第二十話 叩き込め!(脚本)
〇英国風の図書館
◆あらすじ◆
チヨミはヒナツを倒すためではなく
救うために王都に向かいたいと言う。
ソウビは同意する。
ユーヅツ・アモル「戦力になりたいんでしょ? だったらこの魔導書の中身、 どんどん頭の中に叩き込んでいって」
ソウビ・アーヌルス「ぁい・・・」
ソウビ・アーヌルス(長文の暗記なんて受験以来だよ!)
私は魔導書を開く。
幸運なことに、
内容はちゃんと理解出来た。
魔法を使うのに必要なことは三つ。
まずは魔力。
誰がどれだけ使えるかは
素質にもよるけど、
トレーニングで鍛えることもできる。
次に技術。
心の中でエネルギーの弾をイメージし、
腕を通して手から放出するというもの。
エネルギーの流れを
しっかり意識しなければ、
コントロールや威力が落ちてしまう。
そして最後に記憶力。
呪文を頭に叩き込まなきゃいけない。
初期魔法の呪文は英語に例えれば
「I play baseball」くらいの感じだ。
ところが高等魔法になると
シェイクスピア劇の
ワンシーンみたいなものになる。
それを間違えずに
すらすらと詠唱しなきゃいけない。
つまり魔法の発動には、
魔力を、心から腕を伝って
手から放出するのをイメージしつつ、
正しく詠唱することが必要だ。
ソウビ・アーヌルス(うぅうう、詠唱に集中すると、 イメージの方が疎かになる!)
ソウビ・アーヌルス(イメージに集中すると、 文章が頭から抜けて詠唱失敗するし!)
ユーヅツ・アモル「イメージが弱いよ」
ソウビ・アーヌルス(おぶぉ!)
ユーヅツ・アモル「詠唱、一文飛ばした」
ソウビ・アーヌルス(あぅ)
ユーヅツ・アモル「コントロール」
ソウビ・アーヌルス(うぎぃい!)
〇黒
〇英国風の図書館
ユーヅツ・アモル「・・・・・・」
ユーヅツ・アモル「休憩しようか」
ソウビ・アーヌルス(頭から、煙出そう・・・)
ユーヅツ・アモル「うん、 いい感じで上達してるんじゃない?」
ソウビ・アーヌルス「そうなの?」
ユーヅツ・アモル「この間初期魔法を身に着けた ばかりにしては、いい成長率だよ。 さすが王家の血筋」
ソウビ・アーヌルス(褒められてるのかなぁ・・・)
ユーヅツ・アモル「でも、 戦場に繰り出すとなると微妙だな。 手ごわいと思ってもらえなきゃ、 相手は集中攻撃を食らわせてくる」
ソウビ・アーヌルス(ぐぅっ)
ソウビ・アーヌルス(これはわかる。 私もガネダンのプレイ中は、 簡単に倒せる弱いキャラから 撃破していってた)
ソウビ・アーヌルス(敵の手数を減らすことで、 味方のダメージが抑えられるから)
ソウビ・アーヌルス(・・・そのターゲットに自分がなるのか)
ゾワリと寒気がする
ソウビ・アーヌルス(ゲームなら、 敵が絶対来ない場所に配置して、 経験値だけ稼がせるやつだよね)
ソウビ・アーヌルス(勢いで、私も戦力になりたいって 言っちゃったけど、今更ながら 割と無謀かもしれない)
ソウビ・アーヌルス(てかさ、 私って転生者みたいなものだよね?)
ソウビ・アーヌルス(なんで、 『詠唱なしでいきなり発動』とか できないの!? 『私何かやっちゃいました?』は?)
ソウビ・アーヌルス(受験生並みに苦労してるのは、 なんでなんだよぉおお!!)
ユーヅツ・アモル「はい、休憩終わり。 特訓、再開するよ」
ソウビ・アーヌルス「あのさ、 もしかして私、戦場に出ない方がいい?」
ユーヅツ・アモル「なんで?」
ソウビ・アーヌルス「いや、足手まといじゃないかな、 なんて・・・」
ユーヅツ・アモル「まぁ、戦力として 頼りになるかと言えばならないけど」
ソウビ・アーヌルス(げふっ)
ユーヅツ・アモル「元々の魔力が強いから、 初期魔法でもそれなりの威力は 出ると思うよ」
ユーヅツ・アモル「後方支援としてはいいんじゃない?」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
ユーヅツ・アモル「気が進まないなら、 無理強いはしないよ。 怖ければやめておいたら?」
ソウビ・アーヌルス(うぅ・・・)
ユーヅツ・アモル「これまで通り後方に控えておいて、 治癒に専念してくれるのもいい」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
私は『GarnetDance』の
戦闘マップ画面を思い出す。
ソウビ・アーヌルス(私みたいなのを出撃させるとしたら、 どこに配置するだろ・・・)
やはり敵に直接ぶつからない、
後方に配置する。
基本は治癒の役割に専念させ、
あと僅かでも攻撃力が欲しい
と言う時にだけ攻撃に加わる。
出来るだけ強いキャラの背後に
ついて回り、その強キャラが
常に万全の状態で戦えるように、
優先して回復させる。
ソウビ・アーヌルス(こんなところかな)
私は考えをユーヅツに伝えた。
ユーヅツ・アモル「いいんじゃない、それで」
ソウビ・アーヌルス「いいの?」
ユーヅツ・アモル「自分の実力を冷静に俯瞰で見てて、 理にかなっていると思うよ」
ソウビ・アーヌルス「そっか。 じゃあ、そうしようかな」
ユーヅツ・アモル「じゃあ、覚えるのはこれとこれと・・・」
ソウビ・アーヌルス「えっ? 魔導書が入れ替わっただけで、 冊数同じじゃない?」
ユーヅツ・アモル「攻撃魔法の書は減らして、 治癒と状態異常回復の書を 持ってきただけだけど?」
ユーヅツ・アモル「これが火傷回復、これが混乱回復、 これが盲目回復、これがマヒ回復・・・」
ソウビ・アーヌルス「ヴァッ!?」
〇黒
〇英国風の図書館
ユーヅツ・アモル「この辺にしておこうか。 お疲れ様」
ソウビ・アーヌルス「ありがとう、ございました・・・」
精魂尽き果てるとは
こういうのを言うのかもしれない。
ソウビ・アーヌルス(五科目の教科書を それぞれ暗唱させられた感じだ・・・)
ぐったりと突っ伏していると、
ふいに頭を撫でられた。
ソウビ・アーヌルス「んぁ?」
ユーヅツ・アモル「お疲れ様。 魔導書、片づけておいて」
ソウビ・アーヌルス「うぃす」
ユーヅツ・アモル「自分に出来ることをしようと 限界まで努力する姿、 ボクはとても好ましいと思うよ」
ソウビ・アーヌルス「お、おぅ?」
ソウビ・アーヌルス(頭撫でられちゃった)
目の前に積みあがった魔導書を見る。
ソウビ・アーヌルス(片づけろって言われたけど 持ち帰って、部屋でも覚えようかな)
魔導書タワーを抱え上げ、
自室へ引き上げようとした時だった。
目の前で扉が勝手に開いた。
テンセイ・ユリスディ「ソウビ殿」
ソウビ・アーヌルス「わ、テンセイ、ナイスタイミング。 両手ふさがってて、 どうやって扉開けようかと思ってたんだ」
テンセイ・ユリスディ「自分が持ちましょう」
返事をする前に、
私が抱えていた魔導書は
全てテンセイに奪われる。
ソウビ・アーヌルス「え? 悪いよ、そんなの」
テンセイ・ユリスディ「軽いものです。 それにユーヅツに頼まれましたので」
ソウビ・アーヌルス「ユーヅツに?」
テンセイ・ユリスディ「もしも貴女が 魔導書を自室に持ち帰ろうとしていたら、 運んでやってほしいと言われました」
ソウビ・アーヌルス(なんと!?)
ユーヅツに
色々見抜かれていることに驚く。
ソウビ・アーヌルス(おっとりしてるように見えるのにな)
〇立派な洋館
〇空
〇城の回廊
チヨミ・アルボル「皆さん、傷は癒えましたか? 疲れの出ている人はいませんか?」
助けを求めてチヨミのもとへ集った民に
彼女は穏やかに、
そして凛々しい声で語りかける。
チヨミ・アルボル「これより我々は、 イクティオへと向かいます。 目的地は東の離宮。 本来私の居住地となる筈だった場所です」
第二十話 叩き込め! ──終──
第二十一話に続く
チヨミー!!😆
チヨミが出てくると民衆と一緒に盛り上がっている自分がいます。たおやかなのにかっこいい!
ユーヅツ、ちょっとデレましたね……なでなでがテンセイに見つかったら、眼光ビーム発射されそうw
ユーヅツはスパルタですが、良い先生ですね。飄々+有能な軍師系キャラは味方に一人居ると安心ですね!そしてギャ~よ、再びww
戦いはいよいよ敵陣へ。ドキドキします!