仇名ビースト

大饗ぬる

サバイバル生活にはハプニングがつきもの(脚本)

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〇沖合
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「浜辺で釣りたての焼魚と取れたての木の実とかを食べるなんて、初めてだったかもしれない」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「あたしもこの食べ合わせはあまり覚えがないな」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「惣子ちゃんって釣りも出来るんだね〜。 私にも出来るかな?」
猿野加菜美(サル)(24)♀「釣り、ねぇ」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「こんなのんびりしたのいつ以来だろう。 そういえば携帯鳴らないな」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「さっき見たけど、圏外だったよ。 それに自然に囲まれるのって何年ぶりだろう」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「本当だ、繋がってなかったんだな。 スマホが鳴らない日も悪くない」
猿野加菜美(サル)(24)♀「私は島について真っ先に確かめましたが、電波が届くはずもありませんね」
猿野加菜美(サル)(24)♀「それよりもスーツがこんなにしわだらけになったのは初めてですよ」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「俺さ、なんだかもう桃太郎って呼ばれても良いような気がしてきた」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「どうしてそう思ったんだ?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「呼びたければそう呼べば良いし、何て呼ばれようと俺は俺かなって」
猿野加菜美(サル)(24)♀「俺は俺、ですか」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「私はさすがにイヌって呼ばれるのは、やっぱりちょっと嫌だけど・・・・・・」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「あっそうか、私、嫌だって言いたかったのかも。 今、口にして気づいたよ」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「言葉にしないとわからないことってあるよな。 あたしそういうのわかるぜ」
猿野加菜美(サル)(24)♀「今更だけど、あなたは言葉遣いどうにかならないのですか?」
猿野加菜美(サル)(24)♀「って、いつもなら思うし言うのですが、今の私からすると、物怖じしないその姿勢が少しうらやましいです」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「そんな風に思われたの初めてだ。 あたしは頭良くないからさ、あんたみたいに賢そうな人がちょっといいなって思うぜ」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「二人ともしっかりしてる感じするのに、フレッシュだから、私みたいにお母さんのイメージつかなくて良さそう」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「みんな、個性があって良いなって思うよ。 俺なんか没個性だから」
「それはちがうんじゃない?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「え?」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「何だかんだで、桃太郎さんはアクが強いキャラですよ? それをまた自分で気づいてないのが、桃太郎さんらしいね」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「へ? アクが強い??」
猿野加菜美(サル)(24)♀「桃太郎さんって結構頑固で、周りに流されないところがありませんか?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「え? どうだろう? 俺、結構流されるタイプじゃないのかな」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「でも、ここに来るのだって、家族に反対されたりしたんじゃないのか? だけど、自分の意思で来たんだろ?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「どうして、それを・・・・・・」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「あんたと一日も居れば、簡単に想像つくよ」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「桃太郎さんはもっと自信持っちゃって大丈夫ですよ! ちゃんとリーダーしてるし、ね」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「ちゃんとしてるかはわからないけど、リーダーもやってみると面白いもんだなと思ったよ」
  そうして、俺達は語らいあった。
  年齢も性別も職業も住まいも違う四人だけど、昔からの友達のように打ち解け、それぞれの悩みが解決していくようだった

〇けもの道
  茂みから何か物音がした。
  俺たち4人以外いないはずの無人島に。
猿野加菜美(サル)(24)♀「誰?! 誰かそこにいるの!?」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「なんだ、動物か?」
偽僚太「相変わらず、しけたツラしてるなぁ、俺よぉ?」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「桃太郎さんが二人いる?!」
偽僚太「ももたろおさん、ねぇ? お前それで本当に良いわけ?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂(なんで・・・・・・あいつがここに!? お前は俺の心とネットにだけ住む鬼じゃなかったのか?!)
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「なんかこいつ、SNSでの桃太郎に似てね?」
猿野加菜美(サル)(24)♀「まさか・・・・・・! いえ、そんなことがありうるなんて、ありえない」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「サルさん、何か知ってるの?」
猿野加菜美(サル)(24)♀「桃太郎さんの『鬼』を何らかの形で具現化させるなんて、ありえない」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「具現化?」
偽僚太「ありえないありえないって、人の存在を軽々しく否定すんなよなぁッ!」
  俺にそっくりな見た目をしたそいつは、猿野さんに殴りかかろうとした!
猿野加菜美(サル)(24)♀「っ!!」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「危ないっ!」
  猿野さんをかばうため、前に出る。
  思い切り殴られ痛みが襲う。
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「ううっ・・・・・・」
猿野加菜美(サル)(24)♀「桃太郎さん!」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「なんだ、やろうっての? 得物を使ったら卑怯だなんてつまんないこと言わないよな」
  木次山さんは足下に落ちていた木の枝を手に取って、あいつと対峙している。
偽僚太「へぇ〜。 剣道でもやってるわけ?」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「鉄パイプが二段だっ!」
偽僚太「こわいこわい。 当たったら相当痛いよ? そこの俺を消したいだけだから、邪魔しないでくれる? キジムナーちゃん」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「それなら、なんでサルさんに殴りかかったりしたの!? そもそもあなた誰! いきなり出てきて意味がわからないよ」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「ハナさん、ダメだ・・・・・・」
偽僚太「ずいぶんな言われようだなあ。 俺は俺で・・・・・・そうだなぁ、鬼ヶ島にちなんで、鬼ってことでもいいけどね?」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「ふざけないで! 今日島を探索してた時にはあなたみたいな人、見かけなかった」
偽僚太「鬼やあやかしの類は夜に出る方がそれっぽいでしょ? イヌちゃん」
  戌村さんが怒った様子であいつに近づこうとする。
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「もう怒った私!」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「ハナさん、ダメだ! そいつは危険すぎる!」
  そいつは戌村さんの手を掴んで引き寄せた。
  力が強いのか戌村さんの表情が苦痛に歪む。
偽僚太「わんころの命が惜しければ、その出来損ないの桃太郎を差し出せ。 あと俺を崇めろ。 これからは俺が『岡山僚太』だ」
猿野加菜美(サル)(24)♀「劣等感丸出しでみっともない」
偽僚太「何だと?」
猿野加菜美(サル)(24)♀「それに人質を取らないと目的を達成できないなんてのは、三流の仕事方法ですし」
  猿野さんがあいつを挑発している・・・?
  疑問に思っていると俺のすぐそばに木次山さんが来ていた。
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「・・・これ、悪ぃけど勝手にあんたのバッグから見つけた」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「これは・・・・・・じいちゃんの短剣」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「あたしが隙を作るから、あいつを倒せ」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「・・・・・・でも、」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「あいつは人間じゃないらしい。 猿野が影がないから幽霊とかの類だとかなんとか、難しいことはよくわかんないけど」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「・・・・・・わかった。ハナさんを助けよう」
  俺は木次山さんから短剣を受け取り、覚悟を決めた。

〇森の中
猿野加菜美(サル)(24)♀「あなた自身が自分を偽物だと言い張ってるのが見てて恥ずかしいです」
偽僚太「違う! 俺こそが俺であって偽物なんかじゃない」
  木次山さんは俺の鞄から見つけていたおはぎをそいつに向かって投げつけた!!
偽僚太「ぺっぺっ、なんだこれは、はぁ? おはぎ??」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「おはぎあげたんだから、あたしの家来になれよ」
偽僚太「家来になるのはお前だろうがぁぁぁ!!」
  木次山さんが作ってくれた隙に乗じる!
  あいつの背後に回っていた俺は、反撃する。
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「お前はリーダーの器じゃない」
  短剣を思い切り背中に突き立てた!
偽僚太「ぐはっ・・・・・・! お、お前ぇぇ!」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「ハナさん、大丈夫?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「俺は、お前とは今日決別するよ」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「消えろ、俺の鬼め!」
偽僚太「ははっ、ははははは!」
偽僚太「俺は消え・・・ない、お前・・・の中にずっと・・・・・・」
戌村ハナ(イヌ)(23)♀「煙になって、消えちゃった・・・・・・。 みんなごめんね、ありがとう」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「じいちゃんの短剣も消えちゃったみたいだ。 じいちゃん、ばあちゃん助かったよ」
木次山惣子(キジムナー)(17)♀「無事なおはぎはみんなで食おうぜ」
猿野加菜美(サル)(24)♀「あ、流れ星」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「みんな無事だよな!?」
岡山僚太(桃太郎)(21)♂「・・・良かった」
  こうして突如現れた鬼は、俺達4人の即席のチームワークによって倒されたのだった

次のエピソード:最後は大団円でどうでしょう?

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