第二十四話 相応しき者(脚本)
〇城門の下
◆あらすじ◆
砦に辿り着いた一行。
アーヌルスの血を繋ぎたい貴族に
ソウビは捕まる。
ソウビ・アーヌルス(あの魔法は、確か・・・)
突貫で頭に叩き込んだ異国の言葉を
小さく詠唱する。
一字一句間違えないように。
そして詠唱を終えるタイミングで、
体内の光弾を手のひらから射出した。
カニス卿「おわああっ!?」
フィデリス「うぉお!?」
ソウビ・アーヌルス(よし、二人が離れた!)
私は砦の外にいるみんなの元へ走り出す。
カニス卿「ソウビ様が逃げられた! 皆の者、お止めしろ!!」
兵士たちがとまどいながらも
私に向かって駆けてくる。
ソウビ・アーヌルス(上の命令に逆らえない皆さんには 悪いけど・・・!)
私は短い詠唱で済む初期魔法の雷撃を
こまめに打ち、兵士たちをけん制する。
フィデリス「ソウビ様は魔法を使われる! 少々手荒いが詠唱を阻止するため 口を塞ぐことを許す!!」
ソウビ・アーヌルス(おい! 本当に手荒いな!!)
四方八方から伸びる手を、
躱し、雷撃を打ちこみ、避ける。
兵士「ソウビ様、失礼いたす!」
ソウビ・アーヌルス「あっ!」
腕を掴まれたため目測を誤り、
雷撃を砦の壁へと落としてしまった。
気が散ったせいか、
魔力を制御できず壁が崩れる。
「うお」という
低い声が聞こえた気がした。
兵士「ソウビ様!」
ソウビ・アーヌルス「(むぐっ!)」
背後から口を塞がれる。
両腕も固められ、
完全に動きを封じられてしまった。
ソウビ・アーヌルス(これが 女王に祭り上げようと考える相手に することかぁ~っ!!)
――ソウビ様!──
ソウビ・アーヌルス「!?」
ソウビ・アーヌルス(誰か私を呼んだ?)
時を置かず、
私を取り巻く兵士たちがどよめき始める。
やがて兵士たちをはね飛ばし、
私の元へと駆け付けたのは
この砦の本来の主だった。
ソウビ・アーヌルス「キ・ソコ将軍!!」
キ・ソコ将軍「ソウビ様!!」
キ・ソコ将軍「うぉおおおお!! 貴様ら、姫様に無礼は許さんぞ!!」
カニス卿「ひ、ひぃ!? なぜだ、奴は牢に 厳重に繋いであったはずなのに!?」
キ・ソコ将軍「カニス!! フィデリス!! よくも汚い手を使ってくれたな!!」
フィデリス「ひっ、兵士ども! 逃げるな!! こいつを止めろ!!」
キ・ソコ将軍「おらぁあああ!!」
カニス卿「うわぁああああ!!」
ソウビ・アーヌルス(強い・・・! 原作でも強キャラだったけど、 実際に目の前で見ると迫力!)
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿ぉお!!」
ソウビ・アーヌルス「テンセイ!」
入り口を守っていた
兵士たちの壁を突破し、
テンセイたちが駆け付けてくる。
チヨミ・アルボル「ソウビ、大丈夫?」
ソウビ・アーヌルス「うん、そっちに怪我はない?」
タイサイ・アルボル「てめぇが他人の心配できる立場かよ。 あっさり連れ去られやがって!」
ソウビ・アーヌルス(ぐぬぅ)
ユーヅツ・アモル「でも、 雷撃をかなり上手に扱っていたよね。 練習した甲斐あったじゃない」
ソウビ・アーヌルス「へへっ」
カニス卿やその一派は、
あっという間にキ・ソコ将軍率いる
部隊に制圧されてしまった。
〇兵舎
キ・ソコ将軍「実に面目ない。 あ奴らの姦計にうっかり はめられてしまいましてな」
砦内に迎え入れられた私たちは、
ここで何が起きていたかを
キ・ソコ将軍から聞くことが出来た。
キ・ソコ将軍「慰労と言う名目でここへ訪れた奴らに 一服盛られまして、 気を失い、目覚めた時は牢の中でした」
キ・ソコ将軍「部下ともども手足を厳重に鎖で繋がれ、 ほぼ身動きのとれぬ状態。 砦は奴らの手中に収められてた次第で」
ソウビ・アーヌルス(また他人のエリア乗っ取ってたのかよ、 あいつら)
アルボル卿「ではどうやって 牢から出て来られたのだ?」
キ・ソコ将軍「それが、先ほど突如 牢の壁が破壊されましてな」
ソウビ・アーヌルス(ん?)
キ・ソコ将軍「鎖の端は その壁に埋め込まれておったため、 壁が崩れると同時に 手足が自由になったのだ」
キ・ソコ将軍「解放された直後は、 少々手足に痺れを感じておったが、 ははは」
ソウビ・アーヌルス(それって、私が目測誤った雷撃かな?)
ソウビ・アーヌルス(そういや『うお』って声が聞こえたな。 よくぞご無事で)
アルボル卿「なんにせよ、無事でよかった。 突然姿を消したので、 心配しておったのだ」
キ・ソコ将軍「ははは、そちらも。 国外追放になったと聞いた時は、 驚きましたぞ」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
キ・ソコ将軍「それでチヨミ嬢、いや、正妃チヨミ。 あなたはどうするおつもりかな?」
キ・ソコ将軍「大勢の民を引き連れ、 まるで反乱軍の様相で城へと 向かっているようだが」
チヨミ・アルボル「ヒナツには王座から下りてもらいます」
キ・ソコ将軍「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「彼は王の器じゃありません。 視野が狭く、国を治めるだけの知識がなく 采配も拙劣」
ソウビ・アーヌルス(はっきり言った・・・)
ソウビ・アーヌルス(好きだけど、盲目じゃない。 チヨミはまっすぐヒナツを見ている・・・)
チヨミ・アルボル「この国の民を不幸にしないためには、 ヒナツを王座から下ろし、 統治できる人間が 王にならなくてはなりません」
キ・ソコ将軍「そして、その人間は正妃チヨミ、 あなただと?」
チヨミ・アルボル「とは限りません」
ソウビ・アーヌルス(!?)
チヨミ・アルボル「多くの民は 私を王にと望んでくれています。 それはとても嬉しいことです」
チヨミ・アルボル「ですが一方で、 長く続いたアーヌルスの血筋が 王位に就くことを望む貴族も多い」
ソウビ・アーヌルス(えっ、こっち来た!?)
チヨミ・アルボル「私は、ソウビが 王位に就くのが良いと考えています」
ソウビ・アーヌルス「ちょちょちょ、ちょっと待ってチヨミ!? 心の準備とか、出来てないんだけど!?」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
ソウビ・アーヌルス「あと、国を治めるとか 正直よく分からないし」
ソウビ・アーヌルス「ヒナツほどむちゃくちゃじゃなくても、 穴だらけの治世になっちゃいそうで」
チヨミ・アルボル「その辺は私たちがしっかり支える。 そのための家臣じゃない」
ソウビ・アーヌルス「で、でも・・・」
キ・ソコ将軍「正妃チヨミ、 この私は王に使える将軍ですぞ?」
キ・ソコ将軍「王妃と言えど、反乱の意思ある人間を、 おとなしく見逃すとお思いか?」
チヨミ・アルボル「あなたが仕えているのは、 現王でなく、国そのものですよね?」
チヨミ・アルボル「あなたはこのイクティオを愛している。 そして国を傾けんとする人間を、 王と認める方とは思えない」
チヨミ・アルボル「きっと私たちの味方になってくれます」
キ・ソコ将軍「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
キ・ソコ将軍「ふふ」
キ・ソコ将軍「はーっはははは!」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
キ・ソコ将軍「相変わらず、勘が鋭いだけでなく 肝の据わったお嬢さんですな、 アルボル卿」
アルボル卿「はは、これでも昔は、 野盗に怯えて泣いておったのですが」
ソウビ・アーヌルス(いや、そこ笑うとこ!?)
キ・ソコ将軍「あなたのお気持ちはよく伝わりました、 正妃チヨミ。 このキ・ソコ、 あなたの力となりましょう」
キ・ソコ将軍「王座には誰がふさわしいか。 それはもう少し時間をかけて 考えるとして」
キ・ソコ将軍「今日は大変な一日だった。 まずはゆっくりと疲れを癒してください」
〇城門の下
キ・ソコ将軍とアルボル卿が
部屋に引き上げてからも、
私たちはその場にとどまった。
〇兵舎
メルク・ポース「少し予測とは違ったようだけど、 おおむね君が知ってた流れかな、 姫さん?」
ソウビ・アーヌルス「へ?」
メルク・ポース「知っていたよな? ここの人間がチヨミちゃんの味方に なってくれるって」
ソウビ・アーヌルス「えぇ、まぁ・・・」
メルク・ポース「敵の本陣は目の前だ」
メルク・ポース「そろそろ話してもらってもいいかな。 君が何者なのか」
第二十四話 相応しき者 ──終──
第二十五話に続く
キャー!!キ・ソコ将軍ー!!😆
ガチムチパワー系最高!
アルボル卿も相変わらずイケオジですね💕
将軍、強い!!
こういう人が味方になってくれるのって安心感半端ないです。
上手くやれば共闘できるはずなのに、血筋オタク達の拗らせっぷりが酷いですね😅
将軍、いい人でよかった!
カニスもチヨミも、目的は同じなのに、
なぜこうもやり方が違うのか…😅