第3話 父として(脚本)
〇田舎の学校
〇学校の廊下
〇校長室
担任教師「そ、それではこちらでお待ちください」
絢斗「・・・」
遥太(ようた)「・・・」
カオル「・・・」
絢斗「・・・何があったんだ? 本当にお前が暴力を振るったのか?」
絢斗(相手のケガは・・・ ヒザを擦りむいてるくらいか?)
遥太(ようた)「・・・」
絢斗「ケンカ・・・か?」
遥太(ようた)「・・・」
絢斗「なぜ何も言わない・・・?」
〇古書店
絢斗「あいつ・・・遥太が」
絢斗「クラスメイトに暴力を振るったと・・・」
絢斗(サイコパス犯罪者の典型的な例・・・か)
絢斗(あいつが犯人であることが濃厚になった時点で速やかに殺す・・・)
〇街中の公園
〇血しぶき
やはりお前が将来イオ姉ちゃんを殺す犯人であるなら・・・
狡猾に、饒舌に、否定してみせろ!
それなら俺は躊躇せずにお前を・・・!
〇校長室
担任教師「お待たせしました! カオルくんのお母さまが来られました」
カオルの母「・・・」
カオル「ママ・・・」
カオルの母「あなたが等々力遥太ね」
遥太(ようた)「はい・・・」
カオルの母「うちの子に手を上げたんですって? バカな事したわね」
遥太(ようた)「・・・」
カオルの母「いきなり暴力なんて・・・ どこかおかしいんじゃない、あなた?」
絢斗「・・・」
カオルの母「まあ、あなたもかわいそうよね 親に捨てられて、まともな教育を受けてこなかったんでしょう?」
カオルの母「独り身の寂しいご老人に拾われて育てられたそうだけど・・・」
カオルの母「聞くところによると、 その人も『大した人』みたいじゃない」
遥太(ようた)「・・・っ!!」
絢斗「・・・?」
カオルの母「そんな環境で育てば、 仕方のないことかしらね」
絢斗「おい」
カオルの母「はい?」
絢斗「いま議論されるべきはこの暴力沙汰 の事実関係についてだ」
絢斗「それとこいつの生まれ育ちに 何の関係がある?」
カオルの母「あなた何なんです?」
絢斗「等々力遥太の『保護者』だが?」
担任教師「まあまあ、ここは穏便に! 子どものやったことですから」
担任教師「ほら、遥太くん カオルくんに謝って!それで解決!」
遥太(ようた)「・・・」
絢斗「おい、待て」
担任教師「はい?」
絢斗「なぜ遥太が謝ったら解決するんだ? そんな不条理があるか?」
絢斗「たしかに遥太が暴力を振るった のかもしれない」
絢斗「だが、まずは状況を正しく把握 することが先決だ」
絢斗「しかし、 こいつらはまだ何もしゃべっていない」
絢斗「ゆえに、俺たちはあんたの第一報 以上の情報は持ち合わせていない」
絢斗「それだけでは状況を推察しようもない」
担任教師「いや、でもカオルくんが遥太くんに ぶたれたって・・・」
絢斗「あらゆる事実を多角的かつ客観的に 捉えて結論を導き出す・・・」
絢斗「学問の基本だ あんた、それでも人に物を教える立場か?」
担任教師「いや、はは・・・」
担任教師(これがモンスターペアレント・・・!!)
絢斗「あんたもそうだ」
カオルの母「はい?」
絢斗「ここへ来るなり遥太への無意味な叱責ばかり・・・なんの意味がある?」
絢斗「まず自分の子のケガを確認したか? こいつらの間に何があったのか知ろうとしたのか?」
遥太(ようた)「あっくん・・・」
カオルの母「あなたね・・・ そんな偉そうなこと言える資格があるのかしら?」
カオルの母「件のご老人が亡くなってからこの子を引き取られたそうですけど・・・」
カオルの母「実の父親だったら、生まれたこの子を捨てておいて何されてたんですか?」
絢斗「それは・・・ (そういうことになってるんだったな)」
???「もうやめてよ!!」
カオル「全部・・・僕のせいなんだよ」
カオルの母「カオル・・・!?」
カオル「遥太は僕を殴ってないし・・・ 殴ろうとしたのは僕の方なんだ」
「!!?」
遥太(ようた)「カオルくん・・・!」
〇教室
数時間前──
担任教師「それでは次は等々力くん、 作文を読んでください」
遥太(ようた)「はい!」
遥太(ようた)「・・・コホン」
遥太(ようた)「『僕の家族』──」
遥太(ようた)「僕はじいちゃんに育ててもらいました」
遥太(ようた)「みんなにはかわいそうとか、大変だねとか言われます」
担任教師(あ・・・やべ 等々力くんに読ませるのはミスったな)
遥太(ようた)「でも僕は自分がかわいそうと思ったことはありません」
遥太(ようた)「ちょっと無口だけど優しいじいちゃんがいたからです」
遥太(ようた)「じいちゃんは『ガクシャさん』だったので とっても頭が良くて何でも知ってます」
クラスメイトA「ねえ、遥太くんのおじいちゃんってこの間死んじゃったんだよね」
クラスメイトB「『ガクシャ』ってエライ人のことだよな? パパは『インチキ』ガクシャって言ってたぞ」
クラスメイトA「うちの親も言ってた! 昔、『ロンブン』で嘘ばっかり言って有名になったって」
遥太(ようた)「・・・」
担任教師「こ、こら~・・・ 静かにしなさいよ~」
遥太(ようた)「そんなじいちゃんももういません でも・・・僕は寂しくありません」
遥太(ようた)「新しい家族・・・ 『お父さん』のあっくんが来てくれたからです」
遥太(ようた)「あっくんはじいちゃんと同じくらいとても頭が良いです」
クラスメイトA「ねえねえ、本当のお父さんなのかな?」
クラスメイトB「え~?違うの?」
遥太(ようた)「・・・」
担任教師「と、等々力く~ん もういいですよ~」
遥太(ようた)「あっくんはたまに怖い顔するし、 修理屋さんのお仕事やお料理はちょっと苦手だけど・・・」
遥太(ようた)「僕を育てるために一生懸命お仕事を頑張ってくれるし・・・」
遥太(ようた)「そしてなにより・・・」
遥太(ようた)「僕のことを命がけで助けてくれた、 僕のヒーローです」
遥太(ようた)「誰に何を言われても・・・ じいちゃんとあっくんは 僕の大切な『家族』です」
担任教師「は、は~い 等々力くん、ありがとうございました~ じゃあ次は~・・・」
カオル「・・・」
〇学校の廊下
???「おい、遥太!」
遥太(ようた)「なに?カオルくん」
カオル「お前、 みんなの前でよくあんな嘘がつけるよな」
遥太(ようた)「嘘・・・? 僕は嘘なんか言ってないよ」
カオル「隠さなくてもいいぜ みんなにかわいそうって思われたく ないんだよな」
カオル「だから新しい『お父さん』ってのを 良いように言ったんだろ?」
カオル「そいつも何か理由があって、 仕方なくお前の面倒見てるんだよ」
カオル「そうに決まってる!」
遥太(ようた)「そうかもね」
カオル「・・・えっ!? み、認めるのかよ!」
遥太(ようた)「でも、 あっくんはいつも一生懸命だし・・・」
遥太(ようた)「自分も危なかったのに 命がけで僕を助けてくれた」
遥太(ようた)「それは嘘なんかじゃないよ」
遥太(ようた)「これ以上あっくんのことを悪く言うなら カオルくんでも許さないよ」
遥太(ようた)「そういうのは『フジョーリ』って言うんだ」
遥太(ようた)「あっくんは・・・ 僕の自慢の『お父さん』だよ!」
カオル「そ・・・」
遥太(ようた)「え?」
カオル「そんなわけ・・・ないだろ!!」
遥太(ようた)「え!ちょ・・・!」
カオル「う・・・うぐ」
遥太(ようた)「だ、大丈夫!?カオルくん!」
担任教師「お、おい! なんか大きい音がしたけど大丈夫か!?」
カオル「せ、先生に怒られたら・・・ またママは僕のこと嫌いになる・・・」
遥太(ようた)「カオルくん・・・」
担任教師「だ、大丈夫か!? おい、これは・・・」
カオル「遥太が・・・僕を・・・」
担任教師「な・・・等々力くんが!?」
担任教師「ほ、本当なのか?」
遥太(ようた)「・・・」
〇校長室
カオル「遥太は僕がママに怒られないように 黙っててくれたんだよ」
カオルの母「バカね・・・」
絢斗「遥太、お前・・・ 自分を殴ろうとしたやつを守るために・・・」
絢斗「しかし・・・ なぜ遥太にそんなに突っかかったんだ?」
カオル「遥太が・・・うらやましかったんだ」
カオル「『お父さん』のことを誇らしげに 話すから・・・」
カオルの母「カオル・・・」
「・・・」
〇田舎の学校
絢斗「さて、帰るとするか」
遥太(ようた)「今日はごめん・・・あっくん 僕のせいで」
絢斗「お前が謝ることじゃないだろ」
絢斗(むしろ謝らなきゃいけないのは 一瞬でも疑った俺の方・・・か)
遥太(ようた)「あっくん」
絢斗「ん?」
遥太(ようた)「僕のこと・・・信じてくれてありがとう!」
絢斗「あ・・・ああ」
絢斗(信じた・・・か)
絢斗「ただ・・・許せなかっただけだ お前の話も聞かず一方的に裁かれるのが」
絢斗「そんなふ・・・」
遥太(ようた)「『フジョーリはヒテーする!!』」
遥太(ようた)「でしょ!?」
絢斗「お前な・・・ 意味わかってるのか?」
遥太(ようた)「へへへ・・・ やっぱりあっくんはじいちゃんみたいに カッコいいや!!」
〇黒
絢斗「・・・!!」
〇田舎の学校
絢斗「そうだ!! お前のじいちゃん、学者だったのか!?」
絢斗「さっきの話、『論文』で『嘘』とか・・・」
絢斗「まさか・・・」
遥太(ようた)「うん・・・」
〇平屋の一戸建て
科学者の『蒼井ユウト』だよ
〇街中の公園
鳴海 イオ(なるみ イオ)「魂のこもった『お守り』だよ」
超微小重力場における時空間境界場発現についての考察
──蒼井ユウト
〇田舎の学校
絢斗(・・・やはり!!!)
〇田舎の学校
遥太(ようた)「だ、大丈夫!?あっくん!」
絢斗「あ、ああ・・・」
遥太(ようた)「昔有名になったらしいから、 あっくんも聞いたことあるよね・・・」
遥太(ようた)「その・・・ ロンブンでウソついたって言われて」
絢斗(そうか、遥太を世間のバッシングから少しでも遠ざけるため・・・)
絢斗(『蒼井』から『等々力』に姓を変えたんだな)
遥太(ようた)「黙っててごめん・・・」
遥太(ようた)「でも、僕にとってはそんなの関係ない、 ただの優しいじいちゃんだから・・・」
遥太(ようた)「あっくんにだけは・・・ じいちゃんのこと悪く思わないでほしかったんだ」
絢斗「何を言ってる!!」
遥太(ようた)「・・・!!」
絢斗「蒼井ユウトは世界一偉大な科学者だ 俺はよく知ってる」
遥太(ようた)「え?」
絢斗(なんせこの身でその理論を証明したからな)
絢斗「悪く思うどころか、誇りに思うよ その忘れ形見・・・お前を託されたことをな」
遥太(ようた)「へへへ・・・」
〇黒
そうか・・・
今日の一件でなんとなくわかってきた
『インチキ科学者の孫』というレッテルを貼られ・・・
一人で生きてきた等々力遥太がどれだけ苦労したか・・・
やがて育ての祖父を恨み、
世間を恨み・・・
いつしか人間性が歪んで
しまったのだろうか
〇血しぶき
あんな凶行に及ぶほどに・・・
〇黒
だが、『今回』は違う・・・!!
〇田舎の学校
遥太(ようた)「あっくん・・・?」
絢斗「遥太!!」
遥太(ようた)「え!?なに?」
絢斗「今度からは俺を信じて何でも話せ お前は一人じゃない」
絢斗「子どもなら子どもらしく頼れ」
絢斗「その・・・『父親』をな」
遥太(ようた)「・・・」
遥太(ようた)「うん!!」
〇幻想2
イオ姉ちゃんの存在が俺を強くしてくれたように・・・
今度は俺が遥太の支えになってやる
そして・・・
どんな不条理でも否定してみせるさ!!
〇古書店
大山 さち「うん・・・うん そうか!!」
大山 さち「やっぱりヨウちゃんがそんなこと するはずないよな!」
大山 さち「よっしゃ!!じゃあ今日は祝杯だな!」
大山 さち「等々力、お前も飲むぞ!酒買ってこい!」
大山 さち「なんでって・・・ めでたい時には飲むんだよ!!」
???「あの〜・・・」
大山 さち「おっと、お客だ! じゃあ、また後でな!ビール忘れんなよ!」
大山 さち「らっしゃっせ〜!! お待たせっす!」
謎の少女「・・・」
大山 さち(キレーな子・・・ 外国人?)
謎の少女「あの・・・これをトドロキ ヨータさんに」
大山 さち「なにこの複雑な機械・・・」
大山 さち「と、手紙?」
大山 さち「てか、なんでヨウちゃんの名前を? 修理屋は父親の絢斗の方だけど・・・」
謎の少女「いえ、これはヨータさんにお渡しください」
謎の少女「決して、 アヤトさんには知られないように・・・」
大山 さち「ええっと・・・」
大山 さち「まず、これは何なの?」
謎の少女「これが何かは・・・ すみません、言えないのです」
大山 さち「それは・・・めちゃくちゃ困るんだけど」
大山 さち「あとは、修理完了の希望日とかさ・・・」
謎の少女「そうですね・・・」
2020年の12月──
大山 さち「はあ!? きゅ、9年後じゃん!?」
謎の少女「そのとき、きっと必要になるはずです ヨータさんにとって・・・」
大山 さち「ヨウちゃんに? それって、どういう・・・」
謎の少女「それでは失礼します」
大山 さち「・・・え?ちょっと待って!! 依頼金は!?」
謎の少女「・・・」
謎の少女「うっぷ・・・!!」
大山 さち「え!え!?」
謎の少女「はぁはぁ・・・ やっぱり身体にこたえ・・・」
謎の少女「・・・オロロロロ」
大山 さち「うおおお!!?? 店先に吐きやがったよ!!??」
謎の少女「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
謎の少女「そ、それでは!!」
大山 さち「ちょ、おい!! ・・・掃除してけや!?」
大山 さち「ったく・・・ 酔っ払い・・・には見えなかったけど」
大山 さち「なんなの、あの子・・・?」
ほらーーー!遥太くんはいい子だったーーー!!
絢斗も愛情をかけることに舵を切ったようでほっとしました✨
謎の少女、あのオロロロ反応に覚えが……ということは、あれをやった人ですね?
時間の構造がどこにどう繋がるのか気になります。
ようたとあやとさん、良かったです😭感動回でした。
子供たちってこういういざこざがしょっちゅうありますし、保護者のやり取りもとってもリアルで、自分のことと重ねてしまいました😣
謎が1つ解けて、また次の謎。誘導がお上手!次話も楽しみにしています😊
Tap上で作文を読ませる演出が面白かったです。内容はもとより面白いですし。どんどん伏線が増えていきますね。回収も楽しみです。