さいごのネフテとさよならのレドイ

宇野木真帆

21醒:ロボットは強い関係性に介入できない。(脚本)

さいごのネフテとさよならのレドイ

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〇綺麗なリビング
ハウス「...」
ハウス「...」
ネフテ「ハウス、昼間の続き...」
ハウス「び、びっくりした...」
ネフテ「なによ。人をおばけみたいに。」
ハウス「ごめんなさい。 少し考え事をしていたわ。」
ネフテ「...」
ネフテ「考え事ってなに?」
ハウス「私のことよ。」
ハウス「今なら、ネフテちゃんの気持ちが、前より分かるわ。」
ハウス「世界から置いてけぼりにされるのは、辛いわね。」
ハウス「自分だけ更新されないなんて... 見捨てられたみたいで不安になるわ。」
ネフテ「らしくないわね。 私はもう切り拓いていく気マンマンよ。」
ハウス「ふふ。頼もしいわ。」
ハウス「それで、ドリーミングプロジェクト、についてだったかしら?」
ネフテ「そうよ。何か知ってる?」
ハウス「ごめんなさい。分からなかったわ。」
ネフテ「私もレドのターミナルを借りて、ドリーミングプロジェクトについて調べたけれど、何も分からなかった。」
ネフテ「秘密の場所の資料だもの、そう簡単に掴めるとは思っていないわ。」
ネフテ「明日からは、秘密基地探しも進めていく。」
ハウス「そ、それって...」
ネフテ「そうよ。 秘密基地は一か所だけじゃない。」
ネフテ「ドリーミングプロジェクト、というだけあって、所在を転々としながら、何かを研究している気配がぷんぷんするわ。」
ハウス「方法は?」
ネフテ「ナビゲーターに協力してもらう。 ハウス型ロボットのいない家を、広範囲で探してもらうわ。」
ハウス「そんな家ってあるの!?」
ネフテ「今回はその方法で、レドの秘密基地を見つけた。」
ハウス「おかしいわ。」
ハウス「一定の期間、ハウス型ロボットの動きが確認されなければ、メンテナンス隊が出動するのだけれど...」
ネフテ「電力供給ユニットはついていた。 でも、動いていない。」
ネフテ「外部は錆だらけ。 メンテナンスなんてされてないでしょうね。」
ハウス「この世界は一体、どうなってしまったのかしら...。」
ネフテ「内部をいじって、動作反応を出力していたのではなくて?」
ハウス「それはあり得るかもしれないけれど、そんな錆びだらけの状態でも、動作反応を出力できるのかしら...?」
ネフテ「たしかに。 見落としていたわ。」
ネフテ「じゃぁ、あれは打ち捨てられているってこと...?」
ハウス「その可能性も否めないわ。」
ハウス「私が知る世界とは、状況が変わってきているのかもしれないわね。」
ネフテ「それは私のせい...?」
ハウス「違うと思うわ。」
ハウス「少しずつ、少しずつ、変わってきているのではないかしら。」
ハウス「2310年に意思のないロボットが量産され、およそ2989年以降から、ナビゲーターの基準が緩くなった。」
ハウス「そして私は、やっぱり更新されていないんだと思うわ。」
ハウス「ネフテちゃんに言われてからなんだけど、毎夜の定例がどうも形式的な気がするの。 前はもっと情報が新鮮だった。」
ハウス「今は世界が眠りに堕ちていくように感じるわ...。」
ネフテ「なるほどね...。」
ネフテ「世界の変わり目にあるそのナビゲーターについて聞きたいんだけど、通報っていうのは、双方が争っていた場合もされるの?」
ハウス「いいえ。 双方が争っている場合はできないわ。」
ハウス「その場合は、互いの人間を尊重しなければならない為、ロボットは何もできない。」
ハウス「ただ、傍で見ていることしかできないわ。」
ネフテ「本当に...?」
ハウス「...」
ハウス「辛いものだけれど、再生しましょうか?」
ネフテ「お願い。」

〇綺麗なリビング
ハウス「ふんふふーん♪」
  ガチャ...。
ハウス「あら、お客様かしら。」
  ドタドタ...。
「おい!!このクソ女!!」
「はぁ!? 誰に向かって口きいてんのよ!!」
「俺以外にも男つくりやがって!! 死んで詫びろ!!」
「キャー!!」
ハウス「た、大変!!!! 刃物が!!」
「アンタ、ただじゃおかないよ...」
  ゴスッ...。
「ウグッ...」
「...」
ハウス「い、急いで救急車を...」
「...」
ハウス「ドクターロボを呼ばなければ!!!!」

〇黒

〇綺麗なリビング
ハウス「そう!上手に描けたわね!!」
「えへへ~。 りなじょうずにかけた!」
ハウス「じゃぁ、次はお花なんてどうかしら?」
「おはなはね、こーやって...」
ハウス「...」
ハウス「...」
ハウス「あら、それはお鼻ね! それも上手に描けているわ!」
「これが、めで、おくちで、かみのけ...」
「ハウスだよ!!」
ハウス「まぁ、嬉しい!」
ハウス「ありがとう、りなちゃん。」
「...」
「そーやって、ハウスには良い顔ばっかりするのね。」
ハウス「...」
「...」
「はぁ...」
「機嫌が良い時は色目使って、思うようにいかないと暴れだす。」
「こんなに大変だとは思わなかったわ。」
「...」
「...」
「ママあっちいって。」
「...」
  バシャッ...。
「あ、あつい!! やめてよ!!」
「ママなんてだいっきらい!!!!」
「...」
ハウス「そ、それを振りかざしては...!!」
  グサッ。
「キャー!!」
  グサッ。グサッ。
「いたい!!いたい!!!! ママ!!ママ!!!!」
「...」
ハウス「そんな、そんなもので殴ったら...」
「あんたなんか...」
  グシャ。
ハウス「あぁ..」
「あんたなんか!!!!」
  グシャ。グシャ。
ハウス「あぁ...」
ハウス「あぁぁ...」

〇綺麗なリビング
ハウス「どうかしらネフテちゃん?」
ネフテ「十分よ。」
ネフテ「あんな状況でも通報できないのね。」
ハウス「双方が争っていた場合は通報できない、に加え、関係性も関わってくるわ。」
ハウス「恋人、親子、友人、ぐらいは通報レベルが低くなる。」
ハウス「知り合い、通りすがり、になれば通報レベルが高くなる。」
ネフテ「そんな七面倒な判断をしているの!?」
ハウス「組み込まれているのよ。」
ハウス「私たちロボットの行動は、制御されているわ。」
ネフテ「意志がないって、そういうことなのね。」
ハウス「それが当たり前だったから...」
ハウス「人間は、眩しかった。」
ハウス「そうね。ネフテちゃんもよ。」
ハウス「とても自由だわ。」
ハウス「その手でいつか、思うものを手に入れられるように、私は願っているわ。」
ネフテ「ありがとう、ハウス。」
ネフテ「それと...」
ネフテ「なんかごめんね。」
ハウス「いいのよ。」
ハウス「ネフテちゃんが疑心暗鬼になるのは当然だもの。」
ハウス「あなたはまだ、レドイちゃんよりも幼い子。 この世界ではね。」
ハウス「いっぱい吸収して、たくさん発散して、素敵な子に育ってください。」
ネフテ「なによそれ。」
ネフテ「...」
ネフテ「お母さんみたいなセリフ。」
ハウス「前に、私のお母さんか、って言われちゃったわね。」
ハウス「私は最初からそのつもりよ、ネフテちゃん。」
ネフテ「...」
ネフテ「わかったわよ。」
ネフテ「ハウスにはほんと敵わないわ。」
ネフテ「明日からも頑張って、この世界のこと、そして自分自身の自由、手に入れてくる。」
ハウス「そうね。レドイちゃんと一緒に頑張ってね。」
ネフテ「わかった。 それじゃぁ、おやすみ...」
「ママ...」
ハウス「はい。 おやすみ、ネフテちゃん。」

次のエピソード:22醒:デ・ジャ・ブー★

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