこんなに大きいのにこんなのばっかり‥ あっ、メモは?」
若宮はづき「『反町中央公園正面口前 15時 女性』 これだけか‥」
若宮はづき「まあ、ちょっと慣れてきたけどね とにかく、行ってみるか!」

〇公園の入り口
若宮はづき「この辺りだよね‥ さて、受け取る人は‥‥」
  はづきが周囲を見渡すと、ボンヤリと淡く青い光を放っている人物に気がついた
若宮はづき「青い光‥‥これって、これなのかも? あのー‥」
戸鞠由香子「はい?」
若宮はづき「あの、あなたでよろしいでしょうか?」
戸鞠由香子「はい?  あー、あなたが持ってきてくれたの?」
若宮はづき「はい、トランクの中身を」
戸鞠由香子「そう、ありがとう 私が受け取り主よ」
若宮はづき「あっ、これが、その」
戸鞠由香子「私ね、戸鞠由香子(とまりゆかこ)と 言います」
若宮はづき「あっ、あの、若宮です 若宮はづきです」
戸鞠由香子「若宮さんね、よろしくね」
若宮はづき「はい、えっと、中身を‥」
戸鞠由香子「はい、頂くわ」
若宮はづき「これです」
戸鞠由香子「はい、確かに‥ あなた、これが何か知ってる?」
若宮はづき「封筒の中身ですか? いえ、知りません」
戸鞠由香子「興味ない?」
若宮はづき「えっ? そりゃ、少しは‥」
戸鞠由香子「この中身はね‥ ほら、これ」
若宮はづき「地図?」
戸鞠由香子「そう、地図‥目的の場所のね」
若宮はづき「目的の場所?」
戸鞠由香子「行ってみない、一緒に?」
若宮はづき「えっ? 私が?」
戸鞠由香子「そう‥ きっといい経験になるわよ それに私一人だと、退屈かもしれないし」
若宮はづき「うーん‥(良いのかな、行って‥でも、何か気になるしな‥)」
戸鞠由香子「どう?」
若宮はづき「はい、行きます」
戸鞠由香子「ふふふ、良かった きっとそう言ってくれると思ったの」
若宮はづき「えっ?」
戸鞠由香子「いいのよ、気にしないで‥ じゃあ、タクシーで行きましょう 少し離れた場所になるから」
若宮はづき「あっ、はい」

〇タクシーの後部座席
タクシーの運転手「お客さん、どちらまでいかれます?」
戸鞠由香子「この地図の場所、わかりますか?」
タクシーの運転手「あー‥ この辺か‥ 近くまではいけますね ただ、この場所は車が入れないですよ」
戸鞠由香子「それでいいわ 行けるところまで行って下さい」
タクシーの運転手「わかりました じゃあ、出発します」
  運転手はそう言って、車を走らせた
若宮はづき「(その場所って、けっこう遠いのかな‥)」
戸鞠由香子「付き合ってくれてありがとうね」
若宮はづき「あっ、いえ、大丈夫です どうせ暇なんで」
戸鞠由香子「ふふふ そうだ、あなたにいいものを見せてあげる」
若宮はづき「いいもの?」
戸鞠由香子「そう、これから行く場所に関係のあるものよ」
若宮はづき「これから行く場所に‥」
  そう言って彼女は、自分のカバンから一枚の紙を取り出した
若宮はづき「これは‥新聞?」
戸鞠由香子「そうね、新聞に違いないけど、学校新聞ね もう、ずいぶん前のものだけど」
若宮はづき「学校新聞‥」
戸鞠由香子「小学校の学校新聞 そこにね、当時の怪談‥今で言う、都市伝説みたいなものが載ってるの ちょっと、読んでみて」
若宮はづき「あっ、はい‥」
  その古い学校新聞には
  こんな話が載っていた

〇けもの道
  『たかみちくんの道』
  僕の住んでいる東京の大多摩市は
  東京と言ってもかなり田舎だ
  同じ東京だから、新宿や渋谷も一緒だと思ってたけど、全然違う
  僕の住んでいるこの街は、全然違う東京だ
  こんな場所だから、木はたくさん生えてるし、狸だっている
  街灯も少ないから夜はけっこう暗くなる
  だからうちのお母さんは
  「暗くなる前に帰りなさい」とよく言う
  僕も暗くなる前に帰りたい
  だって、ホントに暗くなるから
  そんな僕の住んでいるこの街には、
  ちょっと変わった場所がある
  それが『たかみちくんの道』だ
  それは学校からの帰り道をちょっとそれた場所にあり、実はそこを通ると、僕の家にはけっこう近道なんだ
  だけど森のような場所を通るし、街灯が無いから暗くなると真っ暗になる
  暗くなると真っ暗は同じように思えるけど、真っ暗はけっこう怖い
  だって何も見えなくなるから
  そんな場所に『たかみちくんの道』がある
  そこには『たかみちくん』立っていて、
  誰か通ると話しかけてくる
  『たかみちくん』の話に答えてもいいし、
  無視をしてもいい
  でも『たかみちくん』怒らせてはいけない何か良くない事が起こるみたいなんだ

〇タクシーの後部座席
若宮はづき「あのー、この話って‥」
戸鞠由香子「どう? 面白かった?」
若宮はづき「何と言うか不思議な話で‥ でも、この続きは書いて無いんですか?」
戸鞠由香子「ええ、話はここまでしか書いてないの」
若宮はづき「でもそれじゃ、『たかみちくん』が 何をしたら怒るのかわからないですよね?」
戸鞠由香子「そうね、そのとおりだわ これじゃ、どうしていいか分からないわね ふふふふ」
若宮はづき「(‥何が可笑しいのかな‥)」
若宮はづき「(あれ?そう言えば、何でこの新聞を‥)」
タクシーの運転手「お客さん、そろそろですよ」
戸鞠由香子「あら、ありがとう じゃあ、この辺りで止めて下さい」
  彼女がそう言うと、タクシーは林のような場所に面した、道路の脇で停車した

〇山間の田舎道
戸鞠由香子「付きわせちゃってごめんなさいね もうすぐだから」
  そう言って彼女は林の中の林道に入っていった

〇山道
若宮はづき「あのー‥ ここがあの新聞に書いてあった 例の道ですか?」
戸鞠由香子「ここは違う その道はね、もう少し違う場所なの」
若宮はづき「違う場所‥ですか」
戸鞠由香子「心配?」
若宮はづき「いや!そういうわけじゃないんですけど‥」
戸鞠由香子「大丈夫よ、もうすぐだから‥ あっ、そうだ、あの話の続き、知りたい?」
若宮はづき「話の続きって‥ さっきの『たかみちくんの道』ですか? えっ?続きがあるんですか?」
戸鞠由香子「あのね‥『たかみちくん』はね、 ユッコと言う名の女の子の縫いぐるみをとっても大事にしているの」
戸鞠由香子「だからね、その縫いぐるみを馬鹿にされると、とっても怒るのよ」
若宮はづき「ぬいぐるみ‥」
戸鞠由香子「それに『たかみちくん』はね、その縫いぐるみのユッコことを、ホントの人間だと思ってるの」
戸鞠由香子「だから「そんなの人間じゃない!ただの縫いぐるみだ」だって言った子供をね‥」
若宮はづき「子供を‥?」
戸鞠由香子「捕まえてバラバラにして、糸と針で縫って、ユッコと同じように縫いぐるみにしてしまうの」
若宮はづき「えっ‥」
戸鞠由香子「だからね、『たかみちくん』を怒らせてはいけないの」
若宮はづき「なんか都市伝説って感じですね‥ 嫌ーな怖さと言うか、何と言うか」
戸鞠由香子「ふふふ」
若宮はづき「‥‥」
若宮はづき「‥‥あのー」
戸鞠由香子「なあに?」
若宮はづき「ちょっと聞きたいんですけど‥」
戸鞠由香子「ええ、どうぞ 私に答えられることなら」
若宮はづき「何で‥私をここに連れてきたんですか?」
戸鞠由香子「えっ!?」
若宮はづき「何か理由があって、私をここに連れてきたんですよね?」
戸鞠由香子「‥なぜ、そう思うの‥?」
若宮はづき「あの新聞です」
戸鞠由香子「新聞?」
若宮はづき「はい、あの学校新聞 だって戸鞠さん、新聞の内容を知ってますよね?なのにわざわざ持ってきてる」
戸鞠由香子「そう‥ね」
若宮はづき「それって、新聞の内容を知らない誰かに それを教えるためとしか考えられなくて‥」
戸鞠由香子「‥‥」
若宮はづき「そして、その人物をここまで連れてくるため‥そうじゃないんですか?」
戸鞠由香子「私にはね‥もう、見つからないの‥」
若宮はづき「見つからない?」
戸鞠由香子「そう‥あの道がね、見つからないのよ‥」
若宮はづき「そうなんですか‥でも、それと私が連れて来られた事に何の」
戸鞠由香子「見つけてもらいたいの‥ あなたに」
若宮はづき「私に?」
戸鞠由香子「そう、あなたに あなたなら見つけられるはずだから」
若宮はづき「どうして私が‥ だって、わからないですよ」
戸鞠由香子「見つけられるのよ、あなたは 私を見つけたように‥」
若宮はづき「戸鞠さんを見つけたように‥ それって、あの青い光の‥」
戸鞠由香子「お願い、あの道を見つけて‥ どうしてもあの子に会わなくちゃならないの」
若宮はづき「あの子って‥たかみちくん?」
戸鞠由香子「お願い‥お願いよ」
若宮はづき「そう言われても‥どうやって‥」
  その時ふと、青い光のきっかけをくれた、野戸洋の言葉を思い出した

〇黒背景
野戸洋「俺だけを見るんじゃなくて、 俺も含めた空間全体を、一つとして見てみろ」

〇山道
若宮はづき「(どこかだけを見ない‥空間全体を一つとして見る‥)」

〇山道
若宮はづき「あっ! あの奥!?」
戸鞠由香子「えっ!?」
若宮はづき「戸鞠さん! こっちです!!」
  そしてはづきと戸鞠は、その揺らぎの中に踏み込んでいった

〇けもの道
若宮はづき「えっ!? 夜‥みたい?」
戸鞠由香子「ここ‥ ここだわ‥」
若宮はづき「ここが『たかみちくん』の出てくる あの場所なんですか?」
戸鞠由香子「ええ‥そう」
若宮はづき「あの話、まだ続きがあるんですよね?」
戸鞠由香子「えっ!? ‥そう、気づいてたの」
若宮はづき「何となくですけど‥ たぶん、そうじゃないかと‥」
戸鞠由香子「そう‥ もう、ずいぶん前の事だけど‥‥」

〇けもの道
ユッコ「たかみちくーん、もう帰ろうよー」
たかみち「ちょっと待ってよ!  もうちょっと奥まで行ってみようよ」
ユッコ「だってもう暗くなってきたし‥ 何かちょっと怖いよー」
たかみち「大丈夫だって!  ユッコの事はちゃんと守ってやるから!」
ユッコ「ほんと!?」
たかみち「ほんとだよ! ずっと守ってやるから!」
ユッコ「うん‥わかった」
たかみち「よし! じゃあ、もうちょっと奥に行こうぜ!」
ユッコ「あっ! ちょっと待ってよー!」
たかみち「早く、早くー!」

〇けもの道
若宮はづき「それで‥その後は、どうなったんですか?」
戸鞠由香子「その後、たかみちくんとユッコは、 はぐれてしまったの‥そしてね‥」
若宮はづき「そして?」
戸鞠由香子「たかみちくんは、はぐれたユッコを探している時に、崖から足を滑らせ、亡くなってしまったの」
若宮はづき「そんな‥」
戸鞠由香子「でもたかみちくんはね、大好きなユッコを見つけるために、今でも探し続けてるの」
戸鞠由香子「だって、ユッコをずっと守るって約束したから‥ 2人だけの約束だから‥」
若宮はづき「戸鞠さん‥ もしかしてあなたが‥?」
戸鞠由香子「だからユッコはね、たかみちくんに見つけてもらうの そうしたら、たかみちくんは、やっと安心できるから‥」
若宮はづき「‥もしかして新聞のあの話 あなたが作ったんですか?」
戸鞠由香子「ええ‥私が作ったの みんながたかみちくんを忘れないためにね」
若宮はづき「でも‥たかみちくんはもう‥」
戸鞠由香子「いるのよ‥たかみちくんはここに! ユッコを‥私を見つけるまで、 彼の命は終われないのよ‥だから‥」
若宮はづき「でも、いったいどうやって‥」
たかみち「なんだよ~! やっとみつかったよ~」
戸鞠由香子「えっ!? たかみちくん?」
たかみち「いなくなるなって言っただろ? 見つけんの大変だったんだからな~」
戸鞠由香子「うん‥うん ごめんね‥ごめんね」
たかみち「えっ!? 何だよ、泣くなよー ごめん、ごめん 大丈夫か? 怪我とかしてないか?」
戸鞠由香子「うん・・うん」
たかみち「まったく、しょうがねーな、ユッコは! あれ? ‥お姉さん、だれ?」
若宮はづき「えっ? わたし? 私は‥あのー‥」
たかみち「何だ、お姉さんも迷ったのかー 大丈夫だよ、この道を引き返せば大丈夫!」
若宮はづき「ああ‥ありがとう でも、その‥戸鞠さんが‥‥えっ!?」
たかみち「ユッコのことは大丈夫 ちゃんと、守ってやるから」
ユッコ「うん!」
たかみち「よし! 行こっか、ユッコ お姉さん、じゃあね!」
若宮はづき「あっ、えっ、うん」
若宮はづき「あの、戸鞠‥さん?」
ユッコ「一緒に行かないといけないから‥ やっと、たかみちくんに見つけてもらったから」
たかみち「ユッコー! 行くよー!!」
ユッコ「うん! すぐ行くー!」
ユッコ「若宮さん‥ひとつお願いがあるの」
若宮はづき「お願い? 何ですか?」
ユッコ「私がこうなった事、たかみちくんと一緒に行くことは、誰にも言わないでほしいの」
若宮はづき「誰にも‥ですか‥?」
ユッコ「お願い‥」
若宮はづき「‥はい、わかりました 誰にも言いません」
ユッコ「ありがとう、若宮さん さようなら‥」
若宮はづき「‥‥いなくなっちゃった」

〇山間の田舎道
若宮はづき「やっと出てこられたー けっこう迷ったなぁ‥っていうか こっからどうやって帰ろう? ‥あれ?」
  その時、道路の先からこちらに向かって来る、車のヘッドライトが見えた
若宮はづき「あっ! タクシーだ! おーい! おーい!」
タクシーの運転手「やっぱり昼間のお客さんか! 何か気になるとは思ってたけど‥」
若宮はづき「ありがとうございます! 助かりました! あのー‥ 気になるって?」
タクシーの運転手「まあ、とにかく乗って乗って 出発するよ」
若宮はづき「はい!」

〇タクシーの後部座席
タクシーの運転手「いやー、たまたまこっちの方まで、 違うお客さんを乗せてきてさぁ そう言えば、この辺でお姉さん達を降ろしたなと思ってね」
タクシーの運転手「それでちょっと通ってみたのよ そしたら‥」
若宮はづき「私がいたと?」
タクシーの運転手「そうだよ、びっくりしたよ こんな事もあるんだなって」
若宮はづき「そうなんですか‥ でも、とにかく助かりました!」
タクシーの運転手「まあ、こっちも乗せるお客さんがいるわけだから、それはそれで助かるしな! あははは」
若宮はづき「そういえば、さっき言ってた、気になるって、どういう意味ですか?」
タクシーの運転手「あー、それな‥ ほら、『たかみちくん』とか言ってなかったっけ?」
若宮はづき「えっ!? 知ってるんですか? 『たかみちくん』のことを?」
タクシーの運転手「知ってるって言うか‥ ほら、古い事故の話だろ? そこの山で子供が二人、行方不明になった」
若宮はづき「古い事故‥?」
タクシーの運転手「もう30年以上前かなぁ‥そこの山で小学生の男の子と女の子が行方不明になってな 運よく女の子は見つかったんだけど‥」
若宮はづき「男の子は‥」
タクシーの運転手「しばらく見つからなくてな‥ それから半年ぐらい経ってからかな? 崖の下で子供の白骨体が見つかってな」
若宮はづき「それが‥その男の子」
タクシーの運転手「ああ、そうらしい その子が確か、『たかみち』って名前だったよ」
若宮はづき「そうだったんですね‥」
タクシーの運転手「ところで、お連れの女性はどうしたんです?」
若宮はづき「それは‥ 彼女は行くところがあるみたいで‥」
タクシーの運転手「行くところ? あの山でか‥ まあ、あんまり詮索する事じゃないかな」
若宮はづき「すいません‥」
タクシーの運転手「とにかく、お乗せできて良かったよ さあ、元気出して、帰りましょうや」
若宮はづき「そうですね‥ はい!」
タクシーの運転手「行く先は、乗せた場所でいいかい?」
若宮はづき「はい、お願いします!」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「あーぁ、すっかり遅くなっちゃった よく考えたら、ここの前までタクシーで送ってもらえばよかったのか‥」
若宮はづき「そう言えば、電話‥ もうかかってきちゃったかな‥?」
  プルルルルー📞
若宮はづき「あっ! 来た!」
瑠璃沢(るりさわ)「お疲れ様です、瑠璃沢です」
若宮はづき「はい、お疲れ様です 遅くなっちゃいました?」
瑠璃沢(るりさわ)「いえ、大丈夫ですよ 特に問題はありませんでしたか?」
若宮はづき「あっ、はい‥  あのー、何と言ったらいいのか‥」
瑠璃沢(るりさわ)「どうかしましたか?」
若宮はづき「いや、それが‥うーん‥」
瑠璃沢(るりさわ)「そう言えば、今回の受取人、 ちゃんと見つけられましたか?」
若宮はづき「えっ!? あっ、はい それは、ちゃんと‥」
瑠璃沢(るりさわ)「そうですか、それはよかった 実は今回の方、ご人身で若宮さんを見つけるのは難しいかもしれないので」
若宮はづき「自分で私を見つけるのが難しい?」
瑠璃沢(るりさわ)「はい‥戸鞠さんはご病気をなさって 今までの方のように、あなたを見つけることが難しいようなんです」
若宮はづき「病気‥」
瑠璃沢(るりさわ)「ええ、脳に大きな腫瘍があるようで‥」
若宮はづき「それって‥青いあれが見えないって事ですか!?」
瑠璃沢(るりさわ)「はい‥ やはり、若宮さんも見えるようになったんですね」
若宮はづき「はい‥あの、前回の野戸さんに、何かヒント見たいなものもらって‥それからです」
瑠璃沢(るりさわ)「そうですか、あの方が‥」
若宮はづき「だから戸鞠さん、道が見つけられないって言ってたのか‥ あの、この青く見えるのって、いったい‥?」
瑠璃沢(るりさわ)「‥それは、ご自身で経験しながら、ゆっくり理解していったほうが宜しいかと もう、そんなに時間はかからないでしょうし」
若宮はづき「そうですか‥あっ、もうひとつ これって、何か幽霊みたいなものと関係ありますか?」
瑠璃沢(るりさわ)「幽霊‥ですか? いや、本来はそういったオカルト的なこととは関係ないのですが‥ 何かありましたか?」
若宮はづき「いや‥それが‥」

〇黒背景
ユッコ「誰にも言わないでほしいの‥」

〇古いアパートの一室
若宮はづき「あっ! いえ、何でもないです ちょっと、ほら、あのー‥ 何か不思議な能力っぽい感じがしたんで 見えるのかなーって思って」
瑠璃沢(るりさわ)「そうですか‥ まあ、いいでしょう では、特になければこれで お疲れ様でした」
若宮はづき「はい、お疲れ様でした」
若宮はづき「あー、やばかった あやうく話しちゃうとこだった」
若宮はづき「戸鞠さん‥うまく行ったのかな‥」

〇けもの道
ユッコ「‥ねぇ、たかみちくんはずっと一人で この暗い道にいたの?」
たかみち「そうだよー、なかなかユッコが見つからないからさ、ここから出られないし 大変だったよー」
ユッコ「見つからないから?」
たかみち「そうだよ でも、もう見つかったから大丈夫 もう、暗い道にいなくていいんだ」
ユッコ「明るいところにいけるの? たかみちくんが?」
たかみち「何言ってんだよー! ユッコもいっしょだよ!」
ユッコ「私も‥行っていいの?」
たかみち「当たり前だよ! ずっと守るっていったよな? それに‥もう、病気で苦しまなくてもいいんだよ」
ユッコ「たかみちくん‥何でそれを‥」
たかみち「あっ! ほら!」

〇けもの道
ユッコ「明るくなった‥ それにあの光‥」
たかみち「さあ行こう、ユッコ もう、ずっと一緒だよ!」
ユッコ「‥‥うん!」
  続く

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