侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

6.ミカエル殿下。その手はやっぱり取れなくて(脚本)

侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

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〇噴水広場
アガット「うわ~、賑やか! 今日は広場に市が出てるのね」
アガット(珍しい食べ物がたくさん並んでる。 心が踊るわ~♥️)
アガット「さ・・・魚から甘い匂い!? 何なんですか、アレは!!」
ミカエル「東部の菓子『タイヤーキ』だそうだ。 パリッとした皮の中に、豆から作ったクリームが入っている」
アガット「へぇ~♥️ 珍しい」
ミカエル「今日は異国の商人にも、正式に出店の許可を出しているからな。 君が見たことのないものも多くあるだろう」
アガット「えっと、こっちは・・・まさか!?」
ミカエル「『チョコバナナ』だな。 これも一部の地域で食べられている菓子だ」
ミカエル「”君の大好物” をチョココーティングし、食べ歩きできるよう串刺しにしたらしい」
アガット(バナナネタ、案外しつこいわね。 でも・・・)
アガット(ホント美味しそう♥️ ぜんぶ食べてみたくなっちゃうわ)
ミカエル「君の2つ目の条件、 『スイーツの店』はこの場所にした」
アガット(えぇ? ここが!?)
ミカエル「大抵の店はきっとラファエ・・・他の者と、 すでに行っていると思ってな」
ミカエル「どうだ、気に入ったか?」
アガット「ええ、とても!」
アガット「ミカエル殿下が選んで下さった場所としては、だいぶ意外でしたけど」
アガット「実は市場を見て回るのは初めてなんです! だからどれもすごく新鮮で──」
アガット「ハッ!」
アガット(気に入ってどーするのよ!! 『最悪なデート』にしなきゃいけないのに)
ミカエル「・・・」
アガット「な、何ですか? じーっと見たりして」
アガット「令嬢のくせに食い意地がはってるとでも、おっしゃりたいのかしら?」
ミカエル「いや。 君は表情が豊かだな、と思って」
ミカエル「フッ。何時間でも見ていられそうだ」
アガット「え!?」
アガット(何よそれ・・・1人寸劇ってこと?)
ミカエル「・・・」
アガット(ヤダ。だから何よ、その目・・・)
アガット(いつも冷淡な口調で、嫌味を言うか命令しかしないくせに)
アガット(そんな熱っぽい眼差しを黙って向けられたら、調子狂うじゃない・・・)
ミカエル「そろそろ市を出て、君への礼品を選びに行こう」
ミカエル「南の路地に、皇室御用達の宝石店がある。 君もきっとそこでなら・・・」
アガット「ジュエリーは結構です」
アガット「でしたらここにあるタイヤーキとチョコバナナ、ぜんぶ買って頂けません?」
ミカエル「なに? 全て食べ尽くす気か!? いくら君でもそれは・・・」
アガット「そんなわけナイじゃないですか。 広場にいる子供たちに、配ろうかと」
ミカエル「・・・平民の子にか?」
アガット「いいえ、区別はしません。 町の子供たちはもちろんですが──」
アガット「貴族の子供も反対に、こういう馴染みのないものは口にさせて貰えないでしょ?」
アガット「アクセサリーやドレスも素敵だけど、みんなで美味しいものを食べる時間──」
アガット「私にはそっちの方が、有意義なプレゼントだわ」
ミカエル「・・・そうか。 君が望むなら、そのようにしよう」
ミカエル「店主、ここにあるものを全部くれ」
アガット「さあ、みんなどうぞ! とっても美味しいわよ」
子供「わーい、ありがとう❤️」
子供「いただきまーす!」
アガット(ふふ。 甘いものは人を笑顔にするわね)
子供「じー」
ミカエル「ん? 君も食べるか?」
アガット(あっ。 ずいぶんと貧しい・・・)
アガット「殿下、その子には私が──」
ミカエル「君には2本だ。さあ、遠慮なく受け取れ」
アガット(ウソ!? わざわざ膝を折って・・・)
子供「ありがとう!」
アガット「・・・慣れてらっしゃるんですね。意外です」
ミカエル「帝都を離れていた時、多くの子供と接する機会があった」
ミカエル「それにアカデミーでは地位も身分も関係ない。平等だ」
アガット「・・・」

〇草原の道
ミカエル「今日は君を楽しませられた── と思って良いか?」
アガット「ええ、まあ・・・」
ミカエル「護衛を向こうで待たせてある。 もう少しだけ歩こう。 疲れたなら、私につかまるといい」
アガット「ご心配には及びませんわ」
アガット(ふぅ。本当はクタクタよ。 あんなにはしゃいじゃうなんて、何やってるのかしら私)
  でもここのところ鬱々としていたし、
  ラファエルとはずいぶん前から、外出なんて出来ていなかったから──
アガット(いい気分転換になったわ。 ミカエル殿下に感謝しなくちゃ)
  心からそう思える。
アガット「きゃっ!」
ミカエル「大丈夫か?」
アガット(やだ、近い・・・)
アガット「も、申し訳ありません! 足がもつれて」
ミカエル「・・・」
アガット(思わず、殿下にしがみついちゃったわ。 恥ずかしい)
  慌てて身体を離そうとする、私。
  でも彼はそれを許してくれず──
  私の手をつかみ、そのまま力強く自分のもとへと引き寄せる。
アガット「・・・殿下?」
ミカエル「・・・」
ミカエル「手をつないで歩いても、良いだろうか?」
アガット「えっ!?」
アガット「い・・・イヤです! お断りします! それは、そのぉ・・・ 恋人同士がやることですわ💦」
ミカエル「そうか・・・」
アガット(やめてよ、何よその子犬みいたいなカオ)
ミカエル「・・・急いたな。 ではまた、共に時間を過ごそう」
ミカエル「皇宮で珍しい品種のバラが咲いた。 それを見に来る、というのはどうだろうか?」
アガット(これはさすがに断れないわね)
アガット「分かりました。 バラは好きなので、今度伺います」
ミカエル「そうか! では、次の休日はどうだろう。 ちょうど見頃なようだが」
アガット(あ、その日は・・・)
アガット「申し訳ありません。 ラファエル皇子と先約があるので、また日を改めさせて下さい」
ミカエル「ラファエルと先約だと?」
アガット「ええ、剣術を定期的に教えて頂いてるんです」
ミカエル「ならぬ!!  剣術なら、私の護衛騎士に教わればいい」
ミカエル「ラファエルと2人で会うことは、今後いっさい認めぬ」
アガット「なっ・・・そんなの困ります! なぜ殿下に、そんなことを決められなきゃいけないんですか!?」
ミカエル「私こそが、君の婚約者だからだ」
アガット「だからって横暴だわ! あなたの私利私欲のために、私は黙って婚約を受け入れたというのに」
アガット「ラフとの交流も断てだなんて、あんまりです」
アガット「だってラフと私は、幼い頃からずっと一緒で・・・」
アガット(妃になるって、約束までして・・・)
ミカエル「・・・」
ミカエル「そうか、君がそこまで言うなら仕方ない」
ミカエル「ラファエルを公国に視察に出すべき── そう、皇帝陛下にご提案申し上げるが?」
アガット「なっ!?」
アガット(公国に向かったら、3ヶ月は帰ってこれないじゃない!)
アガット(そのうちに私とミカエル殿下の、婚姻が成立してしまったら・・・)
  もっと、ラファエルに会うのが難しくなる。
アガット「・・・あなたは」
アガット「こんな、たかが侯爵家の娘を脅してまでも、自分の欲を通されるのですね」
アガット(やはりこんな人に『皇太子の座』は相応しくない)
ミカエル「何とでも言うがいい。 私はその為だけに、ここにいる」
アガット「・・・」
アガット(せっかく、楽しかったのに・・・。 ちょっとは見直したのに・・・)
  けっきょく私はミカエル殿下にとって、政治の駒でしかないんだわ。

次のエピソード:7.熱い唇、温かな手。やわらぐ胸の痛み。

コメント

  • ミカエルの口調のせい?アガットに思いが伝わっていない〜!アガットに口ベタさんを察してくれよと叫びたいです。
    顔が間近になるスチル、ドキッとしました。
    やっぱりミカエルはラファエルを意識しているんだなと思いました。それが王位継承権だけではないということは痛いほど伝わってきますが、タダの一目惚れなだけのかな?
    何か隠された真実がありそうですね。

  • ミカエル、いいやつなのかどうなのか……
    アガットの揺れ動く気持ちも良きですね、ふふってなっちゃいました😆
    朝永的にはこのところラフが出てこなくてちょこっと寂しかったので、名前だけでも出てきてくれて嬉しかったです♥😊

  • 子どもにスイーツ配るアガット、好き💕💕やっぱり推せる~!😆💕
    バナナもしっかり入っていて腹筋のご褒美でした。
    アガットが滑ったのがバナナの皮じゃなかったのが残念でしたが、きっとバナナの皮で滑るのはミカエルの専売特許なのですね(納得)
    ミカエルが駄々っ子になるのわかる。わかるよ。アガットが可愛いから仕方ないよね!

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