クレプロ

サトJun(サトウ純子)

クレクレプロ(脚本)

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〇通学路
矢島幹夫「僕は、人が嫌いだ」
矢島幹夫「いや、実際は嫌いでは無い。 ただ、人が発している膜に触れると、全身がビリビリ痺れるのだ」
  僕は、これを「マンバブル」
  と呼んでいる。
  幹夫は最近、芳江に少しだけ自分を覆っているマンバブルを除いてもらった。
矢島幹夫「まだ、人に近づくとビリビリ感じるけど、前みたいに痛い感じでは無くなってきたな」
  この一本道を真っ直ぐ行けば、商店街にでることができる。
矢島幹夫「いつも見ていたはずの風景なのに、なんだか全然違って見える」
矢島幹夫「もしかしたら、今まで見ていた他の景色も違っていたのかもしれないな・・・」
  幹夫は昨日、前の会社で手掛けていた「イベント開催予定地」の前を通りがかっていた。
矢島幹夫「ポスターやCMを見たけど、僕のアイデアがたくさん使われていて嬉しかったなぁ」
矢島幹夫「『自分自身にご褒美を』ってコンセプト、 そのままだったし」
矢島幹夫「・・・」
矢島幹夫「ただ、詰めが甘い箇所が沢山あって気になったけど・・・」
矢島幹夫「宣伝の仕方ももったいないなぁ。せっかく凄腕の広報さんたちがいるんだから、意地張ってないでお願いすればいいのに・・・」
矢島幹夫「あと、会場はもっとバリアフリーを意識した方が良いと思う。バリアフリーは若者たちにとっても優しい形だから」
矢島幹夫「・・・」
矢島幹夫「・・・もう、関係ない・・・か」
矢島幹夫「でも・・・」
  あれは、僕のありったけの
  熱い想いだった・・・
  幹夫は、通り過ぎる風を全身で感じながら、空に向かって大きくため息をついた。

〇店の入口
矢島幹夫「・・・おはようございます」
望月妙子「あ、幹夫さん。おっはよー。 昨日はありがとう。助かったー!」
矢島幹夫「・・・いえいえ。お役に立てて光栄です!」
矢島幹夫「パン職人ではない、妙子さんの姿も見れたし」
  そう、昨日は突然、妙子さんが出ている撮影に
  助っ人として呼ばれた

〇魔界
望月妙子「・・・な、なんてことを!?」
矢島幹夫「・・・」
望月妙子「目を覚ましてください! ティームさま!」
望月妙子「私なんかを庇うなんて・・・」
望月妙子「ティームさま・・・」
望月妙子「ティームさまぁぁぁーっ!」

〇店の入口
望月妙子「監督が突然「ここはCGじゃダメだ!」って言いだしてー」
望月妙子「あの監督、一度言い出したら止まらないからー。ホント助かったわー」
矢島幹夫「・・・いえいえ!勉強になりました!」
望月妙子「・・・」
望月妙子「・・・痛かったでしょー」
矢島幹夫「なんで、そんなに嬉しそうに言うかなー」
矢島幹夫「・・・服に仕掛けてあった仕掛けが爆ぜた時は、一瞬痛かったですが」
矢島幹夫「岩場を転がる方に集中していたので・・・」
望月妙子「あのアクションは凄かったわよ! 監督も大満足だったし」
望月妙子「ありがとねー!」
  幹夫は軽くお辞儀をすると、クリーム色の壁に擦らないように体を横にして店の裏側へ回った。

〇事務所
  ここは手作りパン屋、Deニッシュの事務所。
  しかし、ここはただのパン屋ではない

〇謎の扉
  ここで働いている従業員は全員
  重厚な扉の向こう側にある
  クレセントムーン・プロダクションの
  所属タレントでもある。

〇事務所
矢島幹夫「・・・おはようございます!」
月岡紘子「あ、幹夫さん。おはようございます。 昨日はお疲れさまでした」
矢島幹夫「ありがとうございます! 回想シーンだけなので、あっという間でした」
月岡紘子「・・・」
月岡紘子「やっぱり痛かったですか?」
矢島幹夫「どうしてまた、そんな嬉しそうに・・・」
矢島幹夫「・・・そうですね、少し」
月岡紘子「今はCGがほとんどですから、貴重な体験ですよ!本当に羨ましい・・・」
矢島幹夫「羨ましいんだ・・・」
月城芳江「幹夫チャーン、来てるー?」
矢島幹夫「芳江さん。おはようございます!」
月城芳江「昨日のギャラの話しがあるからー。 カレーパン持って来てー」
矢島幹夫「・・・はい」
三ツ橋榎月「ちぃーっす!」
矢島幹夫「榎月さん! おはようございます」
三ツ橋榎月「昨日の撮影、行きたかったなぁ。 店番させられてたかんなー」
矢島幹夫「本当にすぐ終わりましたから。 お気遣い、ありがとうございます」
矢島幹夫「前のスタントの経験が役に立ちました」
三ツ橋榎月「そか!なら良かった!」
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「俺、珍しくこれから仕事なんよ。 何かあったらいつでも連絡してや!」
三ツ橋榎月「じゃ!」
矢島幹夫「それだけ!?」
矢島幹夫「・・・何しにきたんだろう」

〇校長室
矢島幹夫「・・・お待たせしました!」
月城芳江「やっぱり幹夫チャーンは手際が良いわねー」
月城芳江「で、その後、どお?えっと・・・」
月城芳江「・・・」
月城芳江「・・・マンマーブル?」
矢島幹夫「・・・マンバブル、です」
月城芳江「だいぶ慣れて来たんじゃなーい?」
矢島幹夫「・・・はい。いつの間にか、喉に詰まることもなくなりました」
矢島幹夫「芳江さんが除けてくれたおかげです!」
月城芳江「・・・」
矢島幹夫「話の合間に、カレーパンとフルーツサンドを交互に口に入れてる・・・」
月城芳江「ああ、あれね! でも、あれ。すぐに戻っちゃうものなのよ。本当は」
月城芳江「・・・」
矢島幹夫「パンがはみ出ている口に、ミニビスケットを放り込んでるっ」
矢島幹夫「・・・ということは?」
月城芳江「つまり、今の状態をキープできているのは、幹夫チャーン自身がコントロール出来てきているっことー」
矢島幹夫「そういうことなんですか?」
月城芳江「そう!もう、気にする事ないわよー。 普通に生活するには、支障ないだろうからー」
月城芳江「ということで」
月城芳江「これが、今回のギャラ。 プラス、退職金ー」
矢島幹夫「た、た、た、退職金!?」
月城芳江「実はね。勝手に雑用として幹夫チャーンを雇ったの、社長にバレちゃってー」
月城芳江「めっちゃ怒られちゃったー」
矢島幹夫「・・・社長!? 芳江さんが社長ではないのですか!?」
月城芳江「やっだー!私は営業よー 最初に言ったじゃなーい」
矢島幹夫「確かに、最初に「営業してあげる」とは言っていたけど・・・」
月城芳江「とりあえず「次が決まるまで置いておいて」ってお願いしたのー」
月城芳江「ほら、キッチリ稼いでもらうのがうちのやり方だからー。稼げない人はいらないっていうことよねー」
月城芳江「クレプロは、クレセントムーンプロダクションの略じゃなくて、「儲けをくれくれ!」プロダクションなのよ」
矢島幹夫「なんか「上手い事言ったでしょ?」的な、 ドヤ顔してる・・・」
月城芳江「私としては便利だったのにー」
矢島幹夫「次が決まるまでって、 まだ、そんな活動してませんが・・・」
月城芳江「・・・」
矢島幹夫「・・・こ、これは!」
月城芳江「見覚えがあるでしょ? 幹夫チャーンが作った企画書よー」
月城芳江「ぜひ!戻って来てくださいって」
月城芳江「あー、あの時に食べたサイコロステーキ、美味しかったわー」
月城芳江「違う部署だけどね。 幹夫チャーンはもっと現場に密着できる形の働き方が良いと思ったからー」
月城芳江「スタントの話や、式場での撮影の話をしたら、「そういう人を待っていた」って言われたわよ!」
月城芳江「私の営業力、凄いわよねー ホント、天才だと思うわー」
矢島幹夫「・・・」
矢島幹夫「大丈夫でしょうか。 また、バブルボールに閉じこもってしまわないでしょうか」
月城芳江「最初は撮影だと思えばいいのよ。 そのうち慣れてくるから」
月城芳江「それに。 はっきり言うと、やっぱり幹夫チャーンには俳優は難しいと思う。そんな甘い世界じゃないのよー」
矢島幹夫「確かに。 今の僕には、妙子さんや紘子さんのような演技はできません。でも、いつかは・・・」
矢島幹夫「・・・」
月城芳江「・・・」
月城芳江「幹夫チャーンは、本当に俳優になりたいの?」
月城芳江「変わりたかっただけじゃないの?」
矢島幹夫「・・・」
月城芳江「だとしたら、もう、実現できたじゃなーい」
月城芳江「幹夫チャーンは、まだ、やらなければいけないことがあるでしょ」

〇謎の扉
  そして僕は。
  その夜、開かれた
  「送別会」という名の飲み会で
  ビックリするほど泣いて
  初めて心の底から
  声を上げて笑った──
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「”あとはよろしくお願いします” ・・・と」

次のエピソード:人嫌いでも俳優できますか

コメント

  • ミッキーがいなくなってしまう!?😭三ッ橋さんの動きも気になりますね✨
    このまま次話に進みます😊

  • 続きはどうなるんだろう!
    すっごく気になります(*•̀ᴗ•́*)

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