財布を落としただけなのに

×××

2話【本当に偶然?】(脚本)

財布を落としただけなのに

×××

今すぐ読む

財布を落としただけなのに
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇大教室
  ──翌日──
  早朝から大学に通う天馬は、昨日の深夜の出来事を、小学校から付き合いがある親友、鳥丸崇矢に話した。
鳥丸崇矢「まじ?」
加賀美天馬「うん。ちょっと怖かったけど、変質者じゃなくてよかったよ」
鳥丸崇矢「でもさぁ、普通家まで届けに行くか?」
加賀美天馬「え?どういう意味?」
鳥丸崇矢「だってソイツって女だったんだろ?」
加賀美天馬「う、うん・・・」
鳥丸崇矢「俺がその女の立場だったら、そんな事絶対にしないけどな」
鳥丸崇矢「会ったことも無い、見ず知らずの男の家に財布を届けに行くなんて危険な真似!」
鳥丸崇矢「だって犯罪とか怖いだろ?いきなり家に連れ込まれて、犯されるって可能性だってあるしな!」
加賀美天馬「まぁ、確かにそれに関しては俺も崇矢と同じ意見だけど・・・」
鳥丸崇矢「そうならない為に、直接家に行くなんてせずに、警察に届ける様になってんだろ?自分の身の安全のためにさ!」
鳥丸崇矢「常識ねぇよなぁ!その女!」
加賀美天馬「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃん!善意で届けに来てくれたんだから!」
鳥丸崇矢「つーか、天馬も天馬だぞ?」
加賀美天馬「え?」
鳥丸崇矢「なんで、すんなりドア開けたんだよ!」
鳥丸崇矢「少なからず「変質者かも」って恐怖心はあったわけだろ?」
加賀美天馬「まぁ、その、うん・・・」
鳥丸崇矢「だったら、すぐにドアを開けねぇで、チェーンするべきだろ?チェーン!」
加賀美天馬「あっ!まったく思いつかなかった!」
鳥丸崇矢「あのなぁ天馬・・・」
鳥丸崇矢「昔っからそういう危機管理能力低すぎなんだよなぁ」
加賀美天馬「た、崇矢だって、俺と同じ状況だったらおんなじ事するって!」
鳥丸崇矢「いいや!しねぇな!俺は常に危機感持って生きてっから!お前とは違うんだよ!」
加賀美天馬「うぐぐぅ・・・・」
加賀美天馬「返す言葉もないよ・・・」
鳥丸崇矢「しかも、いつ財布を落としたのかすら、記憶ないと来たもんだ!こりゃ将来不安しかないな!」
加賀美天馬「もう、やめてくれよ・・・」
鳥丸崇矢「あははは!冗談だよ!冗談!からかっただけだよ!」
加賀美天馬「そういうイジワルな所、昔から変わってないんだから!」
鳥丸崇矢「あははは!悪い!悪い!」

〇大教室
加賀美天馬「でも、ちょっと、後悔が残ってるんだよね・・・」
鳥丸崇矢「後悔?なんだよ後悔って」
加賀美天馬「その、お礼さ!渡せてないから、なんか申し訳なくて・・・」
鳥丸崇矢「財布の中にはいくら入ってたんだ?」
加賀美天馬「その・・・」
加賀美天馬「300円(ボソッ)」
鳥丸崇矢「300円?遠足のおやつか!なんだよ300円って!」
加賀美天馬「しょうがないだろ!お金下ろしてなくて、そ、れしか入ってなかったんだよ!」
鳥丸崇矢「いや、にしてもだ!大学生の財布の中身が300円はねぇだろ!あははは!」
加賀美天馬「うぐぅ・・・」
鳥丸崇矢「でも気にしなくても良いんじゃね?」
加賀美天馬「え?なんで?せっかく届けに来てくれた人に・・・」
鳥丸崇矢「俺が言いたいのは、中身が入ってたら、十中八九抜かれてたんじゃね?って話だよ!」
加賀美天馬「あ、まぁ、確かに・・・」
鳥丸崇矢「まぁ、多分」
鳥丸崇矢「この人・・ハタチにもなって、300円しか持ってない・・きっとひもじい思いしてるんだわ!」
鳥丸崇矢「って、哀れみで持って来てくれたんだよ!」
加賀美天馬「ほら!またそうやって馬鹿にする!」
鳥丸崇矢「悪い!悪い!」
加賀美天馬「ったく!」

〇大教室
  しばらく談笑したのちに、崇矢は神妙な面持ちで天馬に話しかける。
鳥丸崇矢「けど、マジでその女には気をつけた方がいいぞ?」
加賀美天馬「え?なんで?」
鳥丸崇矢「分からねぇかなぁ・・・」
加賀美天馬「ごめん、全然わからない・・・」
鳥丸崇矢「よく考えてもみろよ!天馬はその女の事、なにひとつ知らねぇんだろ?名前とかさ!」
加賀美天馬「うん。名乗らなかったからね」
鳥丸崇矢「けどその女は逆だ!」
鳥丸崇矢「その女は、天馬の顔と名前。生年月日。個人情報を知ってんだぞ?」
加賀美天馬「いやいや。考えすぎだよ!」
鳥丸崇矢「バカか!考えすぎなくらいが、今回のケースは丁度いいんだよっ!」
加賀美天馬「そ、そうかなぁ・・・」
鳥丸崇矢「知らない奴が、自分の個人情報知ってるって、かなりやばい状況だぞ!」
鳥丸崇矢「ストーカーとかになったりしたら、後々面倒だろ?」
加賀美天馬「ストーカーって、さすがに」
鳥丸崇矢「そういう所だぞ!お前の危機管理能力の低さ!慎重になるに越した事はねぇぞ!」
加賀美天馬「う、うん・・・わかったよ・・・」
鳥丸崇矢「まぁ、なにか面倒な事になりそうだったら、とりあえず俺に電話しろよ!力くらいは貸してやっからさ!」
加賀美天馬「わかった。もしもの時はお願いするかも!」
鳥丸崇矢「おぅ!」

〇電器街
  ──帰宅路──
  天馬は崇矢の忠告のせいで、恐怖に苛まれていた。
  偏執狂などとは無縁な人生を歩むとばかりか思っていた天馬にとって
  それが身近になりつつあるというこの状況は、恐怖以外の何物でもないからだ。
加賀美天馬「あーもう!崇矢のせいで、余計な不安を抱える羽目になったじゃんか!」
加賀美天馬「でも、ストーカーなんて、さすがにあり得ないだろ・・・」
加賀美天馬「俺みたいな冴えない奴をストーキングしたって、なんのメリットもないだろうし」
加賀美天馬「まぁ、大丈夫だろっ!」
加賀美天馬「とりあえず、スーパーに行って、夜食べる弁当買いに行こう!」

〇スーパーの店内
  ──スーパー──
  天馬は、惣菜コーナーで、夜食べるつもりの弁当を物色していた。
  しかし、まだ時間的に半額になっている時間では無かったようで、1割引にしかなっていなかった。
加賀美天馬「うーん、1割かぁ。1割じゃまだ手は出ないなぁ。せめて3割なら考えるけど」
  悩んだ結果、しばらくウロウロしたのちに再び惣菜コーナーを訪れ、安くなっていたら買おうと考え、その場を立ち去ろうとした。
  ──次の瞬間──
  天馬くんですよね?
  背後から、自分の名前を呼ぶ女性の声が聞こえ、後ろを振り向く。
加賀美天馬「はい?」
  振り返った瞬間、天馬はまるで氷漬けにされたかの様に硬直してしまった。
加賀美天馬「・・・・・・・」
  そこには、昨日の深夜、自宅に財布を届けに来てくれた、あの女性の姿があった。
加賀美天馬「え・・・」
  天馬の脳裏では、大学で聞いた崇矢からの忠告がフラッシュバックしていた。
  知らない奴が、自分の個人情報知ってるって、かなりやばい状況だぞ!
  ストーカーとかになったりしたら、後々面倒だろ?
加賀美天馬(え?あの人は、昨日の人・・・いやいや、まさか!)
???「あの・・・」
加賀美天馬「は、はい・・・」
???「随分と顔色が悪いみたいですけど、大丈夫ですか?具合でも悪いんじゃ・・・」
加賀美天馬「あ、いや、そんな、事は、ない、です・・・」
  天馬はあまりの恐怖で、しどろもどろな受け答えをするのがやっとだった。
  それもそのはずだ。
  崇矢からストーカーなどという言葉を聞かされ、もう会う事はないと思っていた女性と、こうして偶然出会ってしまったのだから。
加賀美天馬「・・・・・・」
  天馬が言葉を発せずに、俯いていると、女性が口を開く。
???「私のこと、覚えてくれてます?」
加賀美天馬「え・・・」
???「・・・・・・」
加賀美天馬(もちろん覚えてますよ!って言いたいのに、言葉が出てこない!どうしよう!)
  いつまでも覚えていると言ってくれない天馬。
  そんな天馬に若干の苛立ちを感じているのだろうか、先ほどまで笑顔だった女性の表情が、徐々に笑顔から真顔に変わっていく。
加賀美天馬(まずい!言わなきゃ!覚えてますって言わなきゃ!)
  ここですぐに覚えていると伝えなければ、もしかしたら奇声を発して暴れられたりするかもしれない。
  そうなったら!と考えれば考えるほどに、天馬は言葉を発せなくなる。
???「・・・・・・」
加賀美天馬「も、もちろん、覚えてますよ・・・」
加賀美天馬「き、昨日、財布を届けに、来てくれた、かた、ですよね?」
  天馬は必死に掠れた声で、覚えていると言う意思を示した。
  そんな天馬の言葉を聞いて安心したのか、先ほどまで真顔だった女性の表情は、満面の笑みになっていた。
???「よかったぁ♫忘れたなんて言われたら、ショックでしたから!」
加賀美天馬「あははは・・・・」

〇スーパーの店内
???「あっ!そう言えば、自己紹介がまだでしたね!」
加賀美天馬「はぁ・・・」
柊美琴「私の名前は、柊美琴!天馬くんと同じハタチです!気軽にミコトって呼んでくださいね♫」
加賀美天馬(天馬くんと同じ!かぁ・・・)
加賀美天馬(て事はすでに、俺の年齢は、免許証を見た時に把握済みって事か・・・)
加賀美天馬(こりゃ、崇矢の話も、あながち間違いじゃないのかも・・・)
柊美琴「もしかして、天馬くんは夕飯の買い出しですか?」
加賀美天馬「あ、はい、そうなんですよ!」
柊美琴「わぁ♫私もなんです♫」
加賀美天馬「そうなんですか。こんな偶然もあるんですね」
柊美琴「・・・・・・」
柊美琴「本当に偶然だと思います?」
加賀美天馬「え・・・・・・」
  美琴の予想外の発言に、天馬は恐怖のあまりに言葉を失う。
柊美琴「天馬くんの事を探してって言ったらどうします?」
加賀美天馬「えっと、それは、どういう・・・・」
  もしかしたら、美琴は本当にストーカーなのかもしれない。そんな恐怖で目の前が真っ暗になる感覚に苛まれる。
柊美琴「・・・・・・」
柊美琴「なんてね♫冗談ですよ♫本当にただの偶然です♫もぅ、そんな泣きそうな顔しないで♫ね?」
加賀美天馬(おい!おい!やめてくれって!そんな冗談!笑えるわけないだろ!なんなんだよこの人!)
柊美琴「ごめんなさい♫ちょっとした冗談だから!」
加賀美天馬「あははは・・・」
  天馬笑って誤魔化すくらいしか出来なかった。

〇スーパーの店内
  すると美琴は、天馬が惣菜コーナーでウロウロしている事で、何かを察したのか
柊美琴「もしかして、今日の夕飯はお弁当だっりします?」
加賀美天馬「あ、まぁ、一応そのつもりですけど・・・」
柊美琴「ダメですよ!お弁当なんて!栄養偏っちゃいますよ!病気なんかになったりしたら大変っ!」
加賀美天馬「まぁ、でもろくに自炊できないし・・・」
柊美琴「あっ!そうだ!」
加賀美天馬「ん?」
柊美琴「なら私が作ってあげますよ!私お料理得意だから!ね?ね?それがいいです!」
  美琴は天馬の腕を掴み、グイグイと体を寄せてくる。
加賀美天馬「あ、いや、それは流石に申し訳ないですよ!」
加賀美天馬「大丈夫ですか!失礼します!」
  天馬がその場の空気に耐えれず、足早に立ち去ろうとする。
  しかし、腕を掴んでいる美琴に引き戻されてしまう。
柊美琴「迷惑ですか?余計なお世話でした?」
加賀美天馬「いや、だから、そういう話じゃなくて」
柊美琴「だって、逃げようとしてません?私のこと嫌いですか?」
加賀美天馬「好きと嫌いとか、そういう問題じゃなくて」
柊美琴「ならどういう問題なんですか?」
加賀美天馬「・・・・・・・・・」
加賀美天馬「今はその、あれだ!大学のレポートが忙しくて、暇がないんですよ!うん!」
柊美琴「なら、嫌なわけじゃないんですね?」
加賀美天馬「あ、はい。そうなんですよ。今は時間がなくて」
柊美琴「そっか・・・なら仕方ないですね」
  美琴は残念そうに俯きながら、天馬の腕から手を離す
加賀美天馬(ふぅー、よかったぁ)
柊美琴「あっ!ならLIME(ライム)交換しませんか?それなら忙しいとか関係ないでしょ?」
加賀美天馬「LIME・・・ですか・・・」
柊美琴「それも嫌ですか・・・・」
加賀美天馬「・・・・・・」
加賀美天馬(まぁ、LIMEくらいなら、別に構わないか・・・)
加賀美天馬「LIME交換ならいいですよ!確かにそれなら、忙しいとか関係ないですもんね!」
柊美琴「ほんとに!やったぁ♫なら早速交換しましょ!」
加賀美天馬「あ、はい・・・」
加賀美天馬(やばい。ちょっと可愛いな・・・)
加賀美天馬(意外とストーカーとかじゃなくて、ただ単にに距離が近すぎるだけなのかな?)
柊美琴「はいっ!交換おわり!今日の夜にLIMEするから待っててね♫」
加賀美天馬「は、はい・・・」
柊美琴「じゃあ、また!」
  そういうと美琴は、ウキウキした様子でその場から立ち去っていった。
加賀美天馬「なんか、可愛いなぁ・・・美琴さん・・・」
加賀美天馬「彼氏とか居たりするのかな・・・」

次のエピソード:3話【影の脅迫者】

成分キーワード

ページTOPへ