ネクタイリング

サトJun(サトウ純子)

思い出の店(脚本)

ネクタイリング

サトJun(サトウ純子)

今すぐ読む

ネクタイリング
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇ジャズバー
岩本玲菜「このお店に来るのは、本当に久しぶり」
岩本玲菜「私はジン・アンド・ビターズで」
倉島昇「僕はテキーラ!」
倉島昇「こんなところに、こんなお洒落なお店があるなんて知らなかったー!」
河村杏奈「私はモスコミュール!」
河村杏奈「懐かしいー! 旦那と結婚する前に、よく来てたわ!」
倉島昇「杏奈さん。 よく旦那さんがOK出しましたね」
河村杏奈「玲菜が直接旦那さんに交渉してくれたのよ」
岩本玲菜「部署は違うけど、河村部長とは会社のプレゼンとかでご一緒することがあるから」
河村杏奈「玲菜がいるなら安心だし、おまけに、この店だったらいいよって」
河村杏奈「・・・足立さんはやっぱりダメだったの?」
倉島昇「い、一応声はかけたんすよ? でも、夜は難しいって」
河村杏奈「えー。たまにはいいじゃんねー」
倉島昇「この店に行くって言ったら、なんだかめちゃくちゃ「ずるい」って言われました」
倉島昇「危うく残業させられそうになったんで、コッソリ逃げてきました!」
河村杏奈「悪いヤツだなぁー」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「よく、ここで、涼太と待ち合わせしたなぁ」
岩本玲菜「いつも「ごめん!」って両手を合わせながら、前の席に座っていた・・・」
  そう、そんな楽しい時間もあった・・・

〇ジャズバー
足立涼太「さっきはごめん!」
足立涼太「玲菜がどこかに行ってしまう気がして・・・」
足立涼太「・・・」
足立涼太「俺は玲菜じゃなきゃダメなんだ! 弱いところを見せれるのは玲菜だけなんだ!」
足立涼太「こんな俺をわかってくれるのは玲菜だけなんだ・・・」
足立涼太「玲菜を絶対失いたくない! ずっと俺の側にいてくれ!」

〇ジャズバー
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「あの人の顔を見た時。 あのネクタイリングを見てゾッとしたのに」
岩本玲菜「どうして今は楽しい思い出しか出てこないのだろう」
倉島昇「そういえば、足立部長。玲菜さんが独身ってこと、すっごく驚いてましたよ」
倉島昇「いやぁ、それは僕も思います。 こんなに素敵な方なのに、彼氏もいないだなんて」
河村杏奈「本当によ。 ウチの旦那さんも心配してたわよ!」
河村杏奈「周りには想いを寄せているメンズがたくさんいるのにーって」
岩本玲菜「またまたぁ」
河村杏奈「いやいや、本当だって! 福岡くんも、田澤くんも。 あれは絶対玲菜に気があったってばー」
倉島昇「僕も立候補しちゃいます!」
「・・・」
河村杏奈「とにかく! もっと女らしさをアピールしなきゃダメ!」
倉島昇「シカトされた・・・」
河村杏奈「そういえば、今日もパンツだし。 最近、スカート履いてるところ、見た事ないわ!」
河村杏奈「なんかさー。 姐御感がでちゃってるのよ。 30過ぎると出る貫禄」
岩本玲菜「えーっ!そうなの?」
河村杏奈「結婚して、子育てに追われるとおばさん化。彼氏無しで歳を取るとおじさん化。 これ、基本でしょ!」
岩本玲菜「そんなの、聞いたことない!」
河村杏奈「今日だって、なんで私を誘ったのよ。 昇さんと二人だって良かったじゃない!」
倉島昇「ホント、そうですよー」
河村杏奈「まぁ、相手が昇さんだから、邪魔にはならないと思って来ちゃったけど」
倉島昇「えーっ?」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「・・・どうしてこの店を選んだ?」
岩本玲菜「二人の思い出の店だから?当て付けに?」
岩本玲菜「そもそも、どうして昇さんを誘った?」
岩本玲菜「・・・涼太にヤキモチ妬かせたいと思った?」
岩本玲菜「・・・えっ?」
岩本玲菜「もしかして、私・・・」
  ──怒ってる?

〇新橋駅前
倉島昇「じゃ! 僕でよければ、また、誘ってください!」
岩本玲菜「今日は来てくれてありがとう! また、連絡します!」
河村杏奈「昇くん!まったねー!」
河村杏奈「・・・」
河村杏奈「・・・玲菜さぁ」
河村杏奈「もしかして、今まで彼氏を作らなかった原因は、足立さん?」
岩本玲菜「ま、まさかぁ。 5年も連絡なかったのよ? さすがにそれはないわー」
河村杏奈「なら良いんだけど」
河村杏奈「だって、玲菜から男の人を誘うなんて今まで見たことがなかったから」
河村杏奈「焼けぼっくいに火がついたかと思ってね」
河村杏奈「そもそも、玲菜が付き合っていた人がいたの、知らなかったし」
河村杏奈「それも、あんなイケメンと!」
岩本玲菜「そ、そりゃー、懐かしいとは思ったし いろいろ思い出したけど・・・」
河村杏奈「玲菜、わかりやすいから」
河村杏奈「その頃も心配したのよ。 ウチの旦那さんも「なんか挙動がおかしい」って」
河村杏奈「ちょうど私は出産で里帰りしていたから、 様子はうかがえなかったけど」
河村杏奈「・・・」
河村杏奈「でも、足立さんは既婚者だからダメよ」
岩本玲菜「ないない!大丈夫!」
河村杏奈「だから、二人っきりでは会っちゃダメ。 どうしても話したくなったら、私か昇くんを使って!」
河村杏奈「それだけは、しっかり伝えとこうと思って」
河村杏奈「それじゃあ! 今日は誘ってくれてありがとう!」
岩本玲菜「うん。いろいろありがとう。 河村部長にもよろしく言っておいてね!!」
  改札口を通り抜けていく杏奈の背中に手を振りながら、玲菜は軽くため息をついた。
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「・・・私、何やってんだろ」
  排気ガスと埃と排水溝の混ざった臭いが、生ぬるい風に乗って玲菜の身体を通り過ぎていく。
岩本玲菜「今まで恋人を作らなかった理由」
岩本玲菜「もしかして、いつか戻ってくると どこかで思っていた?」
岩本玲菜「涼太が今も あのネクタイリングをしているのは」
岩本玲菜「変わらず思いは私にあると・・・ 思いたかった?」
倉島昇「玲菜さーん! 良かった!まだいた!」
岩本玲菜「昇さん!」
岩本玲菜「どうしたんですか?」
倉島昇「いやぁ、なんか、ちょっと面倒臭くなって」
倉島昇「代わってくれませんか?」
岩本玲菜「電話?」
岩本玲菜「・・・もしもし?」
「・・・あれ?玲菜?」
岩本玲菜「・・・涼太・・・さん?」
岩本玲菜「さっき杏奈が「焼けぼっくいに火がついた」なんて言うから、変に意識しちゃうじゃない!」
  ── まだ、昇と一緒にいるのか?
  涼太のその一言で
  突然、玲菜の心臓が激しく鼓動する。
  次の瞬間、目の前が真っ暗になった。

〇シックなリビング
足立涼太「お前さぁ。俺が嫌だと思うこと、わざとやってんだろ?あ?」
足立涼太「仕事の打ち合わせ? しらねーよ。今すぐそいつに電話しろよ。 ここで」
足立涼太「今すぐ断れよ。俺の目の前で」
足立涼太「あー、ホント気分悪りぃーなぁー」
足立涼太「そうやって女を振りかざして仕事もらってきたんだろ?何人と寝たんだ?」
足立涼太「あー、汚い。 気持ち悪りぃーから、近くに来んなよ!」
  そんなこと、するわけないのに。
  なんで、そんな事言うの?

〇新橋駅前
  消していた記憶がまたひとつ
  玲菜の脳裏にフラッシュバックした。
岩本玲菜「そうよ。 あんな酷い目にあっていたんだから、 あいつを待っているはずがない」
「もしもし?玲菜?聞こえてる?」
岩本玲菜「あ、ごめんなさい。ボーっとしてて。 聞こえてます」
「いや、そのぉ・・・」
「せっかく声かけてくれたのに、 行けなくてごめん!」
岩本玲菜「いえいえ、夜は難しいって聞いていたけど、ダメ元で」
「わりぃな。 ランチとかだったら大丈夫だから、 また、昇と一緒にお邪魔させて!」
岩本玲菜「・・・そうですね。 久しぶりに、ゆっくり話せたらいいですね」
岩本玲菜「・・・」
岩本玲菜「昇さんと一緒、を、強調してきたのは 昇さん経由で連絡下さいってことか・・・」
「・・・今、パパ、電話中だから。 うん。カイシャの人。そうそう。 ノボルだよ。 ちょっと待ってて」
「・・・怖い夢見たの? わかった、わかった。ママと一緒に絵本読んであげるから」
岩本玲菜「奥さんと一緒に・・・」
  パパ、ママ、子供・・・
  ── 心が、ザワザワする。
倉島昇「いやぁ、すみませんでした。 本当に行ったのか、疑われちゃいまして」
倉島昇「「部長が行けないなら、せめて、僕は行かないと!」って言って、残業から逃げたのがまずかったかなぁ」
岩本玲菜「ごめんなさい。 私が突然誘ったので・・・」
岩本玲菜「私からしっかり説明しましょうか?」
倉島昇「いやいや、玲菜さんが悪いわけじゃないから!」
倉島昇「それに、部長が家にいる時は、こっちから電話しちゃダメなんですよ」
岩本玲菜「そうなんですか?」
倉島昇「この間は部長が目の前にいたから、奥さんのこと褒めちぎっておいたけど」
倉島昇「あ、可愛いのは本当なんだけど、 ちょっとヤバい人で」
岩本玲菜「ヤバい人?」
倉島昇「会社ではかなり有名ですよ」
倉島昇「実はですね・・・」
岩本玲菜「なるほど・・・ね」
  ── そういうことか。

次のエピソード:美しい桜

コメント

  • 奥さんのことが出てきましたね!
    気になります😆
    どんどん読みます!

  • 思い出すのは、いいことばかりといいます。これから、どっちにも転んでいきそうなスクランブル交差点途上で、今後が楽しみです。

  • 過去の思い出を、愛憎含めて全て向き合う玲菜さん、オトナの女性ですよね!とはいえ、消化しきれない様々な感情でモヤモヤするのもリアリティ満載で。杏奈さんの、オバサン化・オジサン化の表現はすごく納得してしまいました!

コメントをもっと見る(11件)

ページTOPへ