3話【影の脅迫者】(脚本)
〇一人部屋
──自宅──
帰宅直後、天馬は直ぐにスーパーでの出来事を崇矢に電話で話した。
鳥丸崇矢「はぁ?LIMEを交換したぁ?」
加賀美天馬「う、うん・・・」
鳥丸崇矢「お前なぁ!どうせ強引に迫られて断りきれなかったんだろ!」
加賀美天馬「否定できないのが悔しいけど・・・」
鳥丸崇矢「お前昔からそういう所あるよな!」
鳥丸崇矢「まぁ、でも、交換しちまったもんは、しょうがねぇ」
鳥丸崇矢「上手いこと関係が続けばいいけど、やばそうなら即ブロックしろよ」
加賀美天馬「ブロックって・・・」
鳥丸崇矢「まぁ、つっても、あいての・・柊美琴だっけ?そいつは天馬の住所知ってるわけだし、あんまし意味ねぇ気もするけど」
加賀美天馬「それじゃブロックの意味ないじゃん!」
鳥丸崇矢「だから、無闇に連絡先を交換するべきじゃ無かったんだよ!」
加賀美天馬「あっ!そういう事かぁ」
鳥丸崇矢「先の事を見据えて、慎重に行動するべきだったんだよ!お前、今朝俺がした忠告が、なんも響いてねぇんだな!」
加賀美天馬「まぁ・・・」
鳥丸崇矢「まぁ、でも、交換断って、逆上して暴れられたりしたら、それこそ面倒だからなぁ」
鳥丸崇矢「今回の場合はしょうがねぇか」
〇一人部屋
鳥丸崇矢「でも気をつけろよ?」
鳥丸崇矢「この様子だと、俺が言ったストーカーって話も、可能性はゼロじゃねぇって思えてきたからな」
加賀美天馬「あぁ!それは俺も思ったよ!実際に美琴さんは俺の名前と年齢を覚えてた訳だしね」
鳥丸崇矢「そう思っていながら、LIME交換するあたりが、危機感がねぇというか、なんというかって感じだよな」
加賀美天馬「ま、まぁ、あはは・・・」
鳥丸崇矢「でもこれだけは言っとくぞ?」
鳥丸崇矢「”近づきすぎるな”」
加賀美天馬「近づき?」
鳥丸崇矢「あまり親密になりすぎるんじゃねえぞ!って話だ!」
鳥丸崇矢「まぁ、関係を続けていく中で、お前が惚れて、付き合いたいって思うんなら、話は別だけど」
鳥丸崇矢「こっちにその気がねぇのに、『私は彼女』って勘違いするタイプの女だったら、後々厄介だろ?」
鳥丸崇矢「思い込みの激しいヤツってのは、男女関係なく居るもんだからな」
加賀美天馬「まぁ、確かに・・・」
加賀美天馬「でもそうなった時、俺、キチンと断れるかなぁ」
鳥丸崇矢「まぁ、もしもの話だからよ」
鳥丸崇矢「もしそうなったら、俺がアドバイスくらいしてやるよ!」
加賀美天馬「あははは!崇矢が?」
鳥丸崇矢「あ?なに笑ってんだ?」
加賀美天馬「だって崇矢、いままで女の子と付き合った事ないじゃん!」
加賀美天馬「そんな崇矢が、どんなアドバイスが出来るっていうんだよ!」
鳥丸崇矢「それは関係ねぇだろ!」
鳥丸崇矢「まぁ、少なくともお前よりは、マシな返しできる自信はあるけどな」
加賀美天馬「うっそだぁ!強がっちゃって!」
鳥丸崇矢「い!い!か!ら!何かあったら手助けしてやるって言ってんだ!」
加賀美天馬「あははは!ごめん!ごめん!」
加賀美天馬「まぁ、その時はお願いするよ!」
鳥丸崇矢「まぁ、何事もない事を祈ってるよ!」
加賀美天馬「うん♫ありがと崇矢!」
鳥丸崇矢「じゃあ、電話切るぜ!」
加賀美天馬「うん!また大学でね!」
鳥丸崇矢「おぅ!またな!」
加賀美天馬「・・・・・・」
加賀美天馬「恋人と勘違いかぁ・・・」
加賀美天馬「崇矢の取り越し苦労だと思うけど・・・」
加賀美天馬「はぁ・・・なんか今日はやけに疲れたなぁ。情報が多過ぎて頭も痛くなってきた・・・」
加賀美天馬「まだ、時間的に早いけど、今日は早めに寝よ・・・」
天馬のスマホのLIME通知音が鳴り響いた。
加賀美天馬「あ、LIMEだ!誰からかな?」
天馬はスマホを手に取り、画面を確認する。
✉️MICOからの新着メッセージ
はじめまして!️先ほどの柊美琴です!️早速LIMEしちゃいました!️まだ起きてますか?
加賀美天馬「あっ!美琴さんからのLIMEだ!」
加賀美天馬「・・・・・・」
加賀美天馬「とりあえず返信しとこうか・・・」
〇青(ライト)
天馬は美琴からのらメッセージを確認すると、直ぐさまLIMEを開き返信メッセージを送信する。
加賀美天馬「メッセージ!ありがとうございます!もうそろそろ寝ようかな?って思ってるところです!」
柊美琴「わぁ!️メッセージ送ってくれた❤️嬉しい❤️ありがとう天馬くん❤️」
加賀美天馬(ちょ、おい!おい!さすがにハート多過ぎない?)
加賀美天馬(付き合ってる彼氏相手って訳じゃないのに・・・)
加賀美天馬(これってもしかして、崇矢が言ったように、マジで彼女って勘違いしてるパターンかな?)
加賀美天馬(いやいや、さすがにそれはないだろ?まだ直接会って会話したのなんて、トータルで20分も無いんだし)
加賀美天馬(いや、こういうのって時間は関係なかったりするのかな?)
加賀美天馬(あーもぅ!こういう時ってなんて返したらいいのかな?)
加賀美天馬(既読はもうついてる筈だし、早く返信しないと既読スルーしてるって思われちゃうよ)
加賀美天馬(まぁ、とりあえず、謙虚に、喜んでくれて嬉しいです!的な感じでいいかな?)
加賀美天馬「とりあえず送信!っと!」
加賀美天馬「そんなに喜んでもらえて、なんか恥ずかしいですね(汗)ありがとうございます!」
加賀美天馬(こんな感じでどうかな?)
加賀美天馬(あっ!既読ついた!)
柊美琴「そんな💦お礼を言われるほどの事してませんから!️天馬くんって律儀なんですね❤️」
加賀美天馬(返信はやっ!!鬼のように早いな!)
加賀美天馬(なんか美琴さんの返信が早いと、こっちも早く返さなきゃって焦っちゃうな!)
加賀美天馬(とりあえず送信!)
加賀美天馬「そんな事ないですよ!」
加賀美天馬(うーん。送信した後に言っても後の祭りだけど、なんかこの返信、淡白すぎないかな?)
加賀美天馬(テキトーに返信したって思われないかな?)
加賀美天馬(あっ!既読ついた!)
柊美琴「でも寝るんならあまりLIME送るの迷惑ですよね?私ももう寝ようかな🛌」
加賀美天馬(あら、気を遣わせちゃったかな?普通に『起きてますよ』だけでよかったかな?ミスったなぁ)
加賀美天馬「あ、すいません気を遣わせちゃって💦」
加賀美天馬(いやぁ、ミスったなぁ。女性とLIMEのやりとりとか、ほどんど、というか全くしてこなかったからなぁ)
柊美琴「いえいえ❤️私も寝る前に天馬くんにLIMEを 送りたかっただけですから!️私ももう寝ますね🛌」
加賀美天馬(はぁ〜よかった。あまり嫌な印象は持たれてないみたいだ)
柊美琴「あの、迷惑じゃなければまた、LIMEしてもいいですか?」
加賀美天馬(あ、続けて返信きた!)
加賀美天馬「どれどれ・・・」
加賀美天馬「かっ、可愛い!」
加賀美天馬「またLIMEしていいですかって、なんだよこの謙虚な可愛さは!」
加賀美天馬(デート終わりに、また次もデートしてくれる?って言われてるような気分だ!)
加賀美天馬「あ、全然いいですよ!️迷惑なんかじゃないですよ!️」
加賀美天馬(いやぁ、可愛いなぁ美琴さん・・・)
柊美琴「よかったぁ❤️ならまたLIMEしますね!️おやすみなさい💤」
加賀美天馬「はい!️お休みなさい💤」
・・・
・・・
・・・
加賀美天馬「返信が来ないって事は、もう寝たって事かな?」
加賀美天馬「じゃあ、俺ももう寝ようかな・・・」
──それから数日間──
天馬と美琴のLIMEのやりとりは続いた──
〇青(ライト)
とある日のLIME①
柊美琴「天馬くんって彼女さんとか居たりするんですか?」
加賀美天馬「居ます!って言いたいのはヤマヤマなんですけど、残念ながら居ないんですよね」
柊美琴「周りの女も分かってないですね!️天馬くんはこんなに良い人なのに、それに気づかないなんて!️」
加賀美天馬「いやいや💦そんな良い男なんかじゃありませんって!️美琴さん大袈裟すぎですよ!️」
柊美琴「天馬くんは自分の魅力に気づいてないだけですよ!️」
加賀美天馬「そうかなぁ?そんな事言ってくれるの美琴さんだけですよ☺️」
柊美琴「そんな事ないですって☺️」
〇青(ライト)
とある日のLIME②
柊美琴「そう言えば天馬くんって自炊しないって言ってましたよね?てことは、毎日お弁当なの?」
加賀美天馬「さすがに毎日って訳じゃないですけど、やっぱり買うだけで済む弁当ばっかになっちゃってますね💦」
柊美琴「やっぱそれじゃ栄養偏っちゃいますよ!️病気になったりしたら大変!️」
加賀美天馬「一応の調理器具と調味料は揃ってるんですけどね💦」
柊美琴「それなのに自炊してないんですか💦揃ってるのにしないのは勿体無いですよ!️」
加賀美天馬「一人暮らし始めた頃はよし!️自炊するぞ!️って気合い入れて準備して半年くらいは自炊頑張ったけど、もう飽きちゃいました💦」
柊美琴「飽きちゃダメ🙅♂️なんなら私が作ってあげましょうか?そろそろ手作りのお料理が恋しくなってません?(笑)」
加賀美天馬「いやいや💦さすがに申し訳ないですよ💦」
柊美琴「大丈夫!️大丈夫!️私お料理大好きだから❤️」
柊美琴「私の実家、小さな喫茶店やってるんですけど 、小さい頃から店の手伝いやらされてたおかげで、料理得意なんですよ❤️」
加賀美天馬「でも美琴さんに悪いし・・・」
柊美琴「ふわトロオムライス得意ですよ!️ほら!️包丁でスーッて切ってトロっとするやつ!️食べてみたくないですか?」
加賀美天馬「確かにそれが自分の家で食べれたら最高かも!️」
柊美琴「でしょ?でしょ?私作ってあげますよ❤️」
加賀美天馬「じゃあお願いしようかな💦でも本当にいいんですか?やっぱまだ申し訳なくて💦」
柊美琴「全然大丈夫❤️そもそも嫌だったら、私からこんな提案しないから!️」
加賀美天馬「じゃあ、今度二人の予定があった時にでもお願いしようかな?」
柊美琴「絶対に美味しいって言わせて見せるから!️気合い入れて作るね❤️今から楽しみ☺️」
柊美琴「じゃあ、夜も遅いからもう寝ますね!️楽しみに待っててね❤️」
加賀美天馬「はい!️楽しみに待ってます!️おやすみなさい💤」
〇一人部屋
天馬は美琴とのLIMEのやりとりを終えると、期待に胸を躍らせたように、惚気た顔をしていた。
加賀美天馬「ふわトロオムライスかぁ」
加賀美天馬「今から楽しみだなぁ。女の子を家に呼んで手料理を食べさせてもらえるなんて!」
加賀美天馬「今のうちから掃除しとこうかな」
加賀美天馬「というか崇矢も崇矢だよなぁ!」
加賀美天馬「美琴さんはこんなにいい人なのに!ストーカーだなんてさ!」
加賀美天馬「崇矢の言葉に踊らされていた自分が恥ずかしいよ」
加賀美天馬「今から楽しみだなぁ!」
〇部屋のベッド
美琴は、天馬とのLIMEを終えると、ベッドに横になっていた。
柊美琴「天馬くんって可愛いなぁ」
柊美琴「このまま”アイツ”の事なんか無視して、天馬くんと付き合っちゃおうかな?なんてね♫」
すると、美琴のスマホの着信音が鳴り響く。
柊美琴「あ、電話!」
美琴はスマホを手に取る。
柊美琴「・・・・・・」
スマホのディスプレイには”非通知”と表示されている。
柊美琴「・・・”アイツ”からだ・・・」
美琴は曇った表情を浮かべながら電話に出る。
〇部屋のベッド
柊美琴「も、もしもし・・・」
美琴は震える声で語りかける。
???「”定期連絡”はどうしたんだ!約束の時間は既に過ぎてるぞ?何をしていたんだ!」
電話の相手は変成器で声を加工しているのか、甲高い機械音のような声だった。
柊美琴「す、すいません。今連絡しようと・・・」
???「見え透いた嘘はいい!さっさと進捗状況を!」
柊美琴「は、はい・・わかりました・・」
美琴は”本日の天馬とのやりとり”を事細かに伝えた。
最後に、日時は決まっていないものの、天馬の自宅に行き手料理を振る舞う約束をしたことを伝えた。
???「ほぅ!もう自宅に上がり込む約束をするまでに発展したか!」
???「さすがは、男をその気にさせるのが上手い女だなぁ」
柊美琴「・・・・・・」
???「あら?違ったか?お前はそういう女だろぉが!」
柊美琴「次は・・・何をすればいいんですか?」
???「ふははは!否定はしねぇんだな!」
柊美琴「また新たな指示なんですよね?その為の電話なんですよね?」
???「話が早くて助かる」
柊美琴「何をすれば・・・」
???「まず今の段階を整理しよう」
柊美琴「は、はい・・・」
???「まず第一段階は、美琴ちゃんが加賀美の自宅まで財布を届けにいく」
柊美琴「・・・・・・」
???「次の第二段階は、偶然を装い、加賀美に近づく」
???「第三段階は、先ほどの美琴ちゃんが言ったように、家に行く約束をする」
???「現時点ではこの第三段階だ!ここまではいいか?」
柊美琴「は、はい・・・」
???「次は第四段階に移行する」
柊美琴「第四?」
〇部屋のベッド
電話相手の口から、第四段階と称した新たな指示が告げられた。
しかし、それは下手したら警察に捕まるかもしれないものだった。
柊美琴「そ、それ大丈夫なんですか?」
柊美琴「犯罪になるんじゃ・・・」
???「ふははは!お前の口から”犯罪”なんて台詞が出てくると驚いたなぁ」
柊美琴「・・・・・・」
???「なんせお前らサラ・・・」
柊美琴「やめてください!お願いします!やりますから!お願いします!」
???「ふははは!まぁ安心しろ!お前が黙って俺の指示に従ってるウチは、口外したりしねぇからよ!」
柊美琴「あ、ありがとうございます」
柊美琴「でも警察に通報されたりしたら・・・私・・・」
???「心配するな。警察には通報されないように根回ししといてやる!安心しろ!」
柊美琴(通報されないように根回し?この人一体なにもの?)
柊美琴(深く追求したりして、”あの事”をバラされたりするのは嫌だし)
柊美琴(ここは、深入りしないでおこう・・・)
柊美琴「そ、そうですか・・・安心しました・・・」
???「なら頼んだぞ?」
柊美琴「は、はい・・・わかりました・・・」
美琴は電話を終えると、その場にうずくまっている。
柊美琴「ごめんね・・・天馬くん・・・」
柊美琴「あなたに恨みはないんだけど・・・」
柊美琴「私にはもう、こうするしか道は残されてないの・・・」
柊美琴「本当にごめんなさい・・・」