第二十八話 終着(脚本)
〇謁見の間
◆あらすじ◆
王城へ最後の戦いに赴いた一行。
チヨミの言葉はヒナツへ届かない。
チヨミ・アルボル「聞いてヒナツ、私は・・・!」
ヒナツ・プロスペロ「黙れぇえ!!」
ソウビ・アーヌルス(チヨミ・・・!)
ソウビ・アーヌルス(えっ? 今、入り口から音が・・・)
タイサイ・アルボル「姉さん、無事か!?」
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿!!」
ソウビ・アーヌルス「みんな・・・!」
ユーヅツ・アモル「二人とも生きてるようだね」
メルク・ポース「あぁ、間に合って良かった」
ソウビ・アーヌルス(おぉ、つまりこの戦闘は 『〇ターン耐えろ』とかそういう・・・)
村の老人「チヨミ様に加勢しろ!!」
村の青年「おおおお!!」
ソウビ・アーヌルス「!?」
次の瞬間、数多の礫が
ヒナツに向かって投げつけられた。
ソウビ・アーヌルス「えっ、ちょ!?」
ヒナツ・プロスペロ「ガッ!」
そのうちの一つが、
ヒナツの額を直撃する。
赤い髪よりさらに朱い血が、顔を染めた。
ソウビ・アーヌルス「・・・っ! 待ってみんな、こんな乱暴な・・・!」
村の少年「父ちゃんを返せ! お前のせいでドラゴンにやられたんだ!」
ソウビ・アーヌルス「・・・っ」
村の女「アタシの夫は、 仕事のできない体にされちまった!」
村娘「恋人を返して! 武器も防具も与えないまま ドラゴンミルクを取りに行かせるから!」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(言えない・・・)
ソウビ・アーヌルス(これが、残酷だとか野蛮だとか、 私には言えない・・・)
ソウビ・アーヌルス(ヒナツはこれ以上のことを、 国のみんなにやってしまったんだ・・・!)
村の老人「くたばれ!!」
村の青年「お前のせいだ!!」
テンセイ・ユリスディ「ま、待て、お前たち!」
ヒナツ・プロスペロ「クソが・・・っ、てめぇら・・・!」
その時だった。
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
チヨミが両手を広げ、
ヒナツと群衆の間に立ちはだかった。
タイサイ・アルボル「姉さん!?」
礫の一つがチヨミの頬をかすめる。
チヨミの白い肌に
ぷくりと血の珠が浮かび、
つうと滴り落ちた。
村の老人「お。おい、やめろ! 投げるな!! チヨミ様に当たっちまう!!」
村の女「チヨミ様、そこをどいとくれ! なぜそんなやつを庇うんだい!?」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「ごめんなさい、皆さん。 私は、ヒナツ=プロスペロの妻です」
チヨミ・アルボル「今も、夫を愛しているのです」
ヒナツ・プロスペロ「・・・!?」
タイサイ・アルボル「・・・なん、だって?」
その場は水を打ったように静まり返る。
だがすぐにどよめき、
怨嗟の声がわき上がった。
村娘「ふざけないで! そんな男を庇うならあんたも同罪よ!」
村の老人「今すぐそこをどいてくれ! あんたを憎みたくないんだ!」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「ヒナツ、伝えたかった言葉、言うね」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「昔、盗賊から私を助けてくれたよね。 あの日から、ずっと好きだよ」
チヨミ・アルボル「この命は、この魂は、 あなたがいたから今ここにあるの。 だからね」
チヨミ・アルボル「今度は私が、ヒナツの命を救う番」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
ヒナツ・プロスペロ「ばかやろう・・・」
ヒナツ・プロスペロ「バカな女だなてめぇは!! あんなの、自分のためにやったに 決まってんだろ!!」
ヒナツ・プロスペロ「お嬢様であるあんたを助ければ、 貴族の旦那の目に留まる! 現に、お前の父親は俺を取り立てた!!」
ヒナツ・プロスペロ「そうだ、それが目的だったんだ! 別にてめぇを大切に思って やったわけじゃねぇよ!」
チヨミ・アルボル「それでも、あれは あなたの命を引き換えにしての 大勝負だった」
チヨミ・アルボル「そこにどんな思惑が絡んでようと 関係ない。 事実として、 あなたは命がけで私を助けてくれた」
チヨミ・アルボル「私の命は、あなたに救われたもの。 だからこの命、あなたのために使いたい」
ヒナツ・プロスペロ「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「・・・あなたは 大勢の民を犠牲にしてしまった。 その報いは受けよう?」
チヨミ・アルボル「ごめんね、ヒナツ。 私があなたに嫌われることを恐れて、 間違った道に進もうとするあなたに ちゃんと言えなかったから」
チヨミ・アルボル「せめて私は、 あなたの道行きに付き合うよ・・・」
チヨミ・アルボル「あなたが、大切だから」
ヒナツ・プロスペロ「う・・・、 うおぉおおおおお!!」
ヒナツがその場にくずれ落ちる。
ヒナツ・プロスペロ「あぁ、うぁあああ! うわぁあああああ!!」
幼子のように泣き崩れるヒナツに
チヨミは悲し気な、
そして慈愛に満ちた眼差しを向ける。
チヨミ・アルボル「あなたから王の地位をはく奪します。 あなたの処遇は、 次に王となる者に委ねましょう」
チヨミ・アルボル「私も、共に」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(これで、ひとまずの解決を迎えた ってことでいいのかな?)
ソウビ・アーヌルス「あれ?」
テンセイ・ユリスディ「どうなされた、ソウビ殿」
ソウビ・アーヌルス「ラニがいない」
ユーヅツ・アモル「なんだって?」
ソウビ・アーヌルス(あ・・・! これってゲームの中のソウビと 同じ行動だよ!)
皆の目が
ヒナツに集中している隙をついて、
ソウビは城から逃げ出すのだ。
そして森の中で、
憎しみを募らせた民やテンセイに
追いつかれ、無惨な最期を迎える。
ソウビ・アーヌルス(と言うことは、 ラニはきっとあの森の中・・・!)
テンセイ・ユリスディ「どこへ行かれるのですか、 ソウビ殿!?」
ソウビ・アーヌルス「ラニを追いかけなきゃ!」
テンセイ・ユリスディ「お待ちください、自分も参ります!!」
〇空
〇けもの道
ラニ・アーヌルス「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ラニ・アーヌルス「いや、いや・・・! 私は死にたくない、 殺されるのはいや・・・!」
「いたぞ! 幼き毒婦、ラニだ!!」
ラニ・アーヌルス「ひっ!」
「逃げるな!! 自分のしでかしたことを思い知れ!!」
ラニ・アーヌルス「きゃあああっ!!」
ラニ・アーヌルス「いや、いや、誰か助けて・・・! お父様・・・! お姉さま・・・!!」
ソウビ・アーヌルス(ラニ、いた!!)
ソウビ・アーヌルス(だめだ、追手がもう ラニのすぐそばまで迫ってる! このままじゃ、ラニは・・・!)
テンセイ・ユリスディ「待て、そこのお前たち! 無体はよせ!!」
テンセイ・ユリスディ「あの者どもを止めてまいります!」
ソウビ・アーヌルス(たしかあの魔法は、えぇと・・・!)
ソウビ・アーヌルス(思い出して! 私の頭!!)
ソウビ・アーヌルス「はあぁああっ!!」
ラニ・アーヌルス「きゃあっ!?」
「うぉ!? なんだ!? 木が邪魔で進めねぇ!!」
ソウビ・アーヌルス(よし、分断成功!!)
ソウビ・アーヌルス「ラニ!!」
ラニ・アーヌルス「お、お姉さま・・・!!」
ラニ・アーヌルス「お姉さま、私、私・・・!! あぁ、ごめんなさい・・・!!」
ラニ・アーヌルス「許して、お姉さま。 私、処刑されますの!? うわぁあああんっ!!」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス(私こそごめんね。 怖かったよね、不安だったよね)
ソウビ・アーヌルス(こんな小さなあなたに、 傾国なんて役割を押し付けてしまった)
ソウビ・アーヌルス「泣かないで、ラニ。 私があなたを守るから」
ソウビ・アーヌルス「出来るだけの償いをするから」
ラニ・アーヌルス「お姉さま・・・」
ソウビ・アーヌルス(あれ?)
ソウビ・アーヌルス「なにこれ、やだ・・・!」
テンセイ・ユリスディ「お二人ともご無事で・・・、 ソウビ殿!?」
ソウビ・アーヌルス「景色がだんだん薄れていく・・・! 私、眠りから 覚めようとしてるのかもしれない!!」
テンセイ・ユリスディ「なんだって!?」
ソウビ・アーヌルス(どうしてこのタイミングで!?)
ソウビ・アーヌルス「いやだ、テンセイ、側にいたいよ! 離れたくない!!」
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿! 行かないでくれ!」
〇白
私たちは寄り添い、
しっかりと互いの背に腕を回す。
(テンセイのぬくもり、 テンセイの厚み、テンセイの匂い・・・!)
しかしそれら全てが、
腕の中で煙のようにむなしく溶ける。
「あ・・・!」
〇女性の部屋
上水流 めぐり「・・・・・・」
上水流 めぐり「はぁ・・・」
上水流 めぐり「よく寝たはずなのに、 なんか疲れてる感じ」
上水流 めぐり「仕事の夢でも見てたとか? 覚えてないけど、やだなぁ」
〇オフィスビル前の道
〇オフィスのフロア
下江朋美「おはよう、めぐり」
下江朋美「また浮かない顔してんね。 ゲームで徹夜?」
上水流 めぐり「ううん、 ガネダンは推しをクリアした余韻を しばらく味わいたいから、 二周目はまだプレイしてな・・・」
上水流 めぐり「・・・・・・」
下江朋美「どうしたの?」
上水流 めぐり「ん・・・、なんでもない」
上水流 めぐり(なんだろう、すごく心がざわざわずる)
上水流 めぐり(何かに急き立てられるような、 大切なことを 取り落としているような・・・)
下江朋美「今日が終わったら三連休だね。 めぐり、どっか行ったりする?」
上水流 めぐり「・・・ガネダン」
下江朋美「ん?」
上水流 めぐり「『GarnetDance』、 ヒナツルート見なきゃ!」
下江朋美「・・・三連休にそれかぁ。 ほんと、オタクだねー」
〇中規模マンション
〇女性の部屋
上水流 めぐり(ヒナツルートに行くには、 それ以外のキャラ全ての エンディングを見なきゃ)
上水流 めぐり「三日分の食料よし! おやつよし! 飲み物よし!」
上水流 めぐり「ゲームに没頭する準備は完璧!」
上水流 めぐり「まずはタイサイから!」
第二十八話 終着 ──終──
最終話に続く
罪をも引き受けるチヨミの愛に泣かされ、今度こそ妹を気にかけ不在に気づいて救おうとするソウビに泣かされ……
でも覚えてないのが一番泣きましたーーー!!!😭😭😭
最終話、心して見届けます。
戻って来ちゃった😢
そしてあの世界での出来事は本当に夢として失くしてしまうのか。
めぐりの恋の行方をしっかり見届けたいと思います。
たとえそれが夢で、目が覚めたら全てなかったことになっても、確かにそこに在った。願わくば、夢の続きをもう一度……!