デスゲームに参加したくないので小料理屋始めました!

AAKI

予約6.根木 薫とチョコピスタチオ(脚本)

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〇湖畔の自然公園
根木 薫「はぁ?」
  薫は苛立ちをあらわにしている。
  晩秋ないしは初冬のころ、少し肌をあらわにし過ぎな彼女。
  寒くないのであれば問題はない。
  問題なのは、薫の視線の先だ。
韮崎 カン子「だから──」
  薫とは対照的なきっちりした着こなしの老婦人が何かを言いかける。
根木 薫「――聞こえてんだよ、ババァ」
  言いかけた言葉を遮って乱暴に吐き捨てた。
根木 薫「あんたみたいに耳が遠くなるほど年くってるように見えるかぁ?」
韮崎 カン子「な、なんて言葉遣いです・・・!」
  老婦人も負けじと言い返すも、気迫の上では完全に劣っている。
韮崎 カン子「女の子の物言いではないわよ・・・」
韮崎 カン子「その格好だって、はしたない」
  話のきっかけとなった言葉まで戻ってきた。
  都内で遊んだ帰り、通りがかりの公園で出くわした老婦人にそのセリフをぶつけられたのである。
根木 薫「っ・・・」
  薫は握りこぶしをなんとか収めると、カン子を無視して公園の出口に向かう。
  なんと不便な世の中なのだろうか――内心で沸き立つ怒り。
  誰にも迷惑をかけていない人様の格好に勝手ないちゃもんを着けてきた件。
  人を狭量な基準で男だの女だのと分類した件。
  度々繰り返されるこの二点に、薫の怒りはいつ爆発してもおかしくない状態だった。
  しかし、そうすると悪者扱いされるのは自分だ。
韮崎 カン子「お待ちなさい」
韮崎 カン子「まだ話はっ」
根木 薫「ついてくんなババァ!」
根木 薫「あたいがどんな格好をしようと、男として生きようと勝手だろーが!」
  いつまでも説教をかまそうとしてくるカン子を追い払おうとする。
  もう公園の出口だ。
韮崎 カン子「え、えっと・・・話を聞きなさい!」
  そのまま走って逃げてしまおうかと思ったが、さすがに性の自認にまでは突っ込めなかったようだ。
根木 薫「聞く耳なんざねぇよ」
根木 薫「これ以上怒らせたくなかったら黙ってお花の稽古にでも行っちまえ!」
  言っても聞かないだろうと踏んだ薫は、それだけ言うと持ち前の脚力でその場から逃げた。
  カン子は何か言っているようだがもう聞こえない。
  その時は、それだけの関係だと思っていた。

〇殺風景な部屋
  まさか、あのような形で半年前のことを決着させるとは思っていなかった。
根木 薫「責任とってもらわないとねぇ」
  ベッドに寝転がり、二人の顔を思い浮かべて期待に満ちた顔でつぶやいた。
  一人は、数日前に自らの手で始末したカン子。
  もう一人は、一週間に渡って楽しませてくれている鴨姫。
根木 薫「どうせ、また【あの】店かな」
  いつもの場所にいれば鴨姫は現れるだろうと踏んで、起き上がり部屋を出た。
  今日こそは最後まで殺しあってもらおうと決心して目的の店へとたどり着いた。
  いつもは割りと物静かな小料理屋だが、どうやら三人くらいの話し声が聞こえてくる。
宇古 鶏太「やぁ、こないだはすんませんでした」
  まだ話始めてそれほど経っていないのか、男の謝罪が聞こえてくる。
  以前、お店から追い払ったイキリ男だ。
芹沢 鴨姫「まぁまぁ、食事は皆で楽しくしないとさ」
  鴨姫の能天気な声も聞こえてくる。
根木 薫「なぁにやってんだか、あいつら・・・」
  相変わらずな反応に呆れつつ、薫は少し中の様子を伺ってから入っていく。

〇広い厨房
朝生 葉大「あ、根木さん、いらっしゃいませ」
  店主も、客の二人と変わらないどこにでもいる料理屋の対応をする。
  薫は、露骨に「能天気過ぎるだろこいつら」と言わんばかりの表情をする。
宇古 鶏太「げっ!」
  鴨姫たちには許されたが、以前に恐ろしい目に合わされた男は、当然ながら薫を見て顔を青ざめさせた。
芹沢 鴨姫「まぁまぁ、そうピリピリしないで、二人とも」
  鶏太と薫の間で不穏な空気が流れたので、鴨姫はいつも通りなだめた。
芹沢 鴨姫「それにしても、薫ちゃんの方からくるなんて珍しいこともあるものだね」
根木 薫「何か悪いのか?」
根木 薫「さっさと始めたいから来てやったんだよ」
  殺気が鴨姫の方に向いた。
芹沢 鴨姫「それは構わないけど、まずは話をしてからね」
芹沢 鴨姫「できれば大勢に聞いてもらった方が良い話だしね」
根木 薫「話ぃ?」
  鴨姫の言葉に怪訝そうな表情をする薫。
宇古 鶏太「まぁ、命さえ無事なら俺は何でも」
  最初にイキって心折られただけに、鶏太は降参モードだ。
朝生 葉大「それで、お話っていうのは?」
芹沢 鴨姫「私たちの共通点についてだよ」
  葉大に聞かれて鴨姫はあっさり答える。
朝生 葉大「この間は、なにやら思うところがあるのか何も言わず帰ってしまいましたけど」
  人数が欲しいというのが意味有りげなため、遠回しに確認を取る。
宇古 鶏太「共通点っすか?」
根木 薫「ふーん、分かったのか」
  興味と無関心が同時に掲げられる。
  鴨姫は、少し話しづらい様子で咳払いを挟み本題に入る。
芹沢 鴨姫「ごほん・・・無事にこのデスゲームを終わらせるためには重要なことだからさ」
根木 薫「おいおい、あたいが生きてる間は無事なんて言葉はありえないぜ?」
芹沢 鴨姫「逃げたりしないけど、大事な情報を抹殺されちゃ困るからね」
  念のためだと、焦った様子の薫に釘を指す。
根木 薫「あぁ、なるほど」
  他が要領を得ない中、薫だけは持ち前の狩人の勘で理解を示した。
芹沢 鴨姫「まず、私たちの共通点だけど、半年前にとある自然公園をとある時間に通過した人間という話だね」
  鶏太が驚いた様子で言葉を挟んでくる。
宇古 鶏太「へ、へぇ、そうなんっすか?」
宇古 鶏太「一体、何かその時にあったんっすかねぇ?」
朝生 葉大「・・・」
  件の日時に思い当たるもののないであろう男2人は鴨姫の説明を待つ。
芹沢 鴨姫「何があったかというと、『セレブ妻暴行殺人事件』というものだよ」
  名探偵ごっこが板につきすぎてしまったのか、なんともそれっぽいタイトルが飛び出してきた。
朝生 葉大「あぁ、そういえばニュースでそんな見出しが踊ってましたね」
宇古 鶏太「半年も前のことなのに、良く覚えてるっすねぇ」
  タイトルは鴨姫が考えたものではなかったようだ。
  それでも、インパクトのあるきっかけで2人とも思い出した様子だ。
芹沢 鴨姫「さて、これで大体の予想はついただろうけど、このゲームは妻を殺された金持ち男性の復讐さ」
  一旦、話をまとめた。
朝生 葉大「共通点についてはこれでわかりましたし、奥さんを無惨に奪われた復讐なのも合点がいきます」
  よほど考えの足りない人間でない限り、主催者の雰囲気や会場の規模、いろいろな点からたどり着く答えである。
宇古 鶏太「けど、だからどうするんっすか?」
  鶏太の疑問はもっともだ。
  その様々な言葉が集約された言葉に鴨姫は答える。
芹沢 鴨姫「私たちで犯人を見つけるしかないだろうね」
  その既定路線はわかっていたが、問題はどうやってである。
芹沢 鴨姫「できることなら元の情報提供者がもう少し情報を落としてからの方が良かったんだけどね」
朝生 葉大「エディブルさんから?」
朝生 葉大「確信が持てないって程度話じゃないです?」
  かばうとかいった意味ではないが、葉大は花が何かを隠しているとは思いたくなかった。
芹沢 鴨姫「そうかばうマネをしなくても良いよ」
芹沢 鴨姫「隠しているってことじゃなくて、まぁ、追々にしよう」
  鴨姫はなだめるように言うものの、どことなく不機嫌そうだ。
朝生 葉大「ですか・・・」
  余計なことを言える気配でもなかったため、短く答えて口をつぐんだ。
宇古 鶏太「でも、どうするんすか?」
  鶏太が聞く。
芹沢 鴨姫「その日その時その場所で、何をしていたか聞き出すしかないだろうね」
  さまざまなものが集約された質問に行き当たりばったり答えを返した。
  しかし、閉じ込められている身にできるのはそれくらいだろう。
芹沢 鴨姫「そんなわけで、葉大はどうかな?」
朝生 葉大「え、えぇっと、普段は仕事用の土地なので変なことはしないんですけど」
  急に振られたので葉大はゆっくりと、思い出しながら話しはじめる。
朝生 葉大「仕事終わりが遅くなったので、近道として抜けさせてもらったんです」
朝生 葉大「そのときはそれだけで終わりましたね」
  自分は事件に関わっていないし、何にも気づかなかったと主張した。
芹沢 鴨姫「ふむ」
芹沢 鴨姫「次は鶏ちゃん!」
宇古 鶏太「えぇっ・・・」
宇古 鶏太「半年前のことなんて聞かれてもっすよ」
宇古 鶏太「多分、雨で参加してた草野球が流れた日だったと思うっす」
宇古 鶏太「打ち上げって名前のヤケ酒で酔っていたっすから~」
  必死に記憶を手繰って話す鶏太。
芹沢 鴨姫「確かに雨の日の夜だったね」
朝生 葉大「確かに」
  他の2人も補足する。
  それでも、そこで手詰まりといった様子だ。
芹沢 鴨姫「鶏ちゃんもそうなると・・・」
  鴨姫は困った様子で言った。
  言いかけて、視線に気づき横目に周囲の三人を一通り眺める。
芹沢 鴨姫「いや、その、私だって似たようなものだよ?」
  鴨姫は珍しく焦った様子で自身の無実を訴える。
芹沢 鴨姫「まぁ、アリバイがないって点では皆同じだけどね」
朝生 葉大「・・・」
宇古 鶏太「・・・」
  逃げるかのような態度に白い目を向けるも、証明などしようもないのだから諦める。
芹沢 鴨姫「そういうわけで、薫ちゃん?」

〇広い厨房
根木 薫「は?」

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コメント

  • デスゲームの真相について少しずつ明らかになり、薫さんの過去もまた。ちなみに私なら、チョコピスタチオを出されたら何だって話してしまいます。近年のピスタチオブームに狂喜乱舞していました。

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