君とキスがしたい

咲良綾

ep5:カフェデートまで何千里?(脚本)

君とキスがしたい

咲良綾

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〇センター街
  ついに、この日が来てしまった。
  秋夜くんとカフェデート。
  シュミレーションはめちゃくちゃしたけど、
  何一つ役に立つ気がしない。
若い男「君、1人?」
川波静音「え?いえ、待ち合わせです」
若い男「そうなの?デート?」
川波静音「え・・・それは・・・ あ、あの」
  「デートです」って言うのが
  なんだかこっぱずかしい~!
須崎秋夜「俺の連れですけど、何か用ですか」
若い男「あー、デートか、やっぱりねぇ~、じゃあね!」
川波静音「秋夜くん・・・」
須崎秋夜「ほらー、わかったでしょ。 ナンパ野郎がふらふら寄ってくるくらい、 川波さんは可愛いの!」
川波静音「ちちち、違うよ! わたしをナンパだなんてそんな。 宗教の勧誘とかじゃない?」
須崎秋夜「はぁ!?本気で言ってんの? 仮に宗教目的だとしても、 可愛いから寄ってくるんだよ!」
川波静音「そんなわけないでしょ」
須崎秋夜「ある!もっと危機感持って!」
  なんか、すごい怒ってる。
  怒ってるんだけど、あんまり怖くない。
  ていうか・・・
須崎秋夜「グルルルルル」
  なんだろう?この溢れ出すわんわんオーラ。
  秋夜くんは、突然わたしに向かって
  両手を広げた。
  え え?
  それは何??
  「この胸に飛び込んでおいで」ポーズにしか
  見えないんですけど!?
川波静音「ななな、何・・・してるの?」
須崎秋夜「ガードしてる。 川波さん、無防備すぎて危ない」
川波静音「えぇ!? そんなことしてたら歩けないでしょ」
須崎秋夜「手を繋いだら安心できるんだけど・・・ 触ったらダメなんでしょ」
  確かに、心の平穏のために
  当面おさわりNGをお願いした。
  手を繋いだら、多分わたしが無事で済まない。
  とはいえ、両手でガードはさすがに変だよね。
  暗殺予告でもされてるのか?みたいな。
川波静音「そんなことしなくて大丈夫だよ。 ちゃんと気をつけるから」
須崎秋夜「やだ」
須崎秋夜「そうだ、俺が触るのはダメでも、 君から触るのはいいんでしょ? ここ掴むのは、どう?」
  秋夜くんは、肘を差し出してくる。
  そのくらいなら、できるかも・・・
須崎秋夜「ぎゃははは!」
川波静音「!?」
須崎秋夜「なんで肘の先っぽつまんでるの? くすぐったいよ! もっと内側を持って!」
川波静音「ええと・・・こう?」
  おそるおそる掴んでみて、気づいた。
  これ、いわゆる腕を組むってやつか・・・!
  手を繋ぐのとあんまり変わらないじゃん!
須崎秋夜「そうそう。ちゃんと掴んでてね」
  死ぬほど恥ずかしいけど、ここで離すのも
  事態をややこしくする気がする。
  そうだ!
  目が不自由な人の介護だと思えばいい。
  わたしは目がよく見えない・・・
  だから誘導してもらってるだけなんです・・・
須崎秋夜「川波さん!」
川波静音「!?」
  ふいに体が引っ張られ、
  秋夜くんの肩が目の前に迫って
  反射的に飛び退いた。
川波静音「ぎゃあ!?」
須崎秋夜「大丈夫!?」
  看板か・・・
  目の不自由な人妄想をしてて、
  前を見てなかった。
  秋夜くんは、ぶつかりそうなのを見て
  引っ張ってくれたのか。
須崎秋夜「ぶつけたところ、痛くない? ハンカチ越しなら触ってみていい?」
  こんな事態でも一生懸命、
  おさわりNGを守ろうとしてくれてる。
  抱き寄せられるのかも、なんて
  一瞬でも考えてしまった自分が恥ずかしい。
川波静音「うぅ・・・」
須崎秋夜「どうした?痛い?」
川波静音「わたしが変に意識してばかりなせいで、 迷惑かけて・・・」
須崎秋夜「なんだ。そんなのいいんだよ。 それが川波さんの面白・・可愛いところじゃん」
  言い直した。面白いって言おうとした。
須崎秋夜「俺の手、掴める?」
  差し出された手に手を重ねると、
  引っ張り上げて起こしてくれた。
川波静音「ありがとう」
須崎秋夜「どういたしまして。 痛いところはないんだね?」
川波静音「うん」
須崎秋夜「良かった。じゃあ、行こうか」
川波静音「えっ・・・」
  手は握ったままだ。
川波静音「あの・・・」
須崎秋夜「せっかく川波さんから繋いでくれたんだもん。離さないよ」
  ・・・あー、あー・・・!
  いや、だめだ!耐えるんだ!
  逃げない!わたしは逃げない!
  がんばる!
  がんばって尊い笑顔とばくばくする心臓とこの手の感触に耐えてカフェまで・・・っ
須崎秋夜「川波さん!? 鼻血!!」

〇空
  本当にわたし、何やってんだろ・・・
  カフェが・・・
  カフェが遠い・・・

次のエピソード:ep6:恋愛相談受付中

コメント

  • 恋愛に対して免疫のない女子ってこんな感じですよねw 私も慣れるまでこんな感じだったなぁ、と思いつつ笑ってますw

  • ついに鼻血まで…!
    がんばれ静音ちゃん…!😅

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