寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

第十九話 チヨミ起つ(脚本)

寵姫は正妃の庇護を求む

香久乃このみ

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〇城の回廊
  ◆あらすじ◆
  チヨミとタイサイの父
  アルボル卿が国外追放となり、
  親子でメルク王子の城に
  身を寄せることとなった
ソウビ・アーヌルス(ん、何だか騒がしいな・・・)
ソウビ・アーヌルス(ぅお? なんかボロボロの人が 沢山押し寄せてる!)
メルク・ポース「よぉ、姫さん」
ソウビ・アーヌルス「メルク王子、これって・・・」
メルク・ポース「イクティオから逃げてきた民だよ。 チヨミちゃんに王になってほしいんだと。 ヒナツを倒して」
ソウビ・アーヌルス(ついにチヨミ軍反撃のターンまで 来ちゃったか・・・)

〇大樹の下
チヨミ・アルボル「はぁ・・・」
ソウビ・アーヌルス「チヨミ。 隣いい?」
チヨミ・アルボル「ソウビ。 うん、どうぞ」
ソウビ・アーヌルス「・・・なんか すごいことになっちゃったね」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「みんなからヒナツを倒せって言われたの」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「無理だって言ったんだけどね。 あの戦の神みたいなヒナツに、 私なんかが敵うはずないって」
チヨミ・アルボル「でも、かつて 私の策で命を長らえた人たちが 私に期待を寄せているみたいなんだ」
ソウビ・アーヌルス「そっか・・・」
チヨミ・アルボル「国の状況は、先日、 お父さんから聞いた通り。 本当に、荒れてしまってる・・・」
チヨミ・アルボル「国家予算を愛妾のわがままのために ガンガン使ってて、 公共事業や福祉なんかは削り放題」
チヨミ・アルボル「軍事費も削ってしまったから、今、 武器や鎧もボロボロなんだって」
チヨミ・アルボル「その状態で民に ドラゴンミルクを採りに行かせるから、 怪我をしたり亡くなったりする人が 続出してるとか・・・」
ソウビ・アーヌルス(・・・うん、知ってる。 原作ゲームでもそうだった)
ソウビ・アーヌルス(きっとラニのおねだりだけじゃなく、 ヒナツも積極的にラニへ 大量のプレゼントをしてるんだろうな)
ソウビ・アーヌルス(私にそうしてたように・・・)
ソウビ・アーヌルス(でも民はそうは思わない。 愛妾がわがまま放題で、 王はそれを甘やかし続けてる、 そう受けとめる・・・)
チヨミ・アルボル「ヒナツと、戦いたくないなぁ・・・」
ソウビ・アーヌルス「凶悪だもんね、あの戦いぶりは。 出来ればあんなのと剣を交わしたくない。 でも、チヨミの策があれば・・・」
チヨミ・アルボル「そうじゃないよ、ソウビ。 私ね、今もヒナツが好きなの」
ソウビ・アーヌルス「は?」
チヨミ・アルボル「バカみたいでしょ。 捨てられて、裏切られて、敵に回って。 国のみんなを苦しめている最低なやつ」
チヨミ・アルボル「それなのにね、 私まだヒナツが好きなんだ」
ソウビ・アーヌルス「は・・・はぁああ~っ!?」
ソウビ・アーヌルス(え!? ちょっと待って!? ここってまさか、 ヒナツ和解ルートの世界線!?)
ソウビ・アーヌルス「ごめん、本当に理解できない! なんで!? なんでヒナツなの!?」
ソウビ・アーヌルス「チヨミを大切にしてる人、 他にいるじゃない?」
ソウビ・アーヌルス「ヒナツだけはやめとこうよ! 都合のいい女見つけたら、すぐに 前の女をポイするヤツだよ?」
ソウビ・アーヌルス「チヨミも私も、 利用価値がないと判断されたら 速攻捨てられたでしょ?」
ソウビ・アーヌルス「国家予算の使い方もむちゃくちゃだし、 あんなヤツ戦上手なだけで 人の上に立つ男じゃない」
ソウビ・アーヌルス「チヨミは自分を大切にしてくれる人と、 幸せにならなきゃだめだよ!」
チヨミ・アルボル「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「そうだね」
チヨミ・アルボル「確かにテンセイの方がいいかも!」
ソウビ・アーヌルス「え?」
チヨミ・アルボル「誠実で優しいし、強いし純情で。 ヒナツ選ぶくらいなら、 テンセイの方がいいかな?」
ソウビ・アーヌルス「え、えっと、あの・・・、 テンセイは、その・・・」
チヨミ・アルボル「冗談よ」
チヨミ・アルボル「ソウビがイジワル言うから、 私もイジワル言っちゃった」
ソウビ・アーヌルス(イジワル・・・)
ソウビ・アーヌルス「ごめん」
チヨミ・アルボル「ううん。 普通の感覚なら、 もっともな意見だと思うから」
ソウビ・アーヌルス「・・・・・・」
チヨミ・アルボル「私がヒナツを好きになった時の話、 聞いてくれる?」
ソウビ・アーヌルス「・・・うん」

〇けもの道
  私が9歳の頃、
  もうすぐ家に着くって時に
  馬車が盗賊に襲われてね。
  私もタイサイも攫われかけたんだ。
  お父さんも、
  危うく殺されるところだった。
  そこに駆け付けてくれたのが、
  まだ12歳のヒナツだったの。
  小さなナイフ一本持っただけの。
  かっこよかったんだよ。
  風のように駆け回りながら、
  盗賊を一人、また一人と倒していったの。
  返り血を浴びながら
  月光の下に立つヒナツは、
  悪魔のように恐ろしくて、
  それでいてすごく素敵だった・・・。

〇大樹の下
ソウビ・アーヌルス(知ってる・・・。 あのスチルは私も一番好きだから)
チヨミ・アルボル「だけど、お父さんから身分を与えられて 活躍するようになっても、 ヒナツはずっと劣等感を抱えてた」
チヨミ・アルボル「それを跳ね返すために、 ヒナツががむしゃらに戦っていたの、 私は知ってる」
チヨミ・アルボル「私はそんなヒナツから、 劣等感を拭い去ってあげたかった」
チヨミ・アルボル「あなたはそのままで素敵だよ。 私はあなたを認めてるよ、って」
ソウビ・アーヌルス「へぇ・・・」
  これは知らなかった。
ソウビ・アーヌルス(全キャラ攻略後にしか見られない、 ヒナツ和解ルートのセリフかな)
ソウビ・アーヌルス(ネタバレだから、ちょっと 聞きたくない気もするけど・・・)
  チヨミは頬を染め、
  ヒナツのどんなところに
  心惹かれたかを語り続ける。
チヨミ・アルボル「私を手に入れることで 貴族の気分になれる。 ソウビやラニを手に入れることで 王族の気分になれる」
チヨミ・アルボル「それはとても 子どもっぽい感覚だと思うけど、 そうすることでしかヒナツは 自尊心を保てないんだ」
チヨミ・アルボル「私はヒナツを支えたい。 彼が彼であることに どれだけ魅力があるのか、 心に届くまで隣で伝え続けたい」
チヨミ・アルボル「私の命を救ってくれたヒナツだから。 今度は私が救いたいんだ、彼の魂を。 ヒナツが助けてくれた、この命にかけて」
チヨミ・アルボル「・・・だから、 ヒナツを倒すためじゃなく、 ヒナツを救うため 私はイクティオに戻りたい」
チヨミ・アルボル「救おうよ。 私の大切なヒナツと、 あなたの大切な妹、ラニを」
ソウビ・アーヌルス「チヨミ・・・!!」
ソウビ・アーヌルス(えぇえ、なんだこれ、熱い展開!!)
ソウビ・アーヌルス(そっか、ヒナツ和解ルートなら、 ラニも救えるかもしれないんだね!)
  私はチヨミの手を取る。
  目をしっかり合わせ、
  私たちは同時にうなずいた。

〇空

〇英国風の図書館
ユーヅツ・アモル「はい、次はこれ」
  どさりと音を立て、
  目の前に魔導書が積み上げられる。
ソウビ・アーヌルス(ぐほ・・・)
ユーヅツ・アモル「戦力になりたいんでしょ? だったら、 どんどん頭の中に叩き込んでいって」
  第十九話 チヨミ起つ ──終──
  
  第二十話に続く

次のエピソード:第二十話 叩き込め!

コメント

  • 魔法を覚えて戦力強化!

  • チヨミ、さすが乙女ゲーヒロイン!女神力が強い!
    ちびヒナツ、短刀一本とか言うから、個人的に脳内で愛染くん変換が止まりませんでした。そりゃかっこかわいかったでしょうよ……
    困難は多そうですが、この強力なダブルヒロインならなんとかなりそうって思わせてくれますね!

  • 全員攻略後の大団円ルートに入るのか!?
    ソウビとして出来ることを頑張ろうとするめぐりも、主人公らしい信じる想いを貫くチヨミも凛々しくて素敵です😆
    そしてユーヅツ先生、再びww

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