財布を落としただけなのに

×××

4話【オムライス】(脚本)

財布を落としただけなのに

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〇大教室
鳥丸崇矢「手料理ねぇ。よかったじゃん!」
  崇矢はからかったように、天馬の頭をポンポンと叩く。
  そんな崇矢に天馬はジトっとした視線を送る。
鳥丸崇矢「な、なんだよ!その目は!」
加賀美天馬「美琴さんがストーカーだ!なんて言ったのはどこの誰だったっけ?」
鳥丸崇矢「はぁ?」
加賀美天馬「美琴さんはあんなにいい人なのに、疑うの悪いよ!」
鳥丸崇矢「あのなぁ、俺はその女がストーカーだ!なんて断言したつもりはねぇぞ?」
鳥丸崇矢「俺はただ、世の中にはストーキングする奴もいるから、そんくらいの危機感持ってろ!って忠告しただけだ!」
加賀美天馬「まぁ、そういう事にしといてあげるよ!」
鳥丸崇矢「お前なぁ・・・」
加賀美天馬「手料理楽しみだなぁ」
鳥丸崇矢「ノロケてんじゃねぇよ!クソ!リア充死ねっ!」
加賀美天馬「羨ましいんでしょ?」
鳥丸崇矢「はぁ?別に・・・」
鳥丸崇矢「まぁでも、その美琴ってのは、家に来るんだろ?」
加賀美天馬「あ、う、うん。俺の家で手料理を振舞ってもらうって話だから」
鳥丸崇矢「じゃあ、お前、準備しとけよ?」
加賀美天馬「準備って?」
鳥丸崇矢「バカだなぁ。ゴムだよ!ゴム!」
加賀美天馬「バ、バカ!何を言い出すんだよ!」
加賀美天馬「そ、そんなよこしま想いは無いよっ!」
鳥丸崇矢「バカはお前だろ?これはエチケットの話だろぉが!」
加賀美天馬「いやいや・・・」
鳥丸崇矢「じゃあ何か?仮にそういうムードになったらお前、生でやるつもりか?」
鳥丸崇矢「それはどうかと思うぞ?」
加賀美天馬「な、生って・・・」
鳥丸崇矢「ゴムくらいもってんだろ?」
加賀美天馬「も、持ってないよ!」
鳥丸崇矢「ったくしかたねぇな、ホラ!」
加賀美天馬「なんで持ってるんだよ!」
鳥丸崇矢「俺からしたら常備アイテムだけどな」
鳥丸崇矢「ホラ!俺からのメッセージ付きだ!『愛の初体験』だ!」
加賀美天馬「絶対バカにしてるだろ!」
鳥丸崇矢「してねぇってwww」
加賀美天馬「その「www」なんなんだよ!バカにしてるじゃん!」

〇電器街
  ─帰宅路──
加賀美天馬「ったく崇矢のヤツ!バカにしやがって!絶対今ごろ笑ってるよ!」
加賀美天馬「で、でも・・・もしかしら、俺と美琴さんが・・・」

〇一人部屋
加賀美天馬「み、美琴さん・・・その、服は・・・」
柊美琴「私・・・もう、我慢できない」
加賀美天馬「ちょ、美琴さん!そういうのはまだ早いんじゃ?」
柊美琴「天馬くんは、私の事・・・嫌い?」
加賀美天馬「あ、いや、それは・・・」
柊美琴「私は・・・天馬くんの事・・・好き」
加賀美天馬「み、美琴さん・・・」
柊美琴「私を・・・抱いてほしい・・・」
加賀美天馬「ちょ、みこ・・・」
柊美琴「大好き❤」
加賀美天馬「美琴さん!わぁぁぁぁぁぁぁ」

〇電器街
加賀美天馬「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
加賀美天馬「駄目!駄目!駄目!駄目!」
加賀美天馬「なんて想像してんだよ!」
加賀美天馬「下着姿の美琴さんなんか想像して、何考えてんだ!」
加賀美天馬「ただ手料理を振舞ってもらうだけ!そう!それだけなんだから!変な想像するなよな!俺!」

〇アパートの玄関前
  しかし天馬には、気掛かりな事があった。
  それは、手料理を振舞ってもらう約束をしたLIMEのやりとり以降、美琴からの連絡がパタリと止んでしまっからだ。
加賀美天馬「なんか俺、嫌われる事でも言っちゃったかな?」
加賀美天馬「まぁ、そもそも俺みたいな冴えないやつが、美琴さん見たいな可愛い人と、付き合いたいって思う事自体に無理があったんだよな」
加賀美天馬「まぁ、あまり考え過ぎないようにしよう」

〇一人部屋
  天馬が部屋に入ると、そこには驚きの光景が広がっていた。
加賀美天馬「な、なんだよ・・・これ・・・」
  そこには──
  オムライスが準備されていた──
加賀美天馬「え・・・」
加賀美天馬「オム・・・ライス?なんでオムライスが?」
  天馬の脳裏には、とある女性の顔が浮かんでいた。
加賀美天馬「ま、まさか美琴さん?」
加賀美天馬「いや、でも、鍵はかけて出ていったよな?」
加賀美天馬「もしかしてピッキング?」
加賀美天馬「いやいや、鍵はきちんと閉まってた!ピッキングで鍵を閉めるとか出来るわけないし」
加賀美天馬「どうなってんだよ!」
  しかし、そんな天馬をさらなる恐怖が襲う。
加賀美天馬「ひぃ!だ、誰?」
加賀美天馬「・・・・・・」
加賀美天馬「まさか美琴さん?」

〇安アパートの台所
  天馬は恐る恐るドアに近づき──
加賀美天馬「あ、あの・・・ど、どちら様ですか?」
  震える声で、ドアの向こうにいる人物に問いかける。
加賀美天馬(どうかっ!美琴さんじゃありませんように!)
  しかし、天馬の願いは、虚しくも粉々に砕け散る。
柊美琴「あっ!天馬くん?私!私!美琴だよ!」
加賀美天馬「美琴さん・・・」
加賀美天馬「こ、これはどういう事なんですか?まさか、勝手に入ったんですか?どうやって・・・」
柊美琴「いいじゃん!そんな事どうでも!」
加賀美天馬「どうでもよくないだろ!!!」
柊美琴「なに怒ってるの?私、何か悪い事したかなぁ?」
加賀美天馬「自覚ないんですか?これは明らかな住居侵入じゃないですか!犯罪ですよ!」
柊美琴「犯罪ってwww私は天馬くんの彼女なんだよ?彼女が彼氏の家に入るって犯罪なの?」
加賀美天馬「彼女?彼氏?いつからそんな話になったんですか?」
柊美琴「いつからって。私はずぅーっと天馬くんの彼女のつもりなんだけど?」
柊美琴「何変な事言ってるの?天馬くんおかしいよ」
加賀美天馬「おかしいのは美琴さんじゃないですか! だって俺たちは──」
柊美琴「そんな事いいから、早くドアを開けてよ!」
  美琴ドアをたたきながら天馬に語りかける。
  しかし天馬は、あまりの恐怖に腰が抜け立ち上がれない。
  多少の眩暈と吐き気もしてきたようで、苦しんだ顔で口元を手で押さえてる。
  天馬必死に掠れた声で──
加賀美天馬「か、帰ってください・・・」
  と呟く事しか出来なかった。
  しかし次の瞬間──
  美琴は外からドアを力強く叩く
加賀美天馬「ひぃ!」
  天馬はあまりの恐怖でその場にうずくまる。
柊美琴「ねぇ?天馬くん?なんで開けてくれないの? なんで?なんで?私は彼女でしょ?」
加賀美天馬(やめてくれ・・やめてくれよ・・)
  天馬の血の気の引いた真っ青な顔で、ただただ震えることしか出来なかった。
柊美琴「私の事嫌いになっちゃったの?ねぇ?ちゃんとお話ししようよ!天馬くんは何か勘違いしてるだけだよ!」
柊美琴「私は天馬くんを心の底から愛してるんだよ? なんでそんな私を拒絶するの?」
  美琴は何度もインターフォンを鳴らして、ドアを力強く叩く。
  天馬は、震える足腰を無理やり動かし、部屋に戻る。

〇一人部屋
  そして、今の美琴に何を言っても無駄なのだと確信し、意を決してスマホを手に取る。
加賀美天馬「け、警察に電話だ!美琴さんには悪いけど もうこうするしかない・・・えっと、119だったかな?117だったかな?」
  天馬は今、人生で一番の恐怖を味わっているせいで、とてもでないが正常な判断ができる状態では無かった。
加賀美天馬「あ!そうだ!崇矢に電話しよう!」
  幼い頃から苦楽を共にした親友である崇矢ならば、なにか助言をしてくれるのではないか?という期待を胸に、崇矢に電話をかける。
加賀美天馬(頼む崇矢!出てくれ!お願い!)
鳥丸崇矢「もしもし?」
  天馬は2コール足らずで電話に出てくれた。
加賀美天馬「あっ、出た!崇矢!助けてくれ!頼む!」
  天馬は藁にもすがる思いで崇矢に助けを求める。
鳥丸崇矢「助け?なんだよ!まさか愛しの美琴ちゃんトラブルか?」
加賀美天馬「そんな冗談言ってる場合じゃないんだよ!」
  普段激情する事が滅多いない天馬が、感情的になっている事に何かを察する崇矢。
鳥丸崇矢「何かあったのか?」
加賀美天馬「家に帰ったらオムライスが準備されててでもおれは鍵を締めて家を出て行ったしピッキングで開けたのかな?とも思ったんだけど」
加賀美天馬「鍵は閉まってたしそう思ってたら美琴さんが来ていきなり私は彼女だなんて言い出すしドアをドンドン叩くしもうどうしたら・・・」
  天馬は震える声で必死に自分のおかれた状況を説明するが
  早く伝えなければという気持ちと恐怖が先行し、早口になってしまっている。
  当然いきなり、早口でそんな事を言われたとしても、崇矢に通じるはずがない。
鳥丸崇矢「待て!待て!早口すぎて何言ってるかわからねぇょ!一旦落ち着け!」
加賀美天馬「あ、ご、ごめん・・・焦ってて・・・」
鳥丸崇矢「要するになんだ?どうしたんだ!」
  崇矢の言葉で我にかえり、ゆっくりと深呼吸をする天馬。
  落ち着いた天馬がゆっくりと口を開く。
加賀美天馬「やっぱり美琴さんは崇矢が言ったように やばいストーカーだったんだよ!」
鳥丸崇矢「はぁ?どういう意味だ?」
  天馬は、自宅に帰ると鍵を閉めて出たはずの部屋に美琴かがつくったオムライスが準備されていた事。
  部屋の外で美琴がドアノブを何度も力強く回しながら、私を部屋に入れろと騒いでいる事。
  私は天馬の彼女だと言い張っている事。全てを事細かに話した。
加賀美天馬「やっぱり警察に通報するべきかな?」
鳥丸崇矢「いや、へたに通報なんかしたりしたら、更に暴走しかねねぇよ!」
鳥丸崇矢「警察に通報したって、どうせ注意を受けるだけで、すぐ釈放されちまう!」
加賀美天馬「じゃあ、どうしたらいいんだよっ!」
鳥丸崇矢「俺が今すぐ行ってやる!」
加賀美天馬「た、崇矢が?来てくれるの?」
鳥丸崇矢「ああ!行ってやるから待ってろ!」
加賀美天馬「あ、ありがとう・・・」
鳥丸崇矢「いいか?ドアは絶対に開けるなよ?何されるかわからねぇからな!」
加賀美天馬「わ、わかった・・・」
  天馬はベッドの上で恐怖に震えながら、崇矢が助けに来てくれるのを待っていた。
  そんな天馬を知る由もない美琴は、相も変わらずドアをドンドンと叩き、何度もインターフォンを鳴らしている。
加賀美天馬(崇矢が来るまで耐えるんだ!)

〇アパートの玄関前
柊美琴「こんなもんでいいかな?」
  美琴はまるでひと仕事を終えたサラリーマンのような満足そうな表情を浮かべていた。
柊美琴(天馬くんには申し訳ないけど、こうするしかないから)
  そう心のなかで呟きながら、美琴がその場を立ち去ろうとした瞬間──
鳥丸崇矢「柊美琴ってのはあんたか?」
  崇矢が美琴を呼び止める。
柊美琴「そうだけど・・あなだだれ?」
鳥丸崇矢「俺は天馬の友人の鳥丸崇矢ってもんだ!」

次のエピソード:5話【美琴の弱み】

コメント

  • あ、感想書くの忘れてました。次に進むボタンを連呼状態。あー怖いもの見たさの意味を実感しています。とにかく次へ。

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