クレプロ

サトJun(サトウ純子)

人嫌いでも俳優できますか(脚本)

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〇通学路
矢島幹夫「僕は、人が嫌いだ」
矢島幹夫「いや、実際は嫌いでは無い。 ただ、人が発している膜に触れると、全身がビリビリ痺れるのだ」
  僕は、これを「マンバブル」
  と呼んでいる。
矢島幹夫「この道を通るのも半年ぶりだなぁ」
  この一本道を真っ直ぐ行けば、商店街にでることができる
矢島幹夫「よくアイスコーヒーを買っていた自動販売機も、ホットが多くなっている」
矢島幹夫「・・・冬だから、当たり前か」
  幹夫は、時折通り抜ける冷たい風に背中を丸めながらも、懐かしいものを確認しつつ、ゆっくりと歩きはじめた。

〇オフィスのフロア
  半年前。
  僕は、前の会社に戻った。
  どういうわけか
  僕は会社を辞めている事にはなっておらず
  ”自己都合の休職中”となっていた。
矢島幹夫「よろしくお願いします!」
  幹夫は提案した企画書を元に、プロデューサーとして、現場を取り仕切った。
  企画の進行上
  前の部署に顔を出す事もあったが
同僚A「おう!矢島!久しぶりだな!」
同僚B「なんか、全然雰囲気変わったな! ゆっくり休めて本当に良かったな!」
  同僚のマンバブルは、
  通電するような心地良さで
  特に、年下上司に関しては
高学歴の年下上司「懲りずに頑張ってるみたいだな」
  変わりないマンバブルを感じたが、前のような痛さは全然なかった。
矢島幹夫「そうか。主任は、悪気はない、体育会系の強いノリだったんだんだ」
矢島幹夫「それを僕が過剰に受け止めて、強い守りに入ってしまったんだな・・・」
  むしろ、上司のその強さが、現場を引き締めてくれているのを感じた。
矢島幹夫「全て、僕の受け取り方のせいじゃないか」
矢島幹夫「僕はいったい、何をビクビクしていたんだ」
  僕はいったい、何をやっていたんだ。

〇ストレートグレー
  そして、イベントが落ち着いた頃、僕は
  榎月さんに連絡した。
  守秘義務の為に詳しい事は教えてもらえなかったが
  やはり、クレプロは
  会社の関係者から依頼を受けていた。

〇シックなバー
三ツ橋榎月「・・・それも 目の前でステーキを焼いてくれるお店で」
三ツ橋榎月「たまたま隣に座ったご縁で、だって!」
矢島幹夫「また、食べ物絡みでしたか・・・」
三ツ橋榎月「マジで内緒だかんな!」
  榎月はそう言っていたが、幹夫は社内の動きを見て、うすうす気付いていた。
矢島幹夫「教えてくださって、ありがとうございます!」
三ツ橋榎月「ついでに。 気付いてないと思うけど・・・」
三ツ橋榎月「あの日、ホームでぶつかったのは俺」
三ツ橋榎月「事前に掃除のおばちゃんのフリをして、社内での動きを見ていたのが紘子ちゃん」
三ツ橋榎月「NACsのヴィンテージレンズオートマチックの腕時計が目印だったんよ!」
矢島幹夫「あー。だから皆んな、腕時計の事を言ったんだ・・・」
三ツ橋榎月「そもそもさぁ。芳江さんにしても いくら時計が欲しいからって、あんな高いところから飛び込まないっしょ」
三ツ橋榎月「いやぁ、幹夫にも見せてやりたかったよ。 あの芳江さんの華麗な動き!」
三ツ橋榎月「ああ見えて、昔はスリムで戦隊モノとかに出てたんよ。芳江さん」
三ツ橋榎月「ホント格好良かったんよ。 憧れだったなぁ」
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「データあるけど、見たい?」
矢島幹夫「え!見たいです! 見せてください!」
三ツ橋榎月「あははっ! 忘れてなかったら、今度、な!」
三ツ橋榎月「クレプロはさ。 撮影や舞台だけじゃなくて、「演じる」ところでの仕事はなんでも受けるから、面白いよな!」
三ツ橋榎月「あ、儲けがある事、限定だけんな!」
矢島幹夫「確かに! くれくれプロ、ですからね」
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「ところで、マンバブルの謎。 わかったん?」
矢島幹夫「はい! 会社に戻ってから、今までの感じ方を復習したのですが・・・」
矢島幹夫「マンバブルはパッション、ですね!」
三ツ橋榎月「パッション!?」
矢島幹夫「僕の場合は、溜め込んだパッションをバリアにしていて」
矢島幹夫「外からのパッションに過剰に反応して、シビれていたんじゃないかと仮説しました」
三ツ橋榎月「そか! 呼応した自分のマンバブルにシビれていた、・・・と! 正に特殊電気だな!」
矢島幹夫「溜まっていたパッションを外に出せるようになったのは、スタントや撮影のおかげです!」
三ツ橋榎月「・・・芳江さんの読みは当たってたんなー。 さすが!」
「・・・」
三ツ橋榎月「今更だけど、最後の撮影。 凄く良かったわー」
三ツ橋榎月「マンバブルがガンガン伝わってきたし」
三ツ橋榎月「・・・」
三ツ橋榎月「・・・とにかく、良かったな! 仕事、頑張れよ!」
矢島幹夫「はい! いろいろとありがとうございました」
矢島幹夫「・・・」
  ──これが
  心の中で
  モヤモヤしていたものが
  一気に晴れた瞬間だった──

〇店の入口
矢島幹夫「おはようございます。 お久しぶりです!」
望月妙子「あらぁー、幹夫さん。 おっひさしぶりー!元気だった?」
矢島幹夫「はい!おかげさまで。 妙子さんもお元気そうで何よりです!」
  幹夫は軽くお辞儀をすると、クリーム色の壁に擦らないように体を横にして店の裏側へ回った。

〇事務所
矢島幹夫「おはようございます。 お久しぶりです!」
月岡紘子「あ!幹夫さん。お久しぶりです!」
矢島幹夫「相変わらず、焼きそばパンなんですね」
月岡紘子「何も変わっていませんよ。ここは」
矢島幹夫「だと思って、カレーパンもたくさん持って来ました!」
月岡紘子「芳江さん、奥にいますよ。どうぞ!」
  幹夫はコートを脱ぐと、カレーパンの袋を持って奥の部屋に向かった。

〇事務所
  ここは手作りパン屋、Deニッシュの事務所。
  しかし、ここはただのパン屋ではない

〇謎の扉
  ここで働いている従業員は全員
  重厚な扉の向こう側にある
  クレセントムーン・プロダクションの
  所属タレントでもある。
矢島幹夫「芳江さん。お久しぶりです」
矢島幹夫「・・・」
矢島幹夫「僕でも、俳優できますか?」
  人嫌いでも、俳優できますか?

コメント

  • 本編完結、お疲れさまです😊書ききるって根気がいりますし、終わらせるって勇気が必要ですよね。
    ミッキーが幸せで安心しました。そしてクレセントムーンの皆様、プロだなぁ😁
    あと2話、番外編?みたいな感じなのでしょうか。肩肘はらずにゆったりと読める貴重な作品、まだまだ楽しみにしてますね✨

  • 本編完結お疲れ様でした!
    幹夫チャーン(笑)の見違えるような成長が見れて良かったです😆
    最後に一番の立役者である芳江さんがあえて登場しないのも感慨深いですね☺️

  • 取敢えず(?)完結お疲れ様でした&おめでとうございます。
    すっかり逞しくなった幹夫チャーンに感無量です。読み続けてきて良かったな、と思います。

    サイドストーリーも待ってます。

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