エピソード4(脚本)
〇スーパーの店内
次のパートの日。
小沢さんの姿はありませんでした。
休みなんて珍しいと思っていたら、休憩中に菅野さんから
菅野「小沢さんね、運転中に事故を起こしたらしくて、入院しているみたいよ」
菅野「代わりの人が午後から来るけどらしいけど、あまり評判は良くないみたい」
私はなんて返答したのか、うまく言葉を紡げなかった気がします。
代わりの人が来るのはわかるのですが・・・
午後、というのも中途半端な感じがして、何故か背中にかいた汗が冷たく感じました。
〇スーパーの店内
小泉「今日から小沢さんに代わりアドバイザーとして赴任しました小泉です。よろしくお願いいたします」
小泉さんは小沢さんの後を引き継ぎ、私のレジ打ちのアドバイスを担当するみたいでした。
心の中でどうしてそんな担当を引き継いでまで必要なのだろうと思ったのですが、口には出しませんでした。
すぐに知ることになるのですが、どうやら小泉さんは小沢さんの妹さんらしいのです。
小沢(妹)「姉があなたに手を焼いてたっていうのもわかるわ」
仕事が終わり、バックヤードで二人になった途端。
小泉さんは態度を豹変させました。
仕事中は他の人の目があるからか、特に気になる言動はなかったので少し驚きました。
でも、その驚きは次の言葉で上書きされるのでした。
小沢(妹)「あなたに時間を割いてあげてるんだから、授業料払いなさい。今日は午後からだったから、半額の5千円でいいけど・・・」
小沢(妹)「明日からは一万円を用意しなさいね」
『私』「え?」
小沢(妹)「え? じゃないわよ。あなたのロッカーは・・・ここね。きったない財布ねぇ。じゃあ5千円頂いていくから。お先に」
驚愕している間に、私の財布から日給のほとんどがなくなりました。
断る暇も何もありませんでした。
〇綺麗なリビング
今日の出来事を夫に相談しました。
それも間違いでした。
夫「授業料って・・・5千円も取られて。お前がぬけているのが悪いんだろう」
『私』「でも・・・素早かったから言い返すことも出来なくて。それに──」
夫「文句言うぐらいなら辞めればいいだろ!! 俺は疲れてるんだ、余計な話をするな」
夫から働いて欲しいと言われて始めた仕事だったのに。
そう言われるとは思わなくて愕然としました。
目の前の何かが壊れていく、そんな経験は初めてでした。
夫は何も言わず、外へ出て行きました。
きっと行きつけの居酒屋に呑みにでも行ったのだろうとぼうっとした頭で考えたものの──
悲しさに耐えきれず大声を上げて泣きました。
現実を受け入れられず、涙となってあふれます。
目元を拭うため顔を覆っていた手を顔から離しました。
その時、鈍く光る綺麗な石が目に入りました。
石は少し濁ってきているように見えました。