侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

椎名つぼみ

5.急接近?️ デートの条件はファッションとスイーツ(脚本)

侯爵令嬢アガットは、赤髪皇子の妃になりたい

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〇豪華なベッドルーム
ミカエル「ん・・・」
アガット「ミカエル殿下、気づかれましたか!?」
ミカエル「ここは・・・?」
アガット「ベリー家の邸です。 ちょうどお医者様がいらしてたので、我が家に運ばせて頂きました」
アガット「覚えていらっしゃいますか? 食事の席で、急に倒れられて」
ミカエル「・・・」
ミカエル「もう日が沈みがかっている・・・」
ミカエル「迷惑をかけたようだな。 礼を言おう」
アガット「いえ。 ご無事で何より──」
ミカエル「ダイヤの原石か? 職人が加工したアクセサリーか」
アガット「はい?」
ミカエル「有名デザイナーのドレスか。 はたまた名馬を1頭か」
アガット「あの、何を仰って・・・」
ミカエル「今日の礼だ。君はどんなものが欲しい? 好きなものを選べ」
アガット「何ですか・・・それは。 いりませんよ、そういうの」
ミカエル「何だと!?」
アガット「そんなことより、どうして言わなかったんですか? アレルギーがあるから食べられないんだって」
ミカエル「・・・」
アガット「魚介も、ナッツも。 殿下の命に関わるものなんですよね?」
アガット「食わず嫌いでお皿を下げさせたわけじゃないと、はじめから言って下されば」
アガット「あんなふうに、私も嫌味は申し上げませんでしたのに・・・」
ミカエル「帝国の皇子として、人前で隙は見せられないであろう?」
アガット「え?」
ミカエル「継承問題が浮き彫りとなり、派閥争いも避けられないこの状況で、」
ミカエル「自分の弱点を、たやすく露呈するわけにはいかない」
アガット「あ・・・」
アガット(そうよね。 命を狙われることだってあるんだもの)
アガット「・・・」
ミカエル「でも何より──」
ミカエル「君が美味しそうに食べていたからな」
アガット「え?」
ミカエル「同じものを食してみたくなった。 失敗したけれどな」
アガット(ミ・・・ミカエル殿下が、笑った!? えーーー!?)

〇立派な洋館
アガット「もう2度と無茶をなさらないように。 次は助けませんからね」
ミカエル「ああ。肝に命じておこう」
ミカエル「ところで、今日の礼のことだが──」
ミカエル「欲しいものがないというなら、共に街に行って探すのはどうだ?」
アガット「え? ミカエル殿下と私がですか!?」
アガット(そんなの、まるでデートみたいじゃない)
アガット「お断りいたします。 殿下とじゃ目立ってしかたないですし」
アガット「誰が見ても平民にしか見えないような、変装でもして下さるなら、話は別ですけど?」
ミカエル「・・・」
ミカエル「分かった。そのようにしよう」
アガット「え? いや、 皇子がそんなことまでしなくても・・・」
ミカエル「なぜだ? 面白そうじゃないか」
アガット「あ、あと! 私はスイーツには目がないんです!」
アガット「私を満足感させられるようなお店を、ミカエル殿下はご存じかしら?」
ミカエル「・・・分かった。 それも調べておこう」
アガット(何なのよ、調子狂うじゃない)
ミカエル「では、またな」
  ハ・・・くしゅん!
アガット「ミカエル殿下、やだ。 風邪ですか?」
アガット(アレルギーで倒れたうえに、宮殿に戻って熱まで出されたら・・・ 大変な騒ぎになるじゃない)
アガット「殿下、これを」
ミカエル「なっ・・・」
アガット「馬車の中はここより暖かいと思いますが、それでもすきま風で冷えるわ」
アガット「私物で申し訳ないですけど、何もないよりはマシでしょ? 首もとに巻いてお帰り下さい」
ミカエル「・・・ ありがたく、拝借する」
ミカエル「君の・・・匂いがするな」
アガット「え!?」
ミカエル「では、また」
アガット(何なのよ、ホント・・・)

〇綺麗な部屋
  そして、当日──
アガット「マリー、こんな感じかしら? どう、街娘に見える?」
マリー「アガットお嬢様! 何ですかそのお姿は!?」
マリー「本日はミカエル殿下と外出されると聞いておりますが・・・」
アガット「ふふ。 マリーがうるさいく言うと思って、他のメイドに秘密裏に用意させたの」
アガット「私が殿下に『目立たない格好で』と条件を出したんだから。 こちらも合わせないとね」
マリー「ですが、これはあまりにも・・・」
マリー「第一、あのミカエル皇子が、このような質素な格好をなさるとは思えませんし」
アガット「それならそれでいいんじゃない? 私の希望に、彼が答えられなかったということで」
アガット「そもそも、趣味が合わない。気も合わない。 それが1番なんだから」
マリー「・・・」
マリー「お嬢様、何だか楽しそうですね」
アガット「そ・・・ そんなことあるわけないじゃない! これは『嫌われ大作戦』の1つよ!」
マリー「・・・そうですか」
アガット「いらしたようね」

〇豪華な部屋
アガット「み、ミカエル殿下!? 何なんですか、それは・・・」
ミカエル「少し、遅れたか?」
アガット「いえ、そうではなく・・・その格好」
ミカエル「誰にも真似のできない、君が望むような平民の衣装を、補佐官に命じたのだが」
ミカエル「違うのか? これは君の好みではないと!?」
アガット(異国の民族衣裳かしら? 合わせをほどいたら、簡単に胸元がはだけそうな服ね)
アガット(嫌いじゃない・・・ そうとう優秀な補佐官だわ)
アガット「・・・」
アガット「え~・・・コホンッ」
アガット「違うわけではないのですが・・・ だいぶ、私の予想を上回っていて」
アガット「それにこの姿では『目立たないように』という、本来の目的が果たせてないですし」
ミカエル「そうか。 ではもう1着用意させた方に、着替えて来よう」
アガット「・・・」
ミカエル「どうだ? これなら問題なく、街に馴染めるであろう」
アガット「ええ。たしかに問題はありません。 ですが・・・」
アガット(何だか似合わない。違和感しかないわ)
アガット(こんな平民いるわけないでしょ。 皇族オーラが隠しきれてないのよ)
マリー「アガットお嬢様・・・それですよ。ソレ」
マリー「やっと私の先ほどの気持ちを、ご理解頂けたようですね」
アガット「ええ、今ようやくね」
アガット(『変装』というよりは、『仮装』ってとこかしら)
アガット「殿下・・・着替えましょう(お互いに)」
ミカエル「いや、そうはいかない。 平民としてでなければ、私と街を歩くことは出来ないのであろう?」
アガット「まあ、そうは言いましたが・・・」
ミカエル「それに、君のその姿は── なかなかに初々しい」
アガット「え!?」
ミカエル「とにかく、条件は満たした。 約束だ。行くぞ」
アガット(仕方ないわね・・・)

次のエピソード:6.ミカエル殿下。その手はやっぱり取れなくて

コメント

  • ミカエル絶対良いヤツ🙆
    私はミカエルにします😍←何が?
    アガットもこのままじゃオチるのでは!?
    イケメン2人にキュンキュン、楽しい〜🎶

  • 一気読みさせて頂いています😆
    冷たく傍若無人に見えたミカエルも、段々とコミカル(天然)だったり紳士な要素が出てきて、少しずつ縮まる二人の距離⋯読み手としても最初は完全にラフ一択だったのに、ミカエルも悪い人じゃない!?ってソワソワしちゃいますね☺

  • 遅くなりましたが、読ませていただきました!
    この辺りはミカエルのターンなのですね!
    そしてなかなか優秀な補佐官さんですね!着物って🤣
    バナナでスッテンコロリン作戦から、ちょくちょく入る笑いが最高です🤣🤣🤣
    続きも楽しませていただきます😊🙌

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