立てば説教 座れば嫌味 歩く二人は薔薇の刺

もと

藤色の(脚本)

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〇豪華な部屋
  粗茶でございまーす。
お義母さん「やっとまともにお茶が出せる様に なったのね」
  はい、おかげさまで。
お義母さん「あらこの湯呑み茶碗、桜柄よ」
  はい?
お義母さん「紫陽花やクチナシがあるでしょう もっと季節に合ったお湯呑みで出すべきね」
  飲めれば一緒じゃないですか。
お義母さん「風情も何も無い雑な嫁だこと 恥ずかしくて外に出せませんね」
  あ、さっき朝イチでコンビニ行きました。
  アイス食べたかったんですよ。
  外に出ちゃってゴメンナサーイ。
お義母さん「褒めて損したわ」
  え? 褒めてたんですか? どこを?
  雑過ぎて分かりませんでしたー。
お義母さん「・・・ウフフ」
  あはは、あーあ。
お義母さん「・・・ハア・・・」
  で、こんなに朝早くから何のご用ですか?
お義母さん「来月、七月三十日の土曜日に お父様の九十歳の誕生日パーティーを 開きます」
  ああ、お祖父ちゃんの、了解です。
  それはいつものより大切な用事ですね。
お義母さん「長男の嫁として、次期社長の片腕として 心して準備なさい」
  そうですね。お祖父ちゃんは好きです。
  だから私が出来る範囲で頑張りまーす。
お義母さん「・・・本当にもう・・・」
  はい?
お義母さん「ああ言えばこう言う、 人としてどうなのかしらね?」
  ご心配なく。親戚の皆さんとも会社でも
  ご近所さんも、あ、お手伝いさんも、
  皆と上手くやってまーす。
  お義母さんは気にし過ぎですよー。
お義母さん「ああそうですか、悪うございましたね」
  うふふ。
お義母さん「ウフフ」
  まだ帰らないんですか? ていうか、
  日時だけ教えてくれるんなら
  電話で良くないですか?
  あ、そっか!
  使い方を教えて差し上げましょうか?
  ワタクシが、お義母さんに!
お義母さん「電話だといつも貴女は後ろで何か 用事をしながら適当に・・・」
お義母さん「ハア・・・使い方は結構です お心遣い痛み入ります、帰ります」
  あ、怒っちゃいました?
  オユノミのお返しがしたかったのに。
お義母さん「いいえ、別に怒ってなどいません ンフフ」
  ああ良かった、今のは言い過ぎました。
  ごめんなさーい。
お義母さん「私を見送りなさい、見てあげるわ」
  ああ、はいはい。
  今日は文句付けさせませんからねー。
お義母さん「既に0点だわ」
  え?! どこが?
  あれ? 立ち上がるタイミング?
  いや・・・なんだろ?
お義母さん「ウフフ」

〇走行する車内
お義母さん「まったく・・・冴島、あの嫁はもう少し どうにかならない?」
冴島「なりませんね、ああいう気質なのでしょう」
お義母さん「鍛え甲斐があり過ぎて笑えてくるわ 社内での評価は? 煙たがられてない?」
冴島「タクミさんとのご結婚から半年、 ようやく落ち着いて来ました」
冴島「秘書として勤めていた頃より更に 仕事に没頭しているようですよ」
お義母さん「そうなの?」
冴島「タクミさんの業務まで奪う勢いです 細かい雑用にまで目が行き届いていると 専務達の評判も上々です」
冴島「妙な噂もあっさり立ち消えましたし、 元々の性格が良いのでしょう」
お義母さん「・・・そう」
お義母さん「・・・ウフフ」

〇休憩スペース
  ・・・疲れた。
  (あ、お祖父ちゃんの誕生日のアレ、
  お義母さんに送っとかなきゃ)
  (ケーキはこのお店、料理はこことウチの
  お手伝いさんで、後は・・・あ、花だ。
  何色にするかぐらいは聞いてもいいよね)
  (えっと、後は何だっけ?
  インドに企画書と電話、誰かにファイルを
  ・・・誰に何のファイルだったかな?)
  (んー、見事にいっぱいいっぱい。
  少し誰かに振り分けよ・・・ん?)
  (・・・んん?)
  (冴島さん? 誰だっけ?)
  はい、九条です。
冴島「ユキノさん?!」
冴島「奥様が事故に遭われました! タカイチ総合病院です! すぐにいらして下さい!」
  え?
  あ、失礼致しました、すみません。
  奥様とはどちらの?

冴島「社長です! マリエさんです!」
  ・・・お義母さん。

次のエピソード:夜色の

コメント

  • 主人公とお義母さんの会話がとても楽しいですね。嫌味やトゲのある言葉の底に、いろんな感情が潜んでいる感じで。異質なものが混ざり合っていくときの好例ですね!

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