財布を落としただけなのに

×××

5話【美琴の弱み】(脚本)

財布を落としただけなのに

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〇一人部屋
加賀美天馬(崇矢・・・早く来てくれ・・・)
  天馬は震えながら崇矢が助けに来てくれるのを待っていた。
  天馬のスマホからLIME通知音が鳴る。
加賀美天馬「LIME?何だよ・・・こんな時に!」
  ✉️TAKAからの新着メッセージ
  ドア開けてくれ!
加賀美天馬「崇矢!」
  天馬はLIMEメッセージを確認すると、すぐさま玄関を開けた。

〇アパートの玄関前
加賀美天馬「崇矢!」
鳥丸崇矢「天馬!大丈夫か?」
加賀美天馬「崇矢・・・」
  天馬は崇矢の顔を見て安心したのか、涙を流しながら崇矢に抱きつく。
加賀美天馬「ありがとう!崇矢!来てくれて!助かった!」
鳥丸崇矢「わかった!わかった!」
加賀美天馬「すげぇ怖かった・・・」
鳥丸崇矢「わかったから!一旦離れろって!」
鳥丸崇矢「野郎同士で抱き合ってどうすんだ!」
加賀美天馬「あ・・・」
加賀美天馬「ご、ごめん・・・」
  崇矢の一言で我にかえり、恥ずかしそうに体を離す天馬。
鳥丸崇矢「ったくよ・・・」

〇一人部屋
鳥丸崇矢「どうだ?少しは落ち着いたか?」
加賀美天馬「う、うん・・・大丈夫」
加賀美天馬「ありがとう・・・」
鳥丸崇矢「俺の取り越し苦労じゃなかったな!天馬!」
加賀美天馬「え?」
鳥丸崇矢「あの女だよ!柊美琴!」
加賀美天馬「あ、う、うん・・・」
鳥丸崇矢「あの女・・・相当思い込み激しいぜ」
加賀美天馬「な、何か言ってた?」
鳥丸崇矢「『私は天馬くんの彼女』」
鳥丸崇矢「『お料理の感想を聞きに来ただけ』」
鳥丸崇矢「『彼女が彼氏の家に来るとか普通でしょ!』」
鳥丸崇矢「馬鹿の一つ覚えみてぇに、こればっか連呼してやがったよ!」
加賀美天馬「美琴さんは、すんなり帰ってくれたの?」
鳥丸崇矢「ああ!警察呼ぶぞ!って脅したら、すんなり帰ったよ!」
加賀美天馬「そっか・・・良かった・・・」

〇一人部屋
鳥丸崇矢「で、お前はこれからどうする気だ?」
加賀美天馬「こ、これから?これからって何?」
鳥丸崇矢「馬鹿だなぁ・・・」
鳥丸崇矢「さっきの事で、あの女が天馬の免許証見たときに、個人情報を控えてたってのが」
鳥丸崇矢「疑いから確信に変わったろ!」
加賀美天馬「うん・・・」
鳥丸崇矢「しかも家にまで勝手に入る始末だ!」
加賀美天馬「美琴さんはどうやって入ったのかな?」
鳥丸崇矢「さぁな!さすがにそこまでは分からねぇよ」
鳥丸崇矢「ただ、お前がいつまでもこの家に居ちゃ、今度こそ一大事になるかもしれねぇ」
加賀美天馬「引っ越すって事?」
鳥丸崇矢「可能ならな!それが一番の理想だよ!」
加賀美天馬「無理だよ!とてもじゃないけど、今はそんなお金ないよ!」
鳥丸崇矢「親には借りれねぇのか?」
加賀美天馬「引っ越したいから仕送り増やしてくれって?」
加賀美天馬「そんなこと言ったら、理由聞かれるじゃん!」
鳥丸崇矢「まぁ、普通はそうだろうなぁ」
加賀美天馬「女の人からストーキングされてるから、それから逃げるために引っ越ししたい!って言うわけには・・・」
鳥丸崇矢「・・・・・・」
  崇矢は少し考えて──
鳥丸崇矢「天馬が嫌じゃねぇなら、ウチ来るか?」
加賀美天馬「崇矢の?」
鳥丸崇矢「ああ・・・」
鳥丸崇矢「それなら引っ越しする必要も、親から金借りる必要もねぇだろ?」
加賀美天馬「そりゃそうだけど・・・」
加賀美天馬「迷惑・・・じゃない?」
鳥丸崇矢「何言ってんだよ!水臭い!友達だろ!」
加賀美天馬「崇矢・・・」
鳥丸崇矢「どうする?来るか?」
加賀美天馬「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えようかな」
鳥丸崇矢「よし!そうと決まれば善は急げだ!」
加賀美天馬「うん!」
加賀美天馬「ちょっと待ってね!服とか準備するから!」
鳥丸崇矢「おぅ!」
  天馬はバックに着替えや、スマホの充電器など、必要最低限なものを詰め込み、崇矢と共に家を出る。

〇ゆるやかな坂道
鳥丸崇矢「なぁ、天馬・・・」
加賀美天馬「な、なに?」
鳥丸崇矢「お前、なんでさっきから、キョロキョロしてんだ?」
鳥丸崇矢「挙動不審で怪しいぞ?」
加賀美天馬「失礼だな!美琴さんが近くに居ないか見てるんだよ!」
加賀美天馬「すげぇ怖かったんだよ!」
鳥丸崇矢「ったく・・・」
  そういうと崇矢は、やれやれと言った様子で天馬の体を自らに抱き寄せる。
加賀美天馬「ちょ!崇矢!」
鳥丸崇矢「大丈夫!お前は一人じゃねぇんだから!な?」
加賀美天馬「ちょっと!恥ずかしいって!」

〇ゆるやかな坂道
  そんな天馬と崇矢を尾行する人影──
  柊美琴だ。
  美琴は崇矢の存在が気になり、しばらくの間、二人の動向を探るべく、身を隠していた。
柊美琴(あの鳥丸とかいう奴、なにもの?)
柊美琴(『六車』からは何も聞かされてない!)
柊美琴(あんなボディガードが居たんじゃ、天馬くんに迂闊に近づけない・・・)
柊美琴(多分二人は、あの鳥丸ってヤツの家に行くんだろうから)
柊美琴「とりあえず尾行して、住所だけでも把握しておこう・・・」

〇黒
  時を遡る事数週間前。
  美琴のスマホに非通知で着信があった。
  電話に出ると相手は男性だった。いや、正確に『男性だろう』が正しい。
  声が変成器で加工されていたから性別に確証はない。
  口調が言葉遣いがどうやら男性っぽかったため、美琴は電話の相手は男性だと決めつけていたが、実際は女性かもしれない。
  しかしそんな事、美琴にとってはどうでもよかった。
  一番の問題は、自らを六車《むぐるま》と名乗るその電話相手は、美琴が以前、友人数名と結託し
  マッチングアプリを用いた援助交際を利用した、親父狩りをしていたという事実を知っていたという事だ。
  実際の話、美琴は友人に頼み込まれ仕方なく参加しのたが、親父狩りに加担したというのは事実だ。それは決して許されない事だ。
  しかし、なぜバレたのだろうか?友人が密告したのか?ありとあらゆる可能性を模索する美琴だったが
  そんな美琴に電話相手は──
「この事実をバラしてほしくなければ俺の言う通りにしろ!」
  と交換条件を提示してきた。
  その内容は一人の男性を精神的に追い詰め恐怖を与えろ!というものだった。
  何の恨みもない見ず知らずの男性に対して、そんな事をするのは美琴自身も、あまり気分がいい物でなかったが
  親父狩りの事実が公になれば、美琴の人生は狂ってしまう。間違いなく警察に捕まってしまう。
  それだけは何としてでも避けたい美琴は、六車の指示に従うしかなかった。
  美琴がその条件を了承すると、後日、美琴の自宅にある小包が郵送されてきた。
  その中には、財布と、部屋の鍵だろうか?鍵が1本入っており、同時に一枚のメモ紙が同封されていた。
柊美琴「ターゲットはの名前は・・・加賀美天馬・・」
  また、手紙には──
  [○月○日の深夜1時前に、財布の中に入っている免許証に書いてある住所にこの財布を届けろ」
  と記されてあった。
  また、メモ紙には加えて──
  「届け終わったら、SNSで完了した!と投稿しろ!それを確認したら、また新たな指示をする」
  と記されてあった。
  それから美琴は、六車と一切接触する事無く、出された指示を、言われるがままに遂行してきた。
  全ては順調に行っていた。美琴の前に崇矢が現れるまでは。

〇ゆるやかな坂道
  美琴は六車から崇矢の話は聞かされていなかった為、崇矢はという存在を危険視していた。
  崇矢の存在は、今後美琴が六車からの指示を遂行していく上で、非常に大きな弊害になりかねないからだ。
  美琴は、慎重に天馬と崇矢を尾行しながら、ついにマンションの住所を突き止めた。

〇マンション前の大通り
柊美琴「ここか・・・」
  そのマンションは10階だてのマンションだった。
  美琴は天馬と崇矢の行方を目で追いながら、部屋番号を調べていた。
  すると天馬と崇矢が5階の右から3番目の部屋に入っていくのが見えた。
柊美琴(部屋は503ね・・・とりあえず部屋はわかったから、今日のところは帰るか・・・)
柊美琴(鳥丸・・・)
柊美琴「私の邪魔はさせないから・・・」

次のエピソード:6話【共同生活】

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  • ますますハマってます。次に進もうっと

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