さつらもん

Saphiret

エピソード4(脚本)

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〇綺麗な部屋
田中真司(たなかしんじ)「『聞こえ』を失くすって、どういうことですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「現世以外の、異界に関わる全ての音が聞き取れなくなってしまったの」
田中真司(たなかしんじ)「じゃあさっきの『洞』で無間の叫び声は・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「分からなかった」
田中真司(たなかしんじ)「だけどちゃんと無間を封じ込めてたじゃないですか」
殺裏比可理(さつうらひかり)「この無間程度なら私にとっては本来、手こずる相手じゃないから」
田中真司(たなかしんじ)「そうなんですか・・」
田中真司(たなかしんじ)「でも、聞こえなくなったって・・・なんで?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「この前やりあった『土蜘蛛』・・・敵に盗られてしまってね」
田中真司(たなかしんじ)「盗られる!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「油断した」
田中真司(たなかしんじ)(いつも高圧的な態度の札浦さんがこんな 沈痛な顔をして・・・)
  これは面白い・・・
田中真司(たなかしんじ)「え?」
  背後から無間の声がしてぎょっとなる
  さつらもんが『聞こえ』ごときで難儀するとは愉快、愉快!
田中真司(たなかしんじ)「札浦さん、今無間が・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「え?」
田中真司(たなかしんじ)(あ、聞こえないのか)
殺裏比可理(さつうらひかり)「だから今の私では『聞き取り』ができない・・・」
  そんなことが仲間にばれたらどうなるか・・・
  せせら笑う無間に嫌な予感がした
殺裏比可理(さつうらひかり)「だから・・・助けてくれないかな」
殺裏比可理(さつうらひかり)「凶つものを捕らえた後の経過が遅いと、新大師(しんたいし)様に・・・」
田中真司(たなかしんじ)「しんたいし・・・さま?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「いや、えーっと・・・マズいことになる」
  札浦さんの必死の形相を見ると、かなり深刻なのだと分かる
田中真司(たなかしんじ)(母さんは『聞こえ』の力を嫌っていたけど・・・)
田中真司(たなかしんじ)(ばあちゃんだったら、何て言うだろう?)

〇実家の居間
田中節子「真司、驚かなくていいんだよ」
田中節子「婆ちゃんのお爺ちゃんも色々な音が『聞こえる』人だったんだよ」
田中真司(少年時代)「え、ばあちゃんのおじいちゃんも!?」
田中節子「そう。 この家には昔から『聞こえ』の者が時々生まれるんだ」
田中真司(少年時代)「ときどき・・・そうなんだ」
田中節子「うん」
田中真司(少年時代)「ばあちゃんのおじいちゃん、どんなひとだったのかなあ」
田中節子「婆ちゃんも小さかったからね。ただ・・・」
田中節子「お爺ちゃんはこの村を救った人だったんだよ」
田中真司(少年時代)「えー! それホント!?」
田中節子「本当だよ。 今でも覚えてるのは・・・」
田中節子「『聞こえ』である自分の役割りだって言って、出ていったんだよ」
田中真司(少年時代)「やくわり・・・」
田中節子「真司」
田中節子「『聞こえ』は人よりちょっと耳が良いだけ」
田中節子「怖いことでも変なことでもないんだよ」
田中節子「でもそれだけに『聞こえ』にしかできない役割りがあるかもしれない」
田中節子「困っている人を助ける力にできるといいね」
田中真司(少年時代)「うん」
田中真司(少年時代)「それで、ばあちゃんのおじいちゃんは、どうなったの?」
田中節子「それは・・・」
田中咲子(たなかさきこ)「真司! 宿題もしないでなにやってるの!?」
田中真司(少年時代)「おかあさん!」
田中真司(少年時代)「ちがうよ、ばあちゃんにおじいちゃんのはなしを・・・」
田中咲子(たなかさきこ)「お義母さん、まさかお爺さんの『聞こえ』の話を・・・?」
田中節子「ごめんさない、咲子さん。ただ・・・」
田中節子「『聞こえ』なんだってきちんと教えてやれば真司の戸惑いも軽くなると思って・・・」
田中咲子(たなかさきこ)「お気持ちは分かりますが・・・」
田中咲子(たなかさきこ)「でも真司には『聞こえ』にこだわらず、普通の人生を送ってほしいんです」

〇綺麗な部屋
田中真司(たなかしんじ)(困っている人を助ける・・・)
田中真司(たなかしんじ)「『役割り』か・・・」
田中真司(たなかしんじ)(お母さんはああ言ってたけど、本当はあれからずっと・・・)
田中真司(たなかしんじ)(本当はずっと考えてきた。 婆ちゃんの言う『聞こえ』の役割りって何だろう。いろんな「音」が聞こえるたびに)
田中真司(たなかしんじ)(この力が一体何のために与えられたのか。 自分に何ができるのか。 自分にしかできないものは何なのか)
田中真司(たなかしんじ)(自分は何者なのか)
田中真司(たなかしんじ)「分かりました」
田中真司(たなかしんじ)「手伝ってみます」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ホントに!? 助かる!!」
田中真司(たなかしんじ)(母さん、ごめん。 でも僕の力を必要としている人がいるのに無視はできないよ)
田中真司(たなかしんじ)「それで、何をすればいいですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「まず、無間がいつの時代にどういういきさつで凶つ者になったのか聞き出して」
田中真司(たなかしんじ)「ええと、まずそこなんですけど・・・会話って成り立ちますかね?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「相手は魔物だからね。 いろいろと惑わせてくるだろうけど・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「何を言われても揺らがないことだね」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ってことでよろしく!」
田中真司(たなかしんじ)「え? 他にもっと、具体的な手順とか、例えば作法とか細かく教えてもらえると・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「手順なんてないよ」
田中真司(たなかしんじ)「えっ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「凶つ者との対峙は1対1の勝負みたいなものだよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「人のマネや踏襲は意味をなさない。 自分のやり方しかないの」
田中真司(たなかしんじ)「えーっ、でも、でも僕やったことも、見たことすらもないし・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大丈夫、私がついてる。 無間に手は出させないよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「聞こえなくたって大学生・・・田中真司は守ってみせる」
田中真司(たなかしんじ)「もう、ホント強引な上に雑だな! しかも呼び捨て決定かよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「あ、心配ならこれ貸してあげる」
田中真司(たなかしんじ)「何ですか、これ?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「飾り刀。 呪(まじ)を含ませてあるから守りになるよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「相手の力を封じるのと、こちらの言霊を強める効果がある。 これを無間に向けて構えて話しかけるといいよ」
田中真司(たなかしんじ)「あ~、それは何だか心強いです」
殺裏比可理(さつうらひかり)「じゃ、いい? 無間の結界を緩めるよ」
田中真司(たなかしんじ)「はい」
殺裏比可理(さつうらひかり)「クヮガティ、ハラガティ、ハラソガ・・・」
  僕は飾り刀を胸の前で構えた
  この・・・窮屈に縛り上げおって・・・
  無間の目がカッと開かれた
殺裏比可理(さつうらひかり)「あ、そうそう一応言っておくね」
殺裏比可理(さつうらひかり)「その刀、持つ者を選ぶって言われてるから気を付けて」
田中真司(たなかしんじ)「えっ、それってどういう意味ですか!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「持つ者によこしまな影があれば、逆にその刀にバッサリやられるってこと」
田中真司(たなかしんじ)「えっ!? ちょ、ちょっと待ってください!!」
  おお、おお!
  『聞こえ』を失くしたさつらもんが吾を検分しようとは、片腹痛いわ!
田中真司(たなかしんじ)「うわあああ!」

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