さつらもん

Saphiret

エピソード3(脚本)

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〇綺麗な部屋
殺裏比可理(さつうらひかり)「隠さなくていいから」
殺裏比可理(さつうらひかり)「『聞こえ』ならちょうどいい。ちょっと手伝ってくれない?」
田中真司(たなかしんじ)「手伝うって、何を・・・?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「検分よ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「あの欲の化け物のバラシ・・・成仏させる前に縁(えにし)をたどってほしいの」
田中真司(たなかしんじ)「え、何をするって!? ・・・って、うわあ!」
  札浦さんの目線を追うと、そこには御札で貼り固められた物体が見えた。
田中真司(たなかしんじ)「これはもしかしてさっきの・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「そ、さっき封じ込めた無間。 要はソレから話を聞きだしてほしいの」
田中真司(たなかしんじ)「話すなんて無理です。 ってか、さっきの暴れ方、衝撃的なんですけど」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大丈夫。もう急所を押えてあるから、さっきほどの振動幅は保てないよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「無間はほら、凡字の真言でがんじがらめになってるからね」
田中真司(たなかしんじ)「いやいや、そういう問題じゃなくて・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「心配なら念のため結界を張るから. ちょっと待ってて」
  そう言うと札浦さんは無間に向かって、指を色々な形に動かしながら呪文を唱え始めた
殺裏比可理(さつうらひかり)「オン、マー、リョウ、シィ、テイ ・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「出来た! ほら見て」
田中真司(たなかしんじ)「見てって、何もないんですけど・・・ あ、あれ?」
  無間の周り1メートルくらい、そこだけ空気が少し歪んでんで見えた
  よく見ないと気づけない程度だ
田中真司(たなかしんじ)「これが結界・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「そ。無間はそこから出てこられない」
殺裏比可理(さつうらひかり)「すこぶる安心安全だね!」
田中真司(たなかしんじ)(安全って何を基準に言ってるんだ、この人は!?)
  札浦さんは僕の動揺をよそに、無間の顔の辺りのお札を一枚剥してみせる。
  ううう・・・なんと窮屈な・・・おのれ!
  次の瞬間、無間が火の気を帯びてきた。
田中真司(たなかしんじ)「うわああ!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「しつこいね!」
  札浦さんがさっきやった指の形を鋭く無間に向けると結界のゆがみが増した
  とたんに無間の炎が鎮まる
  ううう・・・
殺裏比可理(さつうらひかり)「ほらね。安全」
田中真司(たなかしんじ)「はあ、なるほど・・・ って、そうじゃなくて! 全然安心できないし!」
田中真司(たなかしんじ)「だいいち、僕みたいな素人には無理でしょう!?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「洞の音を聞きつけたくらいだから、大学生の『聞こえ』の力、なかなかじゃないの?」
田中真司(たなかしんじ)「僕、あれは誰にでも聞こえる音だと思ってたんですけど」
殺裏比可理(さつうらひかり)「えっ、聞き分けができないってこと?」
田中真司(たなかしんじ)「まあ、はい」
殺裏比可理(さつうらひかり)「なんだ、その程度か・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ま、低レベルだろうと『聞こえ』には違いないんだから、頼むわ」
田中真司(たなかしんじ)(低レベルって、感じ悪いな)
田中真司(たなかしんじ)「いや、だから僕、出来ませんから」
殺裏比可理(さつうらひかり)「なんで? そんなに怖い?」
田中真司(たなかしんじ)「怖いですよ。でもそれよりも・・・ この力は使わないことにしているんです」
殺裏比可理(さつうらひかり)「はああ!? さんざん関わっておいて今さらなに!?」
田中真司(たなかしんじ)「すみません!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「私、さっき大学生を助けたよね?」
田中真司(たなかしんじ)「それには本当に感謝してます!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「ただでとは言わない」
殺裏比可理(さつうらひかり)「『聞き取り』を手伝ってくれたら5万出す。どう?」
田中真司(たなかしんじ)「5万!? 1日で!?」
田中真司(たなかしんじ)「いやいやいやダメです」
殺裏比可理(さつうらひかり)「6万」
田中真司(たなかしんじ)(くぅ・・・バイトも無くなったし、家賃を考えると・・・)
田中真司(たなかしんじ)「でもやっぱり・・・出来ません。 母との約束なんで」
  嫌な沈黙が流れた
  札浦さんがひとつ咳ばらいをして僕を見つめた
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生はさっき、私のことを『霊能者みたいなものか』って言っていたけどさ」
田中真司(たなかしんじ)「はい、だってそう思ってればいいって」
殺裏比可理(さつうらひかり)「理解できないと思ったからね」
殺裏比可理(さつうらひかり)「でもこの際、ハッキリ説明すると単なる悪霊退治とか除霊とかとはわけが違うから」
田中真司(たなかしんじ)「はあ、そうなんですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「この国の守護を担う、もっと国家的な活動なの」
田中真司(たなかしんじ)(なんかこれ以上詳しい話を聞くのはヤバい気がするんだけど!)
殺裏比可理(さつうらひかり)「疑ってるね?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「この国には無間みたいな亡者がうようよしているんだよ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「それこそ古事記の時代の大昔からね」
  無間・・・
  部屋の隅のお札に包まれた例の塊を見る
殺裏比可理(さつうらひかり)「そういう凶つ者(まがつもの)を除いて民草の暮らしがうまく回るように整える仕組みがこの国にはあるの」
殺裏比可理(さつうらひかり)「公けには知られてなくてもね」
田中真司(たなかしんじ)(ハッキリ言って理解できない)
田中真司(たなかしんじ)「あ~、それはすごいですね。 でも僕にはあまり関係ないと思いますけど」
殺裏比可理(さつうらひかり)「関係あるの!!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「知らないだけでみんな守られて暮らしているの!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生の友達も、家族も、もちろん母親もね!」
殺裏比可理(さつうらひかり)「だから力を持っている大学生は喜んで私を助けるべきなの!!」
田中真司(たなかしんじ)(前から思っていたけど、この人ちょっと強引なんだよ)
田中真司(たなかしんじ)「それは札浦さんの理屈でしょう 悪いけど僕には僕の考えがありますから」
殺裏比可理(さつうらひかり)「な・・・!! アレをそのままにしていくつもり!?」
田中真司(たなかしんじ)「札浦さんが自分でその・・・『聞き取り』をすればいいんじゃないですか?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「えっ・・・」
殺裏比可理(さつうらひかり)「それは・・・」
田中真司(たなかしんじ)「僕みたいな『低レベルの聞こえ』をアテにされても困ります」
殺裏比可理(さつうらひかり)「低レベルって・・・さっきは単に力量の確認しただけだからね」
田中真司(たなかしんじ)「とにかく僕は関われませんから」
田中真司(たなかしんじ)「ごめんなさい」
  札浦さんに背を向ける
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学生、ちょっと・・・待って!」
田中真司(たなかしんじ)「それから僕の名前は『大学生』じゃありません。田中真司です」
殺裏比可理(さつうらひかり)「あ・・・」
田中真司(たなかしんじ)「それじゃ」
殺裏比可理(さつうらひかり)「大学・・・田中、真司!!」
田中真司(たなかしんじ)「えっ、呼び捨て!?」
  札浦さんが僕の前に回り込んできた
  そのあまりに必死な形相に思わず立ち止まる
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・助けてほしい」
田中真司(たなかしんじ)「は?」
殺裏比可理(さつうらひかり)「・・・聞こえないの」
殺裏比可理(さつうらひかり)「私は・・・ 『聞こえ』の力を失くしてしまったの」
田中真司(たなかしんじ)「失くした!?」

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